医師から多発性骨端異形成症、あるいはさらに詳しく1型という診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。
お子様の足の痛みや歩き方が気になって整形外科を受診した結果、あるいは別の理由で撮影したレントゲンで偶然指摘され、この聞き慣れない病名を知ることになったのかもしれません。診断を受けたばかりの時は、骨の病気という言葉の重みや、将来歩けなくなるのではないかという不安、そして遺伝子の病気であることへの戸惑いなど、様々な感情が押し寄せていることと思います。
多発性骨端異形成症は、骨の成長する部分である骨端の形成が不十分になることで、関節の痛みや動きにくさを生じる病気です。その中でも1型は、COMPという特定の遺伝子の変化によって起こるタイプであり、多発性骨端異形成症の中で最も頻度が高く、代表的なタイプとして知られています。
まず最初にお伝えしたいのは、この病気は命に関わるような重篤な臓器の病気を合併することはほとんどないということです。適切な管理とケアを行うことで、痛みとうまく付き合いながら、学業や仕事、趣味を楽しみ、自立した社会生活を送っている患者さんがたくさんいます。
概要:どのような病気か
多発性骨端異形成症は、英語でMultiple Epiphyseal Dysplasiaと表記され、医療現場では頭文字をとってMED(エム・イー・ディー)と呼ばれます。この病名を分解して解説すると、病気の全体像が見えてきます。
多発性とは、体の一箇所だけでなく、両側の股関節、膝、足首、手首など、全身の多くの関節に症状が現れることを意味します。
骨端とは、骨の端っこの部分のことです。子供の骨には、端っこに骨端線や骨端核と呼ばれる軟骨の層があり、ここで骨が伸びて成長していきます。この部分が病気の主役です。
異形成症とは、形が正常とは異なって形成される状態を指します。
つまり、全身の骨の端っこ部分の成長や形成がうまくいかず、関節の形がいびつになったり、軟骨が弱かったりする病気です。
MEDには原因となる遺伝子の違いによっていくつかのタイプに分類されています。今回解説する1型は、軟骨を構成する重要なタンパク質の一つであるCOMP(コンプ)を作る遺伝子の変化によって引き起こされるタイプです。
この1型は、数あるMEDのタイプの中で最も典型的な症状を示し、頻度も最も高いと言われています。また、同じCOMP遺伝子の変化によって起こる病気に偽性軟骨無形成症というものがありますが、MED1型はその症状が少し軽度なタイプと位置づけられることもあります。
頻度は、MED全体で1万人に1人から2万人に1人程度と言われており、骨系統疾患と呼ばれる骨の病気のグループの中では比較的頻度の高いものの一つです。
主な症状
多発性骨端異形成症1型の症状は、年齢とともに変化し、個人差も大きいです。幼児期から症状が出る方もいれば、学童期以降に痛みで気づく方もいます。ここでは代表的な症状を、成長の段階に沿って解説します。
1. 幼児期から学童期の症状
この時期に最初のサインに気づくことが多いです。
歩き方の特徴
歩き始めが遅れることはあまりありませんが、歩き始めてからよちよち歩きがなかなか治らないことがあります。左右に体を揺らして歩く動揺性歩行、いわゆるアヒル歩きが見られることがあります。これは股関節の収まりが悪いためや、痛みから関節をかばうために起こります。
関節の痛み
「足が痛い」「疲れた」と訴えることが増えます。特にたくさん遊んだ後や夕方に痛がり、翌朝には痛みが引いていることもあります。そのため、いわゆる成長痛と間違われることがよくあります。痛みは膝や股関節、足首に出やすいです。
すぐに抱っこをせがむ
長い距離を歩くのを嫌がったり、すぐに疲れて座り込んだりすることがあります。これは単なる甘えや体力のなさではなく、関節の痛みや違和感が原因である可能性があります。
手足の指の特徴
1型の大きな特徴として、手足の指が全体的に少し短い短指症が見られることがあります。特に手が小さく、指が太く短く見えることがあり、これは他のタイプ(2型や3型など)と見分ける際の一つの手がかりになります。
2. 思春期から青年期の症状
骨の成長が終わる時期に差し掛かると、症状が変化します。
低身長
手足の骨の伸びが少し悪くなるため、身長の伸びが緩やかになります。最終的な身長は、正常範囲内の下の方におさまることが多いですが、中等度の低身長になることもあります。極端に身長が低いということは稀ですが、平均よりは小柄になる傾向があります。
関節の可動域制限
関節の形が変わってくるため、関節が完全に伸びなかったり、曲げにくかったりすることがあります。特に肘が真っ直ぐ伸びない伸展制限がよく見られます。日常生活にはあまり支障がないことが多いですが、腕をまっすぐ上げる動作などが少し苦手になるかもしれません。
3. 成人期以降の症状
早発性の変形性関節症
長年、形のいびつな関節を使っていると、軟骨がすり減り、変形性関節症を若いうちから発症することがあります。通常、変形性関節症は高齢の方の病気ですが、MED1型の患者さんでは30代や40代といった若い年齢で股関節や膝に痛みが出始めることがあります。症状が進むと、人工関節の手術が必要になることもあります。
原因
なぜ、骨の端っこの形が変わってしまうのでしょうか。その原因は、軟骨を作るための重要なタンパク質の設計図のミスにあります。
COMP遺伝子の異常
多発性骨端異形成症1型の原因は、第19番染色体にあるCOMP(コンプ)という遺伝子の変異です。
この遺伝子は、軟骨オリゴマー基質タンパク質という、少し難しい名前のタンパク質を作るための設計図です。
軟骨の中には、コラーゲンなどの線維が網目のように張り巡らされており、その間を水分やプロテオグリカンといった物質が満たして、クッションの役割を果たしています。COMPタンパク質は、この網目構造を正しく組み立てたり、安定させたりするために非常に重要な役割を担っています。
1型の患者さんでは、COMP遺伝子の設計図にミスがあるため、作られるCOMPタンパク質の形がいびつになってしまいます。
形がおかしいタンパク質は、軟骨の網目構造にうまく組み込まれないだけでなく、軟骨細胞の中にゴミのように溜まってしまいます。すると、軟骨細胞自体がストレスを受けて弱ってしまい、死んでしまうこともあります。
その結果、骨の成長に必要な軟骨が十分に機能せず、骨の端っこの形が崩れたり、関節の強度が弱くなったりしてしまうのです。
偽性軟骨無形成症との関係
同じCOMP遺伝子の変異でも、変異の場所や種類によって、病気の重さが変わります。
変異の影響がより強く出て、身長が著しく低くなったり、関節の緩みが強かったりする場合は、偽性軟骨無形成症という別の病名で診断されることがあります。
MED1型と偽性軟骨無形成症は、原因は同じですが、症状の重さが異なる連続した病気(スペクトラム)と考えられています。MED1型は、そのスペクトラムの中で比較的症状が軽い方に位置します。
遺伝のしくみ
多発性骨端異形成症1型は、常染色体顕性遺伝という形式をとることが一般的です。以前は優性遺伝と呼ばれていました。
これは、ご両親のどちらかが同じ病気である場合、50パーセントの確率でお子さんに遺伝するというものです。
しかし、ご両親は全く症状がなく、遺伝子にも異常がないのに、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が突然起きて発症する突然変異のケースも少なくありません。
遺伝子の変化は、誰のせいでもありません。お母さんの妊娠中の過ごし方、食べ物、お薬、ストレスなどが原因ではなく、生命が誕生する過程で、誰にでも起こりうる偶然の現象です。
診断と検査
診断は、症状の問診、レントゲン検査、そして遺伝子検査などを組み合わせて行われます。
1. レントゲン検査(X線検査)
診断の決め手となる最も重要な検査です。全身の骨、特に骨盤や股関節、膝、手、背骨などを撮影します。
MED1型では以下のような特徴的な所見が見られます。
骨端核の出現遅延と変形
骨の端っこの丸い部分である骨端核が、年齢の割に小さかったり、現れるのが遅かったりします。また、形がいびつで、ギザギザしていたり、平べったくなっていたりします。
大腿骨頭の変化
股関節のボールの部分である大腿骨頭が小さく、平坦化していることがよくあります。これはペルテス病という病気と非常によく似ているため、慎重な鑑別が必要です。
手の骨の特徴
手の甲の骨や指の骨が短く、骨の端っこが不規則な形をしていることがあります。これは1型に特徴的な所見です。
2. 血液検査
一般的な血液検査では異常は見られません。リウマチなどの他の関節の病気ではないことを確認するために行われることがあります。
3. 遺伝学的検査
確定診断のために、血液からDNAを取り出し、COMP遺伝子に変異があるかを調べることがあります。
遺伝子検査を行うことで、MEDのどのタイプかがはっきりし、将来の見通しや治療方針、遺伝カウンセリングに役立ちます。特に、症状が似ている偽性軟骨無形成症との区別や、他のMEDのタイプとの鑑別に有用です。

治療と管理
残念ながら、現在の医学では遺伝子の変化そのものを治して、骨の形を元通りにする根本的な治療法はありません。
治療の目的は、痛みをコントロールすること、関節の機能を長く保つこと、そして日常生活の質を維持することの3点です。
1. 保存的療法(手術以外の方法)
子供のうちは、基本的に手術以外の方法で様子を見ます。
痛みの管理
痛みが強い時は、湿布を使ったり、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛剤(痛み止め)を内服したりします。痛みを我慢しすぎると、かばって歩くことで他の関節に負担がかかるため、適切に薬を使うことは大切です。
活動の調整
痛みが強い時期には、激しい運動、特にジャンプを繰り返すバスケットボールやバレーボール、長距離走などを控えて、関節を休めます。体育の授業も見学や内容の変更が必要になることがあります。
体重管理
体重が重くなると、それだけ股関節や膝への負担が倍増します。太りすぎないように食事や生活習慣に気をつけることは、最も有効な治療の一つであり、ご家庭でできる最大のサポートです。
適度な運動
関節への負担が少なく、筋力を維持できる運動として、水泳や水中ウォーキング、自転車こぎなどが推奨されます。プールの中では浮力があるため、関節に体重をかけずに運動することができます。筋力を落とさないことは、関節を守るために重要です。
2. 外科的治療(手術)
保存的療法では痛みがコントロールできない場合や、関節の変形が進んで歩行が難しくなった場合に検討されます。
骨切り術
子供から若年成人の時期に行われることがあります。骨を切って角度を変え、関節の噛み合わせを良くする手術です。これにより、痛みを取り除き、将来的な人工関節の手術を遅らせることができる可能性があります。
人工関節置換術
成人以降、軟骨がすり減って変形性関節症が進行し、痛みがひどくて歩行困難になった場合に行われます。人工の関節に入れ替えることで、劇的に痛みを取り除き、歩きやすくします。最近の人工関節は性能が良く、長持ちするため、生活の質を大きく改善することができます。
3. 小児慢性特定疾病の利用
日本では、多発性骨端異形成症は小児慢性特定疾病の対象疾患に含まれています。申請が通れば、18歳未満、継続申請で20歳未満のお子様の医療費の一部が助成される制度です。
重症度などの基準があるため、必ずしも全員が対象になるわけではありませんが、診断を受けたら主治医や病院のソーシャルワーカーに相談してみることをお勧めします。
学校生活と日常生活での注意点
お子さんが学校生活を送る上で、いくつかの配慮が必要になることがあります。
体育の授業
マラソン、縄跳び、激しい球技などは、関節への負担が大きいため、見学や内容の変更をお願いすることがあります。一方で、水泳は積極的に参加して良い種目です。先生と相談して、「痛い時は無理せず休む」「自分のペースで参加する」というルールを作っておくと、お子さんも先生も安心です。
通学と校内生活
ランドセルや荷物が重いと関節に負担がかかるため、教科書を学校に置いておく置き勉を許可してもらうなどの工夫が有効です。階段の上り下りが多い場合は、エレベーターの使用を相談することもあります。
生活スタイル
膝や股関節に負担がかかる正座や和式トイレの使用は避け、椅子とテーブルの生活、洋式トイレの使用が望ましいです。学校のトイレが和式ばかりでないか確認しておき、必要であれば配慮を求めましょう。
まとめ
多発性骨端異形成症1型についての重要なポイントを振り返ります。
病気の本質
COMP遺伝子の変化により、軟骨の構造に異常が生じ、骨の端っこの成長や関節の形成に影響が出る病気です。
主な症状
関節の痛み、特に股関節や膝の痛み、アヒル歩き、手指の短縮、軽度から中等度の低身長が見られます。
経過
小児期は痛みが出たり消えたりしますが、大人になると若いうちから変形性関節症を発症するリスクがあります。
治療
痛みのコントロール、厳重な体重管理、適度な運動が基本です。将来的に手術が必要になることもあります。
生活
激しい運動は避ける必要がありますが、水泳などは推奨されます。周りの理解を得て、無理のない範囲で活動することが大切です。
