この記事のまとめ
妊娠中は免疫・循環・ホルモンの変化により、風邪や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、尿路感染症、貧血にかかりやすくなります。多くは定期健診と生活の工夫でリスクを減らせます。ただし出血や強い頭痛、急なむくみなどのサインが出たときは自己判断せず、かかりつけの産婦人科へ早めに相談してください。
この記事でわかること
妊娠中は新しい命を育む大切な時期です。一方で、母体の免疫や代謝が変化することで、さまざまな病気にかかりやすくなります。風邪のような身近な感染症から、妊娠特有の合併症までリスクは多岐にわたります。本記事では、代表的な病気と症状、早期対応法、母子の健康を守るための予防策を解説します。
妊娠中に病気へかかりやすくなる理由
妊娠中は免疫・循環・ホルモンが大きく変化し、この変化そのものが病気のリスクを押し上げます。体に起きている変化を知っておくと、症状が出たときに落ち着いて対応しやすくなります。
免疫機能の変化
妊娠中は胎児を「半分異物」として拒絶しないよう、母体の免疫が巧みに調整されます。この状態は免疫寛容と呼ばれ、感染防御に関わる細胞の働きが一時的に抑えられます。
この結果、風邪やインフルエンザ、風疹、水痘といったウイルス感染にかかりやすくなります。リステリア菌や尿路感染症などの細菌感染にも注意が必要です。特に妊娠初期は免疫の調整が急に起こるため、感染症の発症率が上がりやすい時期です。
循環・代謝の変化
胎児や胎盤に酸素と栄養を届けるため、妊娠中は循環器系と代謝機能が大きく変わります。血液量は妊娠後期に非妊娠時の約40〜50%まで増加し、心臓への負担が増します。
- 血圧の変動:初期〜中期は低下しやすく、後期は高血圧になりやすい
- 血液凝固能の亢進:分娩時の出血に備える一方、血栓症のリスク要因になる
- 代謝の亢進:基礎代謝量と酸素消費量が増え、呼吸が浅く感じやすくなる
ホルモンバランスの変化
胎盤や卵巣から分泌されるホルモンは、母体のあらゆる臓器に影響します。プロゲステロンは子宮の収縮を抑え、流産のリスクを減らします。一方で消化管や尿管の動きも緩めるため、便秘や尿路感染症が起こりやすくなります。
エストロゲンは血管を拡張させる働きがあり、鼻づまりや歯肉の腫れが出やすくなります。妊娠初期に急増するhCGは、つわりの主な原因と考えられているホルモンです。
妊娠中にかかりやすい主な病気と症状
妊娠中は体の変化により、風邪、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、尿路感染症、貧血にかかりやすくなります。症状と母子への影響を知っておくと、受診の判断がしやすくなります。
まずは代表的な5つの病気の特徴を一覧で整理します。気になる症状があれば該当する項目を確認してください。
| 病気 | 主な症状 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 風邪・インフルエンザ | 発熱、咳、関節痛 | 38℃以上の発熱が続くとき |
| 妊娠高血圧症候群 | 高血圧、むくみ、頭痛 | 急なむくみ・頭痛・視覚異常があるとき |
| 妊娠糖尿病 | 自覚症状はほぼなし(健診の糖負荷試験で判明) | 健診で指摘されたとき |
| 尿路感染症 | 頻尿、排尿痛、発熱 | 排尿時の痛みや発熱があるとき |
| 貧血(鉄欠乏性) | 動悸、息切れ、めまい | 強い倦怠感が続くとき |
風邪・インフルエンザ
妊娠中は細胞性免疫が抑えられるため、ウイルス感染への抵抗力が落ちます。インフルエンザは季節性の流行があり、妊婦は非妊娠時より重症化しやすいとされています。
鼻水や喉の痛みに加えて38℃以上の発熱、関節痛が出た場合は注意が必要です。高熱が続くと流産や早産のリスクが上がるため、発熱が続くときは早めに受診してください。妊娠中でも接種できるインフルエンザワクチンを流行期前に検討する方法もあります。
妊娠高血圧症候群(PIH)
妊娠20週以降、胎盤の血流異常などをきっかけに血圧が上がる病気です。収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上の高血圧に、むくみやタンパク尿を伴うことがあります。
重症化すると、子癇やHELLP症候群など母体側のリスクが高まります。胎盤機能不全による胎児の発育不全や早産にもつながりかねません。予防には塩分を控えめにし、健診で血圧・尿検査を欠かさないことが役立ちます。むくみと尿タンパクが同時に気になり、不安になる方は少なくありません。Xでも@seal_dog_fishさんが「なんか今のむくみ具合といい、尿蛋白+2回出てることといい、ちょっと妊娠高血圧症候群なんじゃないかと不安」とつづっていました。むくみと尿タンパクが重なったときは、次の健診を待たずに相談して差し支えありません。
妊娠糖尿病
胎盤から出るホルモンがインスリンの働きを抑えるため、血糖値が上がりやすくなる状態です。自覚症状はほとんどなく、妊娠24〜28週ごろの75gブドウ糖負荷試験で見つかることが多くあります。
診断されると、母体は分娩時の難産、胎児は巨大児や新生児の低血糖につながる可能性があります。食事療法(低GI食品・食物繊維を意識した献立)が基本です。コントロールが難しいときはインスリン治療を検討します。検査で引っかかると数値の見方に戸惑う方も多いようです。Xでも@papipupepo7oさんが「75gブドウ糖負荷試験の3回採血で1時間後と2時間後が引っ掛かり、軽度の妊娠糖尿病になった」と経験を共有していました。基準値をわずかに超える程度でも診断名がつきます。まずは医師の説明を聞いたうえで、食事の見直しから始めてください。
尿路感染症
妊娠により尿管が広がり、膀胱の排尿効率が落ちることで細菌が繁殖しやすくなります。頻尿や排尿時の痛みのほか、腎盂腎炎に進むと発熱や腰の痛みが出ます。
放置すると早産や低出生体重児のリスクにつながります。そのため症状がなくても、健診の尿検査で無症候性細菌尿を含めて確認しています。妊娠中でも使える抗菌薬があるので、自己判断で我慢せず相談してください。
貧血(鉄欠乏性貧血)
妊娠中は鉄の需要が増え、特に後期は1日約7mgが必要とされます。食事だけでは不足しやすく、動悸・息切れ・めまい・強い倦怠感といった症状が出やすくなります。
放置すると分娩時の出血で重度の貧血になりやすく、胎児にも発達への影響が及ぶ可能性があります。赤身肉やレバー、ほうれん草、ひじきなど鉄分の多い食品を意識してください。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。健診の血液検査で鉄剤を処方されることも珍しくありません。Xでも「妊娠中に貧血で鉄剤処方されてたよ」という体験談が複数見られ、鉄剤特有の便の変化に戸惑ったという声もありました。処方薬を自己判断で中止せず、気になる副作用は健診で伝えてください。
病気を早期発見するための対応法
妊娠中の病気は、定期健診とセルフモニタリングの両立で早期発見につながります。「少しだから」と自己判断せず、気になる症状は早めに相談してください。
定期健診でチェックすること
妊婦健診は母子手帳のスケジュールに沿って、妊娠週数が進むほど頻度が増えます。健診の各項目には、それぞれ見つけたい病気の初期サインがあります。
- 血圧測定:妊娠高血圧症候群や子癇の早期発見に直結
- 体重測定:1週間で1kg以上の急な増加はむくみや高血圧のサインになりうる
- 尿検査:タンパク尿は妊娠高血圧症候群、糖尿は妊娠糖尿病、細菌尿は尿路感染症の手がかり
- 血液検査:貧血や肝機能、血糖値異常、感染症の有無を確認
自宅でのセルフモニタリング
自宅での体調管理は、異常を早く見つけて医師に伝えるための有効な手段です。私自身、妊婦さんの相談を聞く中で、体調の記録があると診察がスムーズに進む場面をよく見かけます。
血圧計は朝・夜の2回測定し、日ごとの変化を記録します。体温と体重も同じ条件(起床後・排尿後・軽装)で測ると、変化をつかみやすくなります。頭痛やむくみ、胎動の変化を簡単な症状日記にまとめておくと、健診で医師に伝えやすくなります。早期発見の鍵は、健診での定期チェックと、日々の小さな記録。
すぐに医療機関へ連絡すべきサイン
以下のサインが出た場合は、次回健診を待たずにかかりつけの産婦人科へ連絡してください。
- 38℃以上の発熱が続いている
- 強い腹痛や規則的な張りがある
- 量にかかわらず出血が見られる
- 胎動が極端に減った、または感じない
- 激しい頭痛や目のちらつきが出ている

NIPT(新型出生前診断)との関連性
NIPTは母体の血液から胎児の染色体を調べる非確定的な検査です。母体の病気を治療する検査ではありませんが、出生前の状況を早く把握する手段のひとつになります。位置づけと限界を正しく知っておいてください。
NIPTの対象と位置づけ
NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing)は、母体から採取した血液中の胎児由来DNAを解析する検査です。対象は21・18・13トリソミー(ダウン症候群など)といった特定の染色体異常に限られます。妊娠高齢(35歳以上)の方や、超音波検査でNT肥厚などの所見があった方に検討されることが多い検査です。
ヒロクリニックNIPTには、これまでに75,000件以上の検査実績があります。対象項目全体で感度99.9%以上、結果報告率99.98%という実績があります(判定不能率は約0.3〜0.4%)。国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析するため、最短2〜5日で結果を報告できます。
NIPTの限界と確定検査
NIPTは精度の高いスクリーニング検査ですが、確定診断ではありません。陽性の場合は羊水検査などの確定的検査が必要です。陰性であっても、対象外の染色体異常や構造異常までは分かりません。
ヒロクリニックNIPTでは、他院で受けた羊水検査にも使える補助制度を用意しています。プランに応じて最大30万円まで補助されます。検査を受けるかどうかは、パートナーとよく話し合ったうえで決めてください。検査の流れはNIPT(新型出生前診断)のページで確認できます。
妊娠中の病気を防ぐ予防策とセルフケア
栄養・運動・休養・衛生管理・メンタルケアの5つが、妊娠中の病気を防ぐ土台になります。特別なことでなく、日々の積み重ねが体調を支えます。
栄養バランスの取れた食事
妊娠中の食事は「量より質」を意識してください。鉄分は赤身肉やレバー、ほうれん草、ひじきから補います。葉酸は1日400μgを目安に、緑黄色野菜やサプリメントから摂ってください。カルシウムとたんぱく質も、胎児の骨や筋肉の形成に欠かせません。
生肉や生魚、ナチュラルチーズなど、リステリア菌感染のおそれがある食品は避けてください。カフェインは1日200mg(コーヒー2杯程度)を目安に控えめにします。私も妊婦さんから「体重が増えすぎるのが怖くて食事を減らしてしまう」という相談を受けることがあります。極端な制限はかえって栄養不足を招くため、量よりバランスを優先してください。体重増加の目安は妊娠前のBMIによって異なります。詳しい献立の考え方は妊娠中の体重管理と献立の記事も参考にしてください。栄養素の摂取基準は、厚生労働省の日本人の食事摂取基準で確認できます。
適度な運動と十分な休養
医師の許可のもと、無理のない運動を続けると血流改善や便秘予防、ストレス軽減につながります。ウォーキングは1日20〜30分、会話ができる程度の強度が目安です。マタニティヨガやストレッチも取り入れやすい運動です。
お腹の張りや出血があるときは運動を中止し、医師に相談してください。睡眠は、抱き枕を使ってシムス位(左側を下にした横向き)で眠ると血流が良くなります。ポイントは、無理をしないペース配分。15〜30分の短い昼寝も疲労回復に役立ちます。
衛生管理とメンタルケア
感染症の多くは、日常の衛生習慣で防げます。外出後や調理の前後は石けんで30秒以上手を洗い、流行期は人混みを避けてマスクを着用してください。基本は、こまめな手洗いとマスク、そして食材の十分な加熱。特別な道具は必要ありません。
妊娠中のストレスや不安は、免疫力の低下やホルモンバランスの乱れにつながることがあります。パートナーや家族に不安を話す、助産師や医師、心理士に相談する、マタニティクラスで同じ立場の人と交流する。こうした小さな行動の積み重ねが、心と体の両方を支えます。妊娠中の不安や検査について気になることがあれば、ひとりで抱え込まずに相談してください。
よくある質問
妊娠中の病気について、多くの方が抱く疑問をまとめました。受診の目安づくりに役立ててください。
Q. 妊娠中にかかりやすい病気には何がありますか?
風邪・インフルエンザ、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、尿路感染症、鉄欠乏性貧血が代表的です。いずれも免疫や循環、ホルモンの変化が背景にあります。
Q. 妊娠糖尿病と診断されたら、必ずインスリン治療が必要ですか?
いいえ。多くはまず食事療法で血糖値の管理を試みます。食事療法だけでコントロールが難しい場合に、インスリン治療を検討します。数値の目安は医師の説明を確認してください。
Q. むくみが出たら、すぐ妊娠高血圧症候群を疑うべきですか?
むくみだけで判断はできません。急な体重増加や頭痛、視覚異常、尿タンパクを伴う場合は可能性があるため、健診を待たずに相談してください。
Q. 妊娠中の貧血はどう対策すればよいですか?
鉄分の多い食品をビタミンCと一緒に摂ることが基本です。食事だけで改善しない場合は、健診の血液検査をもとに医師が鉄剤を処方します。自己判断でサプリ量を増やすのは避けてください。
Q. NIPTを受ければ、妊娠中の病気もわかりますか?
いいえ。NIPTは21・18・13トリソミーなど対象の染色体に限定した非確定的検査です。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった母体の病気を調べる検査ではありません。母体の病気は妊婦健診での血圧・尿・血液検査で確認します。
Q. どんな症状が出たら、すぐ産婦人科に連絡すべきですか?
38℃以上の発熱が続く、強い腹痛や規則的な張りがある、出血がある、胎動が極端に減った、激しい頭痛や視覚異常があるときは、次回健診を待たずに連絡してください。
妊娠中は身体の変化によって病気にかかりやすくなりますが、定期健診と日常のセルフケアで多くのリスクは軽減できます。気になる症状があるときは我慢せず、かかりつけの産婦人科へ相談してください。妊娠中期の過ごし方の記事もあわせて確認しながら、母子の健康を守る生活を続けてください。母子保健の制度についてはこども家庭庁の母子保健のページで確認できます。女性の健康に関する基礎知識は厚生労働省の女性の健康ナビ、産婦人科領域の情報は日本産科婦人科学会のサイトも参考にしてください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

