こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなくデータで分かりやすくお届けしています。
妊娠中に「感染症」という言葉を聞くと、大きな不安に襲われることでしょう。特に、 「胎児に先天異常を起こす可能性がある」 とされる感染症については、どう予防すればいいのか気になる方が多いはずです。
しかし、過度に恐れる必要はありません。これらの感染症は、 「正しく予防していれば、そのリスクを最小限に抑えられる」 ものばかりだからです。
今回は、妊娠中に特に注意が必要な 「風疹、りんご病、トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス」の4つの感染症に焦点を当て、赤ちゃんへの影響が最も深刻になるリスクの時期と、ご家族全員で徹底すべき具体的な予防法 を解説します。
妊娠中に胎児に感染し、先天異常を引き起こす可能性がある感染症を 「TORCH症候群(トーチ症候群)」 と総称することがありますが、ここでは特に重要度の高い4つについて解説します。
| 感染症 | 主な感染源 | 胎児への最大リスク時期 | 胎児への主な影響 |
| ① 風疹 | 飛沫感染(人から人) | 妊娠8〜12週頃(初期) | 先天性風疹症候群(白内障、難聴、先天性心疾患) |
| ② リンゴ病 | 飛沫・接触感染(子どもが多い) | 妊娠9〜16週頃(初期〜中期) | 胎児水腫(重度の貧血、心不全、全身のむくみ) |
| ③ トキソプラズマ症 | 生肉、猫の糞便、土壌 | 妊娠全期間(特に後期) | 脳の発育障害、視力障害(網膜脈絡膜炎) |
| ④ サイトメガロウイルス | 体液(唾液、尿など) | 妊娠初期〜中期 | 難聴、脳の発達障害、低体重 |
風疹ウイルスは胎盤を通り、胎児に 「先天性風疹症候群(CRS)」 という深刻な影響を与える可能性があります。
| リスクのポイント | 予防の鉄則 |
| 最大リスク時期 | 妊娠8〜12週頃(初期) |
| 胎児への影響 | 白内障、難聴、先天性心疾患など |
| 予防の鉄則 | 妊娠前に風疹ワクチンを接種し、抗体を持つこと。(生ワクチンなので妊娠中は接種不可) |
【予防策の徹底】
風疹は飛沫感染するため、妊婦さん本人だけでなく、パートナーや家族全員が、風疹の抗体検査を受け、免疫がない場合は事前にワクチン接種を済ませておくことが最も効果的な予防策です。家族が感染源となり、妊婦さんが感染するリスクを最小限に抑えましょう。
リンゴ病は子どもがかかることが多い感染症ですが、妊婦さんが感染すると、胎児に重篤な貧血や心不全を引き起こす 「胎児水腫」 のリスクがあります。
| リスクのポイント | 予防の鉄則 |
| 最大リスク時期 | 妊娠9〜16週頃(初期〜中期) |
| 胎児への影響 | 胎児水腫(感染した場合の胎児死亡率が約1/3) |
| 予防の鉄則 | 家庭内での感染対策を徹底。 子どもがいる場合は、タオルや食器の共有を避け、手洗いを徹底する。 |
【感染時の対処】
母体が感染した場合、ウイルスが胎児に伝わる確率は約25%ですが、適切な治療(胎児輸血など)によって胎児の生存率を高めることが可能です。症状が風邪に似ていて見逃しやすいため、家庭内で子どもの発疹や関節痛が見られた場合は、すぐに医療機関に相談しましょう。
トキソプラズマ原虫は、妊娠中に感染すると先天性トキソプラズマ症を引き起こし、胎児の脳や目の発達障害につながる可能性があります。
| リスクのポイント | 予防の鉄則 |
| 最大リスク時期 | 妊娠全期間(胎児への感染率は妊娠後期が最も高い) |
| 胎児への影響 | 視力障害、脳の発育障害(石灰化) |
| 予防の鉄則 | 生肉・半生肉(ユッケ、レバ刺し、加熱不足の肉)を絶対に避ける。 猫の糞便を触らない(トイレ掃除は家族に任せる)。ガーデニングの際は手袋をする。 |
【予防策の徹底】
トキソプラズマ症は、食べ物の管理と衛生管理でほぼ防ぐことができます。猫を飼っている場合でも、猫そのものより、排泄されて間もない新鮮な糞便が感染源となります。猫のトイレ掃除は、必ず家族に任せてください。
サイトメガロウイルス(CMV)は、ほとんどの人が子どもの頃に感染する非常にありふれたウイルスです。多くは無症状ですが、 妊娠中に初めて感染(初感染) した場合、胎児に深刻な影響を与えることがあります。
| リスクのポイント | 予防の鉄則 |
| 最大リスク時期 | 妊娠初期〜中期(初感染の場合) |
| 胎児への影響 | 難聴(最も一般的)、脳の発達障害、肝脾腫、視力障害、低体重 |
| 予防の鉄則 | 子どもの体液(唾液、尿)との接触を避ける。 おむつ替えや鼻水を拭いた後は必ず石鹸で手を洗う。食器や飲み物の共有を避ける。 |
【予防策の徹底】
CMVは、小さな子ども(特に乳幼児)の唾液や尿に多く排出されるため、家庭内での感染対策が非常に重要です。CMVにはワクチンがないため、手洗いの徹底が唯一にして最大の予防策となります。
感染症による先天異常は予防が第一ですが、もし妊娠中に感染が疑われる事態になった場合、NIPTなどの出生前診断はどのような役割を果たすのでしょうか。
NIPTは感染症そのものを診断するものではありませんが、感染の結果として胎児に 「染色体異常」や「微小欠失」 が生じるリスクを知るための手段となります。
感染症以外で先天異常の原因として最も多いのが、染色体の数の異常です。NIPTは、この21・18・13トリソミーのリスクを安全に高精度で評価し、その他の先天異常の原因の可能性を絞り込む上で有用です。
例えば、リンゴ病に感染し、胎児水腫の疑いが出た場合、胎児に対して胎児輸血などの治療を行う必要があります。その際、胎児がどの程度のリスク状態にあるのか、そして感染以外の構造的な異常がないかを知ることは、治療方針の決定に役立ちます。
今日は、【妊娠中に気をつけて欲しい感染症4選】というテーマでお話ししました。
共通するポイントは、 「正しい知識に基づき、過度に怖がらずに予防を徹底すること」 です。
妊娠中のリスクを最小限に抑えるための 「3つの鉄則」 を再確認しましょう。
これらの予防策を徹底することで、不安を解消し、安心して赤ちゃんを迎える準備を進めてください。
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