妊娠の比較的早い週数から受けられるNIPT(新型出生前診断)と母体血清マーカーは胎児に21トリソミー(ダウン症候群)や18トリソミー(エドワーズ症候群)といった染色体疾患や先天性疾患が見られるかを確認するスクリーニング検査です。
この記事のまとめ
母体血清マーカー検査は、妊婦さんの血液中の成分を測定し、胎児が21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・開放性神経管奇形などである確率を算出する非確定的検査です。3項目を測るトリプルマーカーと、4項目を測るクアトロテストがあり、いずれも妊娠15〜18週頃が実施の目安になります。NIPTはより高い精度が報告されますが、どちらも「陽性=異常確定」ではなく、確定診断には羊水検査などが必要です。この記事では、母体血清マーカー検査の内容と、クアトロテスト・NIPTとの違いを中立にまとめました。
この記事でわかること
母体血清マーカー検査とは?確率を算出する非確定的検査
母体血清マーカー検査とは、妊婦さんの血液中の成分を測定し、胎児が特定の疾患である確率を算出する非確定的検査です。採血だけで受けられるため、お母さんにも赤ちゃんにも負担の少ない検査に分類されます。
調べる対象は、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・開放性神経管奇形の3つです。血液中の成分の量は、妊娠の経過や胎児の状態によって増減します。その値に母体年齢や妊娠週数などを組み合わせて、確率を計算する仕組みです。
ここで押さえておきたいのが、結果はあくまで確率だという点です。「1/500」のように示され、陽性(確率が高い)と出ても、それは疾患が確定したという意味ではありません。あくまで可能性の目安。この性質を理解しておくと、結果を落ち着いて受け止めやすくなります。出生前診断全体の位置づけはNIPTとはもあわせてご覧ください。
私が妊婦さんの話を聞いていて感じるのは、「非確定的検査」という言葉が最初はわかりにくいという点です。確率で示される検査だと先に知っておくだけで、結果を待つ時間の不安がずいぶん違ってきます。母体血清マーカー検査は、赤ちゃんの状態を知る第一歩として位置づけられる検査だと考えてください。

クアトロテストとトリプルマーカーの違い(測定項目)
トリプルマーカーは3項目、クアトロテストは4項目の成分を測る検査で、項目数が多いクアトロテストが現在の主流です。どちらも母体血清マーカー検査の一種で、基本の考え方は同じです。
もともとは2成分を測るダブルマーカーが先に広まりました。その後、測る成分が増えてトリプルマーカー、クアトロテストへと発展した経緯があります。測定項目が増えるほど、確率の計算に使える情報が多くなると考えてください。
それぞれが測る成分を表にまとめました。名前だけを覚える必要はありません。項目数が違うという点だけつかんでおけば十分です。
| 検査名 | 測定する成分 | 特徴 |
|---|---|---|
| ダブルマーカー | AFP・hCG(2項目) | 最初に広まったタイプ |
| トリプルマーカー | AFP・hCG・uE3(3項目) | 妊娠14週0日以降が目安 |
| クアトロテスト | AFP・hCG・uE3・インヒビンA(4項目) | 妊娠15週0日以降が目安。現在の主流 |
成分はいずれも胎児や胎盤から作られるものです。AFPは胎児が作るたんぱく、hCGは胎盤から出るホルモン、uE3は胎児と胎盤が関わるホルモン、インヒビンAも胎盤に関わる成分です。これらの値に母体年齢・妊娠週数・体重などを加えて、赤ちゃんが対象疾患である確率を計算します。年齢が上がるほど確率が高く出やすい傾向も知られています。
母体血清マーカー検査でわかることと限界
母体血清マーカー検査でわかるのは、対象3疾患の「確率」であって、疾患があるかないかの確定した答えではありません。ここがこの検査の性質であり、同時に限界でもあります。
結果は「1/500」のような確率で示される
結果は「1/500」のような分数で通知されます。これは、同じ数値が出た500人のうち1人に対象疾患のある赤ちゃんが含まれる、という確率の目安です。数字が小さい(分母が大きい)ほど確率は低いと読みます。陽性・陰性という二択ではなく、確率のものさしで示されると理解してください。
陰性という結果が出たときの安心感は、当事者にとって大きなものです。私も、結果を待つ数日間の緊張は相当なものだと感じます。Xでも@m0nica_chanさんが、妊婦健診でクアトロテストの結果が陰性でホッとした、と実体験を書いていました。ただし陰性は「確率が低い」という意味であって、疾患がゼロと確定したわけではない点は、あわせて知っておいてください。
検査の限界と受け止め方
限界は主に2つあります。ひとつは、確定診断ではないこと。もうひとつは、調べる対象が3疾患に限られることです。この2点を理解しておくと、結果に振り回されにくくなります。
結果の意味や次の一歩に迷ったときは、ひとりで抱え込まないでください。遺伝カウンセリングやかかりつけの産婦人科で相談すると、確率の読み方をていねいに説明してもらえます。検査を受ける前後の気持ちの整理にも役立ちます。公的な情報としては出生前検査認証制度等運営委員会のサイトも参考になります。費用の全体像を知りたい方は出生前診断の費用もご確認ください。
NIPTとの違いを比較(時期・対象・精度)
NIPTと母体血清マーカー検査は、どちらも採血で受ける非確定的検査ですが、受けられる時期・調べる対象・精度に違いがあります。共通点と違いを整理しておくと、検査選びの土台になります。
NIPTは、母体血中を流れる胎児由来のDNA(細胞外を流れるDNA=cfDNA)を調べる検査です。13・18・21トリソミーなど対象の染色体を調べます。母体血清マーカーより高い精度が報告されていますが、NIPTも非確定的検査であり、確定診断には羊水検査などが必要です。調べられるのは対象疾患に限られる点も、両者に共通します。仕組みの詳細はNIPTの仕組みで解説しています。
主な違いを比較表にまとめました。数字は目安であり、医療機関や検査プランによって幅があります。
| 項目 | 母体血清マーカー | NIPT |
|---|---|---|
| 調べるもの | 血液中の成分(3〜4項目) | 胎児由来のDNA(cfDNA) |
| 受ける時期の目安 | 妊娠15〜18週頃 | 妊娠10週以降(施設による) |
| 対象疾患 | 21・18トリソミー、開放性神経管奇形 | 13・18・21トリソミーなど(施設による) |
| 結果の示し方 | 確率(1/500など) | 陽性・陰性・判定保留 |
| 精度 | 確率を算出する検査 | より高い精度が報告される |
| 共通点 | 採血で受ける非確定的検査。確定には羊水検査などが必要 | |

どちらを選ぶ?受ける時期の考え方
どちらを選ぶかは、受けたい時期・調べたい対象・費用・気持ちの4点から考えると整理しやすくなります。優劣ではなく、ご自身の状況に合うかどうかで選んでください。
早い時期に赤ちゃんの状態を知りたいなら、妊娠10週以降に受けられるNIPTが候補になります。一方、母体血清マーカーは妊娠15〜18週頃が目安です。開放性神経管奇形もあわせて確率を知りたい場合は、母体血清マーカーが対象に含みます。まずは受けたい時期と、何を知りたいかを書き出してみてください。
検査を組み合わせて考える方も少なくありません。私の周りでも、超音波の検査を先に受けてから次を決める方がいます。Xでも@ningen_suku2さんが、NIPTではなく胎児ドックを受けようか、気になることがあればクアトロテストやNIPTも受けようか悩んでいる、と検査選びの迷いを書いていました。こうした迷いはごく自然なものです。ひとつに決めきれないときは、産婦人科で相談しながら順番を考えてください。
年齢によって確率の出方が変わる点も、選ぶときの参考になります。年齢が上がるほど対象疾患の確率は高く出やすい傾向があります。高齢での妊娠に関する情報は高齢出産もご覧ください。判断に迷う場合は、日本産科婦人科学会など公的機関の情報も確かめておくと安心です。
陽性(確率が高い)と出たときの確定検査
母体血清マーカーやNIPTで確率が高いと出ても、それは診断の確定ではなく、確定診断には羊水検査などが必要です。結果を受け取ったあとの進み方を知っておくと、落ち着いて対応できます。
羊水検査は、子宮に細い針を刺して羊水を採取し、胎児の染色体を直接調べる確定的検査です。一般に妊娠16週以降に行われ、結果までに2〜3週間ほどかかります。非確定的検査が陽性で羊水検査に進むと決めた場合、最終的な答えが出るまでに時間がかかる点を見込んでおいてください。羊水検査の内容は羊水検査で詳しく解説しています。
大切なのは、陽性という結果だけで結論を急がないことです。確率が高いと出ても、確定ではありません。次にどうするかは、パートナーや医療者と話しながら決めていくものと考えてください。気持ちの面でつらいときは、遺伝カウンセリングで専門職に相談できます。日本産婦人科医会の解説も、判断材料のひとつになります。
まとめ:確率で示す検査という前提を押さえる
母体血清マーカー検査もNIPTも、採血で受ける負担の少ない非確定的検査で、確定診断には羊水検査などが必要です。この前提を押さえておくと、検査選びで迷いにくくなります。
母体血清マーカー検査は、血液中の成分から対象3疾患の確率を算出します。項目数の違いでトリプルマーカーとクアトロテストに分かれ、現在はクアトロテストが主流。NIPTはより高い精度が報告されますが、調べられるのは対象疾患に限られます。どちらも結果は「可能性」を示すものと考えてください。
検査を受けるかどうか、どれを選ぶかに正解はありません。時期・対象・費用・気持ちを整理し、遺伝カウンセリングやかかりつけの産婦人科と相談しながら、ご自身に合う進み方を選んでください。この記事が、その一助になればうれしく思います。
よくある質問
母体血清マーカー検査について、妊婦さんからよく寄せられる疑問をまとめました。参考にしてください。
Q. 母体血清マーカー検査で赤ちゃんの病気は確定しますか?
いいえ、確定しません。母体血清マーカー検査は、対象疾患である確率を「1/500」のように示す非確定的検査です。陽性(確率が高い)と出ても診断が確定したわけではなく、確定診断には羊水検査などが必要になります。結果の読み方に迷うときは、遺伝カウンセリングや産婦人科でご相談ください。
Q. トリプルマーカーとクアトロテストはどう違いますか?
測定する成分の数が違います。トリプルマーカーはAFP・hCG・uE3の3項目、クアトロテストはそこにインヒビンAを加えた4項目を測ります。項目数が多いクアトロテストが現在の主流です。どちらも確率を算出する非確定的検査という点は共通しています。
Q. 母体血清マーカー検査はいつ受けますか?
妊娠15〜18週頃が受ける目安です。トリプルマーカーは妊娠14週0日以降、クアトロテストは妊娠15週0日以降が目安になります。陽性のときに羊水検査へ進むことを考えると、早めの週数で受けておくと余裕を持って次を検討できます。
Q. 母体血清マーカーとNIPTはどちらを選べばよいですか?
受けたい時期・調べたい対象・費用・気持ちの4点から考えてください。早い時期に調べたい場合や精度を重視する場合はNIPT、開放性神経管奇形も確率で知りたい場合は母体血清マーカーが候補になります。どちらも非確定的検査です。迷うときは産婦人科で相談しながら決めてください。
Q. 陽性(確率が高い)と出たら次に何をしますか?
結論を急がず、まず医療者と相談してください。確率が高いと出ても診断は確定していません。確定診断が必要な場合は、羊水検査などを検討します。羊水検査は妊娠16週以降に行われ、結果までに2〜3週間ほどかかります。気持ちの整理には遺伝カウンセリングを利用できます。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
妊娠の比較的早い週数から受けられるNIPT(新型出生前診断)と母体血清マーカーは胎児に21トリソミー(ダウン症候群)や18トリソミー(エドワーズ症候群)といった染色体疾患や先天性疾患が見られるかを確認するスクリーニング検査です。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Wald NJ, Cuckle HS, Densem JW, Nanchahal K, Royston P, Chard T, Haddow JE, Knight GJ, Palomaki GE, Canick JA. Maternal serum screening for Down's syndrome in early pregnancy. BMJ. 1988 Oct 8;297(6653):883-887.
- Wald NJ, Densem JW, George L, Muttukrishna S, Knight PG. Prenatal screening for Down's syndrome using inhibin-A as a maternal serum marker. Prenat Diagn. 1996 Oct;16(10):927-933.
- Malone FD, Canick JA, Nyberg DA, Comstock CH, Bukowski R, Berkowitz RL, Gross SJ, Dugoff L, Craigo SD, Timor-Tritsch IE, Carr SR, Wolfe HM, Dukes K, Bianchi DW, Rudnicka AR, Hackshaw AK, Lambert-Messerlian G, Wald NJ, D'Alton ME; First- and Second-Trimester Evaluation of Risk (FASTER) Research Consortium. First-trimester or second-trimester screening, or both, for Down's syndrome. N Engl J Med. 2005 Nov 10;353(19):2001-2011.

