妊娠中のストレスによる胎児への影響【医師監修】

妊婦のストレス

妊娠中は出産への不安や体調の変化、また普段であれば気に留めることもない些細なことでイライラしたり、ストレスを感じたりする妊婦さんは少なくありません。この記事では妊娠中のストレスが与える胎児への影響とストレス解消法について医師が解説します。

妊娠したけど・・・不安
NIPTを検討してみては?

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この記事のまとめ

妊娠中は様々な要因でストレスを感じやすくなります。原因として、妊娠に伴う自律神経の乱れが主にあります。またストレスが胎児に与える影響もあります。血管の収縮により胎児が酸欠や栄養不足になったり、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが胎児に伝わり、神経機能への障害や低体重を引きおこすリスクを高めます。

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はじめに

妊娠は多くの女性にさまざまなストレスを与えます。妊娠前であれば気に留めることもない他人の言動や些細な環境音に対して、イライラしてしまうこともあるかもしれません。妊娠中は女性ホルモンのバランスが大きく変化する影響で「怒り」「悲しみ」「気分の落ち込み」「泣く」など感情の起伏が激しくなる傾向があります。また、妊娠の初期・中期・後期と体調や女性ホルモンのバランスが異なることから、それぞれの時期に適したストレス解消法を見つけ、イライラや不安な気持ちと上手に付き合うことが大切です。ぜひ、本記事を参考に上手にストレスに対処し、無事に出産を迎えましょう。

妊婦さん ストレス

妊娠中にストレスを感じること

妊娠中にはさまざまな要因でストレスを感じやすくなります。代表的なストレスに感じることを3つ紹介します。

妊娠にともなう体調や体型の変化

つわりや肌荒れ、腰痛、便秘、むくみなどの体調の変化だけでなく、体重が増えることや胸やお腹が大きくなる、妊娠線が出現するなどの体型の変化もストレスになります。特に妊娠中の体重管理は、難しいと感じることもあるでしょう。

家族などの人間関係

妊娠すると妻は母親に、夫は父親になるための役割の変化が求められます。また実両親や義両親などに妊娠・出産を報告し、産後の生活について考えなければならないなど、親戚との関係も変化します。これらの変化や気を使わなければならないことを、多くのママはストレスに感じています。

また、上のお子さんがいる場合には妊娠をきっかけに赤ちゃん返りをしてしまうこともあります。年齢や子供の性格によってその期間や程度はさまざまですが、言うことを聞かなくなったり大泣きしたりなど、いつもより子育てに手がかかるのもストレスの一因になります。

お金や仕事

子供を育てるためにはお金がかかります。出産前の準備にもお金が必要です。共働きの場合にはママが産休・育休を取得するのか、退職するのかで将来設計は大きく変わります。出産・育児にかかる費用を考えると、心配になってしまうかも知れません。

妊娠中、通勤や仕事は今まで以上に精神的にも身体的にもストレスがかかります。また妊娠中の業務内容の調整や、休職明けの時期や働き方などを考えるのもストレスに感じることも少なくありません。

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妊娠中にストレスを感じやすくなる原因

妊娠すると、些細なことでイライラしたり、ストレスを感じやすくなるのはなぜなのでしょう。いつになればストレスを感じにくくなるのでしょうか。その原因を探っていきます。

妊娠中に起こる自律神経の乱れ

妊娠中は女性ホルモンのバランスが大きく変化します。女性ホルモンのバランスが変化すると自律神経に影響を与えます。中でも黄体ホルモン(プロゲステロン)は月経前症候群(PMS)や、気分のゆらぎなども引き起こしやすい女性ホルモンです。また、黄体ホルモンは自律神経の機能調節をおこなう視床下部に影響を与え、感情のコントロールが難しくなる一因となっています。

自律神経は無意識に身体の機能の調節をおこなっており、内臓機能や体温調節など自身の意思がなくとも働き続けています。大きく分けて交感神経と副交感神経の2種類があり、それぞれの特徴は次の項目で詳しく解説します。

交感神経と副交感神経

交感神経と副交感神経には次のような役割があります。

交感神経副交感神経
緊張・興奮・活発リラックス

私たちは交感神経と副交感神経がそれぞれがバランスをとることで、心身の健康状態を保っています。しかし妊娠中は体調の変化や流産や早産、胎児の健康状態などのさまざまな不安が大きなストレスとなり、交感神経が優位になってしまうことが少なくありません。

交感神経の優位が続くと、心身は常に緊張し活発な状態になっています。憧れの人や大好きな人に会ったときのような胸のドキドキや汗をかくなどの症状の他にも、イライラ・血圧の上昇・不眠・めまい・頭痛などの症状を自覚します。そのほかに胃酸過多や過呼吸、下痢・便秘などを生じることも少なくありません。

共通点の多い自律神経の乱れと妊娠期間の心身の不調

妊娠中は女性ホルモンの影響で自律神経が乱れやすくなっています。さらに些細なストレスで自律神経が乱れやすくなっているのも妊娠中の特徴です。

自律神経が乱れると、交感神経と副交感神経のバランスが上手く取れなくなり、心や身体にさまざま不調を引き起こします。具体的には以下のような症状です。

不安、緊張、全身のだるさ、頭痛、肩こり、手足のしびれ、めまい、胸のドキドキ、胸が圧迫されるような苦しさ、眠れない

このように自律神経の乱れで感じるさまざまな症状は、妊娠時期の体調の変化と重なるものが多くあります。

そのため「妊娠を原因としたストレスにより自律神経が乱れたのか」「自律神経の乱れが原因で妊娠時期にストレスを感じるのか」の判断は難しくなっています。妊娠中に強いストレスを感じ、それが心身の不調に繋がるようであれば、早めに担当医へ相談することが大切です。

妊娠初期のストレスのおもな原因とは

妊娠初期には、イライラや鬱々とした気分の落ち込みなど感情の起伏が激しくなったり、体調が優れなくなったりして、ストレスを感じることも少なくありません。その原因の一つに妊娠による女性ホルモンのバランスの変化が挙げられます。

妊娠(受精)の準備に必要なホルモンには排卵期に分泌される「黄体形成ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」があります。妊娠初期には「ゴナドトロピン(hCG)」の分泌で体温が上がり、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」や「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が胎盤と子宮内膜の発達・形成の補助をおこないます。

卵胞ホルモン(エストロゲン)や、黄体ホルモン(プロゲステロン)が大量に分泌されることにより、イライラしたり鬱々とした気分の落ち込みが現れやすくなります。また個人差はありますが、これらのホルモン分泌により頭痛に悩まされる妊婦さんも少なくありません。妊娠初期に始まる、つわりもストレスの原因の一つになるでしょう。

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「赤ちゃんに先天的な障害がないか?」という不安もストレスに

「元気な赤ちゃんを産みたい」「赤ちゃんに障害はないのかな…」などの胎児の成長・発達に関する悩みも、妊娠中のストレスになります。ただでさえストレスだらけの妊娠中。胎児の成長・発達に関連した不安を低減するためには、NIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

NIPT(新型出生前診断)で胎児の健康リスクを早めに診断

妊娠中は心身ともにデリケートな期間です。赤ちゃんを迎え将来の夢を描くと同時に、流産や早産、先天性疾患などを心配し、それが大きなストレスになっている方も多くいらっしゃいます。NIPT(新型出生前診断)では、染色体異常に起因する先天性疾患リスクを調べることができます。

ヒロクリニックNIPTによるNIPT(新型出生前診断)

NIPT(新型出生前診断)は非侵襲的出生前遺伝学的検査ともいわれ、母体血液のみで胎児の染色体異常症による先天性疾患リスクを調べるスクリーニング検査のことです。ダウン症候群(21トリソミー)エドワーズ症候群(18トリソミー)パトウ症候群(13トリソミー)などの陽性リスクを99.9%と高精度に検出することが可能とされています。

ヒロクリニックNIPTでは、妊娠約6週(超音波検査で妊娠が確定したとき)より検査をおこなうことができます。母体の腕から少量採血をする検査で、胎児への直接的な影響はありません。胎児の染色体異常症はダウン症などの先天性疾患だけでなく、流産を引きおこすことも少なくありません。妊娠初期にこれらのリスクを知り、備えることで少しでも不安が軽減するのではないでしょうか?

健やかな妊娠期間のために、NIPTやダウン症についてのご質問ご相談は、ヒロクリニックNIPTにぜひ一度お問い合わせください。

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妊娠中期のストレスのおもな原因とは

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妊娠後期のストレスのおもな原因とは

妊娠後期になるとお腹が大きくなり、妊娠中期よりも日常生活動作がより制限されるでしょう。下腹部の痛みや、大きくなった子宮で膀胱が圧迫され、頻尿に悩まされる妊婦さんも少なくありません。また動悸や尿もれにより夜間に眠りが浅くなり、ストレスとなるケースも挙げられます。

妊娠中のストレスが胎児へ与える影響

妊娠中に感じるさまざまなストレスは、胎児の発育にも影響を与えるとされています。母体がストレスを感じると交感神経が優位となり、血管が収縮し筋肉が緊張して胎児の成長に欠かせない酸素や栄養素が十分に届けられないなどの影響を与えます。ここでは、ストレスが胎児に与える影響について詳しく解説します。

胎児が酸欠・栄養不足に

母体が強いストレスを感じると交感神経が優位となります。交感神経は血圧を上昇させ、血管収縮を引き起こします。血管収縮とは血管が縮まった状態で、水の出ているホースの口をキュッと指で圧をかけると水が勢いよく噴き出るようなイメージです。これだけを聞くと血流が良くなっているように思うかもしれませんが、交感神経が優位になると血液は心臓へと多く分配され、肝臓や消化器官、子宮などの内臓は後回しとなります。

胎児は胎盤と臍(へそ)の緒から流れる母体の血液により、酸素と栄養を受け取り成長します。しかし、母体の交感神経が優位な状態が続くと、胎盤や臍の緒への血流が上手く流れにくくなり胎児は成長に必要な酸素と栄養を受け取ることができません。そのため、酸欠や発育の遅れが生じる可能性があるのです。

ストレスホルモンが胎児へ与える影響

長期にわたり、強いストレスを感じると分泌されるホルモンに「コルチゾール」があります。別名「ストレスホルモン」とも呼ばれ、妊娠中にも分泌が止まることはありません。

コルチゾールは健康な胎盤であれば通過することがないため、胎児への影響はないとされています。しかし、何らかの原因で胎盤機能に問題が生じていると、コルチゾールが胎児へ伝わり神経機能への障害や低体重を引きおこすリスクを高めるとされています。どうすれば、胎児にコルチゾールが流れないようにできるのかは、まだ明らかになっていません。

胎児の成長を妨げないためにも、将来高血圧などの生活習慣病のリスクを下げるためにも、妊娠中のストレスには注意が必要なのです。

妊娠中のストレスと発達障害の関係

コルチゾールは、胎児の神経系の発達に影響を与えると報告されています。具体的には、胎児がイライラしたり落ち着かなかったり、将来うつやADHD(注意欠陥障害)の発症リスクが上がるなどです。発症する確率などはまだ明らかにはなっていませんが、リスクを低減させるためにも過剰なストレスは避けるようにしたいですね。

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妊娠中のストレス解消・発散法

妊婦さんの抱えるストレスはさまざまで、限界まで放置すると抑鬱状態となってしまうことも少なくありません。とくにHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)といわれる敏感で感受性が強い気質をもつママは、些細なことで過剰なストレスを感じたり、自己肯定感が低い傾向が影響して、母親になる自信を失いやすいともされています。

ストレスがさらなるストレスを呼ぶ前に、つらい気持ちをパートナーや家族に伝えることが大切です。また、以下のようなストレス解消・発散法を試してみるのもおすすめです。

妊婦さん ストレスと向き合う方法

散歩などの軽い運動をする

日光に当たると、心を安定させる効果が期待できるセロトニンの分泌が活発になります。体調が安定していれば、散歩などの軽い運動もおすすめです。外出が不安であれば、部屋の中で足踏みをするだけでもストレス解消効果が期待できます。

大きな声を出す・歌う

大きな声を出したり歌ったりして、感情をアウトプットするのもストレス発散効果が期待できます。具体的には、いまの感情を声に出す、好きな歌を唄うなどがおすすめです。

泣ける映画などを見て思いきり泣く

泣ける映画など、他人のできごとや感情で泣くのは大きなエネルギーを消耗し、感情をアウトプットされることでストレス発散効果が期待できます。また、自分の感情や悩みについて泣くわけではないため、感情を引きずることもなく泣いたあとのスッキリ感も大きいのが特徴です。

睡眠をしっかりとる

睡眠には体調の回復だけでなく、脳を休ませ自律神経の働きを整える効果が期待できます。妊娠中はつわりや胎動、大きくなったお腹の影響でまとまった睡眠が取れないことも少なくありません。夜間にまとまった睡眠がとれない場合は、日中横になって身体を休めるなどして、少しでも睡眠を取るようにしましょう。

担当医に相談する

さまざまなストレス解消・発散法を試してもつらい気持ちが改善されない場合は、担当医に相談してみましょう。早めに相談することで、赤ちゃんへの影響も最小限にできるでしょう。

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まとめ

妊娠中のママは精神的にも不安定な状態になりやすく、さまざまなストレスを感じていると思います。赤ちゃんへの影響を最小限にするためにも、本記事を参考にしていただき、妊娠中のストレスを上手に解消していきましょう。

【参考文献】

Q&A
よくある質問

妊娠中のストレスについてのよくある質問です。参考になさってください。

  • Q
    妊娠中のストレスとダウン症は関係がある?
    ダウン症(21トリソミー)とは、染色体異常症による先天性疾患の一つです。

    最も多く見られる染色体異常症となりますが、ダウン症は高齢による卵子や精子の衰えがおもな原因とされ、妊娠中のストレスやコルチゾールの分泌過多がダウン症を引きおこすことはありません。

妊娠中は出産への不安や体調の変化、また普段であれば気に留めることもない些細なことでイライラしたり、ストレスを感じたりする妊婦さんは少なくありません。この記事では妊娠中のストレスが与える胎児への影響とストレス解消法について医師が解説します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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