本当に13・18・21トリソミーの検査だけで十分ですか?
多くの施設では、ダウン症候群(21トリソミー)を含む3つの染色体異常(13・18・21番)しか検査できません。
ですが13番・18番の異常は多くが生後1年以内に命を落とす重い疾患です。
一方で、出生後も長く影響する疾患には、以下のようなものがあります。
家族の将来に影響する代表的な遺伝子異常
(リスクランキング)
ダウン症候群(21トリソミー)
一般的に知られている疾患。生涯にわたるサポートが必要。
ディジョージ症候群(22q11.2欠失)
発達障害・心疾患・免疫異常などを引き起こすことも。
見落とされやすいが重要。
性染色体の異常(XO, XXY, XYYなど)
見た目ではわかりにくいが、
将来の成長・発達・生殖能力に影響することも。

ダウン症候群(21トリソミー)とは?
ダウン症候群(Down syndrome)は、ヒトの染色体に異常が生じることによって発症する先天性疾患のひとつであり、特に第21番染色体が通常の2本ではなく3本存在することによって生じる「21トリソミー」として知られています。この状態は「数的染色体異常」に分類され、最も頻度の高い染色体異常の一種です。
出生頻度は、世界中でおおむね600〜800人に1人の割合で見られ、日本国内においても同様の傾向があります。発症率は母体の年齢と相関があり、年齢が上がるにつれてリスクも増加します。たとえば20歳での出産では約1/2000の確率であるのに対し、35歳で約1/365、40歳になると約1/100まで高くなるとされています。しかし実際の発症例の大多数は、母体年齢が35歳未満であるという統計結果もあり、年齢のみが決定的な要因ではないと考えられています。
ダウン症には、以下のような主な症状が見られます
- 知的発達の遅れ:IQは平均して50〜70程度で、言語能力や学習能力にも個人差があります。
- 身体的特徴:扁平な顔、上向きの目(つり目)、小さい鼻、短い首、小さな手と足、単一掌溝(一本の深い手のしわ)などがよく見られます。
- 筋緊張の低下(筋力の弱さ):新生児期からみられることが多く、運動発達にも影響します。
- 先天性の心疾患:およそ50%のダウン症児に心室中隔欠損などの心臓疾患がみられます。
- 消化器系の異常:十二指腸閉鎖症、食道閉鎖症、便秘などの消化器合併症も報告されています。
- 免疫機能の異常と白血病リスクの増加
- 甲状腺機能低下症、肥満、難聴、視力障害、睡眠時無呼吸症候群 など、幅広い合併症が生じる可能性があります。
これらの症状の現れ方や重症度は個人によって大きく異なり、「軽度の症状で日常生活にほとんど支障がない人」から、「医療的支援や発達支援が必要な人」までさまざまです。
ディジョージ症候群(22q11.2欠失)とは?
ディジョージ症候群(DiGeorge症候群)とは、ヒトが持つ23本の染色体のうち、22番染色体の長腕の一部(22q11.2領域)に小さい欠失(微小欠失)があることで生じる疾患です。
副甲状腺や胸腺の無形成、心臓や血管の形成異常に起因した様々な症状が現れます。主な症状としては副甲状腺機能低下症、免疫不全、先天性心疾患などがあり、特にファロー四徴症などの先天性心疾患は生命予後に関わるため、新生児期~乳児期に心臓手術が必要になってきます。
我々ヒトの遺伝子は46本の染色体で構成されており、父親から受け継ぐものと母親から受け継ぐものがペアとなって2本づつが23対存在しています。ディジョージ症候群では、その中で22番目の染色体である22番染色体の長腕(22q)と呼ばれる部分の一部(22q11.2)が欠失しており、このためその部分に含まれる遺伝子の発現に異常が生じるため、様々な症状が現れます。(この欠失部位をもとに、22q11.2欠失症候群とも呼ばれます)
最近の研究では、この領域に存在するTBX1と呼ばれる遺伝子が重要であることがわかっており、この遺伝子が欠失することで心疾患、口蓋裂、特徴的な顔つき、低カルシウムけつ症など、後ほど説明するディジョージ症候群に特徴的な症状を引き起こすことがわかってきています。
また、ディジョージ症候群は「常染色体優性遺伝」の形式で親から子へ受け継がれると考えられており、22q11.2の欠失の染色体異常を持つ人に子供がいる場合は、50%の確率で子に受け継がれます。ただし、遺伝的にディジョージ症候群を発症する人は全体の約10%程度で、ほとんどは上で述べたような突然変異により発症します。
発症確率は4,000人~5,000人に一人と考えられており、比較的まれな先天性疾患となっています。
「知的障害を見逃さない」検査プラン選びが大切です
出生直後の致死性が相対的に高い13番・18番だけに重心を置くよりも、出生後の長い期間にわたり暮らしや学びに影響しうる状態まで視野に入れた「知的障害を含む幅広い検査」を選ぶことがポイントです。家族の準備や医療・福祉資源の活用、保育や教育の選択など、実際の生活設計に直結する情報が得られやすくなります。
ただ、日本医学会が認証するNIPT実施施設では、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトウ症候群)のみとなっております。ヒロクリニックのNIPT検査では、多くの検査機関と協力しあい、従来では検査ができなかった知的障害・発達障害の疾患を出生前に調べることができます。焦らず、家族に合う選択を一緒に整えていきましょう。
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