発達性およびてんかん性脳症4型(Developmental and epileptic encephalopathy 4)

赤ちゃん

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 4という非常に長く、聞き慣れない診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは生後数ヶ月のお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症4型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE4(ディー・イー・イー・フォー)と呼ばれることが一般的です。また、かつては早期乳児てんかん性脳症4型(EIEE4)と呼ばれていたり、症状の特徴から大田原症候群と診断されたりすることもありました。

現在では、原因となる遺伝子の名前をとってSTXBP1関連脳症やSTXBP1関連てんかんと呼ばれることが増えています。

この病気は、生後間もない時期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れや、特徴的な体の動きが見られるという傾向があります。その原因として、STXBP1という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や4型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症4型(DEE4)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE4は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この4型は、STXBP1(エス・ティー・エックス・ビー・ピー・ワン)という遺伝子の変異によって引き起こされることが2008年頃の研究で明らかになりました。これは、てんかん性脳症の原因遺伝子として比較的早期に発見されたものであり、現在ではDEEの中で最も頻度の高い原因遺伝子の一つとして知られています。

以前は原因不明の大田原症候群やウエスト症候群(点頭てんかん)、あるいはドラベ症候群と診断されていたお子さんの中に、この遺伝子変異を持つ方が多く含まれていることがわかってきています。

主な症状

DEE4の症状は、てんかん発作、発達の遅れ、そして特徴的な運動障害の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後数日から数週間、遅くとも生後3ヶ月頃までの乳児期早期にてんかん発作が始まります。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、以下のようなタイプが報告されています。

てんかん性スパズム:両手を広げてお辞儀をするような動作を、数秒おきに繰り返す発作です。シリーズ形成といって、一度始まると何度も繰り返すのが特徴です。

強直発作:手足がピーンと突っ張って硬くなり、顔色が赤くなったり青くなったりする発作です。これがDEE4(特に大田原症候群のパターンをとる場合)で最もよく見られる初期症状の一つです。

焦点発作:体の一部がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作です。

発作の経過

発症初期は発作の頻度が高く、コントロールが難しい時期がありますが、成長とともに発作の回数が減ったり、消失したりするケースも報告されています。てんかん発作が消失しても、次に述べる発達や運動の問題は継続することが一般的です。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、重度の知的障害を伴います。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。歩行に関しては、数歳で歩けるようになるお子さんもいれば、車椅子などのサポートが必要なお子さんもおり、個人差があります。

筋緊張の異常

赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。

成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮(けいしゅく)が見られることがあります。

3. 運動障害(ムーブメント・ディスオーダー)

DEE4(STXBP1関連脳症)の非常に特徴的な症状として、てんかん発作とは異なる、不随意運動と呼ばれる体の動きが見られることが挙げられます。

ジストニア

筋肉が勝手に収縮して、体がねじれたり、手足が突っ張ったりする症状です。

振戦(しんせん)

手足が細かく震える症状です。

ジスキネジア

口をもぐもぐさせたり、手足をくねくねさせたりする動きです。

これらの動きは、てんかん発作と間違われやすいですが、脳波検査でてんかん波が出ていないことで区別されます。特に、興奮した時や動こうとした時に強くなる傾向があります。

4. その他の症状

おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害や、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

また、自閉スペクトラム症のような行動特徴(視線を合わせにくい、こだわりが強いなど)や、多動が見られることもあります。

原因

なぜ、てんかんが起きたり、体が勝手に動いたりするのでしょうか。その原因は、神経細胞が情報を伝えるための物資輸送システムの不具合にあります。

STXBP1遺伝子の役割

DEE4の原因は、第9番染色体にあるSTXBP1(エス・ティー・エックス・ビー・ピー・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、シンタキシン結合タンパク質1(MUNC18-1とも呼ばれます)というタンパク質を作るための設計図です。

私たちの脳は、神経細胞同士が複雑なネットワークを作って情報をやり取りしています。神経細胞と神経細胞のつなぎ目であるシナプスという場所で、情報伝達物質というボールのような物質を受け渡すことで、信号が伝わります。

この情報伝達物質は、細胞の中でシナプス小胞という小さな袋に入って待機しています。信号が来ると、この袋が細胞の膜と融合して開き、中の物質を放出します。

STXBP1タンパク質は、この袋が膜と融合して物質を放出するプロセスを助ける、非常に重要な役割を果たしています。いわば、情報のボールを投げるための発射装置の一部です。

遺伝子の変化による影響

STXBP1遺伝子に変異が起きると、このタンパク質がうまく作られなかったり、機能しなくなったりします。これをハプロ不全といいます。

通常、遺伝子は両親から一つずつ受け継いで2つ持っていますが、片方がダメになってしまい、残りの一つだけでは仕事量が足りない状態です。

情報伝達物質を放出する装置がうまく働かないと、神経細胞同士の情報のやり取りがスムーズにいきません。

すると、脳全体のネットワークの調整がうまくいかなくなります。興奮を抑える信号が出せなくなっててんかん発作が起きたり、運動の指令がうまく伝わらなくてジストニアが起きたり、学習や記憶に必要な回路が作れなくて発達が遅れたりすると考えられています。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、DEE4(STXBP1関連脳症)のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にSTXBP1遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE4のお子さんの脳波では、サプレッション・バーストと呼ばれる特徴的なパターンが見られることがよくあります。これは、脳波が平坦になる時期(サプレッション)と、激しい波が出る時期(バースト)を交互に繰り返すもので、大田原症候群の診断基準の一つでもあります。

また、成長とともにヒプスアリスミアと呼ばれる点頭てんかんに特徴的な乱れた波形に変化することもあります。

一方で、てんかん発作がない時期には、脳波異常が目立たないこともあります。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、時間が経つにつれて、脳の前頭葉や側頭葉が少し萎縮して小さくなっている様子や、髄鞘化(神経の伝達速度を上げるための被覆)が遅れている様子が見られることがあります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE4は症状だけでは他の発達性てんかん性脳症と区別がつかないことが多いため、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてSTXBP1遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

親子

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

STXBP1変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。

フェノバルビタール、レベチラセタム、バルプロ酸、クロバザム、トピラマート、ゾニサミドなどが使われることが多いです。

点頭てんかん(ウエスト症候群)のパターンを示す場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法という注射の治療や、ビガバトリンなどの特殊な薬剤が検討されることもあります。

また、お薬でコントロールが難しい場合は、ケトン食療法(脂肪分を多く、糖質を極端に少なくした食事療法)が非常に有効な場合があるという報告もあります。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、逆に筋肉の突っ張り(痙縮)、不随意運動に対してアプローチします。

関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行ったり、楽な姿勢が取れるようにクッションを調整したりします。

座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。適切な姿勢を保つことは、呼吸や食事をスムーズにするためにも大切です。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、光や音などの刺激を使った遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、入浴や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(スイッチやおもちゃ、絵カードなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 栄養と生活面の管理

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

呼吸管理

呼吸が弱い場合や、痰が出しにくい場合は、吸引器を使用したり、吸入を行ったりします。夜間の呼吸状態を見守るためにモニターを使用することもあります。

感染症対策

筋緊張が弱く、呼吸の力が弱いお子さんは、風邪をこじらせて肺炎になりやすい傾向があります。手洗いなどの基本的な感染対策に加え、流行期には人混みを避ける、インフルエンザなどの予防接種を計画的に受けるなどの対策が大切です。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症4型(DEE4)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

STXBP1遺伝子の変異により、神経細胞が情報を伝える物質を放出する仕組みに不具合が生じ、脳のネットワーク形成や機能に影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

新生児期から乳児期早期に始まるてんかん(大田原症候群など)、重度の発達遅滞、ジストニアや振戦などの不随意運動が特徴です。

てんかん

難治性であることが多いですが、ACTH療法や様々なお薬の調整、ケトン食療法などでコントロールを目指します。成長とともに発作が減ることもあります。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、運動障害へのリハビリ、栄養管理、感染症予防など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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