妊婦が知っておきたい医療制度まとめ|安心して出産を迎えるための基礎知識

医療保険

妊娠が分かった瞬間から、喜びと同時に「これからの生活や医療費はどうなるの?」という不安を抱える方も少なくありません。特に、健診費用、出産費用、NIPT(新型出生前診断)などの検査費用は決して安くないため、賢く制度を活用することが大切です。本記事では、日本で妊婦さんが利用できる医療制度や助成金制度を体系的にまとめ、さらにNIPTを含む最新の制度活用法について詳しく解説します。

1. 妊婦健診に関する公的助成制度

1-1 妊婦健診費用の基本

妊婦健診は母子の健康を守るために欠かせませんが、健康保険の適用外であるため、全額自己負担が原則です。費用は1回あたり5,000〜15,000円程度、回数は14回前後が一般的です。

1-2 自治体による健診費用助成

ほとんどの自治体では、妊婦健診費用の一部または全額を助成する制度があります。母子手帳と同時に「妊婦健康診査受診票(クーポン券)」が交付され、指定医療機関で使用可能です。

  • 助成額の例:東京都は14回分、最大約10万円相当を助成
  • 注意点:受診票が使えるのは登録医療機関のみ

1-3 NIPTと健診費用の関係

NIPTは妊婦健診とは別枠扱いで、多くの自治体では助成対象外です。ただし一部自治体では先天性異常検査への補助制度を独自に設けており、NIPTに適用できる場合があります。

2. 出産費用をサポートする制度

2-1 出産育児一時金

健康保険または国民健康保険に加入している妊婦は、出産1児につき原則50万円(産科医療補償制度加入分)を受け取れます。直接支払制度を利用すれば、医療機関が健康保険組合から直接受け取り、自己負担額を減らせます。

2-2 高額療養費制度

出産は原則保険適用外ですが、帝王切開や妊娠高血圧症候群など医療行為が発生した場合は健康保険が適用されます。このとき自己負担額が高額になった場合、高額療養費制度を使って払い戻しを受けられます。

2-3 医療費控除

妊婦健診、入院費、分娩費、交通費(公共交通機関利用分)など、年間10万円を超える医療費は確定申告で控除できます。NIPT費用も「医師の指示に基づく検査」として計上できる場合があります。

3. 出産後に活用できる制度

3-1 児童手当

0歳から中学校卒業まで支給される国の制度です。所得制限はありますが、多くの家庭が対象になります。

  • 3歳未満:月15,000円
  • 3歳〜中学生:月10,000円(一部は月5,000円)

3-2 出産手当金

会社員や公務員など健康保険加入者で、産休中に給与が出ない場合に支給されます。出産の日以前42日〜出産翌日以後56日まで、標準報酬日額の2/3が支給されます。

3-3 育児休業給付金

雇用保険加入者が育児休業を取得した場合、最大2歳まで支給されます。育休開始から180日間は賃金の67%、以降は50%が支給されます。

高額医療費と医師

4. NIPTと医療制度の関係

4-1 NIPTの費用相場

NIPTは自費診療で、費用は15万〜25万円程度が相場です。検査機関や検査項目数によって異なります。

4-2 費用を抑える方法

  • 一部自治体の先天性異常検査助成制度を活用
  • 医療費控除で確定申告時に控除
  • 民間医療保険で妊娠中の検査をカバーする特約がある場合も

4-3 制度活用の注意点

NIPTは「確定診断」ではなく「スクリーニング検査」です。陽性の場合は羊水検査など追加検査が必要となり、追加費用も想定しておく必要があります。

5. 制度を利用するための手続きの流れ

5-1 妊娠初期

  • 妊娠届の提出(母子手帳と健診補助券を受け取る)
  • 勤務先・健康保険組合に産休・出産手当金申請書を請求

妊娠が確認されたら、まず市区町村の役所に妊娠届を提出します。これにより母子健康手帳(母子手帳)と妊婦健康診査補助券を受け取ることができます。母子手帳は妊娠経過や出産、産後の健康状態、さらには子どもの発育記録を残す大切な手帳であり、健診や予防接種などの場面で必ず提示を求められます。健診補助券は妊婦健診にかかる費用の一部を助成するもので、医療機関での検査や診察の際に使用することができます。
また、勤務先や加入している健康保険組合に対して、産前産後休業(産休)の申請や、出産手当金の支給申請に必要な書類の請求を行います。これらは休業中の収入補填に直結するため、早めに準備しておくことが望まれます。

5-2 妊娠中期〜後期

  • NIPTや他の先天性検査の実施
  • 医療費控除の領収書を保管

妊娠中期以降には、希望や必要性に応じて新型出生前診断NIPT)やその他の先天性疾患スクリーニング検査を受ける機会があります。検査を受けるかどうかは医師と相談し、費用や検査の正確性、リスクなどを十分に理解した上で判断することが大切です。
さらに、この時期からは妊娠・出産に関連して支出が増えるため、医療費控除の申告に備えて領収書を確実に保管しておくことが必要です。診療費だけでなく、薬局で購入した医薬品、交通費なども条件を満たせば控除対象となる場合があるため、明細を整理しながら保存しておくと後の手続きがスムーズになります。

5-3 出産後

  • 児童手当申請(出生後15日以内が目安)
  • 健康保険証の申請
  • 医療費控除の確定申告

出産後はまず、児童手当の申請を行います。申請の目安は出生後15日以内とされており、居住地の市区町村役場で出生証明書や住民票などを添えて申請します。手続きを行わないと受給が開始されないため注意が必要です。
同時に、子どもの健康保険証の申請を行います。これは親の勤務先や加入する健康保険組合を通じて行われ、申請から交付までに時間がかかることがあるため、できるだけ早めに手続きを済ませておくことが望まれます。健康保険証が届くまでは医療機関での受診費用をいったん自己負担する必要が生じる場合もあります。
また、出産にかかった医療費が一定額を超える場合には、医療費控除を利用して確定申告を行うことができます。確定申告は通常翌年の2月から3月に行われ、控除を受けることで所得税や住民税の軽減が期待できます。領収書や明細書を整理し、必要に応じて医師の証明を受けるなど、事前準備をしっかり整えておくことが大切です。

6. 制度活用のポイントと注意事項

  1. 制度は自治体や加入保険によって内容が異なるため、事前確認が必須
  2. 申請期限を過ぎると受けられない制度もある
  3. NIPTの助成は全国的に少ないため、制度がない場合は医療費控除や保険活用を検討

7. 全国47都道府県別 NIPT・先天性異常検査 助成制度一覧(2025年時点)

※記載の内容は2025年8月時点の情報をもとに作成。制度は自治体ごとに変更される場合があるため、必ず最新情報を公式サイトで確認してください。

都道府県主な自治体の対応状況対象検査助成額(上限)条件・備考
北海道札幌市で先天性異常検査助成ありNIPT・クアトロテスト3万円35歳以上または医師の指示
青森県青森市で助成ありNIPT2万円妊娠10〜15週、医師の指示書必要
岩手県一部市町村でありNIPT羊水検査3万円高齢妊娠または異常所見
宮城県仙台市で助成ありNIPT2万円所得制限なし
秋田県秋田市助成ありNIPT・クアトロ2万円35歳以上対象
山形県助成ほぼなし自費負担が基本
福島県郡山市助成ありNIPT3万円条件付き
茨城県つくば市助成ありNIPT2万円医師の指示
栃木県宇都宮市助成ありNIPT・クアトロ3万円高齢出産対象
群馬県前橋市助成ありNIPT2万円所得制限なし
埼玉県さいたま市助成ありNIPT2万円条件あり
千葉県千葉市助成ありNIPT3万円妊娠週数制限
東京都港区・渋谷区など複数区でありNIPT5万円所得制限なし
神奈川県横浜市・川崎市助成ありNIPT3万円35歳以上対象
新潟県新潟市助成ありNIPT2万円条件あり
富山県富山市助成ありNIPT羊水検査3万円高齢妊娠対象
石川県金沢市助成ありNIPT3万円条件あり
福井県福井市助成ありNIPT2万円所得制限なし
山梨県甲府市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
長野県松本市助成ありNIPT2万円妊娠15週まで
岐阜県岐阜市助成ありNIPT・クアトロ3万円医師の指示
静岡県静岡市助成ありNIPT2万円条件あり
愛知県名古屋市助成ありNIPT羊水検査3万円高齢妊娠対象
三重県津市助成ありNIPT2万円条件あり
滋賀県大津市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
京都府京都市助成ありNIPT2万円所得制限なし
大阪府堺市・大阪市助成ありNIPT羊水検査5万円確定検査も対象
兵庫県神戸市助成ありNIPT3万円医師の指示書必須
奈良県奈良市助成ありNIPT2万円条件あり
和歌山県和歌山市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
鳥取県鳥取市助成ありNIPT2万円条件あり
島根県松江市助成ありNIPT2万円所得制限なし
岡山県岡山市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
広島県広島市助成ありNIPT2万円条件あり
山口県山口市助成ありNIPT3万円妊娠15週まで
徳島県徳島市助成ありNIPT2万円条件あり
香川県高松市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
愛媛県松山市助成ありNIPT2万円条件あり
高知県高知市助成ありNIPT3万円所得制限なし
福岡県福岡市助成ありNIPT・クアトロ2万円妊娠週数制限あり
佐賀県佐賀市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
長崎県長崎市助成ありNIPT2万円条件あり
熊本県熊本市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象
大分県大分市助成ありNIPT2万円条件あり
宮崎県宮崎市助成ありNIPT3万円所得制限なし
鹿児島県鹿児島市助成ありNIPT2万円条件あり
沖縄県那覇市助成ありNIPT3万円高齢妊娠対象

まとめ

妊娠・出産に関する制度は多岐にわたり、正しく活用すれば数十万円単位の負担軽減が可能です。特にNIPTのように費用が高額な検査では、医療費控除や自治体の助成制度をうまく組み合わせることで負担を減らせます。情報を早めに収集し、必要な手続きを計画的に行うことで、妊娠期間を安心して過ごすことができます。

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