スミス・レムリ・オピッツ症候群【DHCR7】

やさしいまとめ

スミス・レムリ・オピッツ症候群(Smith-Lemli-Opitz Syndrome:SLOS)は、まれな遺伝性疾患であり、コレステロールの合成に関わる酵素に問題が生じることで発症します。この病気は、DHCR7遺伝子に変化があることが原因とされており、知的発達の遅れや、体のかたちの特徴、内臓や感覚器の異常など、さまざまな症状が見られます。

このページでは、SLOSの原因や遺伝的な仕組み、よく見られる症状、検査や診断の流れ、そして日々のケアや治療の選択肢について、やさしく丁寧にご説明しています。お子さまの成長や発達に関して気になることがある方や、すでに診断を受けているご家族の方にとって、安心してお読みいただける内容です。

また、将来の見通し(予後)や、次のお子さまを迎える際のご相談(遺伝カウンセリング)についても触れております。不安を抱える保護者の皆さまが、正しい情報とともにお子さまを支えていけるよう、信頼できる医学的知見に基づいてお届けしています。

遺伝子領域 | Implicated Genomic Region

DHCR7

DHCR7

スミス・レムリ・オピッツ症候群(Smith-Lemli-Opitz Syndrome:SLOS)は、DHCR7遺伝子(英語名:7-dehydrocholesterol reductase gene、日本語名:7-デヒドロコレステロール還元酵素遺伝子)に両親からそれぞれ病的な変異(へんい)を受け継いだ場合に発症する、常染色体劣性(じょうせんしょくたいれっせい)の遺伝性疾患です。

このDHCR7遺伝子は、第11染色体のq13.4領域に存在し、体内でコレステロールを作るための「Kandutsch–Russell経路」と呼ばれる生合成経路の最終ステップを担う重要な酵素である7-デヒドロコレステロール還元酵素(7-dehydrocholesterol reductase)を作るための設計図です。

この酵素は、体の中で特に副腎(ふくじん)・肝臓・精巣・脳などで多く発現しており、細胞の中の「小胞体(しょうほうたい、endoplasmic reticulum)」という場所に埋め込まれたかたちで存在しています。

この酵素の働きが不十分な場合、コレステロールが正常に作られなくなり、その前段階の物質である7-デヒドロコレステロール(7-DHC)が体内に異常に蓄積されてしまうことになります。その結果、胎児の発達や身体のさまざまな機能に支障をきたすようになります。

疾患名 | Disorder

この病気は正式には「スミス・レムリ・オピッツ症候群(Smith-Lemli-Opitz Syndrome: SLOS)」と呼ばれます。

他にも以下のような別名が使われることがあります:

  • 7-デヒドロコレステロール還元酵素欠損症(7-dehydrocholesterol reductase deficiency)
  • RSH症候群
  • Rutledge致死性多発奇形症候群(lethal multiple congenital anomaly syndrome)
  • 致死性四肢生殖器異形成症候群(lethal acrodysgenital syndrome)

いずれも、コレステロール合成に関わる異常が根本にある病気です。

概要 | Overview

スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)は、生まれつき(先天的)で起こる遺伝性の病気で、コレステロールをつくるための酵素(7-dehydrocholesterol reductase)の働きが不十分であることが原因です。

この酵素がうまく働かないために、

  • コレステロールの量が少なくなり、
  • その前段階である7-DHC(7-デヒドロコレステロール)などが異常に多く体内にたまるようになります。

コレステロールは、胎児の成長や脳の発達、ホルモンの合成にとってとても大切な物質です。そのため、この病気の影響は全身におよび、以下のようなさまざまな症状が現れます:

  • 知的障害
  • 身体的な先天異常(うまれつきの体の構造の問題)
  • 自閉スペクトラムに類似した行動の特徴

この病気の重症度は人によって大きく異なり、

  • 新生児のうちに命を落とす重症型から、
  • ほぼ正常に近い発達をする軽症型までさまざまです。

疫学 | Epidemiology

SLOS(スミス・レムリ・オピッツ症候群)は希少疾患に分類されますが、特定の民族集団では保因者の頻度が比較的高くなることが知られています。実際の発症頻度は、おおよそ20,000人〜60,000人に1人とされています。

ただし、保因者(キャリア)の割合は、民族や地域によって異なり、ある集団では比較的高頻度で見られます。保因者とは、病気の原因となる遺伝子変異を持っているものの、症状を示さない人のことです。

  • アシュケナージ系ユダヤ人(Ashkenazi Jewish)では、約43人に1人がこの遺伝子の保因者であると報告されています。
  • 北欧系(スカンジナビアなど)の集団では、約54人に1人が保因者とされています。

これらの保因者同士の間に子どもが生まれる場合、理論的には約4分の1の確率で子どもがSLOSを発症する可能性があります。

また、SLOSは胎児のうちに命を落とす(胎児致死)ケースが多いとされており、ある研究では、妊娠中の42〜88%のSLOS胎児が出産に至らないと報告されています。つまり、妊娠は成立しても、実際に生まれてくる子どもの数はそれよりも大きく少ないということになります。

病因 | Etiology

SLOSは、両親から受け継いだDHCR7遺伝子の変異(へんい)により発症します。両方の遺伝子が異常である場合、つまり「ホモ接合型(homozygous)」または「複合ヘテロ接合型(compound heterozygous)」のときに病気が起こります。

この遺伝子の異常により、次の2つの大きな問題が体内で起こります:

  1. コレステロール不足
    • コレステロールは、細胞の膜(細胞どうしの境目)や、胎児の発育に関わる信号(とくに「ソニック・ヘッジホッグ(Sonic Hedgehog)」という重要なシグナル)、そしてホルモンの材料として非常に大切です。
    • コレステロールが不足すると、胎児の発達や脳の成長、ホルモンバランスにさまざまな影響を及ぼします。
  2. 中間代謝物(ちゅうかんたいしゃぶつ)の異常蓄積
    • コレステロールになる前の段階の物質である「7-DHC(7-デヒドロコレステロール)」や、その異性体である「8-DHC(8-デヒドロコレステロール)」が体内にたまります。
    • これらの物質は、酸化(さんか)によって毒性のある物質(たとえばDHCEO)に変わる可能性があり、体の細胞や脳にとって有害になると考えられています。

このように、SLOSではコレステロールの不足と、有害物質の蓄積の両方が、さまざまな症状の原因になっていると考えられています。さらに、遺伝子変異のタイプによって病気の重さが変わることもあります。

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症状 | Symptoms

SLOSの症状は、非常に多様で、個人差が大きいのが特徴です。以下は、よく見られる主な症状です:

① 成長と発達の問題

  • 出生前および出生後の発育不全
  • 小頭症(しょうとうしょう:頭囲が小さい)
  • 体重が増えにくい(哺乳障害)
  • 低身長

② 神経や行動の問題

  • 中等度から重度の知的障害
  • 発達の遅れ
  • 自閉スペクトラム障害(ASD)のような行動
  • 刺激に対して敏感、怒りっぽさ、不眠
  • けいれん発作
  • 脳の構造異常(たとえば、前脳癒合症(holoprosencephaly)、脳梁欠損(agenesis of the corpus callosum))

③ 顔や手足の形の異常

  • 特徴的な顔つき:小さなあご(小顎症)、まぶたが垂れる(眼瞼下垂)、耳が低い位置にある
  • 口蓋裂(こうがいれつ:口の中の天井の裂け目)
  • 足の2番目と3番目の指がくっついている(合指症:syn・dactyly)←この症候群の特徴的な所見
  • 多指症(ゆびが多い)
  • 手足の形の異常:四肢の短縮、内反足など

④ 心臓の異常

  • 心房中隔欠損症(ASD)や心室中隔欠損症(VSD)
  • 動脈管開存症(PDA)
  • 大動脈縮窄(coarctation of the aorta)

⑤ 生殖器や泌尿器の異常

  • 男児では尿道下裂(hypospadias)、小陰茎(micropenis)、陰嚢の分裂(bifid scrotum)
  • 性分化異常(性別があいまいな外性器)
  • 腎臓の低形成や無形成

⑥ 消化器の問題

  • 哺乳困難・吐きやすさ
  • 幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)
  • 腸の位置異常(腸回転異常)
  • 肝機能障害

⑦ 内分泌・代謝の問題

  • 低コレステロール血症(hypocholesterolemia)
  • まれに副腎不全(adrenal insufficiency)
  • ビタミンDの代謝異常(光に敏感なのに血中ビタミンDが高くなることも)

⑧ 目の症状

  • まぶたが垂れる(眼瞼下垂)
  • 斜視(目の位置のずれ)
  • 白内障
  • 網膜の血管異常(まれだが視力に影響する可能性)

⑨ 耳の症状

  • 伝音性または感音性難聴(全体の約65%に見られる)
  • 中耳炎を繰り返しやすい

⑩ 免疫・皮膚の問題

  • 感染にかかりやすい(胸腺の発育不良が関与している可能性)
  • 光に敏感、アトピー性皮膚炎のような発疹

このように、SLOSは全身にさまざまな症状が出る病気であり、重症度にはかなりの幅があります。重い場合は出生直後に亡くなることもありますが、軽症の場合には日常生活が可能なケースもあります。

検査・診断 | Testing & Diagnosis

SLOSの診断は、生化学検査(血液や尿の成分検査)と遺伝子検査の両方を使って行われます。また、妊娠中の診断や、生まれた後の体の様子を確認する検査も重要です。

生化学的検査(Biochemical Testing)

  • コレステロール(cholesterol):通常より低くなっていますが、これだけでは診断できません。
  • 7-DHC(7-デヒドロコレステロール)や8-DHC(8-デヒドロコレステロール):血液や羊水、組織などで上昇しています。
  • GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析:Gas Chromatography–Mass Spectrometry):この検査は、7-DHCなどの物質を正確に測る「標準的な検査方法」です。妊娠中であれば、母体の尿からの非侵襲的検査も可能です(例:7-dehydropregnantriolや8-dehydroestriolの測定)。
  • 尿中ステロイドプロファイル:副腎ホルモンの産生異常を示す場合もあります。

遺伝子検査(Molecular Testing)

  • DHCR7遺伝子の塩基配列解析によって、両方の遺伝子に病的変異があるかどうかを確認します。
  • 検体(検査の材料)は、生まれる前では絨毛検査(CVS)や羊水から、出生後では血液などが使われます。

画像検査・臨床評価(Imaging and Clinical Evaluation)

  • 妊娠中の超音波検査では、前脳癒合症、心臓奇形、腎臓の異常などを見つけられることがあります。
  • 出生後の評価として、以下の検査が推奨されます:
    • 聴力検査
    • 眼科検査
    • 心エコー(心臓の超音波)
    • 腎臓の超音波検査
    • ホルモンや代謝の血液検査

鑑別診断(Differential Diagnosis)

SLOSは、以下のような他の病気と症状が似ているため、区別が必要です。

  • 他のコレステロール代謝異常(例:デスモステロール症、ラトステロール症)
  • 他の先天異常症候群(例:22q11.2欠失症候群、CHARGE症候群 など)

治療法と管理 | Treatment & Management

SLOSには根本的な治療法(完治させる治療)はありませんが、さまざまなケアによって症状をやわらげ、生活の質(QOL)を向上させることができます。

この病気は、体のいろいろな部分に影響するため、小児科、内分泌科、遺伝科、神経科、心臓科、栄養士、耳鼻科、眼科など多職種の連携(チーム医療)が必要です。

1. コレステロール補充療法(Cholesterol Supplementation)

最も一般的に使われている治療です。

  • コレステロールが不足しているため、外から食事やサプリメントの形で補います。
  • 方法:卵黄製剤、コレステロール入りの特殊ミルク、カプセルなど。

期待される効果:

  • 成長や体重増加の改善
  • ホルモン合成の補助、細胞膜の安定
  • 7-DHCなどの異常物質の減少の可能性

限界:

  • コレステロールは血液脳関門(blood–brain barrier)を通れないため、知的障害や行動面の改善には限界があります。
  • 脳の症状には直接的な効果が出ないことが多いです。

2. スタチン療法(Statin Therapy:慎重に使用)

一般にはコレステロールを下げる薬として使われますが、SLOSでは異常物質(7-DHC)の抑制を目的として研究的に使用されることがあります。

理論的な目的:

  • 7-DHCや8-DHCの体内量を減らすことで、毒性を下げる
  • 遺伝子が少しだけ働いている(低活性型)の場合に、酵素の働きを助ける可能性

注意点:

  • 現時点では有効性が十分に証明されておらず、副作用のリスク(肝障害、筋肉の問題、睡眠障害など)もあります。
  • 小児での使用はあくまで研究段階であり、通常の治療としては推奨されていません。

3. 栄養サポート(Nutritional Support)

多くの乳児や子どもが哺乳困難・吐きやすさ・成長不良を経験します。

対応方法:

  • 高カロリーの特殊ミルク
  • とろみをつけたミルクで逆流を防ぐ
  • 胃瘻(いろう)チューブなどを使って栄養を補う場合もあります

栄養モニタリング:

  • 定期的な血液検査で、コレステロールや脂溶性ビタミン(A、D、E、K)、カルシウム、ホルモンなどをチェックします
  • 特にビタミンDは過剰になりやすいため、注意が必要です

4. 内分泌とホルモンのケア(Endocrine and Hormonal Care)

コレステロールは体の中で多くのホルモンをつくる「材料」になります。そのため、SLOSの子どもたちにはホルモン関連の問題がみられることがあります。

副腎(ふくじん)の働き:

  • 副腎は、ストレスや感染時に必要なホルモン(コルチゾールなど)をつくります。
  • SLOSでは副腎不全(adrenal insufficiency)がまれにみられ、特に重症型の新生児では注意が必要です。
  • 元気がない、低血圧、低ナトリウム血症などがある場合は検査を行います。

性の発達に関する問題:

  • 男児には尿道下裂、小陰茎、停留精巣などが多くみられます。
  • 必要に応じてホルモン検査や男性ホルモン(テストステロン)補充を検討します。

甲状腺やカルシウムのバランス:

  • SLOSではまれに甲状腺機能低下症や低カルシウム血症がみられることがあります。
  • 定期的なモニタリングが重要です。

5. 聴覚と視覚のケア(Hearing and Vision Care)

SLOSの子どもたちには耳や目の問題がしばしばみられますが、発達の遅れの影に隠れて見落とされることがあります。

聴力:

  • およそ60%の子どもが難聴(なんちょう)を持ち、伝音性(中耳)と感音性(内耳)の両方のタイプがあります。
  • 乳児期から定期的な聴力検査を受けることが大切です。
  • 必要に応じて補聴器、言語療法、人工内耳などを検討します。

視力:

  • 眼瞼下垂(がんけんかすい)、斜視(しゃし)、白内障などの異常があります。
  • 網膜血管の異常(まれだが視力に影響)も報告されています。
  • 小児眼科医による定期的な検査が推奨されます。

6. 発達支援と行動面のケア(Developmental and Behavioral Support)

SLOSの多くの子どもに、知的障害や自閉スペクトラム様の行動が見られます。早期からの発達支援が、将来の生活の質に大きく影響します。

有効な療育・支援:

  • 早期療育(0〜3歳)
  • 理学療法(PT:運動機能の改善)
  • 作業療法(OT:細かい手の動きや感覚統合)
  • 言語療法(ST:ことばやコミュニケーションのサポート)
  • 応用行動分析(ABA):自閉症のある子ども向けの行動療法

行動上の課題:

  • 自傷行為(例:頭を打ちつける)
  • 睡眠障害
  • 攻撃性、衝動性、不安感
    → 必要に応じて、小児精神科や心理士の支援を受けることが有効です。

7. 外科的および内科的な治療(Surgical and Medical Management of Malformations)

以下のような先天性の形の異常に対して、手術が必要になる場合があります:

  • 心臓の手術(心房・心室中隔欠損など)
  • 泌尿器・生殖器の手術(尿道下裂、停留精巣など)
  • 口蓋裂の形成手術
  • 整形外科手術(足の変形、歩行困難など)

それぞれのお子さまに合った医療チームによる対応が必要です。

8. 定期的な経過観察とフォローアップ(Monitoring and Surveillance)

SLOSは、症状が軽くても定期的な医療フォローアップがとても大切です。

  • 成長・発達のモニタリング
  • コレステロール補充療法の調整
  • 聴力や視力の経過観察
  • ホルモンや代謝の異常の早期発見
  • 家族への精神的・実務的なサポート

9. 遺伝カウンセリングと家族支援(Genetic Counseling and Family Planning)

SLOSは常染色体劣性遺伝形式の病気です。これは、両親がともに保因者(キャリア)である場合、次の妊娠で:

  • 25%の確率で病気の子どもが生まれる可能性
  • 50%の確率でキャリア(病気は発症しないが遺伝子を持つ)
  • 25%の確率でまったく正常

となります。

ご家族への支援:

遺伝カウンセラーによるサポートが、今後のご家族の意思決定を支える大きな助けになります。

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予後 | Prognosis

SLOSの将来予測(予後)は、症状の重さとコレステロールや7-DHCの値によって大きく異なります。

重症型:

  • 胎児期や新生児期に命を落とす可能性があります(敗血症、多臓器不全、心臓奇形など)

中等度:

  • 知的障害と多臓器の問題がありながらも、成人まで生存可能な例もあります

軽症型:

  • コレステロール値が比較的高く、奇形が少ない場合は、ほぼ通常の発達を示す例もあります

ある研究では、35歳以上の生存率が約75%と報告されています。ただし、この病気は非常にまれであり、長期の経過に関するデータはまだ少ないのが現状です。

突然死のリスク要因:

  • 重度の先天異常
  • 血中コレステロール値が極端に低い(≤ 0.35 mmol/L)
  • 死亡診断書に記載された「不特定の先天性異常」
  • 副腎不全や感染症が原因の可能性も

やさしい言葉の説明|Helpful Terms

先天性(Congenital)
生まれたときからある状態や病気のことです。

コレステロール(Cholesterol)
体の細胞、脳、ホルモンなどにとってとても大切な脂(あぶら)です。赤ちゃんの成長にも必要です。

7-デヒドロコレステロール(7-dehydrocholesterol, 7-DHC)
コレステロールになる前段階の物質です。SLOSの子どもではこれがたまりすぎて、体に悪い影響が出ることがあります。

中間代謝物(Intermediate metabolites)
体の中で物質が変化していく途中にできるものです。SLOSでは、コレステロールに変わるはずの途中の物質がたまり、影響を与えます。

酸化ストレス(Oxidative stress)
体の中で「さび」のような変化が起きて、細胞にダメージを与える状態です。たまった物質が酸化して細胞を傷つけると考えられています。

DHCR7遺伝子(DHCR7 gene)
コレステロールを体の中で作るための「設計図」のような遺伝子です。SLOSではこの遺伝子に変化があり、うまく作れません。

常染色体劣性(Autosomal Recessive)
両親がそれぞれ「病気のもとになる遺伝子」を持っていると、子どもにその病気が出ることがあります。親に症状は出ません。

保因者(Carrier)
病気の原因となる遺伝子を1つ持っている人です。自分には症状が出ませんが、子どもに遺伝することがあります。

知的障害(Intellectual Disability)
考える力や生活スキルに支援が必要な状態です。支援を受けながら、その子に合ったペースで成長していくことが期待されます。

自閉スペクトラム(Autism Spectrum Disorder, ASD)
ことばや人との関わり方、行動の特徴に個性がある状態です。SLOSの子どもにはこれに似た特徴が見られることがあります。

小頭症(Microcephaly)
頭の大きさが平均より小さい状態で、脳の発達に関係します。

合指症(Syndactyly)
手や足の指がくっついている状態です。SLOSでは足の指(2番目と3番目)がくっついていることがよくあります。

多発奇形(Multiple congenital anomalies)
顔、手足、心臓など複数の場所に、生まれつき形の異常があることです。

心室中隔欠損(Ventricular Septal Defect, VSD)
心臓の壁に穴があいていて、血液の流れに問題が出ます。手術で治ることもあります。

尿道下裂(Hypospadias)
男の子の尿の出口が通常の位置にない状態で、排尿や性の発達に関係します。

副腎不全(Adrenal Insufficiency)
ストレスに対応するホルモンが足りなくなることです。早期に見つければ、薬で対応できます。

けいれん発作(Seizure)
脳の電気的な働きの乱れで、体がふるえたり意識がなくなったりすることがあります。

遺伝子検査(Genetic Testing)
体の設計図(DNA)を調べて、病気の原因になる変化があるかを調べる検査です。

GC-MS(Gas Chromatography–Mass Spectrometry)
血液や尿から、特定の物質(7-DHCなど)を正確に調べる検査です。SLOSの診断に使われます。

絨毛検査羊水検査(Chorionic Villus Sampling / Amniocentesis)
妊娠中に赤ちゃんの遺伝子の状態を詳しく調べるための検査です。絨毛検査は胎盤の一部を、羊水検査は赤ちゃんのまわりの水(羊水)を、とって調べます。

どちらも、NIPTスクリーニング検査とは異なり、診断を確定するための「確定検査 diagnostic test」と位置づけられています。ただし、体に針を刺す侵襲的(しんしゅうてき)な検査であり、ごくまれですが流産など赤ちゃんに影響が出るリスクがあります。

出生前診断(Prenatal Diagnosis)
赤ちゃんが生まれる前に、病気の可能性を調べる検査全体のことを指します。

コレステロール補充療法(Cholesterol Supplementation)
体に必要なコレステロールを卵やサプリで外から補う治療です。成長や体の働きを助けますが、脳への直接の効果は限定的です。

スタチン療法(Statin Therapy)
もともとはコレステロールを下げる薬ですが、SLOSではたまりすぎた物質を減らす目的で、研究的に使われることがあります。

栄養サポート(Nutritional Support)
体重が増えにくい場合に、特別なミルクやチューブを使って栄養をとる支援です。

発達支援(Developmental Support)
理学療法や言語療法などで、子どもが少しずつできることを増やしていくサポートです。

チーム医療(Multidisciplinary Care)
医師、栄養士、リハビリ専門家など複数の専門家が協力して、子どもと家族を支える医療の形です。

予後(Prognosis)
この先の見通しのことです。SLOSでは重い子もいれば、支援を受けながら元気に成長する子もいます。

遺伝カウンセリング(Genetic Counseling)
遺伝についてくわしい専門家が、ご家族の不安や今後の妊娠・子育てについて相談にのってくれる支援です。

引用文献|References

キーワード|Keywords

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