先天性N-結合グリコシル化経路異常症

先天性N-結合グリコシル化経路異常症先天性N-結合グリコシル化経路異常症

概要

糖タンパクにおける糖鎖はタンパク質の機能に重要です。先天性グリコシル化異常症は、糖タンパクの糖鎖の合成過程および修飾過程に関わる遺伝子変異により、糖タンパクの機能不足によって発症する先天代謝異常症です。多数のタイプが存在しますが、最も多いPMM2-CDGでは筋緊張低下、体重増加不良、精神運動発達遅滞、てんかん、特徴的顔貌、眼科異常、臀部脂肪沈着・乳頭陥没など皮膚症状、心嚢液貯留、肝機能異常等多彩な症状を認めます。胎児水腫や多臓器不全による早期死亡例から軽度知的障害のみの例など、CDGの重症度は多様です。糖鎖異常の同定には、質量分析法が有用です。

疫学

国内の調査では50名程度が存在します。しかし、診断方法が普及しておらず、未診断例が多数存在すると予想されます。

原因

糖タンパクの糖鎖の合成過程および修飾過程に関わる遺伝子変異が原因です。常染色体潜性遺伝の疾患が多いが、一部はX連鎖性です。

ALG6遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

乳児期からの筋緊張低下、体重増加不良、精神運動発達遅滞、特徴的顔貌があります。てんかん、内斜視など眼科異常、臀部脂肪沈着・乳頭陥没など皮膚症状、心嚢液貯留・心筋症が多いです。乳児期の哺乳不良、嘔吐、体重増加不良ため、経管栄養を要する例があります。顔貌の特徴として、目立つ前頭部、大耳介、眼瞼裂斜上を認めます。オレンジ皮様の皮膚、臀部脂肪沈着、乳頭陥没などの皮膚所見は診断の参考となります。CDGでは肝病変を呈するものが多いです。肝腫大、肝線維症、胆汁鬱滞、肝硬変などの肝病変を伴う例があります。脳卒中様発作、脳梗塞、脳出血など脳血管系の異常例があります。

診断

トランスフェリンは2本のN結合型糖鎖を持ち、血中濃度も高いので、先天性グリコシル化異常症の診断に利用されます。トランスフェリンの等電点電気泳動や質量分析法で糖鎖の不足や構造異常を証明することです。O結合型糖鎖の場合はApoCⅢの糖鎖解析が有用です。糖鎖異常は必ずしも認められない場合があり、遺伝子解析で病的変異を同定することも診断的意義があります。

治療

多くの先天性グリコシル化異常症は有効な治療法がなく、対症療法に留まるが、マンノースやガラクトースなど糖補充療法が有用なタイプもあります。

【参考文献】

難病情報センター – 先天性N-結合グリコシル化経路異常症