中国のNIPT(新型出生前診断)事情は?対象疾患や受ける人の割合も紹介【医師監修】

中国でのNIPT(新型出生前診断)の現状と受ける人の割合、対象疾患について詳細に解説します。

妊娠したら15週目までに
NIPTを検討しましょう

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日本では、NIPT(新型出生前診断)の専門委員会が設置され、在り方について定期的に会議が行われています。本記事では、中国のNIPT検査がどのような状況で行われているのかを紹介します。

出生前診断が税込4.5万~26.4万円

中国のNIPT(新型出生前診断)事情

街並み

こちらでは、中国のNIPT(新型出生前診断)事情を紹介します。

中国の出生数は大幅に減少している

中国は、かつての一人っ子政策の取り組みもあり、出生数が大幅に減少しています。2022年には、956万人と初めて1000万人を割り込む出生数となりました。2021年は1062万人であったため、1年で106万人も減少しているのです。

現在、中国政府は2016年から第2子の出産を、2021年からは第3子の出産を容認しています。しかし、それにもかかわらず出生率は減少している状況です。出生順序別にみてみると、第1子が前年よりも27万人減少、第2子が68万人減少、第3子が11万人減少となっており、第2子の減少が全体出生数の減少に大きな影響を与えているといえるでしょう。

中国は人口も減少している

中国では出生数の減少とともに人口の減少も進んでいます。中国の国家統計局が発表した2023年の総人口は14億967万人でした。2022年からは208万人もの減少がみられます。一方で、死亡数は増加傾向にあります。2023年の死亡数は1100万人と、2022年よりも69万人も増えている結果が報告されました。出生数が1000万人を切る中、死亡数が1000万人を越えているため、人口の減少につながっていると考えられるでしょう。

中国では胎児の性別情報の開示が禁じられている

中国では、2011年からNIPT(新型出生前診断)が導入されています。また、2016年までは一人っ子政策が実施され、老後の生活を支える労働人口として、男児の出産が強く望まれてきた傾向があります。結果的に、2008年の出生性比は、男児:女児=120.56:100であり、男児が20%ほど多く生まれていました。そのような背景もあり、中国では胎児の性別を開示することが法律で禁じられています。

現在、一人っ子政策が廃止されて以降、30代後半から40代の高齢出産に該当する女性が、2人目の子どもをもちたいと考えるようになり、NIPTの需要が高まっているのです。中国では、障害のある子どもは、世話の負担により家族全体の安全を脅かすという考え方もあります。そのため、NIPT検査といった臨床研究により遺伝子異常を事前に知りたいと考える人が多かったと考えられるでしょう。

性別を知るためには血液サンプルを輸送する

性別の判定が禁止されている中国で胎児の性別を知りたい場合は、妊婦さんの血液サンプルを香港へ輸送し、NIPTを受ける必要があります。なお、香港でも胎児の性別判定は違法な行為です。優秀な遺伝子を残そうとする傾向が強い中国では、違法な性別判定も行われており倫理的な問題が生じていました。

2011年から2014年までは、NIPTを管理する規制がなかったため自由に診断が行われていましたが、2016年からは国家衛生家族計画委員会により制定されたガイドラインに沿って運用されるようになりました。

中国のNIPTの対象疾患

中国のNIPTで対象となっている疾患は、13トリソミー・18トリソミー・21トリソミーの3つと、一部の微小欠失です。

13トリソミー:パトウ症候群

13トリソミーとは、13番目の染色体が1本余分にあることで引き起こされる染色体異常症で、パトウ症候群ともいいます。13トリソミーをもって生まれてきた赤ちゃんは、体格が小さいことが多く、脳や眼、顔、心臓などに重大な異常がみられる可能性もあります。

13トリソミーは、5000人~12000人あたりに1人の割合で発生するといわれています。余分な染色体は、一般的に母親から受け継がれます。また、発生のリスクは母親の年齢が高いほど上昇します。

13トリソミーの具体的な症状として、脳の発育遅延、口唇裂や口蓋裂がみられる、眼が小さい、瞳孔の欠損、網膜の発育不良など、頭や顔を中心に異常が多くみられるのが特徴です。13トリソミーの特別な治療方法はありません。13トリソミーの赤ちゃんの大半は、生後1か月を迎える前に死亡してしまいます。1年以上生存できる赤ちゃんは、10%未満といわれています。

18トリソミー:エドワーズ症候群

18トリソミーとは、18番目の染色体が1本余分にあることで引き起こされる染色体異常症で、エドワーズ症候群ともいいます。18トリソミーをもって生まれてきた赤ちゃんは、体格が小さいケースが多く、身体的な異常と内臓の機能障害がみられます。

18トリソミーは、3500人~8500人あたりに1人の割合で発生するといわれています。この病気を有する胎児は、多くの場合自然流産となります。余分な染色体は、ほとんどの場合で母親から受け継がれます。35歳以上での出産は、18トリソミーのリスクが高まります。なお、男の子よりも女の子の赤ちゃんに多くみられます。

18トリソミーを有する赤ちゃんは、筋肉や体脂肪の発達がよくないため、体が小さく弱々しい声で泣くなどの傾向があります。また、口とあごが小さいのも特徴です。18トリソミーの赤ちゃんのうち、半数が生後1週間以内に死亡し、1歳になるまで生きられる赤ちゃんは、わずか5~10%ほどです。近年では、生存期間が延びており、18トリソミーでありながら成人になった人もいます。

21トリソミー:ダウン症候群

21トリソミーとは、21番目の染色体が1本余分にあることで引き起こされる染色体異常症で、ダウン症候群ともいいます。21トリソミーをもって生まれてきた赤ちゃんは、発育や精神発達の遅れがよくみられ、特異的な頭部と顔、低身長が特徴です。

ダウン症候群の症例のうち、約95%は21トリソミーが原因といわれています。そのため、ダウン症候群の人は、通常の46本よりも多い47本の染色体をもっています。余分な染色体が父親から引き継がれることはほとんどありません。また、母親の年齢が上がるとともに、発症のリスクが高まります。

ダウン症候群の女性が妊娠すると、50%の確率で赤ちゃんもダウン症候群になります。ただし、多くは自然流産となるようです。ダウン症候群の赤ちゃんは、多くの場合で心臓と消化器に先天異常をもっています。13トリソミーや18トリソミーと比較すると、21トリソミーの予後は良好です。老化が通常よりも早く進むといわれていますが、成人まで成長が可能です。

中国でNIPTを受ける人の割合

中国でNIPTを実施する妊婦さんの割合は、25~49%ほどです。対象者を全妊婦ではなく、ハイリスク妊婦者に絞っている特徴があります。従来の非確定的検査で陽性となった妊婦さんを対象に実施されています。

中国のNIPTに関する問題

ここでは、中国のNIPTに関連する問題を紹介します。現在、中国では遺伝子解析最大手のグループが中国軍と共同開発した出生前検査のデータを二次使用していることが問題視されています。

出生前検査のデータを軍が保管している

近年の研究調査により、遺伝子解析最大手のグループと中国軍と共同開発した出生前検査の診断データを、国家安全保障に関連する場合に、中国当局に提出する規定が組まれていることが判明しました。中国グループが行っている出生前検査は、世界中の妊婦さん数百万人に利用されています。これまでに、検査を受けた女性は世界全体で800万人にも及び、イギリスやヨーロッパ諸国、カナダ、オーストラリア、インド、タイなど少なくとも52か国で販売されています。

また、検査を受けた女性500人以上の遺伝子データが、中国グループが運営する国家基因庫に保管されていることも明らかになっているのです。国家基因庫は、中国政府が資金提供を行っているバンクです。同グループのNIPTを受ける際、個人情報保護規定に注意する必要があるでしょう。

NIPT(新型出生前診断)とは

ここでは、NIPTについて紹介します。遺伝子検査の一つであるNIPTの特徴やどのような問題を調べられるのかを把握し、妊娠した際に利用すべきかを検討しましょう。

染色体異常がないか調べる検査

NIPT(新型出生前診断)とは、妊婦さんのお腹にいる赤ちゃんに染色体異常がないかを調べる検査です。妊婦さんに採血を行い、血液サンプルを分析して異常がないかを調べていきます。血液検査のため、妊婦さんにも胎児にも負担をかけない検査として注目を集めています。痛みやリスクがほとんどないため、早期検査として気軽に行える点がメリットの一つです。NIPTで発見できるのは、13トリソミー・18トリソミー・21トリソミーなどの常染色体の異数性だけではなく、全常染色体部分欠失や重複、微小欠失、性染色体の異数性など多くの検査が可能です。

スクリーニング検査の一種

NIPT(新型出生前診断)は、医学界では診断ではなくスクリーニング検査の一種と考えられています。確定検査ではないため、陽性の判定が出た場合は、ほかの確定検査を行う必要があります。主な確定検査は羊水検査や絨毛検査です。

NIPTは、スクリーニング検査ではありますが、非常に精度が高いといわれています。妊娠の初期段階で、染色体異常のリスクがあるかを知りたい妊婦さんにおすすめの検査です。

まとめ

中国では、2011年からNIPTが導入されており、2014年までは規制がなく、自由に診断が行われていました。しかし、2016年から国家衛生家族計画委員会により制定されたガイドラインに沿って運用されるようになり、倫理的な問題の解消が図られました。

日本では、年齢の制限なく多くの妊婦さんがNIPTを受けられます。胎児の染色体異常を事前に把握し、心の準備を整えるためにも、NIPTは有効です。NIPTを行う施設には、認証施設と非認証施設がありますが、どちらも医師が在籍し検査を行っています。妊娠・出産における不安を解消するためにも、医師の診察を受けて、NIPTを実施するかどうかを決めましょう。

世界最高水準のNIPT
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

Q&A

  • Q
    NIPT(新型出生前診断)を受けるための条件はありますか?
    ヒロクリニックでは、エコー検査によって胎児の心拍が確認されていれば、誰でも検査可能です。年齢制限も設けていないため、赤ちゃんの状態を事前に知っておきたい妊婦さんは、活用を検討しましょう。
  • Q
    NIPT(新型出生前診断)では医療保険の給付は受けられますか?
    NIPT検査は医療給付の対象外です。また、医療費控除も受けられないため注意しましょう。
  • Q
    NIPT(新型出生前診断)で性別は判明しますか?
    ヒロクリニックのNIPT(新型出生前診断)では胎児の性別も判別可能です。母親の血液を採取して胎児のDNAを分析することで、性染色体の情報から性別を判別します。

中国でのNIPT(新型出生前診断)の現状と受ける人の割合、対象疾患について詳細に解説します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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