21トリソミー(ダウン症)の予兆は妊娠中にあるか?【医師監修】

ダウン症の予兆

21トリソミー(ダウン症)は妊娠中にエコーやNIPT(新型出生前診断)で検査することができます。この記事では、ダウン症の原因や胎児の特徴や出生後の身体的な特徴などを解説。また、妊娠中の予兆やエコーでの診断についても解説します。

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21トリソミー(ダウン症)になる原因

21トリソミー(ダウン症候群)は、本来は2本しかない21番目の染色体が1本増え、計3本になる染色体異常症です。染色体異常のなかでは最も発生頻度の高い病気といわれています。染色体の数が3本になってしまうことは、偶発的に起こるものがほとんどで誰にでも起こり得る可能性のある病気です。

ダウン症候群は、染色体異常の特徴別に通常型・転座型・モザイク型の3つに分類されます。一番多い染色体異常は“通常型”で、全体の9割以上を占めています。

通常型は本来は父親由来の染色体を1本と母親由来の染色体を1本ずつもらってくるはずが、染色体の分離がうまくいかないために、21番目の染色体が増えてしまうことが原因で発症します。

近年の研究では通常型の発症リスクは母親の年齢に由来していることがわかってきました。高齢出産であればあるほど、ダウン症候群の赤ちゃんの出生の確率が高くなってしまうのです。なお、父親の年齢はダウン症候群の発症率にはほとんど関係ありません。

また転座型は、両親のどちらかの21番目の染色体の一部が他の染色体にくっついてしまうために発症します。

モザイク型は、染色体異常がある細胞と、正常な細胞が入り混じってしまうために発症します。

ダウン症候群の“型”は少量の血液を採取し、染色体検査を受けることで確定診断できます。

21番染色体はヒトの染色体のなかで最も小さい染色体です。そのため、染色体の中に記憶している遺伝情報が少なく、遺伝子異常が起こっても赤ちゃんの生存に影響を与える確率が低いことがわかっています。その結果、他の染色体異常に比べると出生に至る赤ちゃんの確率が高いと考えられているのです。

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21トリソミー(ダウン症)の新生児は今、増えている?

ダウン症候群の新生児は600~800人に1人の割合で生まれますが、母親の出産時の年齢に比例してダウン症候群の新生児の妊娠確率は以下の表のように高くなります。

20歳1450人に1人
25歳1250人に1人
30歳952人に1人
35歳385人に1人
40歳106人に1人

高齢出産とよばれる35歳以上の妊娠では、ダウン症候群の妊娠確率は20歳の4倍以上ととても高くなっているのです。

近年、女性の社会進出や不妊治療の進歩により高齢出産が増加しています。日本産科婦人科学会では初産が35歳以上の女性を「高年初産婦」と定義しています。2019年に厚生労働省が発表した「人口動態統計」によると、35歳以上の出産は約29%で3~4人に1人は高齢出産です。ただし、ダウン症候群児の大多数は35歳未満の女性から出生しているという報告もありますので、一概に「高齢出産の女性が増えたことでダウン症候群の新生児が増えている」といえるわけではありません

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21トリソミー(ダウン症)は妊娠中に予兆はある?

「妊娠中のつわりが胎児のダウン症候群に関係している」などのウワサがあります。しかし、妊娠中の母体の体調と胎児のダウン症候群を関連付ける科学的根拠はないため注意が必要です。

つわりは妊娠にともなって、女性ホルモンのバランスが変化するために現れる症状です。つわりの有無や程度は個人差がとても大きく、ダウン症候群の胎児を妊娠しているからといって、その程度に影響を与えることはないといわれています。

また、妊娠中はちょっとした身体の変化に敏感になってしまう妊婦さんも少なくありませんが、妊婦さんが感じる些細な体調の変化だけでは、それが胎児のダウン症候群の予兆や兆候であるとはいい切れません。胎児の先天性疾患や染色体異常を調べるためには、超音波エコー検査・出生前診断・NIPT(新型出生前診断)後の確定診断などの検査を受ける必要があります。

NIPTとは、母体の血液の中に含まれる胎児のDNAの断片を解析することで、ダウン症候群などの染色体の異常がある確率が高いかを調べる検査です。採血だけでおこなえる検査のため母体・胎児ともに負担が少ないと、注目が集まっています。

21トリソミー(ダウン症)は妊娠中に予兆はある?

21トリソミー(ダウン症候群)はエコー検査でいつわかるのか

胎児がダウン症候群かどうかを確かめるにはいくつかの方法があります。妊婦検診でおこなうエコー検査(超音波検査)もその一つです。妊娠中におこなうエコー検査は、胎児の成長や身体的特徴を確認するためにおこなわれていますが、同時にダウン症候群の胎児の身体的特徴も観察しています。

2D・3D・4Dエコーとは

一言でエコー検査といっても、2D・3D・4Dと3種類のエコー検査があります。それぞれのエコー検査の特徴を以下にまとめました。

2D一般的な超音波検査。赤ちゃんの骨格の成長や内臓の状態を観察する断面画像。
3D2Dエコーの情報をもとに立体的な画像を作成し、着色して立体的に表現した静止画像。体の内部をみることはできない。
4D3Dエコーの画像を動画にした映像。体の内部をみることはできない。

妊娠7週目〜9週目のエコー検査でダウン症候群はわかる?

妊娠7週目〜9週目の胎児は、いちご1個分くらいの大きさ。とても小さく、3D・4Dエコーであっても異常を発見することは難しい時期です。

エコー検査でダウン症候群の胎児に特徴的な身体所見が見つかりやすいのは、妊娠11週以降といわれています。妊娠11週以降になると胎児は大人の握りこぶしくらいの大きさに成長し、身体的な特徴を調べるために十分な大きさに成長しています。

ただし、エコー検査はあくまでも身体的な特徴を確認するためのものです。ダウン症候群の”可能性”を判断することしかできません。ダウン症候群の確定診断には、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を受ける必要があります。

21トリソミー(ダウン症)の胎児の特徴

妊娠11週以降には、エコー検査でダウン症候群の胎児に多く見られる身体的特徴が観察しやすくなります。ダウン症候群の可能性がある場合には、以下のような特徴が現れます。

首の後ろのむくみ

妊娠初期のエコー検査でみられるダウン症候群の特徴の1つに、“胎児の首の後ろのむくみ”が挙げられます。これを「Nuchal Translucency:NT」や「胎児後頸部皮下透明領域」と呼びます。

首の後ろの皮下組織のむくみは、妊娠初期の胎児すべてに見られる生理的な現象です。しかしダウン症候群の場合、妊娠初期から後期にかけて厚くなり、染色体の異常や心臓の機能や形態に異常を持つ胎児の頻度が高くなることが分かっています。

ただし、エコーでNTの値が大きくてもダウン症候群とは違う病気の可能性があったり、染色体異常が見られなかったりする場合があり、ダウン症候群の確定診断にはなりません。

鼻の形

特徴的な鼻の形もエコー検査でみられるダウン症候群の特徴です。ダウン症候群の場合”鼻骨の短さ”が指摘されます。鼻骨の成長などに遅れがみられることで、鼻の付け根が低く顔が平坦にみえることが特徴です。ただし、遺伝的要因も考慮しなければならず、鼻の付け根が低く顔が平坦に見えるからといってダウン症候群の確定診断にはなりません。

頭の形

ダウン症候群の胎児の約45%で、頭の横幅より縦幅が短くなる傾向が指摘されています。通常の胎児であれば顔が大きくなるにつれて顔の横幅は小さくなっていきますが、ダウン症候群の胎児の場合は大きくなればなるほど頭の横幅より縦幅が短くなる特徴が顕著になります。

その他

ダウン症候群の合併症に心臓病があります。エコー検査で胎児の心臓に血液の逆流が認められる場合や形の異常を認めるケースがあります。ただし、妊娠初期のエコーで心臓病を見つけるのは難しく、妊娠中期・後期になって心臓の異常の可能性を指摘されることも少なくありません。

21トリソミー(ダウン症)の胎児の特徴

ダウン症候群が「生まれるまで分からなかった」ということはあるのか

妊娠中にダウン症候群の可能性が指摘されず「生まれるまで分からなかった」ということが起こるリスクは0%ではありません。生まれるまでにダウン症候群が分からなかったケースを、以下に2つ紹介します。

エコーで指摘されないケース

エコー検査は胎児の体位によって確認できる範囲が限られます。さらに、目で直接観察するのではなく超音波で画像を描出するため、エコー検査だけではダウン症候群の可能性が指摘されないケースもあります。

出生前診断を受けていなかったケース

胎児の先天性疾患や染色体異常を調べるためには、出生前診断・NIPT(新型出生前診断)後の確定診断などの検査が必要です。妊婦検診のエコー検査だけでは、ダウン症候群などの胎児の異常を発見できなかったというケースも十分ありうるのです。

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21トリソミー(ダウン症)の新生児の見分け方・身体的特徴

ダウン症候群は顔つきや手の大きさなど見た目に特徴があります。ここではダウン症候群の新生児に多く見られる身体的特徴を解説します。

つり目

ダウン症候群は顔の中心部の骨がゆっくり発育します。その結果、目と目の間が広く見えたり、少しつり目がちになったり、鼻が低くなったりという特徴がみられます。

手のひら

ダウン症候群の身体的特徴は手のひらにも現れます。手のひらに「手掌単一屈曲線」と呼ばれる、横一直線に伸びる特徴的な深いシワを認めます。また指紋にも特徴があり、横に流れるような模様が多発していることもあります。

指が短い

ダウン症候群では、手の指が短いという特徴があります。特に、小指の関節は通常3個であるのに対して、ダウン症候群では2個になることがあります。また小指が内側に曲がっているのも特徴の1つです。

その他

その他にもダウン症候群の新生児は、耳が小さく頭の低い場所に位置しているのが特徴です。また耳の上部が折れていたり、耳が内側に丸まっていたりするなどの特徴があります。

ダウン症候群の寿命

20~30年前までは、ダウン症候群の人は短命でした。その理由は、心臓病などのさまざまな合併症を抱えていたり、抵抗力が弱かったりと短命になるリスクが高かったからです。近年は合併症の治療成績も向上し、平均寿命は約60歳前後に伸びていて長生きする人も増えています。

高齢出産と流産の関係

高齢出産では、胎児の先天性異常・染色体異常だけでなく流産しやすい人も多くなります。その理由を解説します。

染色体異常がある場合の流産

流産の50~70%に染色体異常があるといわれています。

一般的に流産の80%は妊娠12週までにおこるといわれていますが、染色体の数に異常があるのか、構造に異常があるのかによって流産の起こりやすい時期が異なります。

流産の起こりやすい時期
数的異常妊娠8週まで
構造的異常妊娠13週ころ

稽留流産とは

稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは、母体には自覚症状がまったくないのにもかかわらず、エコー検査で胎児心拍が確認できなかったり、発育が確認できなかったりすることで初めて指摘される流産です。
染色体異常がある受精卵や胎児の成長や心拍が止まり、子宮内にとどまっていたり、胎児の姿が見られず胎嚢だけがあったりする状態です。稽留流産は妊娠11週以内の妊娠早期に多くみられ、確率は15%程度といわれています。

まとめ

ダウン症候群は偶発的に誰にでも起こり得る染色体異常です。そして、母体の年齢が上がるにつれてダウン症候群などの染色体異常のリスクが高くなることが分かっています。妊娠11週以降であればエコー検査でダウン症候群の可能性が判断できることもあります。また出生前診断やNIPT(新型出生前診断)も、ダウン症候群の可能性を判断できます。ダウン症候群の検査・ご相談はヒロクリニックNIPTにお気軽にお問い合わせください。

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新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

【参考文献】

Q&A
よくある質問

ダウン症の予兆についてよくある質問です。参考にしてみてください。

  • Q
    妊娠中にダウン症の予兆があったらどうすれば良いですか?
    妊娠中の日常生活での体の変化とダウン症の予兆の関連を示した医学的な根拠はありません。

    しかし、高齢出産は胎児の先天性異常・染色体異常だけでなく流産のリスクも高くなっています。

    体調に変化があるときや腟からの出血がある場合はためらわず受診しましょう。

21トリソミー(ダウン症)は妊娠中にエコーやNIPT(新型出生前診断)で検査することができます。この記事では、ダウン症の原因や胎児の特徴や出生後の身体的な特徴などを解説。また、妊娠中の予兆やエコーでの診断についても解説します。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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