先天性筋無力症候群

先天性筋無力症候群先天性筋無力症候群

概要

神経筋接合部分子の先天的な欠損及び機能異常により、筋力低下や易疲労性を来す疾患である。アセチルコリン受容体が欠損をする「終板アセチルコリン受容体欠損症」、アセチルコリン受容体のイオンチャンネルの開口時間が異常延長する「スローチャンネル症候群」、異常短縮する「ファーストチャンネル症候群」、骨格筋ナトリウムチャンネルの開口不全を起こす「ナトリウムチャンネル筋無力症」、アセチルコリン分解酵素が欠損をする「終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症」、神経終末のアセチルコリン再合成酵素が欠損をする「発作性無呼吸を伴う先天性筋無力症」に分類される。

疫学

世界中で600名ぐらいいると言われています。日本では20名ぐらいです。この病気は診断が難しく世界でも日本でも未診断の患者さんが多いと言われています。

原因

神経筋接合部で機能をする多数の分子のうちの1つの分子をコードする遺伝子の配列が正常者と異なることによって、十分な量の分子を作ることができない、あるいはその分子が本来持つ機能を果たせなくなることが原因である。原因となる欠損分子には、19種類(CHRNA1、CHRNB1、CHRND、CHRNE、COLQ、AGRN、LRP4、MUSK、LABM2、RAPSN、DOK7、CHAT、SCN4A、GFPT1、DPAGT1、ALG2、ALG14、PLEC、PREPL)が知られている。スローチャンネル症候群のみが常染色体優性遺伝形式で、他は常染色体劣性遺伝である。

ALG6遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

多くの例において、出生直後に泣く力が弱かったり、母乳を吸う力が弱かったりという軽度の筋力低下から、呼吸困難のために人工呼吸器が必要になるという重度の筋力低下まで認められる。出生直後のこれらの症状がいったん軽快し、幼少児期に再度、持続的な筋力低下や、運動するにつれて筋力が弱くなる筋無力症状が出る。筋無力症状による筋力低下の日内変動(午前中は筋力が強いが午後になると筋力がなくなる。)が明らかではなく、むしろ日ごとに筋力が異なる日差変動が認められることも多い。眼球運動障害はあることもないこともある。出生直後の一時的な筋力低下を含めて2歳以下に何らかの筋無力症状を発症することが多いが、スローチャンネル症候群においては成人発症のことも多い。また、口蓋の位置が高かったり、両耳の付け根が高かったりという顔面小奇形や、四肢の筋萎縮を認めることも多い。

治療

病態に応じて有効な薬剤が存在するものがある。終板アセチルコリン受容体欠損症やファーストチャンネル症候群に対して抗コリンエステラーゼ剤や3,4-ジアミノピリジンを使用、終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症とDok7筋無力症に対してエフェドリン使用する。また、スローチャンネル症候群に対してキニジンやフルオキセチン、ナトリウムチャンネル筋無力症に対してアセタゾラミドを使用する。

【参考文献】

難病情報センター – 先天性筋無力症候群