発達性およびてんかん性脳症42型(Developmental and epileptic encephalopathy 42)

ハート

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 42という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

まだ小さなお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない、比較的新しい疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症42型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE42(ディー・イー・イー・ヨンジュウニ)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってCACNA1A関連神経発達障害やCACNA1A関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。

この病気は、乳児期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れや、ふらつきなどの神経症状が見られるという特徴があります。その原因として、CACNA1Aという特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や42型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症42型(DEE42)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE42は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この42型は、CACNA1A(カクナ・ワン・エー)という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになっています。この遺伝子の変異は、DEE42以外にも、発作性運動失調症や片麻痺性片頭痛といった他の神経の病気の原因になることもありますが、DEE42はその中でもてんかんと発達の遅れが主な症状となるタイプを指します。

発症時期は生後6ヶ月以内の乳児期早期であることが多く、早期発見と適切なケアが重要となる病気です。

主な症状

DEE42の症状は、てんかん発作、発達の遅れ、そして特徴的な神経症状の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後数ヶ月以内の早い時期にてんかん発作が始まります。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、以下のようなタイプが報告されています。

全般強直間代発作:全身が硬直したあとにガクガクと震える大きな発作です。

欠神発作:意識が数秒間途切れ、動作が止まる発作です。

ミオクロニー発作:手足や体が一瞬ビクッとする発作です。

焦点発作:体の一部がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作です。

難治性

DEE42のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の回数を減らし、生活に支障が出ないようにコントロールしていくことが目標になります。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、ハイハイをするといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、中等度から重度の知的障害を伴います。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、ジェスチャーや表情で感情を伝えたり、こちらの言っていることを理解していたりするお子さんもいます。

筋緊張低下

赤ちゃんの頃に、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。これにより、運動発達がさらにゆっくりになる傾向があります。

運動失調(小脳失調)

これはDEE42の非常に重要な特徴の一つです。

お座りや歩行ができるようになっても、体がふらついたり、手が震えたりする運動失調が見られることがあります。これは、バランスを司る小脳という脳の部分が影響を受けているためです。

また、眼振といって、黒目が小刻みに揺れる症状が見られることもあります。これも小脳の機能に関連した症状です。

3. 脳の構造的な特徴

MRI検査を行うと、脳の形に特徴が見られることがあります。

小脳萎縮

DEE42の患者さんでは、成長とともに小脳が小さくなる小脳萎縮が見られることがよくあります。小脳は運動のバランスや調整を行う場所なので、これが運動失調や眼振の原因となります。

大脳の萎縮

病状の経過とともに、大脳全体が少し萎縮してくることもあります。

4. その他の症状

おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害や、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。また、睡眠のリズムが整いにくい睡眠障害がある場合もあります。

赤ちゃん

原因

なぜ、てんかんが起きたり、ふらつきが出たりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にあるカルシウムの通り道の不具合にあります。

CACNA1A遺伝子の役割

DEE42の原因は、第19番染色体にあるCACNA1A(カクナ・ワン・エー)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、電位依存性カルシウムチャネルという、脳の神経細胞の表面にある小さな穴(通り道)を作るための設計図です。

脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。この情報の受け渡しにおいて、カルシウムイオンという物質が細胞の中に入ってくることが、「スイッチオン」の合図として非常に重要です。

CACNA1A遺伝子が作るカルシウムチャネル(Cav2.1チャネルとも呼ばれます)は、このカルシウムイオンを細胞の中に取り込むための扉の役割をしています。特に、小脳や、神経細胞同士がつながるシナプスという場所で重要な働きをしています。

遺伝子の変化による影響

CACNA1A遺伝子に変異が起きると、このカルシウムチャネルの働きがおかしくなります。

大きく分けて二つのパターンがあります。

一つは、機能獲得型変異といって、チャネルの扉が開きやすくなりすぎて、カルシウムが細胞の中に過剰に入り込んでしまう状態です。

もう一つは、機能喪失型変異といって、チャネルの扉が開きにくくなったり、チャネル自体が減ってしまったりして、カルシウムが十分に入ってこない状態です。

DEE42では、どちらのパターンも報告されていますが、いずれにしても神経細胞内のカルシウム濃度の調節がうまくいかなくなります。

カルシウムは神経の興奮や情報の伝達をコントロールしているため、そのバランスが崩れることで、神経が過剰に興奮しててんかん発作が起きたり、神経伝達がうまくいかずに発達が遅れたりします。

また、小脳の神経細胞はカルシウムの調節異常に特に弱いため、細胞がダメージを受けて小脳萎縮が進み、運動失調などの症状が出ると考えられています。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE42のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にCACNA1A遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE42のお子さんの脳波では、てんかん性の突発波(スパイク)が見られるほか、脳全体の電気活動がゆっくりになっている徐波化が見られることがあります。発作のタイプを特定し、薬を選ぶためにも定期的に行われます。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

DEE42を疑う上で、MRI検査は非常に重要です。特に、小脳の萎縮があるかどうかを確認します。発症初期には目立たなくても、経過とともに小脳が小さくなっていく様子が確認されることがあります。この所見は、CACNA1A遺伝子の異常を疑う大きな手がかりになります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE42は症状だけでは他の発達障害やてんかん症候群と区別がつかないことが多いため、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてCACNA1A遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

CACNA1A変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。

バルプロ酸、レベチラセタム、ラモトリギン、トピラマート、クロバザムなどが使われることが多いです。

一つのお薬で止まらない場合は、複数を組み合わせたり、難治性の場合はケトン食療法(脂肪分を多く、糖質を極端に少なくした食事療法)が検討されたりすることもあります。

また、変異のタイプ(機能獲得型か機能喪失型か)によっては、特定のお薬(例えばアセタゾラミドなど)が効果を示す可能性があるという研究もあります。専門医はお子さんの遺伝子変異の詳細を見ながら、慎重に治療方針を検討します。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、ふらつき(運動失調)に対してアプローチします。

姿勢を保つための練習や、体幹を鍛える遊び、関節が硬くならないようなストレッチを行います。

歩行が難しい場合は、座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、揺れる遊具などを使ってバランス感覚を養ったりします。また、食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(絵カード、ジェスチャー、スイッチなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 日常生活のケアと安全対策

転倒への対策

運動失調がある場合、歩くときや遊ぶときによく転んでしまうことがあります。

家の中の段差をなくす、角にクッションガードをつける、外出時は保護帽(ヘッドギア)を着用するなどの対策を行うことで、大きな怪我を防ぐことができます。

食事の工夫

嚥下障害がある場合は、誤嚥性肺炎を防ぐために食事にとろみをつけたり、一口の量を調整したりします。十分に栄養が摂れない場合は、経管栄養(鼻チューブや胃ろう)を検討し、体力を維持することを優先します。

眼科的ケア

眼振や視力の問題がある場合は、定期的に眼科を受診し、見え方のサポートを受けます。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症42型(DEE42)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

CACNA1A遺伝子の変異により、神経細胞のカルシウムチャネルに異常が生じ、脳の過剰興奮や小脳機能、発達に影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

乳児期のてんかん、重度の発達遅滞、運動失調(ふらつき)、眼振、小脳萎縮などが特徴です。

てんかん

難治性であることが多いですが、様々なお薬の調整でコントロールを目指します。変異のタイプによって治療戦略が変わる可能性があります。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、リハビリ、転倒予防、栄養管理など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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