本記事では、妊娠中に旅行する際の準備や注意点、行き先の選び方などを紹介します。安定期であっても旅行先でトラブルが発生しないとは限りません。当日楽しめるようマタニティ旅行ならではの事前準備が大切です。
妊娠中の旅行前にしておきたい準備
赤ちゃんが生まれた後は、しばらく旅行ができないだろうと考え、妊娠中に行っておきたいと考える人は多いのではないでしょうか。夫婦2人の思い出作りとして旅行を計画している人もいるでしょう。また、お腹の赤ちゃんと一緒に楽しむ「マタ旅」としても注目を集めています。しかし、旅行中に妊婦さんの身に何かあれば、お腹の赤ちゃんにも危険が及ぶリスクがあります。そのため、旅行前には念入りな準備が必要です。
宿泊先に妊婦であると事前に伝える
泊まりの旅行では、宿泊先を予約する際に妊婦であることを伝えておきましょう。つわりが無くなり、安定期に入っていたとしても、妊娠中は体調の変化が起こりやすいものです。旅行前は体調に問題がなくても、ちょっとした環境の変化で身体にトラブルが発生することもあるでしょう。宿泊先で何か体調の変化があったときにすぐ対応してもらえるよう、事前に知らせておくことが大切です。また、食事についても配慮してもらう必要があれば、一緒に伝えておくとよいでしょう。
必要な持ち物をチェックする
妊娠中は、旅行先で万が一体調に変化があったとき対処できるよう準備を進めます。まず、忘れてはいけないのが健康保険証と母子健康手帳です。旅行先で病院を受診する際に必要なため、忘れないようにしましょう。そのほか、処方されている薬や普段飲んでいるサプリメントがあればあわせて準備します。
宿泊先に浴衣が用意されている場合でも、お腹を冷やしてしまう可能性があるためパジャマやはらまきの持参をお勧めします。季節を問わず身体が冷えないよう、カーディガンやパーカーなどの羽織ものを一枚余分に持っていきましょう。
お肌が乾燥しやすい方は、ボディークリームも準備します。車移動を予定しているのであれば、尿もれパットや携帯トイレがあると安心です。
旅行当日は体調をチェックする
旅行前は準備でせわしなくなります。準備は前日までに済ませ、当日の朝は自分の体調を確認する時間にしましょう。もし、いつもと体調が異なると感じたら、旅行を中止する決断も必要です。体調が優れない状態で旅行し、自分やお腹の赤ちゃんに何かあっては、後悔することになるかもしれません。せっかくの旅行をキャンセルしたくない気持ちも理解できますが、将来のことを考えて行動しましょう。
妊娠中の旅行で注意しておきたいポイント
ここでは、妊娠中の旅行で注意しておきたいポイントを紹介します。妊娠中はお腹の赤ちゃんのことも考え、いつもより慎重に行動する必要があります。旅行の計画から当日までどのような意識を持っておけばよいかを考え、プランを立てましょう。
無理をせず休みをこまめにいれる
旅行先では、観光や食事など楽しみたいことがたくさんあります。観光地巡りで人ごみの中を歩くと、普段より疲れやすくなるでしょう。そのため、無理はせず疲れや体調不良を感じる前に、こまめに休憩を取ることが大切です。多めに休みを取りながら観光を楽しみましょう。そのためにも、旅行の計画を立てる際は、時間に余裕を持ったスケジュールの設定が大切です。あまり移動が多くならないような計画がおすすめです。
身体に負担のあるアクティビティは控える
妊娠中は身体を動かしたり、動いたりするアクティビティは避けましょう。たとえば、遊園地のジェットコースターやバンジージャンプなどの激しい動きが予想されるアトラクションは、そもそも妊婦さんの利用はできないとしていることが多い傾向です。また、パラグライダーやスカイダイビングなども体験が禁止されているケースが多いでしょう。気を付けたいのがマリンスポーツです。特にダイビングは、水圧や酸素濃度が赤ちゃんに悪影響をおよぼす可能性があるため避けましょう。アスレチックといった身体を動かすアクティビティも、転倒の危険があるため妊娠中はおすすめできません。
混雑する時期の旅行は避ける
妊娠中は、ゴールデンウイークやお盆など混雑しやすい連休の旅行は控えましょう。人ごみの中で歩きながら観光していると、人と接触して転倒するリスクがあります。また、人ごみに息苦しさを感じ、体調を崩す可能性もあるでしょう。車での旅行の場合、渋滞にはまってしまうこともあります。なかなか、トイレに行けなかったり、サービスエリアのトイレが混んでいたりと、妊婦さんは頻尿になりやすいため、車移動でも混雑時の負担が大きいと考えられます。ストレスなく観光を楽しむためにも、連休からはずらして旅行計画を立てましょう。
海外旅行は避ける
妊娠中の海外旅行は避けた方がよいでしょう。海外は、日本と環境が大きく異なります。食事や気候、時差など普段とは違う環境となるため、体調を崩してしまうおそれがあります。体調不良で病院にかかる必要が発生した場合、海外の医師に的確に状況を伝えるのは、言葉の違いで難しい可能性もあるでしょう。保険が利用できず高額な医療費がかかってしまうケースもあるため、トラブルを避けるためにも、妊娠中の海外旅行はおすすめできません。
旅行中の移動手段別の注意点
ここでは、旅行中に気を付けたいポイントを移動手段別に紹介します。近場の観光地であれば車や電車、遠方への旅行であれば飛行機を利用して行くケースが多いでしょう。それぞれ気を付けておきたいポイントが異なるため、自分たちの移動手段にあわせてチェックしておきましょう。
車移動の場合
車移動は周囲を気にせず旅行を楽しめるメリットがあります。また、自分たちのペースで移動できるため、体調を見ながら動きやすい移動方法です。
しかし、混雑時や人気観光地などでは、渋滞に巻き込まれる可能性があるでしょう。渋滞にはまってしまうと、気軽にトイレに行けなくなる上に、長時間同じ姿勢で座っていなければなりません。旅行先によっては公共交通機関を利用したほうがよい場合もあるでしょう。車で移動する際は、トイレや休憩できる場所を事前にチェックしておき、早めに寄ってこまめに休めるようにしましょう。
電車移動の場合
妊娠中の電車移動での旅行は、渋滞がなく移動にかかる時間がわかりやすいメリットがあります。観光地巡りの計画を立てやすいといえるでしょう。
しかし、乗り換え時間を通常時と同じように想定しているとギリギリになってしまう可能性があります。急いで転倒するリスクもあるため、乗り換え時間には、いつもよりゆとりを持って行動しましょう。万が一、電車移動中に体調が悪くなったら、無理せず途中下車して休むことをおすすめします。
飛行機移動の場合
妊娠中の飛行機移動には、大きなリスクがあります。飛行機の場合、途中で気分が悪くなっても目的地に着くまでは降りられません。また、航空会社によっては妊婦さんの搭乗を制限している場合があります。妊娠週数によっては、医師の診断書が必要です。妊娠中に飛行機での旅行計画を立てる際は、事前に利用する航空会社に確認しておきましょう。
国内旅行であれば数時間で済みますが、海外旅行は長時間のフライトが予想されます。万が一のリスクを考えて、飛行機での移動は避けたほうがよいでしょう。
妊娠中の旅行先選びで気を付けたいこと
ここでは、妊娠中の旅行先選びで気を付けたいポイントを紹介します。場所によって注意するポイントは変わります。観光を予定している場所にあわせて注意点をチェックしましょう。
レジャー施設
レジャー施設やテーマパークなど、さまざまなイベントやアトラクションのある場所に行くと、あれもこれもと楽しみたくなるものです。しかし、妊娠中はいつもと体調が異なることを意識して、ゆっくり楽しむようにしましょう。特にジェットコースターといった激しいアトラクションは、妊娠中はおすすめできません。お腹の赤ちゃんのことを考えて、のんびり楽しめるアトラクションを選びましょう。
また、炎天下の夏や寒さの厳しい冬の時期に外で楽しむテーマパークは控えてください。混雑時は待ち時間が長くなります。気温が高かったり低かったりすると体調を崩すおそれがあります。もし真夏や真冬にレジャー施設を楽しみたい方は、室温が調整されている室内テーマパークを選びましょう。
自然の多い環境や牧場
自然の多い観光スポットは、のんびり楽しむ分には気分のリフレッシュにもなるためおすすめです。ただし、登山といったアクティブな観光をする際は注意しましょう。妊婦さん自身の体力にも個人差がありますが、山登りは転倒リスクがあります。普段から登山をはじめとしたアクティビティを楽しんでいる方でも、妊娠中は気を付けなければいけません。
牧場でさまざまな動物と触れ合うのは気分転換になるためおすすめです。ただし、大きな動物と直接触れ合う際は、ぶつかって転んでしまう可能性もあるため、注意しましょう。基本的には、あまり体を動かさずのんびり楽しめる場所を選ぶことをおすすめします。
海・川
海や川で楽しむ際は、紫外線に注意しましょう。適度な日光浴はビタミンDを生成するために欠かせませんが、海や川は照り返しがあり、紫外線が強い傾向です。妊娠中はホルモンの影響によりシミやそばかすができやすくなっています。長時間紫外線を浴びてしまうと、お肌のトラブルが生じる可能性があります。
また、海水浴を楽しむ際は細菌感染に注意しましょう。海で遊ぶ際は、全身を海水にはつけず足元だけつけて楽しむのがおすすめです。
妊娠中に宿泊先で気を付けたいこと
ここでは、妊娠中の旅行先で宿泊する際に気を付けたいことを紹介します。
リゾートホテル
リゾートホテルでは、マッサージを受けることもあります。アロマのマッサージを受ける際は、事前に妊娠していることを伝えましょう。妊娠中でも利用できる精油を選択してもらう必要があります。もし、マッサージを受けているタイミングでお腹が張ってきたらすぐにマッサージ師に伝えて中止してもらいましょう。
また、リゾートホテルにプールが併設されている場合、せっかくだからと入りたくなります。しかし、水温が冷たいとお腹が冷えてしまうため、注意しましょう。
旅館
温泉旅館では、温泉に入ってゆっくり温まりたいと考えます。しかし、妊娠中は高い温度の湯船に長時間浸かるのは控えましょう。ぬるめのお湯でゆっくり温まるのがおすすめです。
温泉の泉質が赤ちゃんに影響をおよぼす可能性は低いですが、感染症のリスクには注意しましょう。感染症のリスクを減らすためには、部屋に温泉がついているタイプの旅館を選ぶのがおすすめです。また、床が濡れていて滑りやすいため転倒にも気を付けてください。
まとめ
妊娠中の旅行は、いつもより体調の変化が急激に起こりやすいでしょう。そのため、事前の準備が大切です。また、さまざまなトラブルを想定して備えておくようにしましょう。妊娠中でも、十分楽しむためには、場所選びと移動手段の選択が重要です。妊娠中は、活発に動き回る観光は控えて、無理なくのんびり楽しみましょう。
【参考文献】
Q&A
-
Q旅行のことはかかりつけ医に伝える?妊娠中に旅行する際は、必ずかかりつけ医に伝えておきましょう。旅行を止められるかもしれない、1泊だけだから問題ないだろうと考え、かかりつけ医に伝えない人もいるでしょう。しかし、事前に医師や助産師に相談しておけば、リスクの少ない旅行の楽しみ方の情報を提供してくれるかもしれません。トラブルなく旅行を楽しむためにもかかりつけ医への相談がおすすめです。
-
Q旅行先で体調が悪くなったら?旅行先で体調が悪くなったときにすぐ病院を受診できるよう、あらかじめ旅行先の病院や産婦人科を調べておきましょう。また、深夜に体調が悪くなることもゼロではありません。そのため、夜間救急診療を行っている病院も調べておくと安心です。
-
Q旅行先で食べてはいけないものは?旅行先でも、妊娠中に避けた方がよい食べ物は、食べないようにしましょう。特に気を付けたいのは、トキソプラズマとリステリアです。生肉やナチュラルチーズは控えるとよいでしょう。加熱殺菌されていないチーズはおすすめできません。また、刺身や寿司などの生ものも食べ過ぎないよう注意が必要です。
記事の監修者
岡 博史先生
【役職】
NIPT専門クリニック医学博士
ヒロクリニック統括院長
【資格】
平成8年 医師免許 取得
平成14年 慶應義塾大学医学博士号 取得
平成15年 皮膚科専門医 取得
平成29年 産業医 取得
【略歴】
平成8年 慶應義塾大学医学部 卒業
平成8年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 入局
平成11年 川崎市立川崎病院総合心療内科 勤務
平成12年 川崎市立川崎病院皮膚科 勤務
平成14年 慶応義塾大学病院皮膚科 勤務
平成17年 城本クリニック 勤務
平成20年 ヒロクリニック開院・院長就任
平成21年 医療法人社団福美会 設立・理事長就任
【所属】
医療法人社団福美会
【SNS】
YouTube ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch
TikTok ひろし先生の正しいエビデンス妊娠情報局
中文


