こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなくデータで分かりやすくお届けしています。
子どもの将来について考える際、「知的障害」というテーマは、親御さんにとって非常に重く、またシンプルな答えがないだけに不安になりがちなテーマです。
「知的障害は親からの遺伝なのか?」「育て方や環境のせいなのか?」
この疑問に対する答えは、 「遺伝と環境の両方が複雑に、かつ重症度によって異なる形で関わっている」 というのが科学的な真実です。
本記事では、まず知的障害の正確な定義と、全人口の 約14%を占める「境界知能」 という見過ごされがちな層の現実を解説します。そして、原因の重症度別分類、最後に、NIPTをはじめとする検査がどのようにして、親御さんの未来への備えとなるのかを整理していきます。
知的障害は、以下の3つの要素が組み合わされて診断されます。
知的障害の診断基準であるIQ70未満の層は少数ですが、そのすぐ上に位置するIQ70〜84の層は、全人口の約14%を占めます。この層は「境界知能」(Borderline Intellectual Functioning)と呼ばれています。
| 偏差値 | IQの目安 | 該当する層 | 特徴 |
| 30 | 約70 | 知的障害(診断基準ライン) | 学習や生活全般にわたる支援が必要。 |
| 35 | 約80 | 境界知能(グレーゾーン) | 知的障害とは診断されないが、学習、仕事、人間関係でつまずきやすい。 |
| 50 | 約100 | 平均 | 全人口の約50%。 |
「境界知能」の人々は、正式な 「障害」とは診断されないため、支援が届きにくく、実生活で大きな苦労を抱えやすい傾向があります。クラスに1〜2人はいる割合だと考えると、知的発達の遅れや困難は、決して特殊なことではない と理解できます。
「知的障害は遺伝か環境か?」という疑問に対し、最も正確な答えは 「症状の重さによって、原因の分布が異なる」 という点です。原因は、遺伝的要因、環境要因、周産期要因が複雑に絡み合っています。
中度から重度の知的障害においては、遺伝的要因が原因となるケースが多く見られます。
一方、軽度の知的障害や境界知能においては、遺伝的要因だけでなく、環境要因や周産期要因の寄与が大きくなります。
現代医学が進歩した現在でも、知的障害全体の 30〜40%は、明確な理由が特定できない「特発性(原因不明)」とされています。これは、知的障害の発症が、特定の遺伝子一つや、一つの出来事だけで決まるのではなく、無数の要因の「偶然の組み合わせ」 によって生じることを示しています。
知的障害につながるリスクを事前に知ることは、「運命を諦める」ことではなく、 「最適な支援と環境を整えるための準備」 を可能にします。
知的障害の原因の大きな割合を占める染色体の数の異常(ダウン症など)のリスクは、妊娠初期に NIPT(新型出生前診断) で調べることが可能です。
欧米諸国では、NIPTはすでに標準的な検査として広く普及しており、妊婦さんの7〜8割が受けている国もあります。これは、 「事前に情報を知る権利」 が広く認められ、安心して出産に備えるための手段として活用されているからです。
しかし、日本ではまだ検査項目や受検対象が制限されている施設が多く、海外に比べて「当たり前に選べる安心」が十分に整っていない現状があります。
今日は、【知的障害は遺伝か環境か?】というテーマについて整理しました。
「知的障害」という重いテーマに対し、親御さんがすべきことは、 「知らなかった」と後悔するのではなく、「科学的な情報を得て、備える」 ことです。その備えこそが、未来の赤ちゃんがより良いスタートを切るための最大の優しさとなるでしょう。
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