こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。
「夫の運転、スピードを出しすぎて怖い……」
「後先考えずにすぐ行動して、いつもハラハラさせられる」
パートナーのそんな**「衝動的な行動」**に、頭を抱えている方はいらっしゃいませんか?
少し危なっかしいけれど、決断が早くてエネルギッシュ。そんな姿に惹かれて結婚したものの、いざ子育てを考える段階になると、「この性格、子どもにも遺伝するのかな?」と不安を感じることもあるかもしれません。
実は近年の遺伝学研究によって、この「衝動性」や「リスクを恐れない性格」には、生まれ持った遺伝子が深く関わっていることが分かってきました。
そして興味深いことに、その遺伝的特徴の一部は、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向とも重なっていることが指摘されています。
今日は、「衝動的な性格は遺伝するのか」というテーマについて、最新の医学的知見をもとに、分かりやすく紐解いていきます。
まず、少し視点を変えて生物学的なお話をしましょう。
冷静に考えれば「堅実で穏やかな男性」の方が安心なはずなのに、なぜ多くの女性は、少し強引でリスクを恐れない、いわゆる「ちょいワル」な男性に惹かれてしまうのでしょうか?
この謎を解く鍵は、進化論の父・ダーウィンが提唱した「性選択理論」にあります。
女性は妊娠・出産という、身体的にも時間的にも莫大なコストを支払います。そのため本能的に、**「より強く、より優秀な遺伝子」**を持つパートナーを選ぼうとする傾向があります。
太古の昔、「強さ」の指標とは何だったでしょうか?
これらは全て、**「リスクを恐れずに飛び込む行動(リスクテイク)」の中に現れます。
危険な場所にあえて踏み込む姿勢は、「自分には困難を乗り越える力がある」という強烈なアピール(ハンディキャップ理論)として機能します。
つまり、現代の女性が「危なっかしい彼」に惹かれるのは、「この人なら、いざという時に私と子どもを守り抜ける強さを持っているかもしれない」**という、太古からの本能的なプログラムが働いている可能性があるのです。
しかし、現代社会において、過度なリスクテイクはトラブルの元になりかねません。
ここで医学的に注目されているのが、この「リスクを好む性格」と、発達障害の一種である**ADHD(注意欠如・多動症)**との関連性です。
ADHDには、主に3つの特徴があります。
今回のテーマである「リスクテイク」は、まさに3つ目の**「衝動性」と深く結びついています。
通常、私たちは何か行動を起こす前に、脳の前頭前野という司令塔が「これをやったら危ないかも」「失敗したら損をするかも」とブレーキをかけます。
しかし、衝動性が高いタイプの方は、このブレーキよりも「今やりたい!」「刺激が欲しい!」というアクセル**が勝ってしまうのです。
「分かってはいるけど、止められない」
これは単なる性格のワガママではなく、脳の回路の特性(ブレーキの効きにくさ)である可能性が高いのです。
「性格は育て方で決まるんじゃないの?」
そう思われるかもしれませんが、最新の研究は、性格の根底にある「遺伝子」の存在を明らかにしています。
2024年、Yanjing Chenらの研究チームが発表した論文(約60万人分の遺伝子データ解析)によって、ADHD傾向のある人と、リスクや刺激を好む人の遺伝子には、共通する特徴があることが判明しました。
具体的には、**27個もの共通するSNP(スニップ:遺伝子の1文字の違い)**が見つかったのです。
その中でも特に注目すべき遺伝子が2つあります。
この遺伝子は、「新しいことに挑戦したい」「刺激を求めたい」という衝動的な行動と強く関連していることが分かりました。
行動が早くてエネルギッシュ、思い立ったら即海外へ行ってしまうようなタイプの方に多く見られる傾向です。
これまでFOXP2は、主に「言語の発達」に関わる遺伝子として知られていました。
しかし今回の研究で、この遺伝子の一部(塩基配列)が異なることで、リスクを取る行動にも影響を与えているという、驚きの新事実が明らかになりました。
これらの遺伝子は、理性を司る「前頭前野」などで強く働いています。
つまり、「車のスピードを出しすぎる」「ギャンブルにハマりやすい」といった行動の裏側には、単なる性格だけでなく、こうした遺伝子レベルでの「脳の設計図」の違いが関係している可能性があるのです。
「じゃあ、夫が衝動的だから、子どもも絶対そうなるの?」
そう不安になる必要はありません。
ここで大切なのは、**「遺伝するのはあくまで『傾向(なりやすさ)』である」**という点です。
「せっかち」「好奇心旺盛」といった気質は、確かに遺伝子の影響を受けます。
しかし、その気質がどう花開くかは、育つ環境次第です。
例えば、「衝動性が高い(アクセルが強い)」という遺伝的特性を持っていたとしても、
遺伝子はあくまで素材です。それをどう料理するか(育てるか)で、未来はいくらでも変わります。
事前に「この子はアクセルが強めかもしれない」と分かっていれば、親として「ブレーキのかけ方」を丁寧に教えてあげたり、エネルギーをスポーツに向けさせてあげたりと、適切なサポート(環境調整)ができますよね。
こうした気質に関わる遺伝子の違い(SNPなど)は、一般的なNIPT(新型出生前診断)では分かりません。
しかし、より詳細な**「エクソーム解析」**という遺伝子検査であれば、ご自身やパートナーが持つ「気質の設計図」の一部を知ることが可能です。
「彼はこういう遺伝子タイプだから、あんな行動をするんだ」と理解できれば、夫婦関係の悩みも少し軽くなるかもしれませんし、子育ての方針を立てる大きなヒントにもなります。
最後に、妊娠中にできる検査の役割分担について整理しましょう。
NIPTは、お母さんの血液から、赤ちゃんの**「染色体の数」**の異常(ダウン症などのトリソミー)を調べる検査です。
これは、性格や気質といった「個性」のレベルではなく、心臓疾患や知的障害などを伴う可能性のある「医学的な疾患リスク」を早期に発見するためのものです。
採血だけで行えるため、母体や赤ちゃんへの負担(流産リスクなど)がないのが最大の特徴です。
一方、ADHDのような気質や、より細かい遺伝子の変異(設計図の文字レベルの違い)を知りたい場合は、エクソーム解析などのさらに詳細な検査が必要になります。
これは全ての妊婦さんに必須というわけではありませんが、「家族に特定の症状がある」「より深く遺伝的背景を知って備えたい」という方にとっては、有力な選択肢となります。
今日は、「衝動的な性格と遺伝」というテーマでお話ししました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
1. 「危なっかしさ」は遺伝子に関連している
リスクを恐れない行動や衝動性には、CADM2やFOXP2といった特定の遺伝子が関わっており、ADHDの傾向とも共通点があります。
2. それは「強さ」の裏返しでもある
女性が本能的に惹かれる「行動力」や「決断力」の源泉でもあります。決して悪い面だけではありません。
3. 遺伝するのは「傾向」だけ
遺伝子で全てが決まるわけではありません。環境や育て方で、そのエネルギーをポジティブな方向へ導くことは十分に可能です。
4. 知ることは「備え」になる
NIPTで染色体のリスクを知ることも、エクソーム解析で気質の傾向を知ることも、すべては「赤ちゃんを迎えるための準備」です。
妊娠中は、体調だけでなく心も揺れ動きやすい時期です。
パートナーの行動にイライラしたり、子どもの将来が不安になったりすることもあるでしょう。
そんな時、「これは遺伝子のせいかも?」と客観的に捉える視点を持つだけで、少し心が軽くなるかもしれません。
もし、遺伝や検査についてもっと詳しく知りたい、不安を解消したいと思われたら、いつでも専門医にご相談ください。
未来のあなたと赤ちゃんが、笑顔で過ごせるよう、私たちは正しい医療情報でサポートし続けます。
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