早期NIPT検査で発見できる微小欠失症候群とは?種類ごとの概要も併せて解説

微小欠失症候群を早期発見するために注目されているのがNIPT検査です。微小欠失症候群は欠失部位の違いにより複数の疾患に区別されています。当記事では、7つの微小欠失症候群の原因や症状、治療方法などを紹介します。

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この記事のまとめ

微小欠失症候群を早期発見するために注目されているのがNIPT(新型出生前診断)検査です。染色体のある特定部分が欠けたり失われたりすることで発症する微小欠失症候群ですが、位置の違いにより複数の疾患に区別されています。
当記事では、7つの微小欠失症候群の原因や症状、治療方法などの情報を紹介します。

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微小欠失症候群とは

微小欠失症候群とは、染色体のある特定の一部の遺伝子群が欠けたり抜けたりすることによって引き起こされる疾患群です。非常に小さな欠失によって引き起こされるもので、サイズは50万塩基から、一般的には100万~300万塩基の分節内で発生します。

多くの疾患で重度の先天奇形がみられ、精神的発達身体的成長に大きな障害を与える病気でもあります。欠失のサイズと位置によって症状や重症度の判定が行われます。また、微小欠失症候群は母体の年齢に関係なく自然発生するものと考えられています。

早期NIPT検査で発見できる

NIPT(新型出生前診断)検査とは新型出生前診断のことで、妊娠10週以降に実施可能な非侵襲的スクリーニング検査です。この検査を行うことで、微小欠失症候群の発見ができます。

また、NIPT検査では常染色体異数性と性染色体異数性を検査する全染色体検査や、性別検査なども行えるため、微小欠失症候群以外にも、一般的な染色体疾患やその他の染色体疾患、性染色体の異常などの発見も可能です。また、性染色体を検査するため赤ちゃんの性別を知りたい方にもおすすめします。

【事例紹介1.】ディ・ジョージ症候群

ディ・ジョージ症候群とは、「22q11.2欠失症候群」や「胸腺低形成症候群」とも表現されます。

発症頻度は約4000〜6000人に1人ですが、どのような方に発症しやすいかは現在の研究ではわかっていません。発端者の80%に先天性疾患の合併が見られます。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

ディ・ジョージ症候群は、22番目の染色体である22q11.2の微小欠失が原因です。この部分の約30個の遺伝子が欠失することにより発症します。80%ほどの患者さんに合併症が見られる特徴があります。

主な症状は、発達遅滞・特徴的顔貌・免疫低下・口蓋・裂軟口蓋閉鎖不全・先天性心血管疾患・胸腺低形成・低カルシウム血症・鼻声などです。また、精神発達遅滞とあわせて言語発達遅滞や腎奇形を引き起こすリスクもあります。

治療法

染色体の異常そのものを治療する方法はありません。しかし、引き起こされる合併症に対しての治療方法はそれぞれ存在します。

優先して治療される症状は心疾患関係です。新生児期から各患者さんの体質に合わせた心臓手術計画を立てて、一生にわたって臨床症状に基づいた治療や生活指導を受ける必要があります。

【事例紹介2.】1p36欠失症候群

1p36欠失症候群とは、1番染色体短腕末端の1p36領域で欠失が起こる症候群です。発症頻度は、海外では1万人に1人ほどと報告されていますが、日本で行われた調査では2万5000〜4万人に1人ほどと予測されています。

発症の多くは突然変異で生じる染色体異常が原因です。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

先天的な要因により1番染色体短腕末端が欠失することで引き起こされます。1番染色体短腕末端の欠失が突然単独で起こる場合と、両親のどちらかの均衡転座が原因の不均衡転座による場合の2通りがあります。

主な症状は、成長障害や精神発達遅滞、難治性てんかん、特徴的顔貌、筋緊張低下、哺乳不良などです。合併症としては、先天性心疾患・斜視・難聴・白内障・肥満・神経芽細胞腫などが挙げられます。

精神や運動能力の発達遅滞は多くの患者さんで見られますが、その重度はさまざまです。

治療法

染色体の異常を根本的に治療する方法はありません。それぞれの症状に対しての治療が行われます。

たとえば、発達遅滞や筋緊張低下などは乳幼児期早期から療育訓練することによって症状を緩和できる可能性があります。

また、患者さんの家族に対しては遺伝学的診断に基づく遺伝カウンセリングが欠かせません。

【事例紹介3.】スミス・マギニス症候群

スミス・マギニス症候群とは、遺伝子の17p11.2領域の欠失によって引き起こされる先天異常症候群です。国内の患者数は30〜50人ほどと考えられています。どのような人に発症しやすいかはわかっていません。

患者さんの家系や家族の中にスミス・マギニス症候群の方はほとんどおらず、偶発的に生じると推測されています。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

2本の17番染色体短腕の一方の中間部が欠失することが原因です。欠失領域内のRAI1遺伝子のハプロ不全が発症に関わっていることも明らかになっています。

多くはRAI1を含む染色体部分欠失が原因ですが、RAI1遺伝子変異も少数ですが報告されています。

主な症状は、難治性てんかん・末梢神経障害・特徴的顔貌・精神発達遅滞・先天性心疾患・自傷行為・行動異常などです。レム睡眠の減少や欠如による睡眠障害を引き起こす患者さんもいます。

治療法

染色体の異常そのものを改善する治療方法はありません。各症状にあわせた治療が行われます。

たとえば、てんかんには抗けいれん薬の内服が実施されます。自傷行為や行動異常に対しては、継続的なリハビリやカウンセリングが必要です。

睡眠障害の治療において、日本では使用できる薬物が制限されているため、リハビリを中心とした治療を進める必要があります。

【事例紹介4.】ウォルフヒルシュホーン症候群

ウォルフヒルシュホーン症候群とは、「4p欠失症候群」とも呼びます。遺伝子の4p16.3領域に欠失が起こることで発症する症候群です。およそ5万人に1人発症すると予測されており、男女比率は1:2です。

欠失の大きさは様々なため小さい患者さんは見逃されている可能性もあり、実際にはもっと多くの患者さんがいるとも考えられています。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

4番染色体短腕に位置する遺伝子群の欠失による半数不全が原因です。ほとんどは突然変異による単独の欠失ですが、まれに不均衡型相互転座の結果として発症することもあります。

主な症状は、成長障害・筋緊張低下・特徴的顔貌・精神発達遅滞・運動発達遅滞・知的障害・難治性てんかん・摂食障害・骨格異常・先天性心疾患・聴覚障害・尿路奇形・脳構造異常などです。

治療法

染色体の異常そのものを治療する方法はありません。各症状にあわせた治療が必要です。

たとえば、精神・運動発達遅滞に対しては、運動発達や認知、言語、社会性の能力を向上させるためのリハビリが行われます。

摂食障害に対しては摂食訓練を行い、胃食道逆流症を合併している場合は、胃瘻造設や噴門部縮小術などの外科的治療が必要です。

【事例紹介5.】プラダー・ウィリー症候群

プラダー・ウィリー症候群は、最初に同定されたインプリンティング疾患です。発症頻度は1万〜1万5000人に1人で、人種差はないとされています。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

15番染色体トリソミーのq11−q13に位置する父親由来で発生する複数の遺伝子の働きが失われることで発症するとされています。

父性発現遺伝子の働きが失われる要因として、15q11−q13の父親由来染色体微小欠失、15番染色体母性片親性ダイソミー、ゲノムインプリンティングの障害による刷り込み変異などが挙げられます。

主な症状は、筋緊張低下・色素低下・外性器低形成・肥満、低身長・特徴的な性格障害・異常行動・糖尿病などです。

治療法

染色体の異常そのものを治療する方法はありません。それぞれの症状に合わせた治療が求められます。

現在は、食事療法、運動療法、成長ホルモン補充療法、性ホルモン補充療法、精神障害への対応をそれぞれ行っています。また、知的発達の遅延は中度のレベルで見られるため、適切な支援が欠かせません。

【事例紹介6.】アンジェルマン症候群

アンジェルマン症候群とは、精神発達の重度の遅れやてんかん、失調性運動障害、ちょっとしたことでよく笑うなどの特徴がある疾患です。およそ1万5000人に1人の頻度で発症するといわれており、日本では500〜1000人ほどの患者さんが確認されています。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

15番染色体短腕q11-q13に位置するUBE3A遺伝子の働きが失われることで発症します。遺伝子の働きが失われる要因として、15q11-q13の母性染色体微細欠失や15番染色体父性片親性ダイソミー、ゲノムインプリンティングの障害による刷り込み異常、UBE3Aの変異などが挙げられます。

主な症状は、重度の精神発達遅滞・てんかん・失調性運動障害・ちょっとしたことで笑う行動異常・睡眠障害・特徴的顔貌・低色素症などです。

治療法

染色体の異常そのものを改善することはできないため、各症状にあった対症療法が行われます。

たとえば、てんかんは抗てんかん薬を適切なタイミングで服用することで発作を起こさず生活が可能です。睡眠障害に対しては、睡眠薬などの対症療法を中心に行われます。

【事例紹介7.】5p欠失症候群

5p欠失症候群は染色体異常症候群の一つで、1万5000〜5万人に1人が発症するとされています。また、精神発達の遅れを示す患者さんの割合は、およそ350人に1人です。

こちらでは、発症の原因や詳細な症状、治療法について紹介します。

原因と症状

発症する原因のほとんどが5番染色体短腕の部分的な欠失によるものとされています。また、まれに不均衡型相互転座や二系統の構造異常による染色体モザイク、両親いずれかが持つ染色体逆位に由来した構造異常などが原因で発症するともいわれています。

主な症状は、低出生体重・成長障害・運動発達遅延・便秘・筋緊張低下などです。循環器・呼吸器・消化器・泌尿生殖器・整形外科・歯科に関連した症状を発症することもありますが、その種類や頻度は患者さんによって異なります。

治療法

根本的な原因である染色体の異常を治療する方法はありません。合併症に対してそれぞれ治療を行っていきます。

年代ごとに気をつけるべき合併症が変わるため、各合併症に応じた治療や対応が必要です。たとえば、新生児期には呼吸器症状や哺乳障害が起こりやすいため、成長障害の管理を中心に治療が行われます。

ヒロクリニックNIPTでは4つの微小欠失症候群が診断可能

微小欠失症候群は早期NIPT(新型出生前診断)検査によって発見が可能です。ヒロクリニックNIPTでは、微小欠失症候群の中でも、ディ・ジョージ症候群、1p36欠失症候群、スミス・マギニス症候群、ウォルフヒルシュホーン症候群の4つの検査が行なえます。

検査で早期発見することにより、出産前に胎児の異常を把握し、分娩方法や産後の治療準備に取りかかることが可能です。

また、早めに把握することにより心の準備もできます。適切な治療を行い、お子さんの健やかな成長を促すためにも早期NIPT検査を利用しましょう。

【参考文献】

Q&A

  • Q
    早期NIPT(新型出生前診断)検査は妊娠何周目まで受けられますか?
    厳密に何周目までに受けなければいけないという制限はありません。ただし、羊水検査などを考慮して早めに受けるのが望ましいでしょう。ヒロクリニックNIPTでは、エコー検査で胎児心拍を確認後すぐに検査を受けられます。
  • Q
    早期NIPT(新型出生前診断)検査の精度はどのくらいですか?
    早期NIPT検査はスクリーニング検査(非確定検査)です。確定的ではありませんが、ヒロクリニックNIPTでは精度の高い検査を実施しています。

微小欠失症候群を早期発見するために注目されているのがNIPT検査です。微小欠失症候群は欠失部位の違いにより複数の疾患に区別されています。当記事では、7つの微小欠失症候群の原因や症状、治療方法などを紹介します。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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