タバコが赤ちゃんへ及ぼす影響とは【医師監修】

結論から言うと、タバコは赤ちゃんに悪い影響を与えます。ほとんどすべての産婦人科医が、タバコを吸っている妊婦さんに対して禁煙を勧めるのは、赤ちゃんへの悪影響がはっきりしているからです。お父さんや同居のご家族からの受動喫煙も悪い影響があります。

胎児の性別は
10週目でわかります

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妊娠中の喫煙が赤ちゃんに及ぼす影響

妊娠中のお母さんがタバコを吸うと、流産・早産のほか、胎児発育遅延、出血、破水の異常(前期破水など)、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、死産などといったさまざまな妊娠および出産の異常、そして低出生体重や周産期死亡などの新生児異常が起こりやすくなります。また、赤ちゃんが生まれつきの病気を持つ先天異常の確率も高くなることがわかっています。

これらの異常はいずれも、喫煙期間が長い、または喫煙本数が多い程、リスクは高くなるとされています。

ここではこれらの異常のうち、流産、早産、死産、低出生体重、先天異常の5つについて簡単に説明いたします。 

流産

流産とは、何らかの原因で妊娠22週未満に胎児が亡くなることを言います。医療機関で確認された妊娠のうち15〜20%が流産で終わると言われており、流産の約85%は妊娠12週までに起こります。 

妊娠11週頃までに起こる流産の原因のほとんどは、胎児の先天異常や遺伝性疾患です。先天異常の原因の一つとして喫煙が挙げられており、喫煙者の女性が自分でも気がつかないうちに妊娠した場合などは自然流産で終わることも少なくありません。

妊娠12週以降の流産の原因のうち、お母さん側の要因としてわかっているものとしては、子宮筋腫や子宮頸管無力症など子宮の構造上の問題のほか、重度の内科疾患(甲状腺機能異常、糖尿病、高血圧など)や感染症、そして喫煙、飲酒、薬などが挙げられます。 

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早産

早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことです。タバコを吸っている妊婦さんが早産を起こす確率は、タバコを吸わない妊婦さんと比べて1.4〜1.5倍も高いことがわかっています。 

早産は、すべての妊娠のうち、およそ5%に起こるとされています。早産で生まれた赤ちゃんは身体が十分育つ前にお母さんの胎内から出なければならなかったため、正期産(妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産)で生まれた赤ちゃんと比べ、身体が小さく体重が少ないのが特徴です。妊娠22週の赤ちゃんの体重は500g前後であり、臓器の発達が十分ではなく自力で呼吸ができません。長期に渡り新生児集中治療室(NICU)で治療を受ける必要があります。

また、1000g未満で生まれた赤ちゃんのうち、10〜20%に脳性麻痺などの重い後遺症が残ります。

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死産

死産とは、厚生労働省によると「妊娠12週以降に死亡したお腹の中の赤ちゃんを出産すること」と定義されています。残念ながら死産を迎えた場合は、お住まいの市区長村に届出をすることを義務付けています。

低出生体重 

低出生体重児とは、生まれた時の体重(出生体重)が2500g未満の赤ちゃんのことです。早産の項でも説明しましたが、低出生体重児は身体の各臓器の発達が未熟であることから死亡率も高く、新生児集中治療室での管理など医療的ケアを必要とすることが多くなります。

さらに、脳性麻痺や知的障害などの確率も高く、発育・発達の遅れが見られることも多いです。また、大人になってから生活習慣病となる確率が高いことがわかっています。 

妊婦さんが1日1本でもタバコを吸うと、低出生体重児を出産するリスクが高まります。タバコを吸った妊婦さんと吸っていない妊婦さんを比べると、タバコを吸った妊婦さんから生まれる赤ちゃんは、平均で200gほど少ない体重となります。1日10本以上タバコを吸うヘビースモーカーの妊婦さんの場合は特に注意が必要で、平均出生体重から450g軽い状態で生まれたという報告もあります。 

先天異常

先天異常とは、生まれる前から発生する異常です。妊婦さんがタバコを吸うことにより、水頭症、小頭症、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)、湾曲足(例:XO脚)、指の異常などの発生率が高くなるといわれています。

またタバコの成分は遺伝子を傷つけるため、ダウン症などの遺伝子疾患の発生に関係していると言われています。例えばダウン症の場合、34歳以下の母親の喫煙により発生率が2.98倍上昇すると報告されています。 

胎児のダウン症などの遺伝子疾患が気になる場合は、NIPT(新型出生前診断)の受検を検討すると良いでしょう。

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父親の喫煙が赤ちゃんへ及ぼす影響とは

父親の喫煙も、赤ちゃんには悪い影響を与えます。父親がタバコを吸っている場合は、妊婦さんがタバコを吸っている場合と同様に、 

  • 流産
  • 早産
  • 死産
  • 低出生体重
  • 先天異常 

のリスクが高いことがわかっています。 

タバコが及ぼす赤ちゃんへの影響は、先天異常や突然死にもつながる

出産後に母親がタバコを吸った時の赤ちゃんへの影響

赤ちゃんに直接タバコの煙を吸わせなくても、喫煙した両親が吐いた息(呼気)や服、または髪の毛にタバコの有害成分が含まれます。 

さらに、出産後に喫煙した母親の母乳を調べるとニコチンが検出されるという報告もあるので、授乳中にも禁煙を続けることを強くお勧めします。

赤ちゃんへの受動喫煙の影響

妊婦さんだけではなくお父さんをはじめとした同居のご家族がタバコを吸っている場合も、受動喫煙によって赤ちゃんに悪い影響が出ることがわかっています。2019年時点での喫煙率は男性 27.1%、女性 7.6%と昔に比べて低下傾向にありますが、30〜60歳代の男性の約3割は習慣的にタバコを吸っているというデータがあります。

赤ちゃんの受動喫煙は、乳幼児突然死症候群(SIDS)などの病気にかかりやすくなることはもちろんのこと、発達障害(注意欠如・多動症:ADHD)のリスクも高まるという報告もあります。

また

  • 身長が伸びづらい
  • 知能指数が低くなる
  • 将来的に暴力犯罪をしやすくなる

などのデータもあり、非常に大きな悪い影響を与えることがわかります。

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは

乳幼児突然症候群(SIDS:sudden infant death syndrome)とは、元気だった赤ちゃんが窒息などの事故や、元々持っていた持病などもないのに突然亡くなってしまう病気です。前兆となる症状などが全くないのが特徴です。 

4000人に1人の割合で発生し、生後2〜6か月の赤ちゃんに多いといわれています。

原因はわかっていませんが、妊婦さんの喫煙に加え、受動喫煙もSIDSの原因と疑われています。両親が喫煙している場合、喫煙していない場合と比べてSIDSの発症率が約4.7倍も高くなるという報告があります。 

赤ちゃんがかかりやすくなる病気とは

お母さんがタバコを吸っている場合、SIDSのほか、赤ちゃんは気管支炎や肺炎・気管支喘息などといった呼吸器系の病気にかかる可能性が高くなります。また中耳炎や低体重出生とも関係があります。

誤飲事故の中で最も多いタバコの誤飲

タバコの誤飲で、赤ちゃんにおこるのは急性ニコチン中毒です。急性ニコチン中毒とは、タバコを誤飲・誤食した時の、めまい・下痢・腹痛・錯乱・昏睡などの症状のことをいいます。ひどい場合には死に至ることもあります。 

ニコチンの致死量は、赤ちゃんの場合10〜20mgです。タバコ1本には16〜24mgのニコチンが含まれていますので、万が一タバコを1本食べてしまったら、命に関わる事象が起こる可能性があります。赤ちゃんは何でも口に入れたがる時期がありますので、タバコを吸っているご家庭では、吸い殻は確実に処分し、タバコ本体や灰皿は赤ちゃんの手の届かないところにおいてください。 

また例えば、

  • タバコを2cm以上食べてしまった
  • タバコを浸した液体を飲んでしまった 

などといった場合は胃洗浄を必要とする可能性があるので、症状がなくても早急に医療機関を受診しましょう。

タバコに含まれる成分の具体的な影響

タバコに含まれる成分のうち、赤ちゃんに具体的な悪影響を与えることがわかっているものとしては、ニコチンや一酸化炭素、タール、活性酸素などの酸化物質(活性酸素誘導物質)などがあります。 

これらの成分はフィルターを通し直接タバコの吸い口から体に入る主流煙だけでなく、タバコの先端からでる煙(副流煙)にも同じ成分が含まれているため、妊婦さん本人がタバコを吸っていなくても、同居のご家族が吸っていることで、タバコの害が妊婦さんや胎児にも及びます。

副流煙の方が主流煙よりも有害物質の量が多いため、タバコを吸っている人は、周りの人に自分よりも大きな害を与えていることを自覚する必要があります。

ニコチン

タバコに含まれる成分のうち、最も大きな影響を与えるものの一つがニコチンです。ニコチンには血管を収縮させる作用があります。血管が収縮すると血流が減少するため、お腹の中の胎児へ酸素や栄養が届きにくくなります。ちなみにニコチンはタバコを含めた口からだけでなく、皮膚からも吸収されます。たとえば、タバコの粒子がついた服や家具に触れると、ニコチンが皮膚から身体の中に入り、赤ちゃんに良くない影響を与える可能性があります。

一酸化炭素

一酸化炭素は、胎児に届く酸素の量を減らします。酸素は血液中でヘモグロビンを結合することで身体の隅々まで運ばれます。胎児にも胎盤を通じて運ばれるのですが、一酸化炭素は酸素の代わりにヘモグロビンと結合してしまい、酸素の席を奪うからです。

タール

発がん性物質であり、文字通り、がんの原因になります。タールは粘着性が高いので、口の中から喉、そして肺や食道などに長い時間くっつき、害を及ぼします。 タバコを吸う人のがんの発生率は、吸わない人と比べて男性は1.6倍、女性で1.5倍も高いことがわかっています。タバコを吸うことでかかりやすくなると科学的に因果関係が判明しているがんには、口腔・咽頭がんや喉頭がん、肺がんや食道がんをはじめ、鼻腔・副鼻腔がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんがあります。

その他

タバコには、ニコチンやタールのほか、シアン化合物(毒物)、ダイオキシン(発がん性物質)、カドミウム(発がん性物質)、ホルムアルデヒド(発がん性物質)など多数の毒物・発がん性物質が含まれています。 

さらに、活性酸素を生み出す活性酸素誘導物質も含まれます。活性酸素が増えすぎた人間の身体はがんだけでなく、心臓疾患や生活習慣病にもかかりやすくなるといわれています。

タバコがやめられない主な原因、ニコチン依存症

「タバコをやめたい」と思ってもやめられない理由は、ニコチン依存症となってしまっているからです。ニコチン依存症とは、タバコを吸わないと調子悪く感じたり、仕事や作業の質が落ちてしまったりする症状です。アルコールが切れると暴れ出すアルコール依存症と同じ原理です。

ニコチンには依存性があり、脳に「気持ちがいい」や「心地いい」と思わせる働きを持っています。「気持ちいい」「心地いい」と感じるためには脳からノルアドレナリンやセロトニンなどの物質が分泌される必要がありますが、ニコチン依存症の場合、ニコチンがないとこれらの物質が分泌されません。その結果、ニコチンが切れると不快な気分になったりイライラしたりするのです。これらの不快感はタバコを吸ってニコチンを補給することにより解消されるので、喫煙がやめられなくなるのです。

妊娠中の禁煙

妊娠中の禁煙は、非常に大きなメリットがあります。ここではタバコをやめるメリットを簡単に説明するとともに、妊娠前・妊娠中に禁煙をした場合のメリットについてもわかりやすくまとめました。

父親・母親がタバコをやめるメリット

妊婦さんに加えてお父さん、また同居のご家族がタバコをやめると、上で説明したような赤ちゃんのさまざまな病気のリスクを確実に減らし、赤ちゃんの健康を守る効果があります。 

またおまけの効果としては、

  • タバコにかかっていた費用を他に使える
  • お父さん・お母さん自身の健康状態がよくなる
  • お父さん・お母さん自身が病気になるリスクを下げられる
  • お父さん・お母さんが長生きできる(喫煙によって余命が10年ほど短くなることがわかっています) 

などが挙げられます。特にこの物価高の時代、タバコ代を抑えられるのは、これからの子育てを考えると非常に大きなメリットとなります。タバコ1箱あたりの金額は、今後も上がることはあっても下がることはないと考えられますので、できるだけ早いうちにタバコをやめるのは、家計を守るためにも大きな助けとなるでしょう。

いつまでに禁煙すれば効果があるか

「もう妊娠も後期に入っているし、今から禁煙しても効果はないのでは?」と考える方もいらっしゃると思いますが、結論から言うとそんなことはありません。今日から禁煙を始めれば、吸い続けている場合と比べると、十分な効果が見込めます。また母乳中にもニコチンが移行するので、出産後も禁煙を継続することは非常に大切です。

妊娠前から禁煙

とはいっても、できれば妊娠を決意したらその時点で禁煙していただくのが最も良い選択です。喫煙は不妊の原因とされているからです。喫煙者の不妊率は非喫煙者の3倍以上になるという報告もあるほどです。喫煙者が禁煙した場合、さまざまな病気のリスクが抑えられ、妊娠もしやすくなるとされています。

ちなみに妊娠前に禁煙をした場合、生まれてくる赤ちゃんの出生体重は、タバコを吸っていない妊婦さんと同程度になります。

妊娠後から禁煙

妊娠後に禁煙をしても、十分な効果が認められています。とくに、妊娠初期(3〜4か月)までに禁煙すると、低出生体重児のリスクは、タバコを吸っていない妊婦さんと同じになります。さらに、早産・周産期死亡についても、リスクは低くなるとされています。

禁煙の時期は早ければ早いほど良いですが、妊娠後期に入ってからの禁煙も、これ以上赤ちゃんに害を与えないと言う意味では大変良いことです。

妊娠中の禁煙のストレス

「妊娠中に禁煙することで、ストレスがかかりそうだから禁煙しない」と言うのも一理あります。禁煙のストレスによって、不安やイライラ、落ち込みや睡眠障害などをきたすことがあります。過度なストレスは、お腹の中の胎児にも影響を与える可能性があります。

しかしながら、ストレスを乗り越えてでも、赤ちゃんの健康を守るために禁煙する価値はあります。なぜなら、ストレスが赤ちゃんに与える悪い影響よりも、タバコが与える悪い影響の方が明らかに大きいからです。 

また、ニコチン依存症による離脱症状のピークは2〜3日であることがわかっています。ここを乗り越えると、禁煙によるストレスがグッと楽になります。 

妊婦さんやご家族の方が「禁煙しよう!」と決意した時には、周りの人がしっかりサポートしてあげる、禁煙外来を受診するなど、禁煙のストレスを感じにくくする環境作りを心がけましょう。 

妊娠中のストレスによる胎児への影響【医師監修】
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妊娠中の禁煙のコツ

禁煙のコツは、「自分の意思の力だけに頼らない」です。なぜならタバコがやめられないのはニコチンによる依存症、つまり病気であり、意思の問題とは関係ないからです。

妊婦さんの場合は、やはり医療機関の手を借りるのが安全です。禁煙外来を設けている医療機関も多いですし、産科で禁煙に対するフォローを行っているところも少なくありません。まずはかかりつけの病院で相談してみることをお勧めします。

自分で禁煙してみる場合は、「少しずつ本数を減らす」よりも「キッパリとやめる」方が成功率が高いです。

無理な目標を立てず、まずは「会議の間」「半日」といった短い時間で禁煙することから始めると気持ちが楽です。それができたら1日、2日、3日と禁煙期間を伸ばしていきましょう。 

禁煙の補助としてよく知られているニコチンパッチは、日本では妊婦さんには禁忌とされています。安易な使用は避けましょう。 

よく聞くタバコの煙対策には効果があるのか

「タバコが赤ちゃんに悪いことはわかったが、どうしても止められないからできるだけ害を少なくしたい」とお考えの方もいらっしゃると思います。世の中には色々な対策が出ていますが、結論から言うと、明らかに効果がある対策はありません。なぜなら、いずれの煙対策も結局はタバコを吸っているからです。ここでは、巷にあふれるタバコ対策とその効果について簡単にまとめました。タバコの煙対策に効果がない理由は、タバコの有害成分が煙だけに含まれるのではなく、タバコを吸った人の吐く息の中にも含まれるからです。タバコを吸ってから40分くらいの間は、吐く息(呼気)からタバコの有害成分が検出されます。近くで会話したり、同じ部屋で過ごすだけでも呼気に含まれる有害成分の影響を受ける可能性が高いです。赤ちゃんにタバコの悪影響を受けさせないためには、タバコを吸ってから40分程度は赤ちゃんを抱っこしないことをお勧めします。

換気扇の下で吸う

最も手軽にできる方法として普及しているのが、換気扇の下でタバコを吸うことです。タバコの煙が換気扇を通じて吸い込まれていくのが見えるため、なんとなく良いことをしている気分になるかもしれません。

しかし、残念ながらすべてのタバコの煙が換気されるわけではありません。そして、吸った本人の服や髪の毛にはタバコに含まれる有害物質が付着しているため、抱っこした赤ちゃんが服や髪の毛に触れた場合も、タバコの悪影響を受けるでしょう。 

別の部屋で吸う

赤ちゃんや妊婦さんとは別の部屋でタバコを吸うようにしているお父さんもいらっしゃると思います。確かに直接タバコの煙を吸う量は多少減るかもしれませんが、換気扇を使用した場合、タバコの煙は部屋から換気扇まで移動します。換気扇を通じて各部屋に有害物質が入るので、結局あまり意味はありません。

ベランダで吸う

ベランダに出てタバコを吸っている方も多いですが、サッシの隙間からタバコの煙が入ります。タバコを吸った時に、服や髪の毛に付着した有害物質は取れないため、そのまま家の中へ入ると、有害物質を部屋の中へまき散らすこととなります。残念ながらほとんど効果は見られません。

電子タバコにする          

最近取り組む人が多い方法が、紙タバコを電子タバコや加熱式タバコに切り替える方法です。

確かに電子タバコは比較的煙が少ないので、吸い込む煙の量は減るように思えます。紙タバコと比較すると、燃焼させないので一酸化炭素の発生も少ないです。また、電子タバコは紙タバコと比べてニコチンやタールの量が9割以上少ないのも事実です。 

しかしながら、電子タバコや加熱式タバコは市販されてからまだ歴史が浅いため、健康被害に関して、長期的にどのくらいの害が出るのかわかっていません。妊婦さんや赤ちゃんへの影響についても情報がほとんどないため、紙タバコ以上の害が出るという可能性も否定できないのです。 

また電子タバコにはニコチンやタール以外の有害物質が紙タバコと同程度の量含まれています。発生したエアロゾル(微細なミスト)が身体に悪い影響を与えることが少しずつ明らかになっており、アメリカの若者の間では肺疾患によって命に関わる事象が起こる例が多発しています。 

さらに紙タバコよりも煙がよく見えないため、不用意に近づいてしまい、受動喫煙がおこる可能性があります。また商品によってはカートリッジのサイズが小さく、紙タバコよりも誤飲の可能性が高くなります。 

まとめ            

以上、タバコが赤ちゃんに及ぼす影響について説明しました。タバコを吸うことは、妊娠前から授乳期にわたり、一つも良いことはありません。赤ちゃんのことを大切に考えて、妊婦さんだけではなく、お父さんも含め同居しているご家族全ての方に、禁煙することを強くお勧めします。どうしても禁煙が難しいと言うことであれば、ぜひ禁煙外来を受診しましょう。

赤ちゃんにとってタバコが有害であるということは、残念ながら科学的に証拠があることです。あなたの大切な赤ちゃんを守るため、正しい選択をしましょう。

【参考文献】

結論から言うと、タバコは赤ちゃんに悪い影響を与えます。ほとんどすべての産婦人科医が、タバコを吸っている妊婦さんに対して禁煙を勧めるのは、赤ちゃんへの悪影響がはっきりしているからです。お父さんや同居のご家族からの受動喫煙も悪い影響があります。

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記事の監修者


川野 俊昭先生

川野 俊昭先生

ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医

産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。

略歴

1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格

日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医

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