常位胎盤早期剝離とは【医師監修】

常位胎盤早期剝離とは

常位胎盤早期剥離は、妊娠中に何らかの理由で胎盤がはがれることで、赤ちゃんや妊婦さんの生命に危険が生じる病気です。この病気になった場合は一刻の猶予も許されません。妊娠中期以降に腹痛や出血などがあったら、すぐに病院を受診しましょう。

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はじめに

常位胎盤早期剥離とは、妊娠中に何らかの理由で胎盤がはがれることで、赤ちゃんや妊婦さんの生命に危険が生じる病気です。赤ちゃん、お母さん双方ともに死亡率が高く、この病気になった場合は一刻の猶予も許されません。今回は、常位胎盤早期剥離について、基本的な事柄を簡単にまとめるとともに、常位胎盤早期剥離で見られる症状や、自分でできる予防法などについても解説いたします。

胎盤とは

ここで最初に、そもそも「胎盤(たいばん)」とは何か、どんな働きをしているのか、また胎盤と関係の深いNIPT(新型出生前診断)について簡単に解説しておきます。

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胎盤の構造と役割

胎盤(たいばん)とは、赤ちゃんに栄養や酸素を渡すための臓器です。妊娠が成立するとともにお母さんの子宮の中にできるもので、赤ちゃんとはへその緒(臍帯:さいたい)という細いひもでつながっています。

胎盤の構造と役割

NIPT(新型出生前診断)の仕組み

出生前診断とは、赤ちゃんに生まれつきの病気(染色体異常)があるかどうかを調べる検査です。通常の出生前診断はお母さんのお腹に細い針を刺して羊水や絨毛を採取することで行われますので、羊水検査で1/300、絨毛検査で1/100 といった流産などのリスクが存在します。

NIPT(新型出生前診断)は、お母さんから採血した血液から赤ちゃん由来の遺伝子を検出し、21トリソミー(ダウン症候群)18トリソミー(エドワーズ症候群)13トリソミー(パトウ症候群)などの染色体異常を調べる検査のことです。通常の採血と同じ血液で調べることができ、流産のリスクがないので、非侵襲的出生前遺伝学的検査とも呼ばれます。

このNIPT(新型出生前診断)で偽陽性(赤ちゃんに染色体異常がないのに検査結果で染色体異常の疑いがあるとされる場合)が出る原因のひとつに、胎盤のモザイクがあります。胎盤に少数の染色体の異常がない細胞と、異常がある細胞が混在していると、、その遺伝子がお母さんの血液の中に紛れ込むのです。胎盤のモザイクは赤ちゃんの発育不全の原因となることがあるため、現在注目を集めている病態の一つです。

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常位胎盤早期剝離とは

常位胎盤早期剥離とは、正常な位置にある胎盤が、お腹に赤ちゃんがいるのにも関わらず、何らかの原因ではがれてしまうことをいいます。赤ちゃんがお腹の中にいるのに胎盤がはがれてしまうと、赤ちゃんに栄養や酸素を届けることができなくなり、赤ちゃんの命が危険にさらされます。また、胎盤がはがれる時に大量に出血することも多く、妊婦さんが死亡する主な原因のひとつとなる病気です。

常位胎盤早期剥離は妊娠32週頃から急に増え始め、妊娠36週が発症のピークとなっています。出産直前に発症することも多く、無事に出産を終えるまで気を緩めることのできない病気です。

常位胎盤早期剝離が起きる原因

2022年7月時点では、常位胎盤早期剥離が起こる確実な原因についてはわかっていません。しかしながら、常位胎盤早期剥離になりやすい人には一定の傾向があることがわかってきました。ここでは、どんな人が常位胎盤早期剥離になりやすいのか、またどのくらいの確率で常位胎盤早期剥離が起こるのかについて説明いたします。

常位胎盤早期剝離になりやすい人

常位胎盤早期剥離になりやすい人として現在わかっているものには、以下のようなものがあります。リスクが高いとされる順に、なりやすい条件を並べてみました*1。 

  • 常位胎盤早期剥離になったことがある:10倍
  • 子宮内感染:9.7倍
  • 48時間以上の前期破水:9.9倍
  • 妊娠高血圧症候群:4.45倍
  • 高血圧合併妊娠:2.48倍
  • 48時間未満の前期破水:2.4倍
  • 早産:1.63倍
  • 体外受精-胚移植(IVF-ET)妊娠:1.38倍
  • 喫煙:1.37倍
  • 高齢出産(出産時の年齢が35歳以上):1.20倍

また、上記以外で常位胎盤早期剥離を起こす原因として、突然の怪我や事故などによる腹部への衝撃があります。例えば交通事故に遭った、転んでお腹を打ったなど、お腹に衝撃が加わった場合に胎盤が衝撃に耐えきれず、はがれてしまうことがあります。

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常位胎盤早期剝離が起きる確率

常位胎盤早期剥離が起きる確率は、お腹の中に赤ちゃんが一人だけの場合(単胎:たんたい)で出産1000件に対し5.9件、赤ちゃんが二人の場合(双胎:そうたい、双子)で出産1000件に対し12.2件となっています*1

常位胎盤早期剝離の症状

常位胎盤早期剥離の症状は、出血と下腹部の痛み、お腹の張りや硬さ、子宮の収縮や板状硬という腹筋の緊張などです。特に妊娠中に出血があった場合は、量が少なくても常位胎盤早期剥離の可能性がないかの確認が必要です。

上にあげた症状は、切迫早産の症状と少し似ています。常位胎盤早期剥離の時の腹痛は出産の痛みとは異なり、波があるというよりはずっと持続的に同じ痛みが続くことが多いです。突然の激痛で発症する場合もあれば、「なんとなく痛い」というのが続くこともあります。また、子宮が収縮したり、不自然に張ることもよくあります。

胎盤がはがれることで赤ちゃんの命に危険が及ぶと、赤ちゃんの胎動が止まることがあります。また、出血の量が多い場合、貧血によって妊婦さんにめまいや立ちくらみなどの症状が出ることがあります。

中には、症状が出ない常位胎盤早期剥離もあります。この場合は、自分では気づかないこともあります。出産時に初めて、常位胎盤早期剥離を起こしていたことが発覚することもたまにあります。

常位胎盤早期剝離の症状

常位胎盤早期剝離の徴候

常位胎盤早期剥離を強く疑う徴候としては、以下の3つがあります。

  • お腹の痛みがずっと続いている
  • 出血の量が多い
  • 赤ちゃんの動きが感じられない

特に妊娠30週までに上記のようなことが起こったら、常位胎盤早期剥離の可能性がありますので、すぐに病院に連絡しましょう。

赤ちゃんへの影響

常位胎盤早期剥離が起こった場合、赤ちゃんの死亡率は25〜30%に上ります。死産と早期新生児死亡を含めた全周産期死亡のおよそ20%が常位胎盤早期剥離によるものです*2

また胎盤から栄養と酸素が送られないことによって赤ちゃんに後遺障害を残すことも多く、重い脳性麻痺の原因のうちの3割は常位胎盤早期剥離となっています*3

また、新生児のうちに脳室内出血をきたすことも多く、精神発達遅滞やてんかんを含めた発達障害を起こすことも少なくありません。

またお母さんの死亡率も高く、妊娠・出産に伴い命に関わる大出血を起こす「産科危機的出血」による妊婦さんの死亡原因のうち、11%がこの病気によるものです。

常位胎盤早期剝離の治療

常位胎盤早期剥離の治療は、一刻も早く出産をし、赤ちゃんを母体から出すことです。特に赤ちゃんに徐脈などの危険な徴候が出ている場合、出産までの時間が短いほど、赤ちゃんに後遺症が残らず生存できる確率が高くなると言われています。陣痛がない場合は、緊急帝王切開術の適応となることが多いです。

ただし母体の状態が悪く、大量出血ですでに貧血や脱水を起こしている場合は、帝王切開の手術を行うこと自体がお母さんの命に関わることも少なくありません。その場合は、止血剤や血栓予防薬、輸血などを行い、お母さんの状態を安定させることが最優先となります。

常位胎盤早期剥離とはっきり診断できない場合でも、腹痛が持続的に続き、常位胎盤早期剥離の疑いが少しでもある場合は、入院の上、分娩監視装置で胎児心拍のモニタリングを行います。

常位胎盤早期剝離の予防

常位胎盤早期剥離を予防するために妊婦さんができることは、まずタバコを止めることです。これはご自身の意思だけでできる唯一のことですので、妊娠中で今タバコを吸っている方は、今すぐ禁煙しましょう。また妊娠中のご家族がいる方も、受動喫煙の可能性があるため、禁煙した方が良いでしょう。

また、もともと高血圧の持病がある方、また妊娠してから血圧が上がったという方は要注意です。主治医の先生と相談し、血圧の管理を厳密に行いましょう。

常位胎盤早期剥離の症状は、早産の場合と似ています。「お腹が痛いから早産かも」「軽い出血があったからおしるしかも」と軽く考えず、腹痛や出血があった場合はすぐに病院に連絡しましょう。

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まとめ

以上、常位胎盤早期剥離について簡単にまとめました。妊娠中期から後期にかけて、腹痛や出血があったら、常に常位胎盤早期剥離を疑って対処する必要があります。早期発見により、赤ちゃんやお母さんの命が助かることも少なくありません。おかしいな、と思ったら、すぐに病院に連絡しましょう。

【参考文献】

常位胎盤早期剥離は、妊娠中に何らかの理由で胎盤がはがれることで、赤ちゃんや妊婦さんの生命に危険が生じる病気です。この病気になった場合は一刻の猶予も許されません。妊娠中期以降に腹痛や出血などがあったら、すぐに病院を受診しましょう。

NIPTについて詳しく見る

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記事の監修者

川野 俊昭先生

川野 俊昭先生

ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医

産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。

略歴

1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格

日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医

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