【妊娠5週】つわりはどうしたら防げる?不安を解消する「正しい知識」と「5つの対処法」【YouTube解説】

こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。

NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。

妊娠検査薬で陽性反応が出て、喜びを感じたのも束の間。「妊娠5週」という時期を迎えた今、期待と同時に大きな不安を感じてはいませんか?

これから始まる「つわり」への恐怖、そして「流産」という言葉への懸念。

特に妊娠初期は、体調の変化が激しく、インターネット上の情報に翻弄されがちな時期でもあります。

しかし、結論から申し上げます。

必要な知識と正しい対処法を知っておけば、この時期の不安は確実に軽減できます。

重いつわりや、体のSOSサインを見逃してしまうと、母体だけでなくお腹の赤ちゃんにも大きな影響が出る可能性があります。大切な命を守るためにも、まずは体のメカニズムを冷静に理解し、落ち着いて対応することが何よりも重要です。

本日は、【妊娠5週目のつわりと流産】をテーマに、この時期に見逃してはいけないサインと、医学的に正しい知識を徹底解説していきます。

これからお話しする内容は、単なる精神論ではありません。あなたの体の中で起きている「化学変化」に基づいたお話です。ぜひ最後までお付き合いください。


1. なぜ妊娠5週は「心が揺れる」のか?ホルモンとつわりの正体

「妊娠5週目に入ってから、理由もなく涙が出たり、イライラしたりして自分が自分でないみたい……」

そんな風に悩んでいる方は、決してあなただけではありません。

体内で起こる「化学のスイッチ」

妊娠5週目というのは、目には見えなくても、体の中では劇的な変化が起きている時期です。

その主役となるのが、ホルモンです。特に注目すべきは、妊娠を維持するために欠かせないホルモン**「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(通称hCG)」**の急激な増加です。

このhCGは、受精卵が子宮に着床した直後から分泌が始まります。その役割は非常に重要で、妊娠を継続させるために必要な「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌を刺激するのです。

つまり、妊娠5週目の体内では、赤ちゃんを育てる環境を作るために、これら複数のホルモンが一気に分泌され、まるで**“化学のスイッチ”が一斉に切り替わるような緊急事態**になっていると言えます。

「心の弱さ」ではなく「生理的な反応」

ホルモンバランスが激変すれば、当然、脳内の神経伝達物質にも影響が及びます。

幸せホルモンと呼ばれるセロトニンや、やる気に関わるドーパミンなどのバランスが変化するため、以下のような精神状態になるのは医学的に見てごく自然なことです。

  • 涙もろくなる
  • 些細なことで焦りを感じる
  • 怒りっぽくなる
  • 感情がジェットコースターのように上下する

これらは決して、妊婦さん自身の「心の弱さ」や「忍耐不足」ではありません。

あくまで**「生理的な反応」**です。

体の急激な変化に心が追いついていかないのは当たり前のこと。「今はそういう時期なんだ」と割り切って、自分を責めないであげてください。

妊娠初期に現れる4つの身体的特徴

この時期、メンタル面だけでなく身体面でも大きな変化が現れます。主な特徴を見ていきましょう。

① 情緒不安定

前述の通り、ホルモンの影響で自律神経が乱れやすくなります。

② つわりの開始

個人差はありますが、多くの人が妊娠4〜5週ごろから症状を感じ始めます。一般的に7〜9週でピークを迎え、胎盤が完成に近づく12〜16週ごろになると落ち着くケースが多いです。まさに今が「始まり」の時期と言えるでしょう。

③ 胃腸の不調(ムカムカ・吐き気)

hCGとプロゲステロンが急増すると、胃腸の筋肉が緩み、動きが鈍くなります。その結果、消化不良や吐き気を引き起こします。また、インスリンの効き目が変わり血糖値が下がりやすくなることで、強い倦怠感やイライラが出ることもあります。

④ 体温上昇・眠気

「なんとなく熱っぽい」「いくら寝ても眠い」と感じることはありませんか?

これは黄体ホルモンの影響で、基礎体温が高い状態(高温期)が続いているためです。常に微熱がある状態と同じですから、体がだるく、眠気を感じるのは、体が「休んでほしい」と訴えているサインなのです。


2. つわりの症状は「十人十色」。代表的な5つの症状

「つわり」と一言でいっても、その症状は千差万別です。

遺伝や体質、ホルモンへの感受性、さらにはその時の精神的ストレスの度合いによっても現れ方が異なります。

「友人は軽かったのに、なぜ私だけ?」と比べる必要はありません。ここでは、代表的な5つの症状について詳しく解説します。

① 吐き気・嘔吐

最も多くの妊婦さんが経験する症状です。

ドラマなどで見る「朝起きてウッとなる」パターンだけではありません。一日中船酔いのような気持ち悪さが続く「終日つわり」や、胃酸が逆流して食道が焼けるような感覚になることもあります。また、空腹時に症状が悪化する「食べづわり」もこのタイプに含まれます。

② 匂いに敏感になる(嗅覚過敏)

今まで何とも思わなかった匂いが、急に耐えられない悪臭に感じることがあります。

  • 炊き立てのご飯の湯気
  • シャンプーや柔軟剤の香り
  • スーパーのお惣菜売り場の匂い
  • 夫のコーヒーやタバコの匂い

これらは、本能的に**「胎児に害があるかもしれないものを避ける」ための防衛反応**であると考えられています。嗅覚が鋭くなるのは、お母さんの体が全力で赤ちゃんを守ろうとしている証拠なのです。

③ 食べ物の好みの変化

「酸っぱいものが食べたい」というのは有名ですが、それだけではありません。

今まで大好きだった脂っこいものが急に受け付けなくなったり、逆に普段全く食べないジャンクフードが無性に食べたくなったりします。

一般的には、「酸っぱいもの」「冷たいもの」「さっぱりしたもの」を好む傾向が強くなります。

④ 体のだるさ・眠気

先ほどもお伝えした通り、妊娠初期は基礎体温が高い「微熱状態」が24時間続いています。

風邪を引いたときのように体が重く、疲れやすく、一日中眠い……というのは、ホルモンの影響による当然の反応です。

⑤ 胃のムカつき・消化不良

プロゲステロンの影響で胃腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱まります。

食べ物が胃に長く留まるため、胃もたれやゲップが増えたり、腸の動きが悪くなって便秘がちになる方もいます。逆に、水分がうまく吸収できず下痢になることもあります。

このように多様な症状が出ると「病気ではないか?」と不安になるかもしれませんが、これらはすべて**「体が新しい命を守るための準備をしている証」**です。

ただし、つらいときは「赤ちゃんのためだから」と我慢しすぎず、無理をせずに過ごすことが何より大切です。


3. 今日からできる!つわりを軽くするための「5つのコツ」

「つわりは病気じゃないから治療法がない」と思っていませんか?

根本的にゼロにすることは難しくても、生活の工夫で症状を軽くし、過ごしやすくすることは可能です。

ここからは、具体的な5つの対処法をご紹介します。

① 気分が悪くなったら“すぐ休む”

最もシンプルで、最も重要なことです。

真面目な方ほど、「少し気持ち悪いけど、洗い物だけ済ませよう」「仕事のキリがいいところまで頑張ろう」と無理をしがちです。しかし、疲労はつわりを悪化させる最大の要因です。

体調が「変だな」と感じたら、その場ですぐに座り込むか、数分でも良いので横になってください。体を水平にすることで血流が安定し、楽になることが多いです。

② 胃を空にしない(ちょこちょこ食べ)

多くのつわりは、胃が空っぽになった時に血糖値が下がり、吐き気が増強されます。

まとまった食事を1日3回摂るのではなく、1日の食事量を5〜6回に分ける**「分食(ちょこちょこ食べ)」**が基本です。

枕元やカバンの中に、すぐに口に入れられるクラッカー、飴、小さなおにぎりなどを常備しておきましょう。「お腹が空いた」と感じる前に少し食べるのがコツです。

③ 締め付けない服を選ぶ

意外と見落とされがちなのが「衣服の圧迫」です。

まだお腹が出ていないからといって、普段通りの下着やジーンズを履いていませんか?

腹部や胃の周辺を圧迫すると、血流が悪くなり、弱っている胃腸の働きをさらに低下させてしまいます。

  • ウエストゴムのきついスカートやパンツは避ける
  • ゆったりしたワンピースやマタニティウェアを活用する
  • ワイヤー入りのブラジャーを避け、ブラトップやマタニティショーツに変える

これだけでも、胃の不快感が驚くほど軽減されることがあります。

④ 水分を意識して摂る

吐き気があると水分摂取がおろそかになりがちですが、脱水はつわりを重症化させる負のスパイラルを招きます。

ポイントは、**「一度に飲まず、一口ずつ・回数を分けて」飲むこと。

冷たい飲み物や炭酸水の方が飲みやすいという方が多いです。また、飲み物が受け付けない場合は、氷を舐めたり、果物(スイカ、梨、ブドウなど)やゼリー、スープなど「食べる水分」**から摂取しても構いません。

③ 食べられるものを優先する(栄養バランスは二の次)

「赤ちゃんのためにバランスよく食べなきゃ」というプレッシャーは、今すぐ捨ててください。

この時期の赤ちゃんは、まだ卵黄嚢(らんおうのう)というお弁当箱から栄養を摂っており、お母さんの食事の影響はそれほど大きくありません。

「今、食べられるもの」を食べていれば十分です。

「毎日アイスクリームだけ」「冷めたおにぎりだけ」「リンゴしか食べられない」

それでも全く問題ありません。栄養バランスは、つわりが落ち着いてから整えれば大丈夫です。

「栄養よりも、まず食べること(脱水を防ぐこと)」。これがお母さんと赤ちゃんを守る最優先事項です。


4. 我慢は禁物!特に注意すべき「妊娠悪阻(にんしんおそ)」

ここまで一般的なつわりの対処法をお話ししましたが、中には「対処法を試しても全く改善しない」「水も飲めない」という方がいらっしゃいます。

つわりが重症化し、治療が必要な状態を医学的に**「妊娠悪阻(にんしんおそ)」**と呼びます。これは「生理現象」の域を超えた病的な状態です。

見逃してはいけない危険なサイン

以下の症状がある場合は、我慢せずに必ず主治医に相談してください。

  • 朝から晩まで一日中吐き続けている
  • 水すら飲めず、戻してしまう
  • 妊娠前より体重が4〜5kg以上減った
  • トイレの回数が減り、尿の色が濃い
  • めまいや激しい動悸がある
  • 日常生活が全く送れない

なぜ重症化するのか?

妊娠悪阻の原因も、主にhCGの急激な増加にあると考えられています。

hCGは胎盤が形成される妊娠6〜12週にピークを迎えるため、まさにこの時期に症状が激化しやすいのです。

また、体質的にホルモンの影響を受けやすい方、双子(多胎)妊娠の方、初めての妊娠で不安が強い方、元々痩せ型の方などは、悪阻が重くなる傾向があります。

「つわりは病気じゃない」の落とし穴

「つわりくらいで病院に行くなんて」「赤ちゃんが元気な証拠だから耐えなきゃ」

そう思って限界まで我慢してしまう妊婦さんは少なくありません。しかし、それは非常に危険です。

重度の脱水や電解質(ナトリウムやカリウムなど)の異常が進むと、母体だけでなく胎児にも悪影響を及ぼします。

  • 血栓のリスク: 水分不足で血液がドロドロになり、血栓ができやすくなります(エコノミークラス症候群のような状態)。
  • 心機能への影響: 電解質不足により、不整脈やけいれんを引き起こす可能性があります。
  • ケトーシス: エネルギー不足により体内の脂肪が分解され、「ケトン体」という物質が増加。体が酸性に傾く危険な状態になります。

これらは、点滴治療などで速やかに改善する必要があります。「たかがつわり」と侮ってはいけません。

安全に使える「つわり治療薬」の存在

「妊娠中は薬を飲めない」と思っている方も多いですが、現在は妊婦さんでも安全に使える吐き気止めが存在します。

その代表的なものが**「プレグボム」**というお薬です。

この薬は、アメリカやカナダでは長年使用されており、妊娠初期のつわり治療薬としてFDA(米国食品医薬品局)の承認も受けています。

主成分は以下の2つです。

  1. ドキシラミン(抗ヒスタミン薬): 吐き気や嘔吐を中枢から抑える
  2. ピリドキシン(ビタミンB6): 胃腸の働きを整え、神経の興奮を鎮める

どちらも妊娠中の安全性が確立されており、胎児への影響がほとんどないとされています。従来の制吐薬に比べて副作用が少なく、眠気やだるさも軽いのが特徴です。

当院、ヒロクリニックでもこのお薬を取り扱っています。「辛くてどうしようもない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。


本日のまとめ

妊娠5週目という、心と体が激変する時期。

不安や体調不良に戸惑うのは当然のことです。最後に、今日の大切なポイントを振り返りましょう。

1. 妊娠初期の心身の変化は「ホルモン」のせい

妊娠5〜9週はhCGなどのホルモンが急増し、感情や体調が不安定になります。これはあなたが弱いからではなく、体が赤ちゃんを守るために「妊娠モード」へ必死に切り替わっている証拠です。

2. つわりを軽くする「5つのコツ」を実践しよう

  • 違和感を感じたらすぐ休む
  • 胃を空にしない「ちょこちょこ食べ」
  • 締め付けない服で血流確保
  • 水分は「一口ずつ」「食べる水分」で
  • 栄養バランスより「食べられるもの」を優先

3. 「妊娠悪阻」のサインを見逃さない

水が飲めない、体重が激減する、尿が減るといった症状は、治療が必要な「妊娠悪阻」の可能性があります。脱水やケトーシスは母子ともに危険です。我慢せず、医療の手を借りてください。「プレグボム」のような安全な薬もあります。

妊娠期間は長いようで、過ぎてみればあっという間かもしれません。

ですが、渦中にいる今のあなたにとっては、永遠のように感じる辛い時間かもしれません。

完璧なお母さんを目指す必要はありません。

今日一にち、あなたが無理せず、少しでも楽に過ごせることが、お腹の赤ちゃんにとっても一番の安らぎになります。