妊娠中のアルコール摂取が胎児に与える衝撃の影響と胎児性アルコール症候群の真実【YouTube動画解説】

1. アルコールは赤ちゃんにどう影響するの?

【質問者】

「お酒って赤ちゃんに影響するんですか?」

【先生】
アルコールは胎盤を通じて直接赤ちゃんに届きます。母親がアルコールを摂取すると、それが血液を通して胎盤を経由して赤ちゃんに届きます。赤ちゃんの肝臓はまだ未熟なので、アルコールを分解することができません。そのため、母親よりも赤ちゃんの方が強く酔ってしまうことになります。単に酔っているだけではなく、赤ちゃんの健康に深刻な影響を与える可能性があるんです。

主な影響妊娠時期内容
奇形(顔や臚髄)初期嚢胞、口唇裂、眼窩異常など
発育不全・低体重中期〜後期胎児発育遅延、出生体重低下
中枢神経障害・知的障害全期間注意・記憶・言語発達の遅れ、IQ低下
行動障害(FASD)出生後ADHD様症状、社会性の問題、情緒不安定

【質問者】

「そんな…知らなかったです。たった一杯でも危ないんですね…」

【先生】
実は一度でも飲んでしまうことが赤ちゃんに悪影響を与える可能性があるんです。特に、胎児性アルコール症候群(FASD)という疾患があります。これはアルコールが胎児の脳や臓器に深刻な影響を与え、行動の問題や学習障害、さらには身体的な奇形を引き起こす可能性があるんです。

胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)

【質問者】
胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)ってなんですか?

【先生】

**FASD(Fetal Alcohol Spectrum Disorders)は、妊娠中の母親がアルコールを摂取したことによって、胎児に現れる一連の発達障害の総称です。
中でも症状が重いものは胎児性アルコール症候群(FAS)**と呼ばれます。


主な特徴・症状

1. 身体的特徴

  • 平らな人中(鼻と上唇の間が平坦)
  • 薄い上唇
  • 小さな頭囲(小頭症)
  • 成長遅延(出生前後の身長・体重が低め)

2. 神経発達の問題

  • 学習障害(読み書き・計算の困難)
  • 記憶力の低下
  • 集中力が続かない
  • 衝動的な行動

3. 社会性・行動の課題

  • 感情のコントロールが苦手
  • 対人関係のトラブルが多い
  • 自立や職業生活の難しさ

原因

  • アルコールは胎盤を通過し、胎児の血液中に母体と同じ濃度で移行します。
  • 胎児は肝機能が未発達なため、アルコールを分解できず、長時間体内に残ります。

特に**脳の発達期(妊娠初期〜中期)**に影響が大きいとされています。

予防法

  • 妊娠中はもちろん、妊娠を計画している段階から禁酒すること。
  • 「少量なら大丈夫」という安全な摂取量は存在しません。
  • 妊娠前からパートナーや家族も理解・協力することが重要です。 

2. 実はお母さんの体にもリスクがある

【質問者】

「アルコールは赤ちゃん以外にもお母さんの体にも悪いことがあるんですか?」

【先生】
アルコールは赤ちゃんに影響を与えるだけでなく、お母さん自身の体にも大きな影響を与えることがあります。特に、妊娠中のアルコール摂取は、妊娠高血圧症候群のリスクを高めることが知られています。さらに、胎盤早期剥離の危険性も増加するんです。胎盤が早期に剥がれてしまうと、母子ともに命に関わる重大な状態になります。

母体へのリスク統計/内容
胎盤早期剥離(placental abruption)飲酒で OR 約1.5倍 リスク増
妊娠高血圧症候群飲酒やアルコール依存で高リスク(HR 1.15〜1.53) (MDPI)

【質問者】
胎盤早期剥離や妊娠高血圧症候群ってなんですか?

3. 「少しだけなら大丈夫?」という質問への答え

【質問】

“少しだけなら大丈夫?”って、SNSできましたがほんとうですか?

【先生】
少しの量でも完全に安全だと言える量は存在しません。だからこそ、国際的なガイドラインでは、妊娠中の飲酒を『警告』として扱い、禁酒を推奨しています。特に、米国小児科学会や世界保健機関(WHO)でも、妊娠中のアルコール摂取については注意ではなく警告が出されています。したがって、減酒ではなく完全な禁酒が推奨されています。

4. パートナー(男性)にもできること

【質問】

「お母さんだけではなく、お父さんも飲んではダメですか?」

【先生】
妊娠中はお母さんだけでなく、パートナーも気をつけるべきです。妊婦さんはアルコールを含め、さまざまな制限を受けるため、一緒に晩酌をしている夫が妊娠を機にお酒をやめることが精神的な支えになります。小さな思いやりが大きな安心感に変わり、夫婦で共に乗り越えていくことが大切です。

5. 妊娠が分かる前に飲んでしまった

【質問者】
妊娠が分かる前に飲んでしまった場合はどうですか?

【先生】
過去に飲んでしまったことを、過度に心配する必要はありません。
多くの場合、妊娠初期のごく早い段階では胎盤がまだ完成しておらず、母体と赤ちゃんの血液が直接つながっていないため、影響が少ないと考えられています。

【質問者】
では、どうすればいいんでしょうか?

【先生】
最も大切なのは妊娠が分かってからの行動です。
妊娠に気づいたらすぐに禁酒を始めることで、リスクを大幅に減らすことができます。
その後は、妊娠中にアルコールを一切摂取しないように意識することが、赤ちゃんの健康を守るために何より重要です。

【質問者】
なぜそこまで禁酒が大切なんですか?

【先生】
妊娠中のアルコールは、**胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)**の原因となることがあります。
これは、成長障害や発達遅延、学習障害などを引き起こす可能性があり、完全に予防できる唯一の方法が「妊娠中は一滴も飲まないこと」なのです。