自閉症と妊娠高齢化の関連はあるのか？

高齢出産が一般的となった現代、妊娠に伴うさまざまなリスクへの関心が高まっています。特に「自閉症のリスクは年齢と関係あるのか？」という疑問は、多くの妊婦や家族が抱える不安のひとつです。本記事では、自閉症スペクトラム障害（ASD）と妊娠年齢の関連性について、国内外の研究データ、厚生労働省の統計、妊婦の声、そして実際に活用できる医療・行政支援まで、科学的かつ実用的に解説します。不安を減らし、前向きな出産を迎えるために、正しい知識と準備を一緒に確認していきましょう。

はじめに：高齢出産が当たり前になった現代日本の背景と不安

近年、日本の妊娠・出産のあり方は大きく変化しました。かつては20代前半での出産が一般的でしたが、教育期間の長期化、女性の社会進出、晩婚化、経済的な安定の重視などが重なり、出産年齢は年々高まっています。
厚生労働省「人口動態統計」によると、1990年の初産平均年齢は26.4歳でしたが、2023年には30.9歳と4年以上上昇。35歳以上での初産（いわゆる高齢初産婦）は全体の約3割に達し、都市部では40歳前後での妊娠・出産も珍しくありません。

この背景には、医学の進歩も影響しています。不妊治療や体外受精（ART）の普及により、40代でも妊娠・出産が可能となり、ライフプランに合わせた選択肢が広がっています。しかしその一方で、「高齢出産は自閉症リスクが上がるのでは？」という声が増えているのも事実です。

妊婦Aさん（40歳初産）の声

「妊娠が分かったときはとても嬉しかったのに、ネットで“高齢出産 自閉症”と検索するたびに不安で眠れませんでした。周囲に同年代の妊婦も少なく孤独感も強かったです。」

Aさんのように、高齢妊娠に伴う「自閉症リスク」への不安は、SNSやネット情報の影響で拡大しやすい状況です。しかし医師に相談したところ、「統計的には確かにリスクはわずかに上がるが、絶対リスクは低い」「ほとんどの高齢出産は問題なく健康な赤ちゃんが生まれている」という説明を受け、生活改善と検診を通して安心を取り戻せたといいます。

このように、科学的根拠に基づく情報と具体的な対応を知ることが不安軽減に直結します。本稿では、自閉症スペクトラム障害（ASD）の基礎知識、国内外の研究データ、日本の現状、妊婦の生活実例、医療・行政支援まで、段階的に詳細解説していきます。

自閉症スペクトラム障害（ASD）とは？

ASDの特徴と診断

ASDは、先天的な脳の発達の違いによる社会性やコミュニケーション、行動に特徴が見られる発達障害です。

主な特徴は以下の通りです：

• 視線が合いにくい、会話が一方通行
  
• 特定の行動や順序に強いこだわり
  
• 音や光、触覚への感覚過敏または鈍感
  
• 予定外の変化に強いストレスを感じる
  

ASDは「知的障害を伴う場合」と「伴わない場合」があり、知的能力や日常生活での困りごとは人によって異なります。

診断は、発達小児科や児童精神科でDSM-5やICD-11などの国際診断基準に基づいて行われ、行動観察や保護者への聞き取り、発達検査を組み合わせて評価します。

日本におけるASDの現状

文部科学省の調査（2022年）では、通常学級に在籍する児童の約6.5％に発達障害の傾向があり、その中でASDは最も多いとされています。医療現場ではおよそ40～50人に1人がASDと診断されており、決して珍しいものではなくなっています。

実例：Bさん（38歳出産）

「息子が3歳になってもほとんど話さず、呼んでも反応しないことが増えました。保育園の先生に発達相談を勧められ、小児科でASDと診断。療育を始めると半年ほどで単語が増え、笑顔も多くなり、家族で安心しました。」

ASDは早期発見と支援開始で、成長や適応の幅が大きく広がることが多いのです。

高齢出産の現状：日本の統計

厚生労働省「人口動態統計」では以下のような変化が確認できます。

年度	初産平均年齢	35歳以上初産割合
1990	26.4歳	5.5％
2000	28.0歳	11.6％
2010	30.1歳	24.4％
2023	30.9歳	32.6％

都市部ではさらに割合が高く、東京・大阪では35歳以上初産が4割近くに達しています。

親の年齢とASDリスク：国内外の研究結果

海外研究の知見

• Sandinら（2016, スウェーデン・5カ国・576万人）
  
  • 母親40〜49歳：ASDリスク1.15倍
    
  • 父親50歳以上：ASDリスク1.66倍
    
  • 母親20歳未満：ASDリスク1.18倍（U字型）
    
• Gretherら（2009, 米国）
  
  • 母親年齢10歳増加ごとにASDリスク1.38倍
    
  • 父親年齢10歳増加ごとにASDリスク1.22倍
    
• Lyallら（2020, メタ分析）
  高齢出産はASDの一貫したリスク因子と結論。
  

日本国内の研究

国立成育医療研究センターの調査では、35歳以上での妊娠ではASDリスクが約1.2倍と報告。ただし絶対リスクは2〜3％未満で、大多数は健康な出生です。

年齢が影響する理由

父親の加齢

• 精子のDNA複製エラーが蓄積し新規遺伝子変異（de novo）が増加
  
• 精子の老化によるエピジェネティック変化が発達に関与する可能性
  

母親の加齢

• 卵子の質低下による染色体異常リスク増加
  
• 妊娠高血圧症や糖尿病などの母体合併症による胎児発達への影響
  

妊婦の生活実例：日常管理と支援活用

事例① Aさん（40歳初産）

• 不安解消のため、葉酸サプリを妊娠前から摂取
  
• 週3回のウォーキング、マタニティヨガでストレス管理
  
• 栄養士指導の下、野菜・魚中心の食事に改善
  

事例② Bさん（37歳二人目）

• 不妊治療後に妊娠。早期に保健センター相談、産後ケアも予約
  
• 妊婦学級で同年代の妊婦と交流し孤独感が軽減
  

妊娠期にできる具体的対策

• 葉酸サプリ：妊娠前から摂取
  
• 生活習慣改善：禁煙・禁酒、睡眠確保
  
• 感染症予防：風疹・インフルエンザワクチン接種
  
• ストレスケア：カウンセリングや妊婦学級活用
  

出産後の支援体制

• 乳幼児健診による発達確認
  
• 療育施設・児童発達支援の利用
  
• 子育て世代包括支援センターでの相談
  
• 産後ケア制度やファミリーサポートによる育児支援
  

まとめ

• 高齢妊娠はASDリスクを統計的にわずかに上げるが、絶対リスクは低い
  
• ASDは遺伝や環境を含む多因子で発症し、年齢だけでは決まらない
  
• 妊娠前からの健康管理、支援制度の活用、信頼できる医療との連携で安心感が増す
  

「年齢に縛られすぎず、科学的知識と準備で不安を減らし、前向きな妊娠・出産へ」が現代日本におけるポイントです。