【質問者】
世界では、ダウン症の子どもに対してどのような見方をしているのでしょうか?
【先生】
世界ではダウン症の子どもを「エンジェル(Angel)」=天使と呼ぶことがあります。
フィリピンはカトリック信仰が非常に強い国です。
その宗教的価値観から、ダウン症の子どもを「特別な存在」、「神から授かった贈り物」として捉える文化があります。
【質問者】
つまり、否定的な見方はあまりされないんですか?
【先生】
そうですね。否定的ではなく、むしろ純粋さや無垢さの象徴として表現されることが多いです。
この背景には、カトリックの「すべての命は神から与えられた尊いもの」という考え方が深く関わっています。
【質問者】
具体的には、どんな表現がされるんですか?
【先生】
例えば、フィリピンのNGOや支援団体の名前には「Angel(天使)」という言葉が使われることがよくあります。
「Angel」は、愛らしさや守るべき存在という意味合いを込めたポジティブな呼び方で、地域社会にも広まっています。
【質問者】
なるほど。宗教や文化が呼び方や見方に大きく影響しているんですね。
【先生】
その通りです。
このような文化的背景は、家族や社会の受け入れ方、そして支援の形にも大きく影響しています。
【質問者】
子供のころは天使と言われているダウン症なのですが、思春期になると、どうして“天使ではなくなる”ように見えるのでしょうか?
【先生】
誰でも思春期には自我が芽生え、親への反発や自己主張が強くなります。特に言葉で気持ちをうまく表現できない場合、衝動的になったり、過敏に反応する行動が出やすくなります。ダウン症のある子どもも例外ではなく、“癇癪(かんしゃく)”や“物を壊すような行動”として見えることがあります。
【質問者】
ASDや ADHD の併発も影響しているんでしょうか?
【先生】
はい。ダウン症の子どもは、ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如・多動症)を併発する割合が比較的高いです。
これらの発達障害は、感情や行動のコントロールに影響を与えるため、思春期の行動変化をより強くする可能性があります。
以前は、ダウン症の平均寿命が短かったため、このような行動の変化を経験する機会はあまりありませんでした。
しかし近年は医療の進歩で寿命が延び、思春期や青年期の行動課題に直面するケースが増えています。
| 合併症 | 発生率(ダウン症児) | 一般児童との比較 |
| ASD(自閉症スペクトラム障害) | 約41% | 非ダウン児の約5.4倍のリスク(OR 5.40) |
| ADHD(注意欠如・多動症) | 約34% | 約1.7倍のリスク(OR 1.72) |
| ASD+ADHD併発 | 約22% | 特に高リスク(OR 3.45) |
【先生】
つまり、「天使」と言われる幼少期の穏やかな印象が、思春期以降に変化して見える背景には、
ASDやADHDといった発達障害の併発が関係している可能性が高いのです。

【質問者】
ダウン症の子どもとの関係において、感情的な爆発があった場合、どう対応すればいいのでしょうか?
【先生】
確かに、ダウン症の子どもが感情的に爆発したり、暴力的な行動を取ったりすることがあります。ですが、その後の関係性は必ず修復可能です。重要なのは、“理想の天使像”を求めないことです。ダウン症の子どもも、一人の人間ですから、成長過程でさまざまな感情や行動が現れるのは自然なことです。
理想の天使像を持つと、そのギャップに苦しんでしまうことがあります。怒りや暴力行動が見られた時は、まず安全を確保し、落ち着ける環境を整えることが大切です。叱る前に、子どもが落ち着くための空間を作ることが、感情を安定させる第一歩です。その後、適切な対話とサポートを行えば、関係性は修復できることがほとんどです。
感情的爆発があった時の対応ステップ
【質問者】
では、実際にダウン症の子どもには、どれくらいの割合で行動の問題が見られるのでしょうか?
【先生】
行動上の問題は、実際かなり高い割合で見られます。
ある調査によると、**約94%**のダウン症児が、何らかの行動問題を経験しているという報告があります。
これには、癇癪、反抗的な態度、物を壊すなどの破壊的行動が含まれます。
また、その発生頻度や程度は、年齢や発語能力などの発達段階と関連があることも分かっています。
| 項目 | 内容 |
| 行動問題経験率 | 約94%(年齢・発語構成力と関連) |
| 内向的行動(うつ、引きこもりなど) | ダウン症青少年では臨床域で約14%(非ダウンでは9%) |
| 睡眠障害との関連 | 睡眠–覚醒移行障害や過度の眠気が、注意障害・破壊的行動と関連 |
【先生】
つまり、感情的な爆発や行動の問題は決して珍しいことではありません。
大切なのは、安全確保 → 環境調整 → 感情の沈静化 → 原因分析 → 関係修復という流れを意識し、
一時的な行動の変化に過剰に落胆しないことです。
【質問者】
この事実を知らないと出産の選択にも影響しますよね?
【先生】
行動問題が起こる原因は、ダウン症特有の発達段階や環境の影響が大きいです。思春期に入ると、自我の芽生えとともに、親への反発や自己主張が強くなります。これが、普段は穏やかなダウン症の子どもにも、突然の怒りや暴力行動を引き起こすことがあるんですね。
「NIPT(出生前診断)では、ダウン症の有無を調べることができますが、思春期以降に現れる行動の変化については、現実的に考慮しなければならない部分です。この情報を知らずに、“天使”のようなイメージだけで子どもを迎えると、後からのギャップに苦しむことがあります。ですので、事前に現実的な理解 を深めることが、選択肢を考える上で非常に重要です。

ダウン症の方は認知症を発症しやすいのでしょうか?
【質問者】
ダウン症の方は認知症を発症しやすいと聞きますが、これはどのような理由からでしょうか?
【先生】
はい、ダウン症の方は、特にアルツハイマー型認知症を発症しやすいことが知られています。
主な理由は、21番染色体に存在する「アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子」です。
APP遺伝子は、脳内でアミロイドβというタンパク質を作る役割を担っています。
このアミロイドβは、必要以上に蓄積すると脳の神経細胞にダメージを与え、アルツハイマー病の特徴的な病理変化—つまり「老人斑」や「神経原線維変化」—を引き起こします。
【質問者】
ダウン症の方では、このAPP遺伝子がどう違うんですか?
【先生】
ダウン症は21トリソミーと呼ばれ、通常2本ある21番染色体が3本あります。
このため、APP遺伝子も通常より1本多くなり、その結果遺伝子の発現量が増加します。
つまり、生まれつきAPPが多く作られやすく、その分アミロイドβも過剰に生成されるのです。
このアミロイドβは、一般の人よりも若い年齢から脳に蓄積し始めます。
【質問者】
それは症状にも影響しますか?
【先生】
はい。一般的にアルツハイマー型認知症は65歳以降に発症することが多いですが、
ダウン症の方の場合、40代から50代の比較的若い年齢で発症することが珍しくありません。
症状の流れは、最初は記憶力の低下や日常生活の混乱から始まり、
徐々に言葉の理解や感情のコントロールにも影響が出てきます。
【質問者】
認知症の発症が早いということを知ると、やはり早期の健康管理や生活習慣が重要ですか?【先生】
その通りです。認知症の発症を遅らせるためには、健康管理や生活習慣、社会参加がとても大切です。積極的に社会参加し、適切な医療支援を受けることで、認知症の進行を遅らせる可能性があります。
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