リジン尿性蛋白不耐症

リジン尿性蛋白不耐症リジン尿性蛋白不耐症

概要

リジン尿性タンパク質不耐性(Lysinuric Protein Intolerance)は、リジン、アルギニン、オルニチンの3つのアミノ酸(二塩基性アミノ酸といいます)を消化して使用することができないことによって引き起こされる障害です。この疾患では、これらのアミノ酸を効果的に分解できないため、タンパク質を摂取した後に吐き気と嘔吐が起こります。

疫学

リジン尿性蛋白不耐症は非常にまれな疾患で、2010年の調査で日本に30-40人の患者さんがいる事が報告されています。
この疾患の特徴が、フィンランド、イタリア、日本、の3つの地域で患者さんが多い傾向があります。

原因

SLC7A7遺伝子の変異は、リジン尿タンパク質不耐性を引き起こします。SLC7A7遺伝子は、体内の細胞間で二塩基性アミノ酸を輸送することに関与するLアミノ酸トランスポーター1を生成するための指示を出します。

SLC7A7遺伝子の変異は、Lアミノ酸トランスポーター1によるアミノ酸の輸送を妨害し、体内の二塩基性アミノ酸が不足します。二塩基性アミノ酸が不足すると、多くの重要な機能が損なわれます。例えば、尿素回路にアルギニンとオルニチンが不足すると血中のアンモニアレベルが上昇します。また、リジンが欠乏すると、低身長と骨粗鬆症の一因となります。

SLC7A7遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

リジン尿性タンパク質不耐性の兆候と症状は、通常、乳児が離乳し、固形食品から大量のタンパク質を摂取する頃に現れます。

肝脾腫、低身長、筋力低下、免疫機能障害、骨粗鬆症などを発症し、肺胞タンパク症と呼ばれる肺障害も発症する可能性があります。肺胞タンパク症は、肺のタンパク質沈着を特徴とし、これは肺機能を妨害し、生命を脅かします。

また、腎臓におけるアミノ酸の蓄積腎臓が体液や老廃物を効果的にろ過できなくなる末期腎疾患を引き起こす可能性があります。二塩基性アミノ酸が不足すると、血中のアンモニアレベルが上昇し、昏睡や知的障害を引き起こします。

診断

確定診断には遺伝子解析が有用です。
遺伝子検査を行いSLC7A7という遺伝子の変異が確定されれば、リジン尿性蛋白不耐症の確定診断に至ります。

治療

充分なカロリー摂取と蛋白の制限、アミノ酸の補充が主体となります。また、L-シトルリンの投与がは本症に有用とれます。その他には、免疫能改善を目的としたγグロブリン療法や、肺と腎の合併症に対しては、ステロイド療法などが試みられています。

予後

合併症の重症度により、日常生活が可能な状態から、寝たきりになってしまう例も存在します。高アンモニア血症の程度によっては、知能障害を呈すこともあります。

【参考文献】