ブルーム(Bloom)症候群

BLM|Bloom Syndrome

ブルーム症候群(Bloom症候群)は、BLM遺伝子の変異によって引き起こされる希少な遺伝性疾患です。成長障害、紫外線に敏感な皮膚、免疫不全、糖尿病リスク、そして若年性がんの発症率が極めて高いことが特徴です。本記事では、ブルーム症候群の原因、症状、診断方法、治療法、そして最新の研究動向について詳しく解説します。

遺伝子・疾患名

BLM|Bloom Syndrome

Microcephaly, Growth Restriction, and Increased Sister Chromatid Exchange 1; Bloom-Torre-Machacek Syndrome; Congenital Telangiectatic Erythema Syndrome

概要 | Overview

ブルーム症候群(Bloom Syndrome, BS)は、常染色体劣性遺伝形式をとる稀な遺伝性疾患であり、低身長、光線過敏性皮膚病変、免疫不全、インスリン抵抗性、および多発性癌の発症リスクの増加を特徴とする。主な原因はBLM遺伝子の病的変異であり、この遺伝子がコードするRecQ DNAヘリカーゼBLMの機能喪失により、染色体不安定性やゲノム不安定性が引き起こされる。本疾患は、染色体異常(特に姉妹染色分体交換(SCE)の増加)を特徴とし、早期発症の癌リスクが極めて高い。影響を受けた男性は一般に無精子症で不妊であり、女性も早期閉経や生殖能力の低下が認められる。

疫学 | Epidemiology

ブルーム症候群は極めて稀な疾患であり、特にアシュケナージ系ユダヤ人集団で比較的高頻度に報告されている。出生時の有病率は特定の集団において1/100,000〜1/1,000,000と推定される。発症は胎生期から始まり、新生児期にも成長遅延が認められる。報告されている症例数は2021年時点で300例未満であり、希少疾患としての特性を持つ。

病因 | Etiology

ブルーム症候群はBLM遺伝子の病的変異により引き起こされる。この遺伝子はRecQヘリカーゼファミリーに属するBLMタンパク質をコードしており、DNA二重鎖切断の修復、姉妹染色分体交換(SCE)の抑制、ゲノム複製フォークの再開などに関与している。BLMタンパク質の欠損または機能不全により、DNA損傷応答が異常になり、染色体異常が増加する。

BLMヘリカーゼは、複製ストレス応答において重要な役割を果たし、異常なDNA二次構造(G-四重鎖など)の解消や損傷DNAの修復に関与する。特に、BLMはホリデイジャンクションの解消を担うBTR複合体(BLM-TOP3A-RMI1-RMI2)の一部として機能し、異常な組換えイベントを抑制する。

BLM遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状 | Symptoms

ブルーム症候群の主な臨床症状は以下の通りである。

  • 成長遅延:出生前後からの低身長(成人身長が150 cm未満)
  • 皮膚異常:日光曝露後に現れる蝶形紅斑、毛細血管拡張、色素異常(色素沈着または脱色素)
  • 顔貌異常:長細い顔、突出した鼻、低い下顎、目立つ耳
  • 免疫不全:上気道感染、耳炎、肺炎の反復
  • 代謝異常:インスリン抵抗性、2型糖尿病のリスク増加
  • 生殖異常:男性は無精子症による不妊、女性は早発閉経による生殖能力低下
  • 癌の発症リスク増加:あらゆる癌の発症率が一般人口より150〜300倍高い(特に白血病、消化器系癌、皮膚癌)
  • 神経発達異常:軽度の学習障害を伴う場合がある

検査・診断 | Tests & Diagnosis

診断は臨床症状、染色体異常の検出、遺伝子解析に基づいて行われる。

  1. 臨床評価:成長遅延、光線過敏性皮膚病変、特徴的な顔貌などの観察
  2. 細胞遺伝学的検査:姉妹染色分体交換(SCE)の増加(通常の10倍以上)が認められる
  3. 遺伝子検査:BLM遺伝子の病的変異の検出(NGSまたはサンガーシーケンシングによる解析)
  4. 追加検査:免疫機能評価(IgG低下など)、糖代謝異常のスクリーニング

治療法と管理 | Treatment & Management

現在、ブルーム症候群に対する根本的な治療法は存在しないが、症状に応じた管理が必要である。

  1. 皮膚管理:日焼け止めの使用、長袖・帽子の着用
  2. 感染管理:定期的な予防接種、抗生物質の適時投与
  3. 代謝管理:糖尿病リスクが高いため、血糖値のモニタリングと食事療法
  4. 癌スクリーニング:定期的な血液検査、画像診断(超音波、MRI、内視鏡)による早期発見
  5. 生殖医療:生殖補助医療の検討(女性の早期閉経に備えた卵子凍結など)
  6. 遺伝カウンセリング:家族への遺伝情報の提供とリスク説明

予後 | Prognosis

ブルーム症候群の患者の平均寿命は25〜30歳程度と報告されており、最も一般的な死因は悪性腫瘍である。癌の発症リスクが極めて高いため、早期のスクリーニングと適切な管理が重要である。免疫不全や代謝異常に対する継続的なモニタリングも必要とされる。

近年、ゲノム編集技術や標的治療の進展により、新たな治療法の開発が期待されているが、現時点では対症療法が中心となっている。

引用文献|References

キーワード|Keywords

ブルーム症候群, BLM遺伝子, 遺伝性疾患, 成長障害, 免疫不全, がんリスク, 染色体不安定症候群, DNA修復, 紫外線過敏, 早期発見, 遺伝子診断, 染色体異常, ホリデイジャンクション, DNAヘリカーゼ

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