はじめに
妊娠中期は、つわりや身体のだるさなどが落ち着き、一般的に安定期といわれるころです。
妊娠初期の不安定な時期を超えて、母子ともに状態が安定してきます。
しかし、妊娠中期に入ったからといって、まったく注意する必要がないわけではありません。
妊娠中期に起きる身体の変化や症状などがあるため、それらを踏まえて過ごしていく必要があります。
この記事では、妊娠中期における身体や症状について解説し、妊娠中期におすすめの過ごし方を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
妊娠中期はいつからいつまで?
妊娠中期とは、妊娠14週0日〜27週6日までの時期のことです。
お腹の中にいる赤ちゃんの成長に重要な働きをもつ胎盤が完成し、つわりといった身体症状が段々と落ち着いてきます。
そのため、妊娠初期に比べて体調が楽になってくる方も多いでしょう。
安定期とは
妊娠中期は、母子ともに状態が安定してくることから一般的に安定期ともいわれています。
安定期という言葉はよく知られていますが、正確な医学用語ではなく、明確な期間の定めはありません。
妊娠中期に起こる身体の変化
妊娠中期になるとつわりや身体のだるさなどが落ち着いてくる一方で、赤ちゃんの成長にともなってさまざまな身体の変化が生じます。
ここでは妊娠中期に起こる身体の変化について、詳しくみていきましょう。
胎動
胎動はお腹の中にいる赤ちゃんの動きのことです。
個人差はありますが、多くの方が胎動を感じ始めるのは妊娠中期ごろといわれています。
実はお腹にいる赤ちゃんが動き出すのは、妊娠8週くらいから。
しかし、動き始めの赤ちゃんはまだ力が弱く、手足を少し動かすくらいであるため、お母さんは胎動を感じません。
そのため、赤ちゃんの手足が発達し、筋力がついてくる妊娠中期ごろにはじめてお母さんは胎動を感じます。

お腹が出てくる
妊娠中期ごろになると、赤ちゃんが段々と大きくなってくるため、妊婦さんらしくお腹が出てきます。
これまでお腹が目立っていなかった方も急に目立つようになり、日頃の活動や服装選びに支障が出てくるかもしれません。
そのため、お買い物が楽にできるようにネットスーパーに登録したり、マタニティ用の服や下着を購入したりしておくとよいでしょう。
また、お腹が大きくなるとともに、お腹に妊娠線ができる可能性が出てきます。
妊娠線を予防するためには、妊娠中期ごろから保湿用のクリームを使用してスキンケアやマッサージをおこないましょう。
体重の増加
胎児が大きくなるにつれて、体重も増加していきます。
赤ちゃんの健康のためには、太りすぎていても痩せすぎていてもよくありません。
体重増加の目安としては、日本産科婦人科学会から以下のように報告されています。
- 低体重(BMI:18.5以下):12〜15kg
- 普通体重(BMI:18.5〜25):10〜13kg
- 肥満1度(BMI:25〜30):7〜10kg
- 肥満2度以上(BMI:30以上):個別対応(上限5kgまでが目安)
妊娠中は太りすぎたからといって、一気に食事の量を減らすといったダイエットは赤ちゃんの健康のためによくありません。
バランスのよい食生活を心がけ、ウォーキングやマタニティヨガなどの適度な運動をおこないましょう。
体重の増加について不安がある方は、妊婦健診の時に医師に相談してみてください。
妊娠中期によくある症状
妊娠中期は身体の状態が安定してきますが、身体への問題がなくなるわけではありません。
ここでは妊娠中期によくある症状について、詳しくみていきましょう。
お腹の張り、痛み
妊娠中期ごろにはお腹に張りや痛みを感じることがあります。
お腹に張りや痛みが起こる理由としては、赤ちゃんが大きくなって突っ張ることや子宮が収縮することなどによるものです。
また、その他にも身体の冷えやストレス、性行為、便秘などが原因でお腹に張りや痛みを覚えることがあります。
お腹の張りや痛みは多くのママさんに起こる自然な症状です。
そのため、張りや痛みがある時は安静にし、お腹を手でさするなどして、症状が治るのを待ちましょう。
ただし、お腹の張りや痛みが続く場合や激痛をともなう場合には注意が必要です。
切迫早産や常位胎盤早期剥離といった可能性もあるため、すぐに産婦人科を受診してください。
出血
妊娠中期に起こる出血には、あまり心配をしなくてよい原因と、注意が必要な原因があります。
あまり心配をしなくてよい原因としては、子宮腟部のびらんや子宮頸管ポリープによる出血です。
これらの原因は少量の出血がみられますが、大きな影響はありません。
しかし、出血が多い場合や出血にともなって痛みが強い場合などには、切迫早産や常位胎盤早期剥離、前置胎盤などの可能性があります。
そのため、出血が続く場合や大量の出血がある場合などには、一度受診しましょう。
受診する時に、出血の量や色、頻度、タイミング、状態などを説明できるようにしておくと、診察がやりやすくなります。
つわりのぶり返し
妊娠中期にはつわりが落ち着いてくる人が多いですが、なかには一度落ち着いたつわりがぶり返してしまう方もいます。
なぜ、つわりがぶり返してしまうのかというと、赤ちゃんが成長して、お母さんの胃や腸を圧迫してしまうからです。
つわりのぶり返しがある時には、一度に食べる量を減らして胃腸への負担を減らしたり、お腹を締め付けたりしないようにしましょう。

便秘
妊娠中はホルモンの影響や水分不足、活動量の低下によって、便秘になりがちです。
便秘を解消する方法としては、こまめな水分補給や食物繊維が多い食事、ウォーキングといった適度な運動などがあります。
妊娠中の便秘に悩んでいる方は、生活習慣を見直してみるとよいでしょう。
それでも便秘が解消されない場合には、医師に相談してみてください。
腰痛
妊娠中期には、腰痛になる方も増えてきます。
お腹が大きくなって反り腰になることや、骨盤への負荷などが原因です。
腰痛の対策としては、腰に負担がかからない姿勢を意識したり、適度な運動をおこなったりしましょう。
ストレッチや簡単な筋トレをすることもおすすめです。
切迫早産
切迫早産とは、妊娠22週〜37週未満の間に生まれる「早産」のリスクが高い状態のことです。
早産は赤ちゃんが十分に成長する前に生まれてきてしまうため、重篤な障害などが起きてしまう可能性が高くなります。
切迫早産の治療としては、安静に過ごすことが大切です。
また、子宮口が開いてしまわないように投薬をする場合もあります。
切迫早産の兆候としては、出血やお腹の張り・痛み、おりものの状態の変化などがあるため、疑いがある場合にはすぐに受診しましょう。
妊娠中期におすすめの過ごし方
妊娠中期は、身体の状態が安定しているころであるため、やっていいことが増えてきます。
そのため、出産に向けた身体づくりや体重管理をおこないましょう。
バランスのよい食生活を心がけ、ウォーキングやマタニティ向けの運動などで、適度に身体を動かすことがおすすめです。
また、妊娠後期になるとお腹がより大きくなったり、出産の準備で忙しくなったりするため、遠出や時間がかかる用事などが難しくなります。
妊娠中期に必要な外出や用事などを済ませておくとよいでしょう。
ヒロクリニックNIPTでは、妊娠週数に制限を設けていませんので、妊娠中期でもNIPT(新型出生前診断)が可能です。
ダウン症候群やエドワーズ症候群、パトウ症候群などのリスクの有無を評価できるので、赤ちゃんの染色体に異常がないかご不安な方、NIPT(新型出生前診断)についてお気軽にご相談ください。
妊娠中期に注意すること
妊娠中期は安定期といわれていますが、まったくリスクがないわけではありません。
いくら安定しているからといって、やってはいけないこともあります。
身体に負担がかかることやストレスになることは、なるべく避けましょう。
また、妊娠中は貧血になるリスクが高くなります。
ふらつきや脱力、疲れやすさなどが生じる可能性があるため、食事の内容や医師に相談してサプリメントの使用などを検討しましょう。
まとめ
妊娠中期のおすすめの過ごし方について解説しました。
妊娠中期は安定期ともいわれる時期で、母子ともに状態が落ち着いてきます。
しかし、妊娠中期だからといって何でも行なってよいわけではありません。
本記事を参考にして、妊娠中期を過ごしましょう。
【参考文献】
- 日本産科婦人科学会 –妊娠中の体重増加指導の目安について
記事の監修者

川野 俊昭先生
ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医
産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。
略歴
1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長
資格
日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医