常位胎盤早期剝離とは?原因や症状、リスク、診断方法から治療・予防法までを医師監修のもと徹底解説。母体・胎児への影響や緊急対応の重要性についてもわかりやすく解説します。妊娠中の注意点を正しく理解するために。
この記事のまとめ
常位胎盤早期剥離とは、正常な位置にある胎盤が、赤ちゃんが生まれる前にはがれてしまう病気です。
持続する強いお腹の痛みや張り、鮮血の出血、胎動の変化などがあれば、量や程度に関わらず早めの受診が必要です。
発症の確率は単胎で1000件に5.9件、双胎で1000件に12.2件と報告されています。
確実な原因はわかっていませんが、喫煙や高血圧、破水の長期化などでリスクが上がることがわかっています。
治療は一刻も早い出産が基本で、症状が軽いうちに連絡するほど赤ちゃんとお母さんの負担を減らせます。
「様子を見てから」ではなく、気になった時点で産婦人科に連絡することが大切です。
この記事でわかること
- 常位胎盤早期剥離の症状・原因・治療の基本
- 自分では気づきにくいケースと、見逃さないための徴候
- 今すぐ受診すべき症状の目安
- 常位胎盤早期剥離を防ぐためにできること
こんな症状があれば、すぐに産婦人科・救急に連絡してください
- お腹の痛みや張りが波を打たずにずっと続いている
- 生理よりも量が多い出血や、鮮血の出血がある
- 胎動がいつもより少ない、または感じられない
- 強いめまいや立ちくらみがある
一つでも当てはまる場合は、様子を見ずにかかりつけの産婦人科、または夜間・休日は救急に連絡してください。妊娠週数に関わらず、迷ったときは連絡して大丈夫です。
はじめに
常位胎盤早期剥離は、妊娠中に胎盤が急にはがれ、赤ちゃんとお母さんの命に関わることがある病気です。
名前だけを見ると難しく感じますが、症状や受診の目安を知っておけば、いざという時に落ち着いて行動できます。
この記事では、常位胎盤早期剥離の症状・原因・治療について、公的機関や学会の資料をもとに解説します。
あわせて、妊娠中に赤ちゃんの染色体を調べるNIPT(新型出生前診断)との関わりについても簡単に触れます。
常位胎盤早期剥離とは
常位胎盤早期剥離とは、正常な位置にある胎盤が、赤ちゃんが生まれる前にはがれてしまう病気です。
胎盤(たいばん)は、赤ちゃんに栄養や酸素を届けるための臓器で、へその緒(臍帯:さいたい)を通じて赤ちゃんとつながっています。
本来、胎盤は赤ちゃんが生まれたあとにはがれて排出されるものです。
常位胎盤早期剥離では、赤ちゃんがまだお腹の中にいる段階で胎盤がはがれてしまうため、赤ちゃんへの栄養や酸素の供給が急に途絶えます。
はがれる際に大量出血を伴うことも多く、妊婦さんの命にも関わる病気です*1。
常位胎盤早期剥離は妊娠32週ごろから発症が増え始め、妊娠36週前後がピーク*1。
出産直前に起こることも珍しくなく、臨月に入っても油断はできません。

前置胎盤や切迫早産との違い
妊娠中に出血や腹痛を起こす病気には、前置胎盤や切迫早産もあります。
前置胎盤は胎盤の位置そのものに問題がある病気で、常位胎盤早期剥離とは原因が異なります。
常位胎盤早期剥離の腹痛は、波があるというよりも持続的に続くことが多い点が特徴です。
ただし自己判断で切り分けることは難しいため、気になる症状があれば医師の診察を受けてください。
常位胎盤早期剥離の症状・気づき方
常位胎盤早期剥離の主な症状は、出血・持続する腹痛・お腹の張りや硬さです。
妊娠中に出血があった場合は、量が少なくても常位胎盤早期剥離の可能性を確認する必要があります。
腹痛は出産時の陣痛のように波を打つのではなく、持続的に同じ痛みが続くことが多いといわれています。
突然の激痛で始まる場合もあれば、「なんとなく痛みが続く」という形で始まることもあります。
子宮が硬くなる、板状に張るといった変化も、見逃したくないサインです。
胎盤がはがれて赤ちゃんへの酸素供給が滞ると、胎動が止まる、または少なくなることがあります。
出血量が多い場合は、貧血によってお母さんにめまいや立ちくらみが出ることもあります。

症状が軽い・自分では気づきにくいケース
常位胎盤早期剥離の中には、目立った症状が出ないケースもあります。
出血が子宮の外に出ず内側にとどまる場合、痛みや出血に気づかないまま進行することがあります。
出産のときに初めて、胎盤がはがれていたことがわかるケースもたまにあります。
私たちの外来でも、妊娠後期の方から「これは常位胎盤早期剥離のサインですか」というご相談をいただくことがあります。
自己判断がむずかしい病気だからこそ、迷ったときはまず連絡することをお伝えしています。
SNSでも、常位胎盤早期剥離を経験した方の投稿を見かけます。
「私も息子を産むとき最後の方で常位胎盤早期剥離になったけど無事だったのは奇跡だったんだな…取り上げてくれた先生本当にありがとう…」と@chab0358さんが振り返っていました。
早めに気づき、医療機関につながることが結果を左右すると感じさせる投稿です。
また、「わしも、常位胎盤早期剥離やってん。まー、産まれた娘はやんちゃに育っております。」と@NY1jvgD2lcZj4hnさんが投稿しているように、適切な治療を受けたあと元気に成長しているお子さんも大勢います。
病名の重さに不安を感じすぎず、まずは症状と受診の目安を知っておくことが安心につながります。
常位胎盤早期剥離が起こる原因とリスク要因
常位胎盤早期剥離が起こる確実な原因は、現時点でわかっていません。
一方で、どのような人に起こりやすいかは研究が進んでいます。
ここでは、リスクが高いとされる要因と、実際に起こる確率を紹介します。
常位胎盤早期剥離になりやすい人の特徴
常位胎盤早期剥離になりやすい要因として、現在わかっているものを表にまとめました。
数値はリスクが高いとされる順に並んでいます*1。
| リスク要因 | リスクの目安(倍率) |
|---|---|
| 常位胎盤早期剥離になったことがある | 約10倍 |
| 48時間以上の前期破水 | 約9.9倍 |
| 子宮内感染 | 約9.7倍 |
| 妊娠高血圧症候群 | 約4.45倍 |
| 高血圧合併妊娠 | 約2.48倍 |
| 48時間未満の前期破水 | 約2.4倍 |
| 早産 | 約1.63倍 |
| 体外受精-胚移植(IVF-ET)妊娠 | 約1.38倍 |
| 喫煙 | 約1.37倍 |
| 高齢出産(35歳以上) | 約1.20倍 |
上記以外にも、交通事故や転倒などによる腹部への強い衝撃が原因となることがあります。
お腹に衝撃が加わった場合は、症状がなくても医師に相談すると安心です。
表の中の妊娠高血圧症候群は、リスクを高める要因の一つとして知られています。
血圧の変化には妊娠中から注意しておくとよいでしょう。
常位胎盤早期剥離が起こる確率
常位胎盤早期剥離が起こる確率は、単胎(赤ちゃん一人)で出産1000件に対し5.9件、双胎(赤ちゃん二人)で1000件に対し12.2件と報告されています*1。
決して高い確率ではありませんが、誰にでも起こりうる病気です。
赤ちゃんとお母さんへの影響
常位胎盤早期剥離が起こった場合、早期の対応が赤ちゃんとお母さんの負担を大きく左右します。
ここでは、公的機関の資料をもとに、想定される影響を客観的な数値で紹介します。
常位胎盤早期剥離が起こった場合の赤ちゃんの死亡率は25〜30%とされ、死産と早期新生児死亡を含めた全周産期死亡のおよそ20%を占めます*2。
胎盤からの栄養と酸素の供給が途絶えることで、赤ちゃんに後遺障害が残ることもあり、重い脳性麻痺の原因の約3割は常位胎盤早期剥離によるものです*3。
新生児のうちに脳室内出血をきたすこともあり、精神発達遅滞やてんかんを含む発達障害につながる場合もあります。
お母さん側も、妊娠・出産に伴う命に関わる大出血「産科危機的出血」による死亡原因のうち、11%が常位胎盤早期剥離によるものとされています。
数字だけを見ると不安になりますが、これは「重症化した場合の統計」であり、早期に受診し治療を受けることでリスクを下げられます。
症状が軽いうちに連絡するほど、赤ちゃんに後遺症を残さず生存できる可能性は高くなるとされています。
常位胎盤早期剥離の治療
常位胎盤早期剥離の治療は、一刻も早く赤ちゃんを出産させることが基本です。
赤ちゃんに徐脈(心拍が通常より遅くなる状態)などの危険な兆候が出ている場合、出産までの時間が短いほど、後遺症なく生存できる可能性が高くなるといわれています。
陣痛が来ていない場合は、緊急帝王切開が選択されることが多くなります。
母体の状態が悪く、大量出血により貧血や脱水を起こしている場合は、手術自体がお母さんの命に関わることもあります。
その際は止血剤や血栓予防薬、輸血などでお母さんの状態を安定させることが最優先となります。
常位胎盤早期剥離とはっきり診断できない場合でも、腹痛が持続し疑いが少しでもあれば、入院のうえ分娩監視装置で胎児心拍をモニタリングします。
慎重な経過観察も、大切な治療の一環。
常位胎盤早期剥離を防ぐためにできること
常位胎盤早期剥離を確実に防ぐ方法はありませんが、リスクを減らす行動はあります。
まず取り組みやすいのが禁煙です。
妊娠中に喫煙している方は、今すぐ禁煙してください。
ご家族に喫煙者がいる場合は、受動喫煙を避けるためにも協力をお願いしましょう。
もともと高血圧の持病がある方や、妊娠してから血圧が上がった方は注意が必要です。
主治医と相談しながら、血圧の管理を継続してください。
常位胎盤早期剥離の症状は、切迫早産やお腹の張りと似ていることがあります。
「早産かも」「おしるしかも」と軽く考えず、腹痛や出血があれば産婦人科に連絡してください。
私たちの外来でも、妊娠中期以降の妊婦さんには、体調の小さな変化でも記録しておくことをお伝えしています。
いつからどんな症状があったか、簡単なメモが診察の助けに。
常位胎盤早期剥離とNIPT(新型出生前診断)の関係
常位胎盤早期剥離そのものは、NIPT(新型出生前診断)で予測できる病気ではありません。
一方で、胎盤には間接的な関わりがあります。
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの採血から赤ちゃん由来の遺伝子を調べる検査です。
21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)などが対象です。
この検査で偽陽性(赤ちゃんに異常がないのに疑いが出ること)が起こる原因の一つに、胎盤のモザイクがあります。
胎盤の一部に染色体異常のある細胞が混じっていると、その遺伝子がお母さんの血液に紛れ込むことがあります。
胎盤のモザイクは赤ちゃんの発育不全の原因になることもあり、現在も研究が続いている分野です。
常位胎盤早期剥離についてよくある質問
常位胎盤早期剥離について、妊婦さんから実際によく寄せられる質問にお答えします。
気になる項目から読んでみてください。
Q. 常位胎盤早期剥離とはどんな病気ですか?
正常な位置にある胎盤が、赤ちゃんが生まれる前にはがれてしまう病気です。
赤ちゃんへの栄養・酸素供給が途絶え、大量出血を伴うこともあるため、早期の受診と治療が重要です。
Q. 常位胎盤早期剥離に自分で気づけないことはありますか?
あります。
出血が子宮内にとどまる場合など、目立った症状が出ないケースもあります。
持続する腹痛やお腹の張り、胎動の変化などがあれば、自己判断せず早めに受診してください。
Q. 常位胎盤早期剥離はどのくらいの確率で起こりますか?
単胎で出産1000件に対し5.9件、双胎で1000件に対し12.2件と報告されています*1。
喫煙・高血圧・前期破水などでリスクが上がる傾向があります。
Q. 常位胎盤早期剥離を予防する方法はありますか?
確実な予防法はありませんが、禁煙と血圧管理はリスクを減らす行動として推奨されています。
腹部への強い衝撃を避けることも大切です。
Q. 常位胎盤早期剥離と診断されたら、どんな治療をしますか?
基本は一刻も早い出産で、多くの場合は緊急帝王切開が選択されます。
母体の状態によっては、輸血や止血剤で全身状態を安定させることが優先されます。
Q. 常位胎盤早期剥離とNIPT(新型出生前診断)は関係がありますか?
常位胎盤早期剥離そのものはNIPTで予測できる病気ではありません。
ただし胎盤のモザイクがNIPTの偽陽性の原因となることがあり、胎盤を介した関わりがあります。
まとめ
常位胎盤早期剥離は、妊娠中期から後期にかけて、誰にでも起こりうる病気です。
持続する腹痛やお腹の張り、出血、胎動の変化があれば、常に可能性を疑って対処してください。
早期発見によって、赤ちゃんとお母さんの命が守られることも少なくありません。
「おかしいな」と感じたら、様子を見ずにすぐ病院へ連絡しましょう。
妊娠中の症状全般が気になる方は、切迫早産やお腹の張りについての関連記事もあわせてご覧ください。
NIPT(新型出生前診断)についてのご質問は、ヒロクリニックNIPTまでお問い合わせください。
【参考文献】
- *1 公益社団法人日本産科婦人科学会 – 産婦人科診療ガイドライン―産科編
- *2 国立研究開発法人国立成育医療研究センター – 出産に際して知っておきたいこと
- *3 公益社団法人日本産婦人科医会 – (6)常位胎盤早期剝離
- 日本医療機能評価機構 産科医療補償制度 – 妊産婦の皆様へ 常位胎盤早期剥離ってなに?
- 今日の臨床サポート – 常位胎盤早期剝離
- 公益社団法人日本産婦人科医会 – 2.胎盤性モザイク(confined placental mosaicism : CPM)について
- 九州大学病院産科婦人科 – 超早産期に発症した常位胎盤早期剥離の臨床像の検討
常位胎盤早期剝離とは?原因や症状、リスク、診断方法から治療・予防法までを医師監修のもと徹底解説。母体・胎児への影響や緊急対応の重要性についてもわかりやすく解説します。妊娠中の注意点を正しく理解するために。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。


