ディジョージ症候群って知ってますか?【医師監修】

本記事では、ディジョージ症候群について解説します。治療法や予後、よくある質問にも回答します。ディジョージ症候群について気になる方は、ぜひ参考にしてください。

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ディジョージ症候群(22q11.2欠失症候群)とは

ディジョージ症候群は、生まれつきの染色体異常で発症します。心臓や腎臓の形が正常と異なる、免疫力が低いなど、治療なしでは命にかかわる症状もあります。先天性疾患をもつ子どもの家族は病気と向き合い、適切な対応を行うことが必要とされます。病気を理解し、基本的な知識を学んでおくことが大切です。

ディジョージ症候群の概要

ディジョージ症候群は、22番染色体の欠失(1部欠けている状態)による染色体異常です。別名22q11.2欠失症候群ともいわれます。

ディジョージ症候群は全例に特徴的な顔がみられ、それ以外にも以下の症状を引き起こします。

  • 心奇形や腎奇形
  • 免疫不全による感染症
  • 知的障害

生後すぐに発見されやすく、正確な診断には遺伝子検査が必要です。治療法は重症度に基づき、外科手術や薬物療法が必要なケースもあります。

ディジョージ症候群の原因

両親の染色体の異常がなくても、ディジョージ症候群はランダムに発生するといわれています。

原因は、赤ちゃんの染色体の異常です。22番目の染色体にある長腕と呼ばれる一部(22q11.2)が欠けている状態です。

q11.2は22番目の染色体のどこが欠けているのかを示しています。q11.2は、22番という地名の住所のようなものです。

この22q11.2という場所にTBX1遺伝子が存在しています。TBX1遺伝子は身体を作る役割を担っています。TBX1遺伝子のある場所が欠けている、または欠けてなくなっていれば、組織や臓器はうまく作られず、さまざまな悪影響を引き起こすのです。

ディジョージ症候群患者の割合

発症頻度は約4000-6000人に1人の割合です(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター内 小児慢性特定疾病情報センター調べ)
男女での発生率に違いはありません。

ディジョージ症候群の症状と特徴

ディジョージ症候群の症状と特徴を説明します。しかし症状や特徴が、必ず現れるわけではありません。非常に軽度なら、症状がでても気がつかないケースもあります。

顔貌

顔貌の読み方は「かおかたち・がんぼう」で、顔の作りや様子のことをいいます。ディジョージ症候群にみられる特徴的な顔貌は、以下です。

  • 口蓋裂(こうがいれつ)
  • 低位耳介(ていいじかい)
  • 小耳症(しょうじしょう)
  • 眼角隔離症(がんかくかくりしょう)
  • 短い人中
  • 小さな口
  • 小顎症(しょうがくしょう)

これらの顔の特徴をイメージしやすいように説明します。

口蓋裂(こうがいれつ)

口蓋裂とは口の中の裂け目のことです。たとえば、口の上部にある口蓋(口と鼻を遮っている壁)が正常に形成されず、口の中と鼻腔がつながってしまう場合があります。このため、飲み物や食べ物が鼻からでてきたり、呼吸に支障をきたしたりするケースもあります。

低位耳介(ていいじかい)

低位耳介とは、通常より耳が低い位置にある症状です。耳の位置が、目の端よりも低い位置にあるのが特徴です。また、聴力に影響を与えるケースもあります。

小耳症(しょうじしょう)

小耳症は耳の形状が小さくなる症状で、音が聞こえにくくなる場合もあります。また、マスクやメガネのフレームを耳にかけられなくなるなど、耳の機能にも影響を与える場合もあります。

眼角隔離症(がんかくかくりしょう)

目が離れすぎている状態です。症状が強い場合、視力にも影響を与えます。

短い人中

「人中」とは鼻と口の間にある部分で、一般的には成人で約1.5cm前後です。この部分が短い場合、歯並びや咀嚼にも影響を与える可能性があります。赤ちゃんの人中の長さについては、ディジョージ症候群の症状として具体的な数字はありません。

小さな口

口の大きさが小さく、口蓋裂を併発する可能性もあります。呼吸に支障をきたしたりすることがあります。発音がしにくい、さらに歯並びの問題も生じます。

小顎症(しょうがくしょう)

下顎の形が小さく、後退している状態です。歯並びが悪くなったり、咀嚼や発音に影響があったりするため、コミュニケーションに支障をきたす可能性があります。

知的障害

ディジョージ症候群でみられる知的障害は、精神発達遅滞と言語発達遅滞です。

ディジョージ症候群における精神発達遅滞とは、知能の発達が通常よりも遅れる状態で、IQが低くなることも含みます。

言語発達遅滞は、言葉を話せる年齢に達しても、言葉を理解することや話すことができない状態をいいます。

両方ともに、症状の程度に個人差があり、発達遅滞が強ければ、日常生活における自立や社会的な関係の構築が困難になる可能性があります。重度であれば、特別な教育やケアが必要になる場合もあります。

けいれん・不整脈

けいれんや不整脈の原因は低カルシウム血症です。さらに低カルシウム血症であると、普段生活していて、吐き気や呼吸困難が現れるケースもあります。

低カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が低くなる状態です。原因は染色体異常による、副甲状腺の低形成(十分な大きさで作られないこと)、または無形成(まったく作られないこと)です。副甲状腺はカルシウムの代謝を調節する臓器なので、形成に問題があればカルシウムの代謝が正常ではなくなり、低カルシウム血症になりやすいとされています。

心奇形

ディジョージ症候群の心奇形は、生まれつき心臓に穴が開いたり、心臓の弁が正常に機能しないなど、血液の循環に影響を与えます。

たとえば心臓に穴が開いた場合、血液が正しく循環せず、体内の酸素や栄養素が不十分になり、発育の遅れや体力低下のリスクがあるのです。

腎奇形

ディジョージ症候群における腎奇形では、腎臓が正常に形成されない、または腎臓の数が足りない状態により、腎臓の機能が低下します。腎臓は体内の不必要な物質や水分を排泄する重要な臓器です。機能しないと、体内の毒素や水分が溜まり続けるリスクがあります。このため腎奇形が進行すれば、高血圧や腎不全のリスクもあります。

ディジョージ症候群が引き起こす合併症

ディジョージ症候群でよくみられる合併症は、免疫不全による感染症と先天性心疾患の2つです。本項目ではこれらを詳しく解説します。

合併症は、症状や特徴とは違います。症状はディジョージ症候群が原因で起こる身体や精神の変化、不快感をいいます。一方合併症は、ディジョージ症候群が原因となる、ディジョージ症候群以外の病気のことです。

免疫不全による感染症

ディジョージ症候群では、胸腺の低形成や無形成による細胞性免疫能力の低下により感染症に対する抵抗力が低くなります。胸腺は免疫機能の中心的な役割を担うT細胞の発達に必要な臓器です。
そのため、風邪やインフルエンザにくわえ、以下の感染症にも繰り返しかかりやすくなります。

  • 上気道感染症
  • 肺炎
  • 皮膚感染症
  • 胃腸感染症
  • 結核
  • ウイルス性肝炎
  • クラミジア感染症
  • サイトメガロウイルス感染症
  • ヒトパピローマウイルス感染症

T細胞とは、ヒトの免疫で重要な役割を担い、ウイルスや細菌から身体を守る役割をしています。B細胞も身体を守る役割をしますが、T細胞と違い骨髄で作られているため、数は正常です。しかしB細胞の数は正常でも、T細胞の数が足りなければ、健康なヒトとくらべ、感染症にかかりやすくなるのです。

先天性心疾患

先天性心疾患とは、生まれつき心臓や血管の形が正常と異なる病気です。異常が起こった染色体にあるTBX1遺伝子は、心臓や大血管の形を決める役割を持っています。TBX1遺伝子がうまく機能しないと、生まれたときに心臓や血管の形が正常と異なる場合があります。

ディジョージ症候群における先天性心疾患で起こりやすいのは、ファロー四徴症や大動脈弓離断です。これらの先天性心疾患が重症ならば、手術を必要とします。

ディジョージ症候群の治療法

染色体異常を修復する治療はありません。現れた症状を緩和する治療が中心になります。

低カルシウム血症に対する治療は、カルシウムを含む製剤の服用が一般的です。

また、組織や臓器の症状に合わせた外科手術がおこなわれる場合もあります。たとえば、口蓋裂では、口の裂け目を修復する手術をします。腎奇形では、必要に応じて腎臓の手術がおこなわれます。これらの手術は、専門医によりおこなわれ、症状に応じた治療法が選択されます。
感染症の予防や治療には、抗生物質などの薬剤が使用されます。

胸腺の低形成や無形成に対し、胸腺移植も治療法の一つとして考えられています。胸腺移植は臓器移植の1種で、その目的は胸腺の機能を回復し、T細胞の数を十分獲得することです。外科手術後、免疫抑制剤を用い、拒絶反応を抑制します。ただ現状は、臨床試験段階であり安全性や有効性についてまだ確立されていません。

ディジョージ症候群患者の予後

治療できれば予後は悪くないといえますが、重症度によって生存率に差があります。重度ならば乳幼児期に死亡する可能性が高く、軽度なら成人期まで生存し、就学や就労もできるでしょう。

ディジョージ症候群の重症度は、以下2点で判断される傾向にあります。

  • どれだけT細胞を作る能力があるか
  • 心臓や腎臓が正常からどれだけ変化しているか

染色体異常が原因になる病気の中で、ディジョージ症候群は微小欠失症候群と呼ばれるグループに属します。微小欠失症候群の中で、ディジョージ症候群はダウン症の次に生存率が高いため、予後は決して悪くないともいえます。

まとめ

ディジョージ症候群は生まれつきの染色体異常が原因で起こります。
染色体に存在する遺伝子がうまく働かない結果、現れるのは以下の症状です。

  • 心奇形や腎奇形
  • 免疫不全による感染症
  • 特有の顔貌
  • 知的障害

染色体の異常を治す方法はないため、治療は現れた症状を緩和する形になります。
重症度により治療後の生存率は変わります。

微小欠失症候群の中で、ダウン症の次に生存率が高いとされ、治療後の就学や就労も可能です。
重症度によっては、生後間もなく手術が必要な場合もあります。そんないざというときに備え、ヒロクリニックのNIPT(新型出生前診断)で検査してみませんか?ヒロクリニックのNIPT(新型出生前診断)で ディジョージ症候群の検査は可能です。

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Q&A

  • Q
    ヒロクリニックのNIPTでディジョージ症候群はわかる?
    ディジョージ症候群は、ヒロクリニックのNIPT(新型出生前診断)でわかります。
    NIPT(新型出生前診断)とは、妊娠10週未満でも受けられる検査です。胎児へのダメージが少ない非侵襲的出生前遺伝学的検査と呼ばれています。赤ちゃんが生まれつきもつ疾患の可能性や、性別を判定できます。
  • Q
    羊水検査とエコーで診断できる?
    ディジョージ症候群は、羊水検査とエコーでの診断が可能です。
    NIPT(新型出生前診断)で陽性がでた場合に、羊水検査がおこなわれます。羊水検査は確定診断の1つです。確定診断とは病気の種類や原因をはっきりと決めるもので、これにより医師は治療方針を考えられます。
    エコーは超音波検査ともいわれ、ディジョージ症候群で現れる臓器の異常を探す検査です。多くは出生後におこないます。出生後の方が、生まれた赤ちゃんにエコー検査をし、心奇形や腎奇形をみつけやすいのです。出生前も、胎児の心奇形や腎奇形を探せますが、難しいといわれています。

本記事では、ディジョージ症候群について解説します。治療法や予後、よくある質問にも回答します。ディジョージ症候群について気になる方は、ぜひ参考にしてください。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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