こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。
妊娠を考え始めた時、あるいは妊娠が分かった時、多くの方が「葉酸」や「カフェイン」を意識されると思います。
しかし、あまり知られていない、もっと身近で、かつ重大なリスク要因があることをご存知でしょうか?
それは、**「妊娠初期の貧血」**です。
スウェーデンの大規模な研究により、妊娠初期に貧血状態にあると、生まれてくるお子さんの知的障害リスクが**2倍以上(120%増)**に跳ね上がるという衝撃的なデータが明らかになりました。
「私は健康診断で貧血って言われたことないから大丈夫」
そう思った方こそ、実は一番危ないかもしれません。
今回は、この見落とされがちなリスクの正体である「隠れ貧血」と、元気な赤ちゃんを迎えるために今すぐ始めるべき対策について、医学的エビデンスをもとに詳しく解説していきます。
まず、その衝撃的なデータの詳細を見ていきましょう。
2019年、権威ある医学誌『JAMA Psychiatry』に掲載された研究です。Aline Marlien Wiegersma氏らのチームは、スウェーデンの約53万人もの親子データを分析しました。これほど大規模なデータは信頼性が非常に高く、決して無視できるものではありません。
研究の結果、妊娠30週までの「妊娠初期〜中期」に母親が貧血だった場合、子どもが以下の診断を受ける確率が有意に上昇することが分かりました。
一方で、妊娠30週以降(後期)に貧血になった場合には、このようなリスク上昇は見られませんでした。
なぜ、初期だけがこれほど危険なのでしょうか?
その理由は、赤ちゃんの成長プロセスの違いにあります。
鉄分は単なる血液の材料ではありません。脳内において、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質を作る酵素の働きに不可欠な栄養素なのです。
ADHDの症状(不注意や衝動性)には、これらの神経伝達物質の機能不全が関わっていると言われています。
つまり、脳の配線工事が急ピッチで進む妊娠初期に材料(鉄)が不足すると、工事がうまくいかず、将来的な脳機能や特性に影響が出る可能性があるのです。
「でも、会社の健診ではいつもA判定だし……」
そう思っているあなたにこそ、知っていただきたいのが**「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」**の存在です。
私たちの体内の鉄分は、2つの場所に存在しています。
一般的な健康診断で測るのは、主に「ヘモグロビン」の値です。
ここが正常値であれば「貧血なし」と判定されます。
しかし、体は賢いので、食事からの鉄が足りなくなると、まずは「銀行(フェリチン)」から鉄を引き出して、「財布(ヘモグロビン)」の残高を維持しようとします。
つまり、「財布にはお金がある(健診は正常)けれど、銀行口座はすっからかん(フェリチンが低い)」という状態が起こりうるのです。これが「隠れ貧血」です。
そして驚くべきことに、生理のある日本人女性の約半数が、この隠れ貧血の状態にあると言われています。
妊娠すると、赤ちゃんの成長とお母さんの体の変化のために、大量の鉄分が必要になります。
もし、妊娠前の時点で「銀行(貯蔵鉄)」が空っぽだったらどうなるでしょうか?
妊娠による需要増大に耐えきれず、あっという間に「財布(ヘモグロビン)」も枯渇し、重度の鉄欠乏性貧血に陥ってしまいます。
さらに悪いことに、妊娠初期(4〜15週頃)は**「つわり」**の時期と重なります。
「貧血だから鉄剤を飲みましょう」と言われても、吐き気で薬が飲めない、食事が喉を通らない……。
治療ができないこの空白期間にも、お腹の赤ちゃんの脳の配線工事は待ったなしで進んでしまいます。
だからこそ、「妊娠してから」ではなく、「妊娠する前」に対策をしておくことが何より重要なのです。
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか?
現在の産婦人科栄養学では、明確な目標数値(ゴール)が示されています。
妊娠を考えたら、まずは産婦人科や内科で血液検査を受け、**「フェリチン値」**を測ってもらいましょう。
もし30未満だった場合は、以下の「3つのアプローチ」で鉄分チャージを始めましょう。
鉄分には2種類あります。
効率よく貯金を増やすなら、**ヘム鉄(赤身肉や魚)**を積極的にメニューに取り入れましょう。もちろん、非ヘム鉄もバランスよく摂ることが大切です。
食べた鉄分を無駄にしないための工夫も重要です。
食事だけでフェリチン値を劇的に上げるのは、実はかなり大変です。
特に数値が低い場合は、医師の処方による鉄剤や、質の良いヘム鉄サプリメントの力を借りるのが近道です。
「薬に頼りたくない」と思うかもしれませんが、これはお母さんの美容のためではなく、赤ちゃんの脳を守るための「必要な治療」だと考えてください。
今日は、妊娠前の貧血と胎児の発達リスクについて、最新データをもとにお話ししました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
1. 妊娠初期の貧血はリスクが高い
赤ちゃんの脳が作られる妊娠初期(〜30週)に鉄分が不足すると、知的障害(2.2倍)、ASD、ADHDなどのリスクが有意に上昇します。
2. 「隠れ貧血」にご用心
健診のヘモグロビン値が正常でも、貯蔵鉄(フェリチン)が空っぽの女性は半数近くいます。妊娠するとすぐガス欠になる危険な状態です。
3. 目指すはフェリチン50
妊娠前にフェリチン値を測り、30ng/mL以上(理想は50ng/mL)にしておくことが、赤ちゃんへの最初のプレゼントになります。
4. つわり前に「貯金」を
妊娠初期はつわりで鉄剤が飲めないことも多いです。だからこそ、妊娠前の今、美味しく食事ができるうちに鉄分を蓄えておくことが重要なのです。
「もっと早く知っておけばよかった」と後悔する人が一人でも減るように。
これから妊娠を望む方、あるいはそのパートナーの方は、ぜひ一度「フェリチンチェック」をご検討ください。
お母さんの体の中にある「鉄の貯金」は、未来の赤ちゃんの脳を育む、かけがえのない栄養源になります。
正しい知識と早めの対策で、安心して新しい命を迎える準備を整えていきましょう。
これからも、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にするために、正しい医療情報をお届けしていきます。
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