
妊娠や出産を考える人にとって、「ダウン症」という言葉は気になるテーマのひとつでしょう。医療技術の発達によって、妊娠中に赤ちゃんがダウン症を持つ可能性を知ることができる時代になりました。しかし、「どれくらいの確率で起こるのか」「検査にはどんな種類があるのか」「ダウン症の子にはどんな特徴があるのか」といった点については、誤解や不安が先行しがちです。
ここでは、ダウン症の基本的な理解から検査の種類、出産年齢との関係、さらに合併症や子どもの特徴について詳しく整理していきます。知識を正しく持つことで、妊娠中の不安を減らし、より納得のいく選択につなげられるはずです。
お母さんと赤ちゃんのために
NIPT検査で安心を
詳しくはこちら
「ダウン症」とは
ダウン症(ダウン症候群)は、21番染色体が1本余分に存在することで起こる染色体異常です。本来、人間の染色体は46本(23対)ですが、ダウン症では47本となります。この余分な染色体によって、身体的な発達や知的発達に影響が及びます。
症状には幅があり、軽度から重度までさまざまです。外見的な特徴や学習面での遅れが見られることが多いですが、全員に同じ特徴が当てはまるわけではありません。また、医学的なサポートや療育の進歩により、学校生活や社会参加を果たしている人も数多くいます。
重要なのは、原因が「親の行動」ではないということです。ダウン症は受精時に偶発的に起こる染色体分裂のエラーが原因であり、生活習慣や妊娠中の行動で予防できるものではありません。
ダウン症の確率は?
ダウン症の発生率は世界的にほぼ共通しており、出生1,000人に1人程度とされています。日本でも同じ割合で、毎年数千人がダウン症を持って生まれています。
ただし、この確率は母親の年齢によって変動します。20代前半での出産では確率は低いですが、30代後半から急激に高くなります。たとえば、35歳では約350分の1、40歳では100分の1程度まで上昇することが知られています。
近年、日本では晩婚化やキャリア志向の高まりにより高齢出産が増えています。厚生労働省の統計によれば、第一子を出産する母親の平均年齢は30歳を超えており、35歳以上での出産も珍しくなくなりました。これに伴い、ダウン症児の出生数が増加傾向にあるとも言われています。
お母さんと赤ちゃんのために
NIPT検査で安心を
詳しくはこちら
ダウン症の検査はいつから可能?
妊娠中に赤ちゃんがダウン症を持つ可能性を調べるための出生前検査は、「非確定検査」と「確定検査」に分かれます。
非確定検査について:超音波や血液検査(スクリーニング)
妊娠10週ごろから受けられるのが非確定検査です。代表的なのは**NIPT(新型出生前診断)**で、母体の血液を採取し、その中に含まれる胎児由来のDNA断片を解析することで染色体異常の可能性を調べます。精度は高いとされますが、確定診断ではなく「可能性を推定する」検査にとどまります。
ほかにも、母体血清マーカー検査や超音波検査があります。超音波では首の後ろのむくみ(NT)の厚さを測る方法が一般的です。これらは妊婦への負担が少ないため広く行われていますが、陽性だからといって必ずしもダウン症とは限りません。逆に陰性でも100%否定できるわけではありません。
確定検査について:羊水検査・絨毛検査
より正確に診断するためには確定検査が必要です。
- 羊水検査:妊娠15週以降に実施され、羊水を採取して胎児の染色体を直接調べます。診断精度はほぼ100%ですが、0.1〜0.3%程度の流産リスクがあります。
- 絨毛検査:妊娠11週ごろから可能で、胎盤の一部を採取して染色体を調べます。早期に結果を得られる利点がありますが、こちらも流産のリスクがわずかに伴います。
費用は数万円から十数万円と幅があります。保険適用外となることが多いため、経済的な負担も含めて検討する必要があります。

出産年齢とダウン症の関係
母の年齢が高いほど確率が上がる理由
母親の年齢とダウン症の発症確率には強い相関があります。20歳のときは約1,500分の1ですが、30歳では1,000分の1、35歳では350分の1、40歳では100分の1にまで上昇します。年齢とともに卵子の質が低下し、染色体分裂のエラーが起こりやすくなるためです。
卵子の老化が影響する理由
女性は生まれたときから一定数の卵子を持っています。そのため、年齢とともに卵子自体が老化し、細胞分裂の正確性が下がります。その結果、余分な染色体が残りやすくなり、ダウン症の発症につながります。
父親の年齢も精子の質に一定の影響を与えることが研究で示唆されていますが、母親の年齢ほど直接的なリスク因子ではありません。
お母さんと赤ちゃんのために
NIPT検査で安心を
詳しくはこちら
ダウン症の子に見られる特徴
顔の特徴
ダウン症の子どもは、いくつかの共通した外見的特徴を持つ傾向があります。代表的なのはアーモンド型の目で、目頭に小さなひだ(内眼角贅皮)があることが多く、独特のやさしい印象を与えます。鼻は低く平坦で、顔の真ん中が全体的に平らに見えることもあります。口はやや小さく、舌が相対的に大きく見えるため、口から舌が出やすい傾向があります。また、耳は小さめで形に特徴が見られることもあります。
さらに、後頭部が平らな形(短頭)、手のひらに一本の横じわ(猿線)があること、筋肉の緊張が弱いために姿勢がやわらかく見えることもあります。ただし、これらは「傾向」であって全員に当てはまるわけではありません。家族から見れば個性の一部として受け止められることも多いです。
知的障害
ダウン症の子どもの多くは軽度から中等度の知的発達の遅れを持っています。発達段階に応じて、以下のような特徴が現れることがあります。
- 乳児期:首のすわりや寝返り、はいはい、歩行などの運動発達がゆっくり。筋肉がやわらかいため、体を支える力が弱い傾向があります。
- 幼児期:言葉の理解や発語が遅れやすい。単語が出るまでに時間がかかる場合もありますが、身振りや表情で気持ちを伝える力が強い子も多いです。
- 学齢期:読み書きや計算に時間がかかる場合がありますが、繰り返し学習によって着実に習得する力があります。短期記憶よりも長期記憶が得意なケースも見られます。
また、ダウン症の子どもは人懐っこく社交的な性格であることが多く、周囲の人と良好な関係を築けることも大きな強みです。支援教育や療育プログラムの活用により、近年では地域の小学校に通う子どもや、成人後に一般企業で就労する人も増えています。
合併症のリスク
ダウン症の子どもは、健常児に比べて体の臓器や機能に異常が伴いやすいとされています。代表的なものは以下の通りです。
- 心疾患:約40〜50%に先天性心疾患が見られ、代表的なのは心房中隔欠損症や心室中隔欠損症です。重度の場合は外科手術が必要になりますが、近年の医療技術の進歩で多くが改善可能です。
- 消化器疾患:食道閉鎖や十二指腸閉鎖などの消化管の奇形が比較的多く、出生直後に発見されるケースがあります。手術で改善する場合がほとんどです。
- 内分泌・代謝系の異常:甲状腺機能低下症はダウン症に特徴的で、成長や知能に影響を与える可能性があります。成人期には糖尿病や肥満、脂質異常症などの生活習慣病リスクも高くなります。
- 免疫系の弱さ:感染症にかかりやすく、特に小児期は肺炎や中耳炎を繰り返す子も少なくありません。
こうした合併症は確かにリスクとなりますが、定期的な健康診断や早期の医療介入によって管理が可能です。現代の小児医療や支援体制の進歩により、多くの子どもが安定した生活を送ることができています。
お母さんと赤ちゃんのために
NIPT検査で安心を
詳しくはこちら
ダウン症の子に見られる主な合併症
循環器系
ダウン症児の約半数は先天性心疾患を持っています。代表的なのは心房中隔欠損症や心室中隔欠損症です。軽度であれば自然に閉じることもありますが、重度の場合は外科的手術が必要です。
消化器系
食道閉鎖や十二指腸閉鎖といった消化管の異常が比較的多く見られます。これらは新生児期に発見されやすく、手術によって改善されることが多いです。
内分泌・代謝系
甲状腺機能低下症はダウン症児に多く見られ、成長や発達に影響を与えます。成人期には糖尿病や脂質異常症のリスクも高まるため、定期的な検査が必要です。
眼・耳
白内障や斜視、難聴、滲出性中耳炎などが見られます。これらは視覚や聴覚に関わるため、生活の質に直結します。早期に発見して治療することが大切です。
骨格・身体
平均より低身長であることが多く、扁平足や関節の柔らかさなどが特徴です。これにより運動能力に影響が出ることがありますが、理学療法や運動指導で改善する場合もあります。
神経・発達
一部の子どもでは発達障害やてんかんを併発します。適切な療育や投薬治療で発作をコントロールできることもあります。
泌尿生殖系
男児に多いのは尿道下裂や停留精巣です。これらは外科的治療で改善できることが多く、早期の対応が望まれます。
お母さんと赤ちゃんのために
NIPT検査で安心を
詳しくはこちら
まとめ
ダウン症は誰にでも起こり得る染色体異常であり、母親の年齢が高いほど発症確率が上昇します。出生前検査を通じてリスクを把握できますが、検査を受けるかどうかは家族の考え方によります。
ダウン症の子どもには外見や発達の特徴、さらには合併症が見られることがありますが、医療や教育によるサポートによって成長の可能性は大きく広がります。現代では社会に参加し、自立した生活を送る人も増えてきました。
大切なのは、ダウン症を「特別」ではなく「個性のひとつ」として理解する姿勢です。家族や社会が協力して支えることで、子どもたちは自分らしい人生を歩むことができます。

