妊娠中はホルモンバランスの変化により免疫力が低下し、風邪をひきやすくなる時期です。しかし、胎児への影響を考えると、薬の選択には慎重にならざるを得ません。そんな中、「葛根湯(かっこんとう)」のような漢方薬が注目されていますが、果たして妊娠中に服用しても安全なのでしょうか?本記事では、妊婦が葛根湯を使う際の安全性、適切な使い方、風邪を予防するための生活習慣、そしてNIPT(新型出生前診断)との関係について、医療的視点から詳しく解説します。
妊娠中に風邪をひきやすくなる理由
妊娠中は女性ホルモン(特にプロゲステロン)の増加により、免疫機能が抑制されることで、体外からの異物やウイルスに対する抵抗力が低下します。これは胎児を「異物」と認識しないようにする自然な適応ですが、その一方で風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなるのです。
また、妊娠による睡眠の質の低下、食事の偏り、精神的ストレスなども免疫力の低下に拍車をかけます。
葛根湯とは?妊娠中に服用しても大丈夫?
2-1. 葛根湯の基本的な作用
葛根湯は、風邪の初期症状(寒気、頭痛、肩こり、鼻水など)に対して効果があるとされる漢方薬で、構成生薬には葛根(かっこん)、麻黄(まおう)、桂皮(けいひ)などがあります。身体を温め、発汗を促す作用が特徴です。
2-2. 妊婦における注意点
妊娠中の葛根湯の服用については、医師の間でも意見が分かれるところです。特に構成成分のひとつである「麻黄」には交感神経を刺激する作用があり、子宮収縮を誘発する恐れがあるとされ、一部の医師は妊娠初期や切迫流産のリスクがある人への使用を避けるよう推奨しています。
2-3. 服用する際の安全な条件
- 必ず医師や薬剤師に相談した上で使用すること
- 妊娠中期以降で、風邪の初期症状に限り短期間の使用にとどめること
- 他の薬との併用や持病の有無にも注意
妊婦のための風邪対策:葛根湯に頼らない方法
3-1. 手洗い・うがい・マスクの徹底
基本的な感染予防策がもっとも重要です。帰宅後の手洗い・うがいに加え、外出時のマスク着用を習慣にしましょう。
3-2. バランスの取れた食事
ビタミンA・C・Eや亜鉛、鉄分などを含む食品を意識的に取り入れ、免疫機能を支える栄養バランスを整えましょう。
3-3. 室内環境の管理
乾燥した空気はウイルスの温床となるため、加湿器を使って湿度を保ち、こまめな換気も忘れずに。
3-4. 良質な睡眠とストレスケア
妊娠中は眠りが浅くなりがちですが、昼寝やリラックスタイムを取り入れることで免疫力を高める助けになります。

葛根湯以外に妊娠中でも使える風邪対策
- しょうが湯やハチミツ入りのホットレモン:喉の痛みや冷えに有効
- 葛湯(くずゆ):身体を温める効果があり、胃腸にもやさしい
- 漢方薬の中でも比較的安全とされるもの:小青竜湯(しょうせいりゅうとう)など、一部は妊婦にも使用可能ですが必ず医師と相談を
NIPTとの関係 体調管理と検査スケジュールの調整
NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週以降に実施される非侵襲的な遺伝子検査ですが、受検時の体調は重要です。高熱や体調不良があると、血液成分の変動により検査に影響を及ぼす可能性があるため、風邪や感染症の際は予約変更を検討しましょう。
また、NIPTは胎児の染色体異常リスクを把握することで妊娠期の不安軽減にもつながり、妊婦が冷静に体調を管理しやすくなるというメリットもあります。
まとめ:妊娠中の風邪と葛根湯の上手な付き合い方
妊娠中の体調管理は、母体だけでなく胎児の健康にも直結する重要な要素です。葛根湯は風邪の初期症状に対して効果的な漢方薬ですが、妊娠中の使用には細心の注意が必要です。服用する際は必ず医師に相談し、自己判断での長期使用は避けましょう。
また、基本的な感染予防と生活習慣の見直しによって風邪を防ぎ、NIPTなどの検査スケジュールとも無理なく両立できるよう体調管理を行うことが大切です。安心・安全な妊娠生活のために、正しい知識と行動を心がけましょう。
