やさしいまとめ
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, ASD)は、対人関係やコミュニケーションの難しさ、反復的な行動などを特徴とする神経発達症です。原因は一つではなく、遺伝的な背景に加えて、妊娠中の環境や栄養状態など、さまざまな因子が複雑に関わっています。
最近の研究では、葉酸やビタミンD、オメガ3脂肪酸など、日常生活の中で調整可能な栄養素が、ASDのリスクを和らげる「予防的な因子」として注目されています。一方で、高脂肪食や栄養の偏りは、ASDに関連する特性(社会性の困難、感覚の敏感さなど)を強める可能性もあると報告されています。
本記事では、ASDの症状、診断、そして最新の栄養研究との関わりについて、科学的根拠をもとにやさしく解説します。腸と脳のつながり(腸–脳軸)や、遺伝と栄養の相互作用といった重要なテーマにも触れながら、ご家族や妊娠を考える方々の理解と選択を支える情報をお届けしまたら幸いです。
概要|Overview(改訂版)
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, ASD)は、社会的な相互作用における困難さや、特定の物事への強い関心、同じ行動を繰り返す傾向など、多様な神経発達の特徴を含む複雑な状態です。ASDの発症やその重症度には、遺伝的な背景だけでなく、妊娠中や出生後の環境要因を含めたさまざまな因子が関与しており、その原因や経過(病因・病態)は、単一の要因では説明できない多面的なものとされています。
近年の研究では、こうした環境要因の中でも、とくに妊娠中の母親の食事内容や、出生後の子どもの食生活が、神経発達に与える影響についての注目が高まっています。たとえば、母体が摂取する栄養素の種類や量が、胎児の脳の構造的・機能的な成熟に長期的な影響を及ぼし、ASDのリスクや症状の強さに関連する可能性があることが、動物モデルやコホート研究、臨床試験などを通じて次第に明らかになってきています。こうした背景のもと、栄養は「調整可能(modifiable)」な環境要因のひとつとして、ASDの予防や管理における鍵となる可能性があると考えられるようになりました。
本記事では、動物実験やヒトを対象とした臨床研究、前向きコホート研究、さらには系統的レビューといった多様な研究手法に基づき、妊娠中の母体の栄養状態が胎児の神経発達に与える影響についての最新の知見を総合的にご紹介します。具体的には、葉酸やビタミンDなどの微量栄養素、脂質やタンパク質といった主要栄養素の役割、腸内細菌叢(gut microbiota)と脳の発達との関係、そして栄養と遺伝的素因の相互作用(gene–nutrient interactions)などが取り上げられます。さらに、DNAメチル化といったエピジェネティックな修飾、酸化ストレス、神経免疫シグナリングといった分子レベルでのメカニズムについても、可能な限りわかりやすく解説してまいります。
ただし、ここでご紹介する栄養に関する知見は、あくまで科学的研究に基づく「補完的」な視点であり、現在確立されている標準的な診断や治療法に取って代わるものではないことにご留意ください。ASDを含む神経発達症は、その多くが遺伝的要因と環境的要因の複雑な相互作用によって生じる「多因子性疾患」であり、栄養だけですべてを予防したり、症状を完全に取り除いたりすることは現時点では困難です。
それでも、妊娠期という重要な時期における栄養状態が、発達中の胎児に大きな影響を及ぼしうるという事実は、多くの研究を通じて支持されており、ご家族や妊娠を考える方々、また医療や支援に関わる専門職の方々にとって、将来の健康と発達を考えるうえでのひとつの重要な手がかりとなり得ます。本記事が、ASDに関する理解を深め、適切な準備や選択を支える一助となることを願っております。
疫学|Epidemiology
ASDは、現在、世界中の子どものおよそ1〜2%にみられるとされており、比較的高い頻度で診断される神経発達症のひとつです。ただし、この有病率には地域差や時代による変動があり、その数値は一様ではありません。診断基準の違いや、スクリーニング(発達検査や問診)の実施状況、調査対象となる集団の特性、さらには医療制度や社会的な理解の進展度によっても、診断される割合に差が生じることがあります。
性別による違いも古くから指摘されており、ASDは一般的に男児に多くみられる傾向があるとされ、報告されている男女比はおおよそ4対1とされています。しかしながら、近年の研究では、女児においては診断が見逃されやすい(いわゆるアンダーダイアグノシス)傾向がある可能性が指摘されており、実際の性差はこれまで考えられていたよりも小さい可能性もあります。女児では、ASDの症状が社会的に「目立ちにくい」形で表れることがあるため、早期の気づきや支援につながりにくいという課題も残されています。
ASDのなりやすさ、すなわち遺伝的な影響の強さを示す「遺伝率(heritability)」は、過去の双生児研究や家系調査から、およそ50〜80%の範囲にあると推定されています。これは、ASDの発症において遺伝的素因が大きく関与していることを意味しますが、それだけでは発症を説明しきれないことも明らかになってきています。実際には、遺伝的背景と並んで、胎児期を中心としたさまざまな環境要因が複雑に重なり合うことによって、ASDのリスクが高まると考えられています。
環境的な要因として注目されているのは、たとえば妊娠中の感染症への罹患、糖代謝異常や肥満といった代謝性の疾患、妊娠期における強い心理的ストレスなどです。これらの要因は、いずれも母体の体内環境や免疫応答を通じて、胎児の脳や神経系の発達に影響を与える可能性があるとされています。
そして近年、これらの要因の中でもとくに関心が高まっているのが「母体の栄養状態」です。とくに、受胎前後の時期(periconceptional period)や妊娠中期(mid-gestation)といった、胎児の脳が構造的にも機能的にも重要な発達段階を迎える時期において、母親が摂取する栄養の質や量が、その後の子どもの神経発達に長期的な影響を及ぼす可能性があるという知見が、近年の疫学研究や動物実験を通じて示されつつあります。葉酸やビタミンD、オメガ3脂肪酸といった特定の栄養素が、神経系の発達に関与することが明らかにされており、これらの栄養因子がASDのリスクを高めたり下げたりする要因となる可能性があるという視点は、今やASDの理解と予防における重要な一角を占めつつあります。
症状|Symptoms
ASDは、広範囲にわたる神経発達の特徴を含む状態ですが、その診断において中心的とされるのは、主に次の二つの領域における特徴的な行動や傾向です。
まず一つ目は、「社会的コミュニケーションと対人関係の困難さ」です。これは、他者とのやりとりにおいて、自然な反応や関係構築が難しいことを意味します。たとえば、呼びかけへの反応が乏しい、目を合わせる頻度が少ない、身ぶりや表情といった非言語的なサインを使うことが苦手、会話のやりとりが一方通行になりがちである、といった特徴が見られることがあります。また、同年代の子どもたちとの間で友人関係を築いたり、集団の中での暗黙のルールを理解して行動することが難しいと感じる場面も少なくありません。
二つ目は、「限定された、反復的な行動・興味・活動の傾向」です。たとえば、同じ動きを繰り返す、特定の物事に強くこだわる、日常の決まった流れや環境の変化に対して強い不安や抵抗を示すといった行動が含まれます。音や光、におい、触感といった感覚刺激に対して、極端に敏感であったり、逆に鈍感であったりすることもあります。これらの特徴は、一人ひとりによって表れ方や程度が異なりますが、ASDの診断における核となる要素です。
こうした主要な特徴に加えて、ASDのあるお子さんの中には、いくつかの随伴症状(comorbid symptoms)を示すこともあります。これらの症状は、神経発達の特性だけでなく、食事内容や栄養状態、消化機能といった身体的な側面とも密接に関連している可能性が指摘されています。
摂食の困難(Feeding Difficulties)
味や食感、温度、見た目などに対して強いこだわりを持つことがあり、「好き嫌い」や「選り好み」が極端な形で現れることがあります。その結果、特定の食べ物しか口にしない、食事の種類が著しく限られるといった状況になり、栄養の偏りが生じることもあります。これは、日々の食事の中でご家族が最も悩む課題のひとつです。
消化器症状(Gastrointestinal Symptoms)
便秘、下痢、腹部の張り、痛みなど、さまざまな消化器の不調が報告されています。ASDのお子さんでは、これらの症状が慢性的にみられることがあり、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)や、食物繊維の摂取不足、過敏性腸症候群(IBS)に似た反応など、複数の要因が関係していると考えられています。消化の不調が行動面にも影響を及ぼしている可能性があり、近年、腸と脳の関係(腸–脳軸)の重要性が再認識されています。
微量栄養素の不足(Micronutrient Deficiencies)
偏った食事や摂食障害の影響により、鉄分、ビタミンD、葉酸、オメガ3脂肪酸などの重要な栄養素が不足しやすくなります。たとえサプリメントを摂っていても、腸内環境や代謝の状態によっては吸収効率が低く、体内で十分に活用されていない場合もあります。こうした栄養の不足は、集中力や情緒の安定、免疫機能にも影響を与える可能性があり、慎重な対応が求められます。
認知や行動面の症状(Cognitive and Behavioral Manifestations)
ASDのお子さんの中には、過活動(hyperactivity)、注意の持続の難しさ、不眠や中途覚醒といった睡眠障害、言語発達の遅れなどを示す方もいます。これらの症状は、ASDそのものの神経発達の特性による部分に加えて、体内の炎症状態や栄養バランスの乱れといった生理的な要因とも関連があるのではないかと考えられています。
検査・診断|Testing & Diagnosis
ASDの診断について
ASDの診断は、特定の検査だけで確定するものではなく、専門的な臨床評価(clinical evaluation)によって行われます。具体的には、以下のような国際的に認められた評価ツールが使われることが一般的です:
- ADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule:自閉症診断観察スケジュール)
専門家が実際のやりとりを通じて、社会性や行動の特徴を観察する方法です。 - ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised:改訂自閉症診断面接)
保護者の方に対する詳細な聞き取り調査を通じて、行動の特徴や発達の経過を評価します。
また、大規模な疫学研究(たとえばアメリカの「Nurses’ Health Study II」など)では、保護者による申告(親報告:parental report)をもとにASDの診断がなされたケースもあります。そのような研究では、一部の参加者については実際の医療記録や臨床評価を通じて、診断の正確性が確認されています。
ASD関連特性の評価
ASDの診断だけでなく、ASDに関連する特性や傾向をより広い視点からとらえるために、多くの研究で使われている尺度が「SRS(Social Responsiveness Scale:社会的応答性尺度)」です。
SRSは、社会的な行動やコミュニケーションの特徴を定量的に評価できる質問票で、年齢に応じたバージョン(幼児用/学童用など)があり、スコアの算出方法は統一されています。スコアが高いほど、ASDに関連する行動傾向が強いことを示しますが、診断基準を満たさない「グレーゾーン」の傾向も含めて評価できるのが特長です。
このような定量評価は、妊娠中の栄養や環境要因とASD傾向の関係を検討する際にも重要な指標として用いられています。
栄養摂取の評価方法
妊娠中や乳幼児期の栄養摂取を正確に評価することは、研究や臨床において非常に重要ですが、方法によって得られる情報には違いがあります。以下は、研究でよく使われる主な評価手法です:
食事頻度質問票(FFQs:Food Frequency Questionnaires)
特定の食品をどのくらいの頻度で摂っているかを把握する方法で、大規模なコホート研究(例:NHSII、ECHO)などでよく使われています。
24時間食事想起法・食事歴調査票(Diet History Questionnaire, DHQ)
過去1日や1週間の食事内容を詳細に聞き取る方法です。
バイオマーカー(biomarkers)
血液中の葉酸やビタミンD濃度など、体内にどれくらい栄養素が存在しているかを測定します。これはより客観的なデータですが、胎児の発達にとって重要な時期と測定時期が一致しない場合は、情報が限定的になることがあります。
また、食事全体の質や炎症との関連を見るために、以下のような食事評価スコアが用いられることもあります:
- AHEI-2010(Alternative Healthy Eating Index):健康的な食事の指標
- EDIP(Empirical Dietary Inflammatory Pattern):食事の炎症性傾向を評価
- HEI-2015(Healthy Eating Index):栄養バランス全体を評価するスコア
これらは、単一の栄養素ではなく、食事全体のパターンがASDの傾向やリスクにどう影響するかを探る際に用いられます。
病因とその管理|Etiology & Management
ASDは、誰かの育て方や何かひとつの行動が原因で起こるものではありません。現在わかっているのは、この状態が、もともとの遺伝的な体質と、妊娠中をはじめとする発達の早い段階の環境的な影響とが、いくつも複雑に重なり合って生じるということです。
その中でも近年とくに注目されているのが、「栄養(nutrition)」の影響です。妊娠中の母体の栄養状態が、胎児の脳や神経系の発達、免疫の調整機能(neuroimmune regulation)、さらには脳内の神経伝達物質(neurotransmitters)のバランスに大きく関わっている可能性が、さまざまな研究から報告されるようになっています。
こうした背景から、「栄養」は、ASDのリスクを高める要因であると同時に、もしかしたら症状をやわらげたり、発症そのものを予防したりする「管理(management)」の鍵になるのではないかという視点が広がっています。もちろん、栄養がASDの標準的な治療法(standard treatment)として確立されているわけではありません。しかし、家族の立場からできることとして、「補助的なアプローチ(complementary approach)」としての栄養戦略に、世界中で関心が集まっているのです。
この章では、現在の研究で明らかになってきている知見をもとに、妊娠期の栄養とASDとの関係についてご紹介していきます。専門的な内容も含まれますが、ひとつひとつ丁寧に解説しますので、どうか安心して読み進めてください。
葉酸(Folic Acid / Folate)と妊娠準備:未来の脳のために
葉酸(folic acid / folate)は、ビタミンB群(B-vitamin complex)の一種で、妊娠初期の赤ちゃんの神経管(neural tube:脳や脊髄の元となる構造)が正しく形成されるために不可欠な栄養素です。この葉酸が、ASDのリスクにも関わっている可能性があることが、多くの疫学研究(epidemiological studies)から報告されています。
たとえば、妊娠の前後や妊娠初期に葉酸を摂取していたお母さんから生まれた子どもでは、ASDを診断される確率が30〜60%低かったとするデータがあります。もちろん、これは葉酸だけですべてを防げるという意味ではありません。ただ、「赤ちゃんの脳が形づくられる大切な時期に、必要な栄養をしっかり届けること」が、その後の神経発達に良い影響をもたらす可能性があるという、大きなヒントでもあるのです。
一方で、注意しておきたいのは、「多ければ多いほどよい」という単純な話ではないことです。血液中の葉酸濃度(blood folate concentration)を指標とした研究の中には、一定の濃度を超えて高すぎる(具体的には60ナノモル/リットル [nmol/L] 以上)場合に、かえってASDのリスクが上昇するという「U字型(U-shaped relationship)」の結果を示したものもあります。
また、MTHFR遺伝子(methylenetetrahydrofolate reductase gene)という酵素をつくる遺伝子に特定の多型(polymorphism:遺伝的な個人差)を持っている人は、葉酸の代謝(folate metabolism)やDNAのメチル化(DNA methylation)といった重要な生体反応に影響が出ることがあり、そうした体質を持つ人では葉酸の摂取が特に重要とされています。
日本を含む多くの国では、妊娠を考えている女性に対して、1日400〜800マイクログラム(micrograms)の葉酸を妊娠前から摂ることが勧められています。この量は、一般的な妊娠用ビタミンサプリメント(prenatal vitamins)でカバーできます。さらに、葉酸に加えて、鉄分(iron)やビタミンD(vitamin D)などを含んだマルチビタミン(multivitamins)を定期的に摂取していた母親では、ASDのリスクが30〜50%低下していたとする報告もあります。
ただし、どの栄養素を、どの時期に、どのくらい摂るかによってその効果は異なる可能性があるため、自己判断に頼るのではなく、かかりつけの産婦人科医や管理栄養士と相談しながら進めることがとても大切です。
ビタミンD(Vitamin D):太陽のビタミンが支える、発達の土台
ビタミンD(vitamin D)は、私たちが日光を浴びることで皮膚で合成されるビタミンとしてよく知られています。骨の健康やカルシウムの吸収に関わる栄養素というイメージが強いかもしれませんが、実はそれだけではなく、免疫系(immune system)や脳の発達(brain development)にも深く関与していることが、ここ十数年の研究で明らかになってきました。
妊娠中、あるいは生まれた直後の赤ちゃんがビタミンD不足(vitamin D deficiency)の状態にあると、ASDのリスクが高くなる可能性があることを示す研究もあります。一般的に、「欠乏」とされるのは、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度(serum 25-hydroxyvitamin D concentration)が25ナノモル/リットル(nmol/L)未満のときとされています。
また興味深いことに、ビタミンDの影響は「性別によって異なるかもしれない」とするデータも出ています。たとえば、アメリカの大規模研究であるCHARGE(Childhood Autism Risks from Genetics and the Environment)コホートでは、女の子に限って、母体のビタミンDレベルとASDのリスクとのあいだに予防的な関連が見られたという報告もあります。
ビタミンDは、胎児の脳そのものに働きかけるだけでなく、免疫系の調整(immune regulation)や、脳内の炎症(neuroinflammation)を抑える作用も持つと考えられています。これらの多様な働きが、神経発達のプロセスにプラスの影響を与えているのではないかと考えられているのです。
さらに、すでにASDと診断されたお子さんにビタミンDを補給(supplementation)した一部の研究では、社会的なやりとりやコミュニケーションの改善といった変化が見られたという報告もあります。とはいえ、すべての研究で同じような結果が得られているわけではなく、効果の大きさや現れ方には個人差があるとされています。人種や遺伝的背景によっても異なる可能性があるため、現時点では「一律に勧められる標準療法」ではありません。
また、ASDのお子さんがすでにいるご家族においては、妊娠中に1日あたり5,000国際単位(IU:International Units)のビタミンDを摂取することで、次の子どもがASDと診断されるリスクを下げられるかもしれないという研究もあります。これはまだ検証段階にある仮説であり、自己判断で高用量を摂るのは避け、必ず医師の指導のもとで行う必要があります。
オメガ3脂肪酸(Omega-3 Fatty Acids):神経の発達に欠かせない脂質の働き
オメガ3脂肪酸(omega-3 polyunsaturated fatty acids)は、脂肪の一種ではありますが、身体にとって欠かせない「必須脂肪酸(essential fatty acids)」と呼ばれる栄養素です。とくに胎児期や乳児期には、脳や神経の構造が急速に形づくられていくため、オメガ3脂肪酸の存在が極めて重要になります。
代表的なオメガ3脂肪酸には、DHA(docosahexaenoic acid)やEPA(eicosapentaenoic acid)などがあり、これらは魚油(fish oil)や一部の植物由来オイルに多く含まれています。妊娠中の女性がこうした脂肪酸をしっかりと摂取していた場合に、子どものASDリスクが低下していたとする研究もあります。ただし、結果は研究によってばらつきがあり、すべての母子集団で一貫した効果が見られているわけではありません。
また、オメガ3脂肪酸だけではなく、体内にあるオメガ6脂肪酸(omega-6 fatty acids)とのバランスも重要だと考えられています。この二つの脂肪酸は、体内で互いに影響を及ぼし合う関係にあります。とくに、オメガ3:オメガ6の比率(n-3:n-6 ratio)が低すぎる場合には、炎症反応(inflammatory response)が高まりやすくなり、脳内の環境が神経発達にとって望ましくない状態になる可能性があるとされています。
実際に、オメガ3脂肪酸のサプリメント(omega-3 supplements)を用いた研究のなかには、ASDのお子さんの多動性(hyperactivity)や反復行動(repetitive behavior)がやわらいだという報告もあります。ただし、その効果の大きさは限定的であり、統計的に有意な差が見られた研究はまだ少数です。研究の規模が小さい、または参加者のばらつきが大きいといった課題もあり、現時点では「補助的な対応」として考えられています。
それでも、食生活のなかで無理なく取り入れられる栄養素であり、胎児や乳児の脳の健康を支えるという観点からも、妊娠中の食事に気を配るうえで注目すべき栄養素の一つといえるでしょう。
高脂肪食(High-Fat Diet):母体の食事が脳に与える影響
妊娠中、とくに妊娠の初期に高脂肪食(high-fat diet)を多く摂取していた母親では、その子どもが将来的にASDと診断されるリスクが高まる可能性があるとする研究があります。ここでいう「高脂肪食」とは、ファストフードや加工食品に偏った食生活を指すことが多く、過剰な脂質摂取によって体内の炎症反応(inflammatory response)やホルモンバランスが乱れることが懸念されます。
こうした影響は、母体だけでなく、胎児の脳や神経の発達にも及ぶ可能性があるとされています。たとえば、免疫の調整物質であるサイトカイン(cytokines)が変動し、それが胎児の神経伝達系(neurotransmitter systems)に作用することで、脳の発達に思わぬ影響を与えることがあります。
ラットを用いた動物実験(animal model studies)でも、妊娠中に高脂肪食を与えた母親から生まれた子ども、とくに思春期の雄(male offspring)において、ASDと関係があるとされる遺伝子(genes)——たとえば、Shank1、Setd1b、Taok2など——の発現に異常が見られたという報告があります。これは、食事が遺伝子の働き方(gene expression)に影響を及ぼす「エピジェネティクス(epigenetics)」の一例としても注目されています。
もちろん、こうした研究は動物実験に基づくものであり、そのまま人間に当てはまるとは限りませんが、「母体の栄養状態が、胎児の神経系に深く関わる可能性がある」という点では、人にとっても無視できない示唆を含んでいます。
妊娠用ビタミンとマルチビタミン(Prenatal and Multivitamin Supplements):過不足なく、バランスを意識して
妊娠中の母親が、葉酸(folic acid)や鉄分(iron)などを含んだ妊娠用ビタミン(prenatal vitamins)を継続的に摂取していた場合、ASDのリスクが30〜50%程度低下していたとする大規模なコホート研究(cohort studies)が報告されています。こうした結果は主にアメリカの研究に基づいていますが、日本を含めた他国の研究でも同様の傾向が示されています。
ただし、すべてのマルチビタミン(multivitamin supplements)が同じような効果を持つとは限りません。一部の研究では、マルチビタミンの摂取量が多すぎても少なすぎてもASDリスクが上昇するという、「U字型(U-shaped relationship)」の結果が報告されており、成分の内容や摂取のタイミングが鍵を握っていると考えられます。
「いいことだからたくさん取ろう」ではなく、「必要な分を、適切な時期に、バランスよく取り入れる」という視点がとても大切です。ご自身やご家族の体質や既往歴に合わせて、主治医や管理栄養士と相談しながらサプリメントを選ぶことをおすすめします。
その他の栄養素とその影響
鉄分(Iron)
妊娠初期から授乳期にかけて、鉄分が不足しないように注意することは、胎児の神経発達にとっても重要です。ある研究では、妊娠中に十分な鉄を摂取していた母親の子どもで、ASDの発症率が低かったと報告されています。ただし、妊娠30週までに妊娠性貧血(gestational anemia)と診断された場合、かえってASDのリスクが高まるというデータもあり、タイミングと継続性が重要となります。
ビタミンB12(Vitamin B12)
ビタミンB12は、神経細胞の機能やDNA合成に関わる栄養素です。高い血中ビタミンB12濃度(elevated serum B12 levels)がASDのリスクと関連していたという研究もありますが、全体としてのエビデンスはまだ限られており、現段階で明確な結論を出すには情報が不足しています。
カルシウムとマグネシウム(Calcium and Magnesium)
妊娠前にカルシウムを補うことでASDのリスクが下がったとする研究がありますが、マグネシウムについては、新生児の血中濃度とのあいだに有意な関連は見られませんでした。いずれにしても、バランスの取れた食事を通じてこれらのミネラルを摂ることが、神経発達にとって望ましいとされています。
人工甘味料とメタノール(Artificial Sweeteners and Methanol)
一部の後ろ向き研究(retrospective studies)では、人工甘味料であるアスパルテーム(aspartame)や、その代謝物であるメタノール(methanol)の摂取がASDリスクと関連する可能性があると報告されています。しかしながら、こうした研究では、摂取量を思い出して申告する形式が多く、「記憶の偏り(recall bias)」といった限界もあるため、因果関係が証明されたわけではありません。
栄養管理法(Dietary Approaches):日々の食事が心と体にできること
ASDのお子さんの症状を少しでもやわらげたい、日常生活を少しでも楽にしたい。そう願うご家族のなかには、食事によって何かできることがないかと探されている方も多いかと思います。近年では、ASDに関連するとされる行動や消化器症状に対して、特定の「除去食(elimination diets)」や「食事パターンの調整(dietary pattern modification)」が有効ではないかという報告がいくつか出てきています。
グルテン・カゼイン除去食(Gluten-Free, Casein-Free Diet)
「グルテン(gluten)」は小麦に含まれるたんぱく質、「カゼイン(casein)」は牛乳や乳製品に含まれるたんぱく質です。これらを取り除いた食事、いわゆる「GFCF食(gluten-free, casein-free diet)」が、ASDのお子さんの行動に良い影響を与えるのではないかとする報告があります。中には、反復行動が軽くなったり、睡眠が安定したりしたという保護者の声もあります。
しかしながら、多くの研究ではプラセボ対照(placebo-controlled study)や二重盲検法(二重盲検試験:double-blind trials)が用いられておらず、信頼性には限界があります。また、すべてのお子さんに当てはまるわけではなく、特定の体質や腸内環境を持つお子さんにのみ効果が見られた可能性も考えられます。
ケトジェニック・ダイエット(Ketogenic Diet)
「ケトジェニック・ダイエット(ketogenic diet)」とは、炭水化物(carbohydrates)を極端に減らし、代わりに脂肪を多く摂取するという食事法で、もともとはてんかんの治療の一環として開発されました。ASDとてんかんの両方を持つお子さんに対してこの食事法を導入したところ、認知機能(cognitive function)や行動面の改善が見られたという報告もあります。
ただし、エネルギー源や栄養バランスに偏りが生じやすい食事法であるため、長期的な実施には注意が必要です。また、大規模な臨床試験(large-scale clinical trials)はまだ実施されておらず、すぐに広く推奨できる段階ではありません。
地中海式食事(Mediterranean Diet)
「地中海式食事(Mediterranean diet)」は、魚、野菜、果物、全粒穀物、オリーブオイルなどを中心にした食生活スタイルで、心臓病や糖尿病の予防に役立つ食事法として知られています。妊娠中にこの食事スタイルを維持していた母親から生まれた子どもでは、ASDに関連する傾向(social responsivenessなど)が低くなる可能性があるという研究もあります。
ただし、こうしたデータはまだ限定的であり、文化的背景や遺伝的要因、食生活全体の質などが複雑に絡み合っているため、因果関係の確定には至っていません。それでも、「偏りのないバランスの取れた食事」が、神経発達に良い影響を与える可能性があるという点は、広く支持されている共通認識と言えるでしょう。
プロバイオティクスと腸–脳軸(Gut Microbiota and the Gut–Brain Axis):お腹の健康と心のつながり
近年、ASDに関連する研究の中で、特に注目を集めている領域のひとつが、「腸内細菌叢(gut microbiota)」と「脳の発達・機能とのつながり(gut–brain axis)」に関するものです。私たちの腸内には、数百兆ともいわれる微生物(microorganisms)が生息しており、これらは単に食べ物を分解・吸収するだけでなく、免疫機能や神経系の発達、さらには行動や感情の調整にまで深く関与していると考えられています。
とりわけ、ASDのお子さんにおける腸内細菌の構成(microbiota profile)は、発達の典型を示すお子さんとは異なる傾向があることが、いくつかの研究によって報告されています。具体的には、以下のような変化が観察されています:
- 増加が報告されている菌種:Clostridium(クロストリジウム属)、Bacteroidetes(バクテロイデス門)、Desulfovibrio、Lactobacillus(ラクトバチルス属)など
- 減少が報告されている菌種:Bifidobacterium(ビフィズス菌)、Firmicutes(ファーミキューテス門)、Prevotella(プレボテラ属)など
こうした腸内細菌叢の不均衡(dysbiosis)は、便秘や腹部の不快感、下痢といった消化器症状と関係しているだけでなく、感覚の過敏さ(sensory sensitivity)や反復行動、社会的な応答性といったASDの行動特徴とも関連がある可能性が示唆されています。特に、Clostridium属の一部の菌は、神経に作用する代謝産物や炎症性物質を産生することが知られており、これが神経発達に有害な影響を及ぼす可能性もあると考えられています。
腸内細菌が脳の発達や働きに影響を与える経路は「腸–脳軸(gut–brain axis)」と呼ばれ、いくつかの生物学的メカニズムが提唱されています。主な経路としては、以下のようなものが挙げられます:
- 短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acids, SCFAs):腸内細菌が食物繊維を発酵させることで生成されるSCFA、特に酪酸(butyrate)などは、脳内の炎症を抑える抗炎症作用を持つとされます。
- セロトニンの産生調節:腸内でのトリプトファン代謝を通じて、神経伝達物質であるセロトニンの合成が調整される可能性があります。
- 血液脳関門の透過性の変化:細菌の代謝産物が血液脳関門(blood–brain barrier)に作用し、有害物質や免疫分子の脳内侵入を促進または防御する可能性が示唆されています。
- 迷走神経(vagus nerve)を介した信号伝達:腸と脳を直接つなぐ主要な神経経路を通じて、腸内環境の変化が脳機能に影響を与えると考えられています。
こうした知見を背景に、腸内環境を整えることによってASDに関連する症状が改善する可能性に注目が集まっています。とくに、プロバイオティクス(probiotics)の摂取により、腸内の善玉菌バランスを回復させることで、神経炎症(neuroinflammation)の抑制や、セロトニン代謝の正常化、SCFA産生の促進、さらには迷走神経を通じた脳へのポジティブな信号伝達など、複数の経路を通じて行動や情動、消化機能に好影響を与える可能性があるとされています。中でも、Lactobacillus(ラクトバチルス属)やBifidobacterium(ビフィズス菌)の補充は、小規模な研究ながら一定の改善効果が報告されています。
加えて、こうした腸–脳軸の関係は、妊娠中の母体の腸内環境と胎児の神経発達にも深く関わっている可能性があります。たとえば、妊娠中のストレスや栄養の偏りが母体の腸内細菌のバランスを乱すと、それが胎児の腸内定着(microbial colonization)や免疫システムの形成に影響を与え、最終的に脳の発達プロセスにも変化をもたらす可能性があると指摘されています。さらに、母体の腸内環境の悪化によって炎症性サイトカイン(IL-6、MCP-1など)の分泌が高まり、これが胎児の神経発達に悪影響を及ぼすことが、動物実験などで示唆されています。
また、近年では、食物添加物(emulsifiersなど)の摂取や、食物繊維の不足といった食生活の変化が、腸内細菌の多様性や代謝産物の生成に悪影響を及ぼし、それが神経発達や遺伝子の発現調節(エピジェネティック変化)にまで影響を及ぼす可能性があるという報告も出てきています。
こうした腸内細菌と神経発達の複雑な関係性は、まだ研究の途上にありますが、「腸の健康を整えることが、心や行動の健康につながるかもしれない」という視点は、今後のASD理解と支援の在り方において、極めて重要な役割を果たすと考えられています。食事やサプリメントなど、比較的アプローチしやすい手段で腸内環境を改善することが、ASDの管理(management)や予防(prevention)における一助となる可能性が、今まさに注目されているのです。
予後|Prognosis
自閉スペクトラム症(ASD)の経過や将来の見通し(予後)は、非常に個人差が大きく、多くの要因によって左右されます。ASDは一生を通じて続く特性をもつ状態ですが、適切な支援や介入によって、生活の質や自立度を高めることができる可能性があります。
特に、以下のような要素が予後に影響を与えると考えられています:
● ASDの中核的な症状の重さ(社会的な困難さや反復行動の程度)
● 認知機能の水準(知的能力)
● てんかんや消化器症状、注意欠如・多動症(ADHD)などの併存症の有無
● 幼少期からの早期介入や療育支援の利用状況
また、近年では「栄養」という観点からも、ASDの発症リスクや症状の程度が変わる可能性が注目されています。
たとえば、以下のような栄養的要因は、ASDのリスクを下げたり、症状を軽くする方向に働くとする研究があります。
一方で、高脂肪食や栄養不足といった母体の栄養状態の乱れは、ASDのリスクを高める方向に働く可能性があります。特に、こうした影響は「診断レベルのASD」そのものよりも、ASDに関連する特性や傾向(たとえば社会的な応答性や感覚の敏感さなど)に影響を与えることが示唆されています。
動物実験などでは、母体の食事がエピジェネティクス(遺伝子発現の調節機構)やシナプスに関わる遺伝子の働き方を変化させる可能性が報告されており、人においても将来的に同様のメカニズムが解明されていくことが期待されています。
小さな積み重ねが未来をつくる
これまでに蓄積されてきた多くの観察研究(observational studies)を見てみると、一定の傾向が浮かび上がってきます。それは、妊娠初期、とくに受胎前後から妊娠第2期にかけて、葉酸(folic acid)やビタミンD(vitamin D)、妊娠用マルチビタミン(prenatal multivitamins)などを適切に摂取していた母親から生まれた子どもでは、ASDのリスクが低下していたという報告が繰り返しなされていることです。
また、オメガ3脂肪酸(omega-3 fatty acids)や、炎症を抑える効果があるとされるバランスの取れた食事スタイル(たとえば地中海式食事:Mediterranean diet)も、胎児の神経発達を支える可能性があるとされています。ただし、こうした結果にはばらつきがあり、すべての研究で一貫して同じ結論が導かれているわけではありません。
一方で、母体が高脂肪食(high-fat diet)を継続していた場合や、必要な栄養が不足していた場合には、炎症の増加(inflammatory activation)やエピジェネティクス(epigenetic modifications:DNAメチル化など)、神経伝達系(neurotransmitter systems)の乱れを通じて、ASDのリスクが高まる可能性があることも示唆されています。
このように、栄養とASDの関係性に関する研究は着実に増えていますが、それでも「因果関係がはっきりしている」と言い切れる段階にはまだ至っていません。情報を正しく受け取り、希望と現実のバランスを保つことが大切です。
よく見られる研究上の限界(Common Limitations):知ることの大切さ、限界を知ることの謙虚さ
現在までに発表されている多くの研究には、いくつか共通した限界(limitations)があります。たとえば、妊娠中の食生活をあとから思い出して答える形式の「回顧的調査(retrospective studies)」では、記憶の偏り(recall bias)によってデータの正確性が損なわれることがあります。
また、栄養状態をどうやって測るかにもさまざまな方法があり、食事記録(dietary questionnaires)、自己申告(self-report)、血液検査など、それぞれに長所と短所があります。加えて、どの栄養素をどの時期にどれくらい摂取したかが一定ではないことも、結果のばらつきの原因となります。
さらに、研究の対象となった母親や子どもの人数が少なかったり、特定の栄養素を摂取していたグループがごく限られていたりすると、統計的に有意な違いを見つけるのが難しくなります。また、母親の教育歴や経済状況、生活習慣といった「交絡因子(confounding factors)」が完全には調整されていない場合もあります。
こうした点をふまえると、栄養とASDとの関係について理解を深めていくためには、より大規模で精密な研究が必要とされます。
今後の研究課題(Future Research Priorities):これからの希望を科学につなぐ
将来に向けて、ASDの予防や症状の軽減に栄養がどう関わっているのかを明らかにするには、いくつかの重要な研究課題があります。
まずは、「無作為化比較試験(randomized controlled trials)」の実施です。これは、栄養介入が本当に効果を持つのかを、科学的にもっとも確実な方法で検証するものです。また、妊娠中や乳幼児期を通して、複数のタイミングで栄養状態を測定し、それが長期的な神経発達にどう影響するかを調べる「縦断的コホート研究(longitudinal cohort studies)」も非常に重要です。
さらに、一炭素代謝経路(one-carbon metabolism)、神経–免疫系の情報伝達(neuroimmune signalling)、酸化ストレス(oxidative stress)といった分子レベルのメカニズムを統合的に明らかにしていくことも求められます。
ビタミンDなど、性別によって効果が異なる可能性のある栄養素については、男女別の解析(sex-specific analysis)も今後の焦点です。加えて、文化や食習慣、遺伝背景の異なる国や地域でも同様の結果が得られるのかを確かめる「再現性の検証(replication studies)」も欠かせません。
引用文献|References
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