発達障害とNIPT検査の真実|ASD・ADHD・LDの最新知識が10分で理解できる【YouTube動画解説】

こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。

このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなくデータで分かりやすくお届けしています。

近年、社会的にも関心が高まっている発達障害(ASD、ADHDなど)について、「自分の子どもにも関係あるのではないか」と不安を抱く親御さんは少なくありません。

結論から言うと、現在の医学では、**ASDやADHDといった「発達障害そのもの」を出生前に直接診断することはできません。**しかし、発達障害のリスクを大幅に高める特定の遺伝子や染色体の異常については、NIPTなどで検出可能になってきています。

本記事では、発達障害の正しい理解から、遺伝と環境の関係、そして現在の医学で**「どこまで」リスクを知り、「どう備えるべきか」**を整理していきます。


1. 🔍 発達障害の正しい理解:3つの代表的な特性

発達障害は、特定の病気の名前ではなく、脳の発達に特性があるために、社会生活で困りごとが生じやすい状態をまとめた言葉です。「発達障害=特殊な病気」というわけではなく、あくまでその人の脳の働きの特徴を表しています。

子どもの5〜10%程度が診断されると言われており、決して珍しいものではありません。代表的な3つの特性を見ていきましょう。

1-1. 自閉スペクトラム症(ASD)

ASDは、かつての「自閉症」や「アスペルガー症候群」を統合した概念です。

  1. 対人関係・コミュニケーションの特徴: 相手の表情や声のトーンから感情を読み取るのが苦手で、冗談を文字通りに受け取ったり、会話のキャッチボールが苦手だったりします。
  2. こだわりの強さ: 毎日同じ順番で行動しないと落ち着かないなど、特定のルールや習慣を強く好みます。特定の物事に夢中になり、驚くほど詳しくなる集中力も特徴です。
  3. 感覚の敏感さ: 音、光、匂い、服の感触などに**過敏(または鈍感)**に反応し、日常生活で強いストレスを感じることがあります。

1-2. 注意欠如・多動症(ADHD)

主な特徴は「不注意」「多動」「衝動性」の3つです。

  1. 不注意: 集中が続かず、宿題や課題を始めてもすぐに気が散ってしまう、忘れ物が多い、ケアレスミスが多い。
  2. 多動: じっとしていられず、授業中に席を立つ、手足を動かし続ける。
  3. 衝動性: 思いついたことをすぐ口にしてしまう、順番を待てない、先のことを考えずに行動する。

1-3. 学習障害(LD)

知的発達に遅れがないにもかかわらず、特定の学習分野だけが極端に苦手になる特性です。文字を読むのが苦手な**「読みの障害」、字を書くのが苦手な「書字の障害」、計算が苦手な「算数障害」**などがあります。

2. 🧬 発達障害は出生前にわかるのか?NIPTの限界と可能性

2-1. NIPTでは「発達障害そのもの」は診断できない

現在のNIPTでは、ASDやADHDといった**「発達障害そのもの」を直接診断することはできません。なぜなら、発達障害は単一の遺伝子異常ではなく、100を超える多数の遺伝子と環境要因**が複雑に絡み合って発症する、多因子性の特性だからです。

2-2. 発達障害の「背景となる異常」は検出可能

しかし、「全く分からない」わけではありません。NIPTは、発達障害や重い知的障害のリスクを高める特定の染色体・遺伝子異常を見つける手がかりとなります。

それが、**「微小欠失症候群」や「微小重複症候群」**です。

これは、本来46本ある染色体の中で、特定の部分だけが**「欠けていたり(欠失)」「余分に増えていたり(重複)」**する異常です。

こうした**「発達障害の背景となり得る染色体異常については、NIPTで検出可能なケースが多く、生まれる前に「より重いリスクがあるかどうか」**を知ることができます。


3. 🌳 遺伝と環境の関係:「素地」と「開花」の掛け算

発達障害の原因を考える上で、**「遺伝と環境の掛け算」**という考え方が非常に重要です。

3-1. 非常に高い「遺伝率」

研究からわかっているように、ASDやADHDには非常に高い遺伝率が示されています。

障害の種類家族研究での遺伝率・一致率
ASD(自閉スペクトラム症約75〜90%
ADHD(注意欠如・多動症)約70〜80%
LD学習障害約30〜50%

特にASDとADHDは、**「遺伝が強い素地(素因)」**を作ることは明らかです。

3-2. 環境要因で症状の出方が変わる

しかし、「遺伝子を持っている=必ず発症する」わけではありません。遺伝子はあくまで**「素地」にすぎず、それが実際に「障害」**として強く表に出るかどうかは、環境要因が大きく関わります。

  • 安心できる家庭環境: 子どもが安心できる環境で育つと、持っていた特性が「個性」や「強み」として発揮され、困りごとにならずにすむことがあります。
  • 不適切な環境: 周囲の理解が得られず、孤立したり、叱責を受け続けたりすると、同じ特性が**「二次障害」**を伴う強い困難として表に出てしまうことがあります。

【結論】

NIPTで「背景となる遺伝子異常」を知ることは、**「その子の持つ特性を早期に知り、環境を整えるための最大のヒント」**になるのです。


💡 まとめ:出生前診断を「備え」のために活用する

今日は、「発達障害は出生前にわかるのか?」というテーマで、以下の重要なポイントを解説しました。

  • 発達障害そのものは分からない: NIPTではASDやADHDといった発達障害を直接診断できません。
  • 背景となる異常は分かる: NIPTは、ディジョージ症候群などの微小欠失症候群や、染色体異常といった、発達障害につながる遺伝子異常のリスクを検出できます。
  • 遺伝と環境の掛け算: 発達障害は高い遺伝率を示しますが、その特性が困りごとになるか強みになるかは、家庭や教育環境のサポートによって変わります。

NIPTは、発達障害を**「見つける検査」ではなく、「発達の困難につながるより重いリスクを早期に知り、家族の備えにつなげるための検査」**として活用することが、最も賢明な選択だと言えるでしょう。