ムコ多糖症Ⅲ型(サンフィリッポ症候群)

ムコ多糖症Ⅲ型(サンフィリッポ症候群)ムコ多糖症Ⅲ型(サンフィリッポ症候群)

概要

ムコ多糖症Ⅲ型(サンフィリッポ症候群/Mucopolysaccharidosis, Type IIIC [Sanfilippo C])は、主に脳と中枢神経系に影響を与える進行性の障害です。神経変性の結果、多くの特徴が生じます。身体的特徴は通常初期段階では軽度ですが、他の身体システムも関与する可能性があります。

ムコ多糖症Ⅲ型は、生化学的にⅢA型、ⅢB型、ⅢC型、およびⅢD型の4つの亜型に分類されます。日本人では、ⅢB型の方が多くみられます。

疫学

ムコ多糖症の最も一般的な形態で、推定発生率は70,000人の新生児に1人、日本では、約10万人に1人です。

原因

4つの遺伝子(ⅢA型はSGSH遺伝子、ⅢB型はNAGLU遺伝子、ⅢC型はHGSNAT遺伝子、 ⅢD型はGNS遺伝子)の変異が原因です。これらの遺伝子の変異は、大きな糖分子(ムコ多糖類)であるグリコサミノグリカン(GAG)を分解する酵素の機能を低下または消失させます。酵素が不足していると、リソソーム内の他のタンパク質の機能を妨害し、細胞の正常な機能を破壊するとされています。

HGSNAT遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

通常、出生時には発症せず、幼児期に障害の兆候と症状を示し始めます。最初は言葉の遅れや行動の問題を抱えていることがよくあります。落ち着きがなく、破壊的、不安、または攻撃的などの自閉症スペクトラム障害の特徴を示します。また、睡眠障害、運動障害を発症する可能性があり、進行性の重度精神発達遅滞を特徴とします。

身体的特徴としては、軽度の「粗い」顔貌、巨頭症、軽度の肝腫大、臍ヘルニアまたは鼠径ヘルニア、低身長、関節のこわばり、軽度の異骨症などの症状を呈します。また、しばしば慢性の下痢と再発性の上気道および耳の感染症を発症し、難聴や視力の問題も抱えていることがあります。

診断

① 画像検査、②尿中ムコ多糖分析、③末梢白血球/培養線維芽細胞の検査によって診断します。ムコ多糖の過剰蓄積は、尿中ムコ多糖の定量で判定します。

治療

造血幹細胞移植が考慮される場合がありますが、効果は明らかではありません。ⅢA型とⅢB型で酵素補充療法が開発中です。

予後

進行性で致死性の重篤な疾患のため、成人期以降に特に重症化します。

【参考文献】