妊娠中の病気治療でもっとも避けたいのは、自己判断で薬をやめたり増やしたりすることです。つわりや風邪のような軽い不調から、糖尿病・高血圧・甲状腺疾患などの持病管理まで。妊婦さんが判断に迷う場面は数多くあります。この記事では、妊娠中の治療で避けたいNG行動を5つに整理しました。それぞれの正しい対処法と、NIPT(新型出生前診断)の結果と向き合う際の注意点まで解説します。
💡 この記事でわかること
- 妊娠中に自己判断で薬を使うことがなぜ危険なのか
- ネットやSNSの情報とどう付き合えばよいか
- 我慢せずすぐ受診したい症状の目安
- 持病の治療を妊娠中も続けたほうがよい理由
- NIPTの結果を正しく受け止めるための考え方
NG行動1:医師の診断を受けずに薬を服用する
妊娠中の薬は、普段飲み慣れたものであっても自己判断での服用を避けてください。妊娠4〜12週の器官形成期は、脳・心臓・四肢など主要な臓器がつくられる時期で、薬の成分が発育に影響する可能性があるためです。市販薬や以前もらった処方薬でも、妊娠週数によって使えないことがあります。
市販薬・サプリメントで注意したい例
妊娠中に自己判断で使いやすい薬ほど、実は注意が必要なものが含まれています。次の表を参考にしてください。
| 薬・成分 | 妊娠中の注意点 | 対応 |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬(イブプロフェンなど) | 妊娠後期の連用で胎児動脈管への影響が指摘される | 使用前に医師・薬剤師へ相談 |
| 総合感冒薬 | 成分の組み合わせによっては妊娠中に推奨されないものがある | 妊娠中であることを伝えて選んでもらう |
| 漢方薬・ハーブサプリ | 「自然由来だから安全」とは限らない(甘草・セントジョーンズワート等) | 自己判断で開始せず医師に確認 |
外来でも「市販の痛み止めは何を選べばいいですか」と聞かれることがよくあります。実際には成分ごとに特徴が異なり、体質や持病によって選ぶべき薬も変わるのが実情です。医師の@DrKaeruwnoさんも「アセトアミノフェンは胃に優しく妊婦さんも使いやすい一方、ロキソプロフェンは効き目が早いが胃への負担がある」と整理したうえで、迷ったら薬剤師に相談するよう呼びかけていました。市販薬であっても、妊娠中は「いつも通り」が通用しないと考えてください。
安全な服薬のための3ステップ
- 必ず医療者に相談する
妊娠週数・症状・既往歴を伝えたうえで薬を決めます。 - 母子健康手帳に服薬履歴を記録する
急な受診でも、医師が状況を把握しやすくなります。 - 公的な薬剤情報を活用する
国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターなど、専門的な相談窓口も参考になります。
「飲まないほうが安全」ではなく、正しい薬を正しいタイミングで使うことが安全です。妊娠中の薬全般の考え方は妊娠中に薬は飲める?病気と治療の基礎知識でも詳しく取り上げています。安易な自己判断は避け、医療者と二人三脚で服薬管理を進めましょう。
NG行動2:インターネットやSNSの情報を鵜呑みにする
SNSの体験談は「自分に効いた」であって「すべての妊婦に安全」を意味しません。妊娠・出産に関する情報はインターネットやSNSで無数に発信されていますが、医学的根拠がないものや一部だけ正しい情報も混在しています。
誤情報が招きやすい危険な思い込み
- ハーブティーで流産防止→根拠はなく、一部ハーブ(セージ・シナモンなど)は子宮収縮作用があり、かえってリスクを高める可能性があります。
- つわりは絶食すれば軽くなる→栄養不足による脱水や電解質異常で、入院管理が必要になることがあります。
- 葉酸は多く摂るほど良い→必要量を超えるとビタミンB12の吸収阻害など、別のリスクにつながります。
- 「NIPTは絶対に診断できる」という説→実際は確率を示す検査で、陰性でも例外があり、陽性なら確定診断が必要です。
私自身、外来で「SNSで見た方法を試したら体調を崩した」と相談を受けることが何度もあります。情報を試す前に、まず医療者へ確認する習慣。それが、母体と赤ちゃんを守る近道です。妊娠中の情緒的な不安と情報の波にどう向き合うかは妊娠中の情緒不安定と上手に付き合う方法もあわせてご覧ください。
信頼できる情報源の見分け方
| チェック項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 運営者の明示 | 病院・医師・学会など、発信者が特定できるか |
| エビデンスの提示 | 論文やガイドラインなど根拠が示されているか |
| 広告目的の有無 | 特定商品やサービスへの誘導が中心になっていないか |
| 情報の更新日 | 古い情報のまま放置されていないか |
厚生労働省や日本産科婦人科学会など公的機関の資料を一次情報として確認し、少なくとも2〜3の情報源で照合してください。それでも判断に迷う場合は、健診時やオンライン相談で医療者に直接質問することが、遠回りのようで一番の近道です。
NG行動3:症状を我慢して受診を遅らせる
「これくらい平気」と自己判断せず、迷ったら早めに医療機関へ連絡してください。妊娠中は免疫・循環・ホルモンのバランスが大きく変化し、通常なら軽症で済む不調が急速に悪化することがあります。
症状を我慢してしまう心理
「妊娠中はよくあること」という思い込みや、忙しさ、医療機関への遠慮から受診が遅れるケースは少なくありません。こうした心理が、重大な病気の発見を遅らせる一因になります。
自己判断せず、すぐ受診したい症状
| 気づいた変化 | 関連しやすい状態 | 目安となる対応 |
|---|---|---|
| 37.5℃以上の発熱が2日以上続く | 感染症の悪化 | 次の健診を待たず早めに連絡 |
| 性器出血(少量でも) | 切迫流産・切迫早産など | 自己判断で様子見をせず連絡 |
| 下腹部の持続的な痛みや強い張り | 子宮頸管の短縮・切迫早産 | 早めに産科へ連絡 |
| 急な視覚異常・激しい頭痛 | 妊娠高血圧症候群の悪化 | 速やかに医療機関へ連絡 |
| 胎動が急に減った、感じられない | 胎児の状態変化 | ためらわず受診 |
「少し気になる」は受診のサインです。症状が時間とともに悪化していないか、家族や医療者に相談したかを振り返り、夜間・休日でも対応してくれる病院を事前に把握しておくと安心です。
▼ 体調のことも、赤ちゃんのことも相談したい方へ

NG行動4:治療中の持病を自己判断で中断する
持病の治療は、妊娠がわかっても自己判断で中断しないでください。薬をやめることで生じるリスクが、薬を使い続けるリスクを上回るケースが少なくないためです。
私自身、外来で「妊娠がわかったから薬をやめました」と申告される方に出会うことがあります。多くの場合、自己中断はかえって母体の状態を不安定にしてしまいます。
自己中断が招きやすいリスク(病気別)
| 持病 | 自己中断で起こりやすいこと | 基本の考え方 |
|---|---|---|
| 糖尿病 | 高血糖状態が続くと流産・巨大児・羊水過多のリスクが高まる | 妊娠中もインスリン抵抗性を踏まえた血糖管理を継続 |
| 高血圧 | 放置すると妊娠高血圧症候群や胎盤早期剥離につながることがある | 妊娠中でも使える降圧薬へ調整して継続 |
| 甲状腺機能低下症 | 放置すると流産や胎児発達への影響が指摘される | 適正量の薬でほぼ正常な妊娠経過が見込める |
| てんかん | 発作による外傷や胎児の低酸素状態のおそれ | 必要量を継続し、可能なら催奇形性の少ない薬へ切り替え |
| 心疾患 | 心不全や不整脈の悪化が母体・胎児双方に関わる | 循環器内科と産科の連携で継続管理 |
安全な治療継続のポイント
- 妊娠判明後すぐに主治医へ報告する
妊娠週数・既往歴・現在の治療内容を共有します。 - 薬の安全性を再評価してもらう
妊娠中でも使える薬への切り替えや、投与量の調整を相談します。 - 複数科で連携する
内科・産婦人科・薬剤師がチームで管理する体制が理想です。
持病の治療は妊娠中でも中断せず、「母体を安定させることが胎児を守る土台になる」という意識が大切です。糖尿病・高血圧など持病別の治療の考え方は妊娠中の持病治療ガイド、病気全般への対応は妊婦が病気になったときの治療ガイドで詳しく解説しています。
NG行動5:NIPTなどの検査結果を誤解して自己判断する
NIPTは21・18・13トリソミーなど特定の染色体疾患について高い検出精度を持つ非確定的検査であり、結果だけで重大な決断をしないことが大切です。母体の血液中に含まれる胎児由来DNA断片を解析するスクリーニング検査で、確定診断には羊水検査や絨毛検査といった侵襲的な検査が必要になります。
誤解による危険な判断例
- 陰性=完全に安心→ごくまれに偽陰性(検出できなかった異常)があり得ます。陰性はあくまで「対象疾患の可能性が低い」という結果です。
- 陽性=即座に結論を出す→偽陽性の可能性もあるため、確定診断を受けずに判断するのは避けてください。追加検査で異なる結果が出ることもあります。
- 陽性結果を家族に相談せず一人で抱え込む→精神的な負担が大きく、正しいサポートを受ける機会を逃してしまいます。
NIPTの結果を待つ間、多くの妊婦さんが強い不安を抱えます。実際、@t8U8fZd6iH92528さんは「検査薬で陽性が出ても胎嚢確認まで不安で、次が心拍、そのあとも9週・12週の壁と続き、NIPTの結果待ちの時間もずっと不安」とつづっていました。私も遺伝カウンセリングの場で、結果を待つ間の不安を口にする方に数多くお会いしています。不安な気持ちそのものは自然な反応です。
結果を受け取ったときの正しい対応
- 検査前に限界と意味を理解する
何が分かって何が分からないのかを、事前に確認します。 - 結果は必ず医療者と共有し解釈する
遺伝カウンセリングで統計的な意味や背景を確認します。 - 必要に応じて確定検査を検討する
羊水検査・絨毛検査などで確定診断を行います。 - 家族や医療者と時間をかけて話し合う
感情だけで判断せず、十分な対話の時間を取ります。
NIPTの陰性結果でも羊水検査が必要になるケースはNIPTの陰性結果でも羊水検査は必要か、陽性判定後の選択肢はNIPT陽性後の未来、検査精度の詳しい考え方はNIPTとダウン症のすべてで解説しています。検査の位置づけについては出生前検査認証制度等運営委員会の情報も参考にしてください。「陰性でも油断せず、陽性でも慌てない」。この姿勢が、妊娠期を安全に過ごす鍵になります。
ヒロクリニックNIPTでできること
検査結果の解釈に迷ったときも、一人で抱え込まずに専門家へ相談してください。ヒロクリニックNIPTは、これまで75,000件以上の検査実績を持つ専門クリニックです。産婦人科専門医・小児科専門医・臨床遺伝専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析するため、最短2〜5日というスピードで結果を報告できる点も特徴です。年齢制限はなく、紹介状も不要です。
ただし、NIPTは持病の治療方針そのものを決める検査ではありません。持病の管理は主治医・産科医と、赤ちゃんの染色体疾患に関する不安はNIPTで——役割を分けて相談することが、安心への近道です。
よくある質問(FAQ)
外来でよくいただく質問に、簡潔にお答えします。気になる項目から読み進めてください。
妊娠中に市販薬を飲んでも大丈夫ですか?
自己判断での連日服用は避けてください。妊娠週数や成分によって安全性が変わるため、服用前に医師・薬剤師へ相談してください。
ネットやSNSで見た妊娠中の情報はどこまで信じていいですか?
参考程度にとどめてください。運営者やエビデンスが明示された公的機関の情報で照合し、最終判断は医療者と一緒に行うことが安全です。
どんな症状が出たら我慢せずすぐ受診すべきですか?
37.5℃以上の発熱が2日以上続く、性器出血、下腹部の持続的な痛み、急な視覚異常、胎動の減少などは、次の健診を待たずに連絡してください。
妊娠がわかったら持病の薬はすぐやめるべきですか?
自己判断でやめるのは避けてください。薬をやめるリスクが、薬を続けるリスクを上回ることが多いため、まず主治医へ相談してください。
NIPTで「陰性」だった場合、もう安心してよいですか?
対象となる染色体疾患の可能性が低いという結果であり、すべての先天性疾患を否定するものではありません。ごくまれに偽陰性もあり得ます。
NIPTで「陽性」と言われたら、すぐに次の検査を受けるべきですか?
すぐに重大な決断をする必要はありません。偽陽性の可能性もあるため、遺伝カウンセリングを受けたうえで、羊水検査などの確定検査を検討してください。
まとめ
妊娠中の病気治療では、母体と胎児の安全を第一に考え、自己判断や不確かな情報に頼らないことが何より大切です。薬の使用、情報収集、受診のタイミング、持病の管理、検査結果の解釈——いずれも医療者との連携が欠かせません。
「少し気になる」と感じたときは、ためらわず医療機関へ連絡してください。自己判断ではなく、医療者との連携。日々の行動を見直し、正しい知識と行動で妊娠期を乗り切りましょう。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を持つ。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会の情報を参照して作成しています。記載の内容は一般的な目安であり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

