後陣痛(あとじんつう)とは、出産後に子宮が元の大きさに戻ろうと収縮することで起こる痛みです。産後2〜3日ほど続くことが多く、授乳時に強まる傾向があります。経産婦のほうが強く感じやすいとされます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起こる理由 | 産後に子宮が収縮して元に戻るため |
| 続く期間 | 産後2〜3日ほど(個人差あり) |
| 強まるとき | 授乳時(オキシトシンの働き) |
| 経産婦との関係 | 経産婦のほうが強く感じやすい |
後陣痛とは、出産後に子宮が元の大きさへ戻ろうとして起こる収縮痛で、産後数日をピークに2〜3週間ほどで自然に軽くなっていくのが一般的です。痛みの強さや続く期間には個人差があり、経産婦のほうが強く感じやすい傾向がありますが、我慢しすぎる必要はありません。
この記事では、後陣痛が起こる仕組みと症状、痛みに個人差が生まれる理由、今日から試せる対処法、産後の体ケアが欠かせない理由、そして受診を検討すべき異常サインまでをまとめました。産後の体は一人ひとり回復のペースが違います。気になる症状があれば、自己判断で様子を見続けず、かかりつけの産婦人科医に相談してください。
💡 この記事でわかること
- 後陣痛が起こるメカニズムと主な症状
- 痛みの強さに個人差が生まれる理由(経産婦・授乳との関係)
- 今日から試せる4つの対処法
- 後陣痛の悪化を防ぐ産後の体ケアの考え方
- 受診の目安となる異常サインの見分け方
後陣痛とは?産後に起こる痛みの正体
後陣痛とは、出産で大きくなった子宮が元の大きさへ戻る過程で起こる収縮痛を指します。妊娠中に握りこぶし大からグレープフルーツ大以上まで大きくなった子宮は、産後6〜8週間ほどかけて少しずつ収縮し、痛みはそのうちの最初の数週間に集中して現れます。
後陣痛が起こるメカニズム
子宮は筋肉でできた臓器です。出産後、子宮の筋肉が間欠的に収縮を繰り返すことで血管を締め、出血を抑えながら少しずつ縮んでいきます。この収縮そのものが、下腹部の痛みとして感じられます。
収縮を促すホルモンがオキシトシンです。オキシトシンは脳下垂体から分泌され、子宮の筋肉を収縮させると同時に、母乳を押し出す働きも担っています。授乳のたびに痛みが強まりやすいのは、この2つの働きが同じホルモンによって連動しているためです。
主な症状
後陣痛の感じ方は幅広く、次のような訴えが多くみられます。まずは代表的な症状を確認してください。
- 下腹部が締めつけられるような、生理痛に似た痛み
- 間欠的に強まったり弱まったりする波のある痛み
- 授乳中や授乳直後に痛みが強まる感覚
痛みの表現は「生理痛程度」から「陣痛を思い出すほど強い」まで幅があります。私は外来で、想像より痛みが強くて驚いたという声をよく耳にします。事前に「痛みには幅がある」と知っておくだけでも、いざというときの不安は和らぐはずです。
後陣痛はいつまで続く?期間の目安
痛みのピークは産後数日から1週間程度で、その後は徐々に和らぎ、多くの場合2〜3週間ほどでほとんど気にならなくなります。ただし、これはあくまで目安です。回復のペースは体格や出産回数、授乳の頻度によって変わるため、目安より長く痛みが続いても焦る必要はありません。
後陣痛の痛みに個人差がある理由
後陣痛の強さは、出産回数や授乳の頻度によって差が出やすいことが知られています。「周りは平気そうなのに自分だけつらい」と感じても、珍しいことではありません。
経産婦は痛みを感じやすいと言われる理由
一般に、初産婦よりも経産婦のほうが後陣痛を強く感じやすいと言われています。出産を重ねるたびに子宮の筋肉の緊張が緩みやすくなり、元の大きさへ戻すためにより強い収縮が必要になるためと考えられています。
3人のお子さんを出産した@danshakusamaさんは「経産婦だからすぐ出てくると余裕ぶっこいてたら、なかなか出てこなくて、3人産んだ中で1番長くてきついお産だった。今は後陣痛が痛い」と投稿していました。経産婦だからといって必ずしも出産や後陣痛が軽くなるわけではなく、そのときどきで感じ方が変わる、というのが実際のところだと感じます。
痛みの感じ方は人によって大きく違う
体格や体質、出産時の状況(自然分娩か帝王切開か)によっても、痛みの感じ方は変わります。帝王切開の場合は、後陣痛に加えて創部の痛みが重なるため、より痛みを強く感じる方もいます。
@ganbaruze_chiyoさんは出産翌朝に「会陰縫ったところと後陣痛は痛いけど、陣痛の比ではない」と綴っていて、陣痛を経験したからこそ相対的に軽く感じられたという声もあります。一方で、後陣痛のほうがつらかったと話す方もいて、感じ方は本当に人それぞれです。目安の痛みより強い、我慢できないと感じるときは、一人で抱え込まずかかりつけの産婦人科医に相談してください。

後陣痛の痛みを和らげる具体的な対処法
後陣痛は温める・薬を使う・リラックスするという3つの方法を組み合わせることで、多くの場合は日常生活に支障がない程度まで和らげられます。無理に我慢し続ける必要はありません。
おなかを温めて血流を促す
腹部をカイロや湯たんぽ、腹巻きなどで温めると、血流が良くなり筋肉の緊張がほぐれやすくなります。低温やけどを防ぐため、直接肌に長時間当て続けることは避けてください。
痛み止めは医師に相談のうえで使用する
痛みが強いときは、我慢せず鎮痛剤を使ってください。授乳中に使える薬は種類が限られるため、自己判断で市販薬を服用せず、入院中は助産師や医師に、退院後はかかりつけの産婦人科医に相談してから使用しましょう。
呼吸法やマッサージでリラックスする
ストレスや体の緊張は、痛みの感じ方をより強くすることがあります。ゆっくりとした深呼吸や、腰まわりの軽いマッサージを取り入れると、体の力が抜けて痛みが和らぎやすくなります。
授乳中に痛みが強まったときの工夫
授乳や搾乳のたびに後陣痛が強まるのは、オキシトシンの分泌によるごく自然な反応です。@mii20230720さんも「搾乳で後陣痛悪化」と投稿しており、授乳期特有の悩みとして多くの方が経験しています。痛みが強い日は、授乳直前に腹部を温める、クッションで姿勢を安定させる、深呼吸をしながら授乳するといった工夫で、痛みのピークをやり過ごしやすくなります。
産後の体ケアがなぜ重要なのか
産後の体ケアを怠ると、後陣痛の悪化や体調不良、精神的な負担の増大につながりやすくなります。出産という大仕事を終えた体は、想像以上に大きな負担を受けています。
出産で受けた身体的な負担と回復のプロセス
妊娠・出産では、循環血液量の増加や骨盤まわりの筋肉・靭帯の緩みなど、全身に大きな変化が起こります。産後はこれらが少しずつ元へ戻っていく回復期であり、無理を重ねると回復が遅れるだけでなく、後陣痛を含む痛みの感じ方が強まることもあります。
子宮の回復とホルモンバランスの変化
出産後、子宮は急速に収縮しながら元の大きさへ戻っていきますが、この過程はオキシトシンやプロゲステロンをはじめとするホルモンバランスの変動と密接に関係しています。ホルモンの急激な変化は、後陣痛だけでなく、気分の浮き沈みにも影響します。
体の不調と心の健康のつながり
体の痛みや疲労は、メンタルヘルスにも影響を与えやすいものです。眠れないほどの痛みや慢性的な疲労が続くと、気分の落ち込みにつながることもあります。体のケアは、心の健康を保つうえでも欠かせません。気分の落ち込みが長引くときは、妊娠中・産後のうつ徹底対策ガイドの記事もあわせてご覧ください。
後陣痛を軽くする日常生活の工夫
日常生活では、運動・栄養・水分と睡眠のバランスを意識することが、後陣痛の軽減と体全体の回復の両方に役立ちます。特別なことをする必要はなく、できる範囲から少しずつ整えてください。
適度な運動と休息のバランス
体調が落ち着いてきたら、無理のない範囲で軽いストレッチや院内・室内での散歩を取り入れると、血流が促され回復に役立ちます。ただし、産後は体が思う以上に疲れています。「動けそう」と感じても、こまめに横になる時間をつくってください。
栄養バランスの取れた食事
出産による出血で不足しやすい鉄分、子宮や体組織の修復を支えるタンパク質、疲労回復を助けるビタミンやミネラルを意識して摂取し、身体の再生を促しましょう。レバーや赤身肉、豆類、緑黄色野菜などを、無理なく食事に取り入れてください。
水分補給と十分な睡眠
脱水は筋肉の緊張を招きやすく、痛みを悪化させる一因になります。授乳期は水分が失われやすいため、こまめな水分補給を心がけてください。睡眠不足が続くと痛みへの感受性が高まりやすいとも言われますので、赤ちゃんが眠っているときはできるだけ一緒に横になり、体を休めることを優先してください。産後に役立つケアアイテムの選び方は出産後の体ケアと必要なアイテムの記事で詳しく紹介しています。
要注意!受診が必要な後陣痛の異常サイン
後陣痛は多くの女性が経験する自然な現象ですが、出血・発熱・激痛・排泄異常のいずれかがみられる場合は、自己判断で様子を見ず早めに受診してください。「産後だからこんなものだろう」と見過ごすと、重篤な状態につながることもあります。
異常な出血や発熱のサイン
通常、後陣痛に多少の痛みや軽い出血(悪露)はつきものですが、次のような状態は異常のサインかもしれません。
- 出血量が生理以上に多く、夜用ナプキンが1時間もたない
- レバー状の大きな血の塊が何度も出る
- 38度以上の発熱が続く
- 悪露のにおいが強く、腐敗臭のように感じる
これらは、子宮内に胎盤や血液が残っている状態(子宮復古不全)や、産後子宮内感染症(子宮内膜炎など)の疑いがあります。放置すると、感染が全身に広がる敗血症に至るケースもありますので、速やかに産婦人科を受診してください。
激痛や長引く痛みのサイン
出産後数日間は後陣痛による子宮収縮の痛みが続きますが、以下のような痛みは通常の経過とは異なります。
- 薬を飲んでも和らがないほどの強い痛み
- 動けないほどの差し込むような痛み
- 出産後2週間以上経っても痛みが続く
- いったん治まった痛みが再び悪化する
こうした場合、子宮の異常な収縮や感染・炎症の可能性のほか、帝王切開や会陰切開の縫合部分に異常があるケースも考えられます。自己判断で我慢せず、早めに産科医の診察を受けましょう。

尿の異常や排泄困難のサイン
産後は、出産の影響で骨盤底筋が緩んだり、損傷したりすることがあります。特に以下のような尿トラブルがある場合は要注意です。
- 排尿がうまくできず、膀胱が張るような感覚がある
- トイレの回数が極端に少ない、あるいは頻繁すぎる
- くしゃみや咳で尿漏れする(腹圧性尿失禁)
- 排尿時に強い痛みがある(膀胱炎の可能性)
排尿や排便は、子宮の回復と密接に関係しています。異常がある場合は、泌尿器科や産婦人科、骨盤底筋リハビリの専門家に相談することが重要です。放置してしまうと、将来的に慢性的な尿失禁や骨盤臓器脱といった問題を招く可能性もあります。
ひとりで抱え込まず、周囲の支援も頼ってください
産後の体調管理は、家族や医療機関、公的な支援サービスを積極的に頼ることで負担が大きく軽くなります。痛みや不調を我慢しながら一人で育児をこなす必要はありません。
実家や義実家に頼る里帰り出産も、産後の体を休めるための有効な選択肢のひとつです。準備やタイミングの考え方は里帰り出産を検討するタイミングと準備の記事でまとめていますので、産前から検討している方は参考にしてください。里帰りが難しい場合も、自治体の産後ケア事業や家事支援サービスなど、頼れる制度は複数あります。「まだ大丈夫」と抱え込む前に、使える支援がないか調べてみてください。
次の妊娠を考えるときに知っておきたいこと
今は産後の回復に専念していただいて構いませんが、次の妊娠を考え始めたときに備え、出生前検査という選択肢があることを知っておくと安心につながります。
NIPT(新型出生前診断)は、13・18・21トリソミーなどの対象疾患に限られる非確定的な検査です。妊婦さんの採血だけで調べられますが、結果を確定するには羊水検査などの確定検査が必要になります。検査で分かる範囲や数値の考え方について詳しく知りたい方は、NIPTでわかることの解説ページもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
後陣痛と産後の体ケアについて、外来でよくいただく質問にお答えします。気になる項目から読んでください。
Q1. 後陣痛はどれくらいの痛みですか?
生理痛のような鈍い痛みから、陣痛を思わせる強い痛みまで幅があります。経産婦や授乳中の方は、より強く感じやすい傾向があります。市販薬を自己判断で使わず、痛みが強いときは医師や助産師に相談してください。
Q2. 後陣痛はいつまで続きますか?
痛みのピークは産後数日から1週間ほどで、多くの場合2〜3週間ほどでほとんど気にならなくなります。ただし個人差があるため、産後2週間を過ぎても強い痛みが続く場合は、我慢せず産婦人科を受診してください。
Q3. 初産婦より経産婦のほうが痛いのは本当ですか?
一般的には経産婦のほうが痛みを強く感じやすいと言われています。ただし、これはあくまで傾向であり、必ずしも全員に当てはまるわけではありません。体格や出産の状況によっても差が出ます。
Q4. 授乳のたびに痛みが強くなるのはなぜですか?
授乳中に分泌されるオキシトシンが、母乳を押し出すと同時に子宮の収縮も促すためです。自然な反応ではありますが、痛みがつらいときは授乳前に腹部を温める、姿勢を工夫するなどで和らげられます。
Q5. 後陣痛で病院を受診したほうがよい目安はありますか?
夜用ナプキンが1時間もたないほどの出血、38度以上の発熱、薬を飲んでも和らがない激痛、産後2週間以上続く痛みなどがあれば、自己判断で様子を見ず早めに産婦人科を受診してください。
Q6. 後陣痛の痛み止めは授乳中でも使えますか?
授乳中でも使用できる鎮痛剤はありますが、種類や量は自己判断せず、入院中は助産師や医師に、退院後はかかりつけの産婦人科医に相談のうえで使用してください。
まとめ:心身のケアで快適な産後ライフを
後陣痛は出産後の自然な体の反応ですが、痛みの程度や症状によっては適切なケアや医療介入が必要です。温める、痛み止めを使う、リラックスするといった対処法を組み合わせながら、無理をせず過ごしてください。
産後の体ケアを怠らず、休息や栄養、水分補給を意識し、家族や医療機関、公的な支援サービスとの連携も大切にしてください。産後ケアの相談を受けていると、痛みへの不安から一人で抱え込んでしまう方は少なくないと感じます。異常なサインに気づいたときは迷わず受診し、快適なママライフを送りましょう。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を持つ。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会の情報を参照して作成しています。記載の内容は一般的な目安であり、症状や治療方針についての最終判断は担当医にご相談ください。
【参考】
・日本産婦人科医会「分娩中・産褥期に起こり得る症状」
・日本産婦人科医会「帝王切開後に発熱が遷延した際の対応」
・こども家庭庁 母子保健・産後ケア事業
・女性の健康推進室ヘルスケアラボ 用語解説
出生前診断(NIPT)について相談したい方は、ヒロクリニックNIPTの無料カウンセリングをご利用ください。国内検査・産婦人科医対応で、妊娠10週ごろから受けられます。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

