~妊娠初期の安心を守るために、NIPTとともに考える母子の安全~
通勤電車や街中で見かける「マタニティマーク」。妊婦であることを周囲に伝えるこの小さなアイテムは、母子を守る大切なサインです。しかし一方で、マタニティマークの使用に抵抗を感じる妊婦さんも少なくありません。誤解や偏見、そして無関心。マタニティマークを正しく理解し、活用するには、社会全体の意識改革が必要です。また、妊娠初期における母子の健康リスクを見える化する「NIPT(新型出生前診断)」のような検査も、妊婦自身の安心につながる手段の一つです。本記事では、マタニティマークの意義や正しい使い方、社会に根強く残る誤解について掘り下げるとともに、NIPTの役割にも触れながら、母子の命を守るために今できることを考えます。
マタニティマークとは? 目的と歴史
母子健康手帳とセットで配布される“命の印”
マタニティマークは、厚生労働省が2006年に策定したロゴマークで、主に妊娠初期の妊婦が公共の場で周囲に妊娠していることを知らせ、配慮を求めるために使われています。母子健康手帳と一緒に配布されることが多く、キーホルダーやカード、ステッカーなどの形式で利用されます。
妊娠初期はつわりや体調不良が顕著な一方で、外見からは妊娠しているとわかりにくい時期です。そのため、周囲の理解と配慮を得るためには、このマークが大きな役割を果たします。
海外ではどうか?
マタニティマークのような取り組みは、日本特有のものではありません。たとえば英国では「Baby on Board」バッジが地下鉄で使われており、フランスや韓国でも同様のマークが導入されています。公共マナーとして浸透している国もあり、日本でもその意識醸成が求められています。
なぜ使いづらい?妊婦が感じる“マーク”への不安
誤解:マークをつけると優先されて当然?
マタニティマークを見たことのある人の中には、「特別扱いを求めているように見える」と感じる人もいます。しかし、実際は体調不良や流産リスクなど、妊娠初期のリスクに備えた「命を守るサイン」です。優先席を譲るためではなく、急な体調変化の際に周囲の手助けが得られるようにするためのものです。
SNSで話題:マークへの誹謗中傷やトラブル
実際、SNSなどで「マタニティマークをつけていたら嫌味を言われた」という体験談も報告されています。このような誤解や偏見が、妊婦を追い詰め、マークの使用をためらわせる要因になっています。マークを使う妊婦側にも勇気が必要だという現実を、社会全体が認識する必要があります。
NIPTとマタニティマーク:母子を守る2つの“見える化”
NIPT(新型出生前診断)とは?
NIPTは、妊娠10週から受けられる非侵襲的な出生前スクリーニング検査で、赤ちゃんの染色体異常(ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーなど)を母体の血液から検出します。高い精度と母体への安全性から、妊婦の不安を軽減し、より計画的な妊娠管理に貢献しています。
- 検査時期:妊娠10週以降
- 方法:採血のみ(非侵襲的)
- 精度:ダウン症候群で約99.9%
- 対象:35歳以上の妊婦を中心に希望者へ提供
“命を守るサイン”としての共通点
マタニティマークとNIPTは、まったく異なる領域のツールですが、どちらも「母子の命を守るための見える化」という共通点を持っています。
- マーク:周囲への可視化(社会的サポート)
- NIPT:胎児の健康状態の可視化(医学的サポート)
どちらも妊婦の安心と安全を支える大切な手段であり、必要なのはそれを正しく理解し、適切に活用することです。

マタニティマークを上手に活用するコツ
1. 無理に見せなくてOK:使い方は自由
マタニティマークは義務ではありません。バッグの内ポケットに入れておいたり、通勤電車だけで使用したりと、自分が安心できる場面で使えば良いのです。気になる場所では外してもOK。大切なのは、自分と赤ちゃんの安全を守ることです。
2. パートナーや家族にも理解してもらう
意外と忘れがちなのが、身近な人への説明です。マークの意味や妊娠初期のリスク、体調変化のサインなどをパートナーや家族に共有しておくことで、日常生活でもより良いサポートが受けられます。
3. トラブル回避のための心構え
万が一、マークに関して否定的な態度を取られたとしても、冷静に対処しましょう。嫌な経験があっても、それはあなたの責任ではありません。必要ならその場から離れ、安心できる場所へ避難してください。
社会がすべきこと:母子を支える空気づくり
意識改革の第一歩は「知ること」
マタニティマークへの偏見をなくすには、まずその意味と背景を知ってもらうことが重要です。企業や自治体が率先して情報発信を行い、一般の人々が妊婦の立場に立って考えるきっかけを提供すべきです。
教育現場での周知活動
小学校や中学校、高校などでも、「妊娠とは何か」「命の始まりとは何か」といったライフスキル教育の中でマタニティマークやNIPTなどについて取り上げていくことが望まれます。
まとめ:命を守る小さなサインを、もっと優しく受け止めて
マタニティマークは、単なる「妊婦アピール」の道具ではなく、母子の命を守るための大切なサインです。正しく理解し、妊婦が安心して使える社会を築くためには、私たち一人ひとりの意識が問われています。
そして、NIPTのような医療技術も同様に、妊婦が自らの身体と向き合い、赤ちゃんの健康と向き合うための選択肢です。社会的・医療的サポートを両輪として、「安心して命を育てられる社会」を目指すことが、今まさに求められています。

