複合カルボキシラーゼ欠損症

複合カルボキシラーゼ欠損症複合カルボキシラーゼ欠損症

概要

複合カルボキシラーゼ欠損症(3-Methylcrotonyl-CoA Carboxylase Deficiency 1,3-Methylcrotonyl-CoA Carboxylase Deficiency 2)は、ビオチン代謝に関連するホロカルボキシラーゼ合成酵素、もしくはビオチニダーゼ遺伝子の異常により、4種類のカルボキシラーゼ(プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)、メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ(MCC)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC))が同時に活性低下をきたす疾患で、常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとる、先天代謝異常症です。
両親が保因者の場合、1対の遺伝情報の一方に異常があり、そのため子供が同じ病気となる可能性は1/4です。ただし、発症する可能性は突然変異等でもありうるので、正確に把握するためには、両親の遺伝子検査が必要です。

疫学

海外では6万人に1名という頻度で報告されています。日本での発症頻度は100万人に1人程度で、まれな先天代謝異常症です。

原因

ホロカルボキシラーゼ合成酵素遺伝子(HLCS)、もしくはビオチニダーゼ遺伝子(BTD)の異常が原因です。欧米人に比べると、日本人の発症頻度は非常に低いです。

MCCC2遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。
原因
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症状

ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)欠損症では、新生児期~乳幼児期にけいれん・呼吸障害・多呼吸・意識障害などで急性に発症し、その後、難治性の湿疹、けいれん、発達の遅れを生じます。ビオチニダーゼ欠損症では乳児期以降に、筋緊張低下、難治性の湿疹をきたします。
本症は、新生児マススクリーニングの対象疾患となっており、検査の結果、全く無症状で診断されることが増えると推測されます。

診断

尿有機酸分析で、4つの酵素(プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)、メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ(MCC)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC))欠損に由来する代謝産物の同定により、ビオチンの欠乏を診断可能です。

治療

尿有機酸分析で、ビオチン欠乏を診断することが可能です。この疾患であると診断がされた場合、大量のビオチンの経口投与によって治療を行います。そのほか、L-カルニチンを経口投与する場合もあります。

予後

治療は生涯継続する必要があります。急性期に重篤な代謝不全があった場合や、代謝異常が慢性的に中枢神経系に及ぼす影響によって、全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多く、ビオチニダーゼ欠損症ではビオチン投与をしても、難聴、視神経萎縮が改善しないという報告があり、また、成人でもビオチン内服を怠った場合、アシドーシス発作が急性増悪する可能性があります。

【参考文献】