妊娠が分かったら保険・手当を確認|出産準備の第一歩

妊娠が分かったら、保険や手当の確認は早めに行いましょう。出産一時金や育児休業給付金、自治体の助成制度など申請方法も詳しく解説します。

妊娠したら15週目までに
NIPTを検討しましょう

妊娠したら15週目までに
NIPTを検討しましょう

妊娠が分かった瞬間から、日常生活や将来の計画は大きく変化します。母子の健康を守るための通院や生活習慣の見直しはもちろん、出産・育児に伴う経済的負担への備えも重要です。日本には妊娠・出産・子育てを支える多くの公的制度が存在しますが、申請のタイミングや条件を知らなければ受給できないケースもあります。本記事では、妊娠が分かったら最優先で確認すべき保険・手当・自治体の助成制度を網羅的に解説します。加えて、NIPT(新型出生前診断)など任意検査にかかる費用や出産後の税制優遇制度も詳しくご紹介します。

1. 妊娠が分かったら最初に確認すべき保険制度

1-1. 健康保険の種類と適用範囲

妊娠後はまず加入中の健康保険(協会けんぽ・組合健保・共済組合など)を確認しましょう。
正常分娩は保険適用外ですが、帝王切開・切迫早産妊娠高血圧症候群など医療行為が必要な場合は適用されます。

主な保険適用例

適用外

  • 正常な経膣分娩
  • 無痛分娩(医療理由なし)
  • 里帰り出産の交通・宿泊費

医療機関によって判断が異なる場合があるため、事前に医師へ確認すると安心です。

1-2. 高額療養費制度

医療費が高額になった場合、高額療養費制度を使えば1か月の自己負担額が上限まで抑えられます。
標準的な年収(約370〜770万円)の場合、窓口負担は約8万7,000円程度に軽減されます。

事前申請のメリット

  • 「限度額適用認定証」を提示すると窓口負担を抑えられる
  • 帝王切開や合併症ありの入院は対象
  • 同月内の家族分も合算可能

※正常分娩は対象外です。

公的保険でカバーできない費用は、民間保険で補填可能です。

  • 入院給付金(1日あたりの支給額)
  • 手術給付金(帝王切開・流産手術など)
  • 特定女性疾病特約(妊娠関連疾患の保障)

妊娠後の新規加入や契約変更では出産関連が対象外になることが多いため、妊活前からの加入が望ましいです。

2. 出産に関する給付金・手当

2-1. 出産育児一時金

概要
健康保険加入者(本人または扶養家族)が出産した際に支給される制度で、1児につき原則50万円(うち産科医療補償制度掛金1万2千円含む)が支給されます。2023年4月から金額が引き上げられました。

特徴

  • 双子の場合は2倍(100万円)
  • 加入している健康保険組合によっては、独自の加算制度(例:+3万円など)がある場合もあり
  • 直接支払制度を利用すると、出産費用から差し引いた差額のみを病院へ支払うため、大きな出費を抑えられる

申請方法

  1. 医療機関が「直接支払制度」に対応している場合:病院と健康保険へ手続きを行えば自己負担を減らせる
  2. 未対応の場合:出産後に領収書と申請書を健康保険組合へ提出し、口座振込で受給

2-2. 出産手当金(働く妊婦向け)

出産手当金は、会社員や契約社員、パートタイムなどで働いている人が出産前後で仕事を休む期間に、健康保険から収入の一部を補填してもらえる制度です。妊娠・出産によって働けない間の経済的負担を軽減することを目的としています。

会社を通じて加入している**健康保険(社会保険)**が対象であり、扶養に入っている専業主婦や、国民健康保険のみ加入している自営業者は対象外です。

支給対象期間

  • 産前休業期間:出産予定日の42日前から出産日まで
    (双子や三つ子など多胎妊娠の場合は98日前から)
  • 産後休業期間:出産日の翌日から56日間

この期間、会社を休んで給与が支払われないか、もしくは給与が減額されている場合に支給されます。


支給額

出産手当金は、出産前12か月間の給与(標準報酬月額)を基準に算出されます。

計算式

日額 = (支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日) × 2/3

支給例

  • 標準報酬月額が30万円の場合
    日額:約6,667円
    産前産後合計98日休んだ場合:約65万円

補足

  • 出産予定日より出産が遅れた場合、その延長分の日数も追加で支給されます。
  • 会社から給与が一部支払われる場合、その額に応じて出産手当金が減額される場合があります。

受給条件

出産手当金を受け取るには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

  1. 勤務先の健康保険に1年以上継続して加入していること
  2. 出産のために仕事を休み、その期間に給与を受け取っていない、または一部のみ支給されていること
  3. 出産した本人が被保険者であること(扶養家族は対象外)

申請の流れ

  1. 勤務先から申請書を受け取る
    出産予定日の少し前に、人事や総務担当者に申し出て「出産手当金支給申請書」を受け取ります。
  2. 出産後に医師・助産師の証明をもらう
    申請書の「医師の証明欄」に、出産した病院で記入してもらいます。
  3. 勤務先経由で健康保険組合に提出
    必要書類を勤務先へ提出し、会社が取りまとめて健康保険組合へ提出します。
  4. 審査・振込
    審査が完了すると、指定した口座に出産手当金が振り込まれます。支給までの目安は1〜2か月程度です。

注意点・補足

  • 出産前に退職してしまった場合でも、一定条件を満たせば受給できる場合があります。
  • 産後すぐに退職する場合も、出産日を基準に算出されるので、事前に勤務先の担当部署に確認しておくと安心です。
  • 出産手当金は非課税扱いで、所得税や住民税は課されません。

3. 育児休業とその給付金

育児休業給付金

育児休業給付金は、雇用保険に加入している労働者が育児休業を取得した場合に支給される給付金です。出産や育児によって一時的に仕事を休む間の収入を補填する制度で、育児に専念しやすい環境を整えることを目的としています。

この制度は雇用保険法に基づき、ハローワーク(公共職業安定所)が窓口となって手続きや支給を行います。出産した本人だけでなく、配偶者が育児休業を取得する場合にも利用可能です。


支給期間

原則として、育児休業給付金は子どもが1歳になるまで支給されますが、以下の場合には延長が可能です。

  • 1歳6か月まで延長
    保育園に入れない、または仕事復帰が難しい特別な事情がある場合。
  • 最長2歳まで延長
    保育園の入所が決まらない、または配偶者の病気やケガなど家庭の事情で育児が続けられない場合。

支給額

育児休業給付金の支給額は、育児休業開始前の賃金(育休開始前6か月の平均賃金)を基準に計算されます。

  • 育休開始から6か月間
    賃金の**67%**が支給されます。
  • 育休開始7か月目以降
    賃金の**50%**が支給されます。

課税について

育児休業給付金は非課税です。そのため、所得税や住民税はかかりません。ただし、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)については、一定条件を満たせば免除されます。


受給条件

育児休業給付金を受け取るためには、次の条件をすべて満たしている必要があります。

  1. 雇用保険に加入していること
    育休開始前の2年間に、12か月以上の被保険者期間があること。
  2. 育児休業中の収入が一定以下であること
    育休期間中、勤務先から支給される賃金が休業開始前の8割未満である場合に限られます。

申請の流れ

育児休業給付金は、自分で直接申請するのではなく、勤務先を通じて申請します。手続きはおおむね以下の手順で進みます。

  1. 育休取得の申請
    勤務先に育児休業を取得する旨を伝え、必要書類を提出。
  2. 勤務先がハローワークへ申請
    勤務先が書類を整え、ハローワークに提出します。
  3. 2か月ごとの更新申請
    育児休業給付金は2か月ごとに支給されるため、そのたびに勤務先を通じて申請手続きが必要です。
  4. 支給決定通知・振込
    審査完了後、本人の口座に振り込まれます。

その他の注意点

  • 育休中に短時間勤務を行った場合、収入によっては支給額が減額されることがあります。
  • 夫婦で育休を分け合う「パパ・ママ育休プラス」を利用すると、給付期間を少し長くすることも可能です。
  • 育児休業開始前に退職してしまった場合は、給付対象外となるため注意が必要です。

3-2. 社会保険料免除

概要
育休中は健康保険・厚生年金の保険料が免除されます。免除期間も将来の年金額や保険加入期間として計算されるため、不利益はありません。

申請方法

  • 勤務先が年金事務所または健康保険組合に届け出

ポイントまとめ

  • 出産育児一時金はほぼ全員が対象
  • 出産手当金は働いている妊婦のみ対象で、健康保険加入歴が条件
  • 育児休業給付金は雇用保険加入者が対象
  • 育休中は保険料免除で家計負担が減る

4. 自治体からの助成制度

4-1. 妊婦健診費用助成

概要
妊婦健診(妊婦健康診査)は、母体と胎児の健康状態を定期的に確認するために妊娠期間中14回程度行う検診です。公的医療保険は適用されないため、費用は全額自己負担が原則ですが、各自治体が補助を行っています

助成の内容

  • 母子健康手帳交付時に「妊婦健診補助券(受診券)」が渡される
  • 一般的に14回分程度が助成対象
  • 1回ごとに上限額が設定され(例:初回上限10,000円、2回目以降5,000円など)、上限を超えた分は自己負担

補助の活用例

  • 妊婦健診で超音波検査や血液検査を実施した場合でも、補助券を使えば自己負担額が減る
  • 里帰り出産の場合、転出先の自治体の助成を受けられるケースと、償還払い(領収書を提出し後日返金)になるケースがある

注意点

  • 補助額や回数は自治体ごとに異なる
  • 私費検査(NIPTや4Dエコーなど)は対象外が多い
  • 有効期限は出産予定日まで

4-2. 出産・子育て応援交付金

概要
2023年度から全国一律で開始された制度で、妊娠届出時と出産後にそれぞれ5万円(合計10万円)が現金またはクーポンで支給されます。目的は、妊娠期から出産・育児期にかけた経済的負担を軽減することです。

支給時期と使途

  • 妊娠届出時(5万円):妊婦用品、マタニティウェア、通院費用などに活用可能
  • 出産後(5万円):ベビー用品、ミルク、オムツ、ベビーカー、チャイルドシートなど育児関連費用に活用可能

支給方法

  • 現金振込または商品券・電子クーポン
  • 多くの自治体では、妊娠届出時に申請書を記入し、面談やアンケートに回答後、振込手続きが行われる

注意点

  • 申請が必要(自動では支給されない)
  • 一部自治体では面談参加や必要書類の提出が条件
  • 使途が限定される場合あり(クーポン型の場合)

ポイント

  • 妊婦健診助成は自治体によって補助額が大きく異なるため、引っ越し予定がある場合は両方の自治体の制度を事前に確認することが重要
  • 出産・子育て応援交付金は全国共通制度ですが、申請方法や支給形態は自治体によって差がある

5. 自治体別助成制度の具体例

制度は自治体によって差があります。以下は一例です。

自治体特徴的な助成制度支給額・内容
東京都杉並区妊婦歯科健診無料、産後ヘルパー派遣最大20時間まで無料
大阪市出産準備応援金妊娠届出時に5万円支給
札幌市妊娠中検査費用補助(トキソプラズマ等)上限5,000円
福岡市産後ケア事業(宿泊・日帰り)1日1,000〜3,000円で利用可

6. NIPT(新型出生前診断)にかかる費用と注意点

NIPTは自費診療(10〜20万円前後)で、公的保険の対象外。費用は医療機関や検査項目によって異なります。
自治体によっては妊婦健診補助の一部を任意検査に振替可能な場合もありますが、NIPTは対象外であることが多いため事前確認が必要です。陽性時は羊水検査(約10万円)を追加で行う可能性があります。

7. 出産後に活用できる税制優遇制度

7-1. 医療費控除

概要
出産や妊娠に関する医療費(妊婦健診、分娩、入院費、合併症治療、通院交通費など)が年間10万円(総所得200万円未満の場合は所得の5%)を超えると、確定申告で所得控除が受けられます

対象となる主な費用

  • 妊婦健診(保険適用外も含む)
  • 出産費用(正常分娩・帝王切開問わず)
  • 入院費(差額ベッド代は除く)
  • 通院交通費(公共交通機関の運賃)
  • 切迫早産妊娠高血圧症候群の治療費

対象外の例

  • マタニティウェアやベビー用品
  • マイカー通院のガソリン代(原則不可)

申告の流れ

  1. 領収書や交通費記録を1年分保管
  2. 出産育児一時金など保険からの給付金を差し引いた額を計算
  3. 確定申告書に記入して税務署へ提出(e-Tax利用可)

◎ 控除額は「医療費総額 − 保険給付金 − 10万円(または所得の5%)」で計算します。

7-2. 児童手当

概要
0歳〜中学校卒業(15歳到達後の最初の3月末)まで支給される国の制度。所得制限があり、制限を超えると特例給付(月5,000円)になります。

支給額

  • 3歳未満:月15,000円
  • 3歳〜小学校修了前:月10,000円(第3子以降は月15,000円)
  • 中学生:月10,000円

申請方法

  • 子どもの出生後、15日以内に市区町村役場で申請
  • 必要書類:認印、申請者のマイナンバーカード、銀行口座、健康保険証

支給時期

  • 年3回(6月・10月・2月)に4か月分ずつまとめて振込

7-3. 扶養控除・配偶者控除

概要

  • 扶養控除:所得税や住民税の課税対象額を減らす制度。16歳未満の子は住民税の計算に影響し、16歳以上は所得税にも控除が適用されます。
  • 配偶者控除:配偶者の所得が一定額以下(所得48万円以下、給与収入103万円以下など)の場合、最大38万円の所得控除が受けられます。

注意点

  • 年末調整または確定申告で申告が必要
  • 配偶者特別控除を利用すれば、配偶者の所得が高くても段階的に控除を受けられる場合があります

まとめ

  • 医療費控除は出産費用が高額になりやすい年ほど有効
  • 児童手当は申請期限が短いので出生届と同時申請がおすすめ
  • 扶養控除・配偶者控除は年末調整での申告漏れに注意

8. 手続きの流れとタイミング

妊娠初期(妊娠判明〜12週頃)

  1. 妊娠届の提出
    • 医師の診断を受け、妊娠が確定したら市区町村役場に「妊娠届出書」を提出。
    • 提出先:住民票のある自治体
    • 受け取れるもの
      • 母子健康手帳
      • 妊婦健診補助券(受診券)
      • 各種案内(地域の母親学級、相談窓口など)
    • 注意点:転居予定がある場合は、転居先でも再発行や補助券交換の手続きが必要。
母子健康手帳

妊娠中期(13〜27週頃)

  1. 勤務先・健康保険組合に連絡
    • 出産手当金や育児休業給付金を受け取るために、勤務先へ妊娠報告。
    • 準備するもの
      • 医師の診断書(妊娠週数が明記されたもの)
      • 申請書類(勤務先経由で入手)
    • ポイント:早めに報告することで、業務引き継ぎや勤務調整がスムーズになる。
  2. 自治体助成制度の申込
    • 妊娠期から利用できる自治体独自の助成(妊婦歯科検診、産前ヘルパー派遣など)がある場合、役所で申請。
    • 申請時期が限定されている制度も多いので、母子手帳交付時にもらったパンフレットで確認。

妊娠後期(28週〜出産予定日)

  1. 必要書類の準備
    • 出産後の各種申請に備えて、以下を整理しておく。
      • 健康保険証
      • 医師の証明書(出産手当金用)
      • 勤務先の勤務証明書
      • 出生届の用紙(役所で事前入手可)
    • ポイント:事前準備しておくことで、産後の手続きがスムーズになる。

出産後(退院〜産後56日頃まで)

  1. 出生届の提出
    • 出生日から14日以内に、市区町村役場へ提出。
    • 同時に児童手当や医療保険加入手続きができる自治体も多い。
  2. 児童手当の申請
    • 出生届と同時、または出生日の翌日から15日以内に申請。
    • 必要書類:マイナンバーカード、健康保険証、振込口座情報
  3. 健康保険証の申請(子ども用)
    • 勤務先または加入中の健康保険組合を通じて申請。
  4. 出産手当金・育児休業給付金の申請
    • 出産手当金:出産後、医師の証明をもらって勤務先経由で健康保険組合に提出。
    • 育児休業給付金:育休開始後に2か月ごとにハローワークへ申請(勤務先経由)。

年末〜翌年確定申告時期

  1. 医療費控除の申請
    • 出産にかかった費用(保険給付分を除く)が年間10万円を超えた場合に申告。
    • 確定申告書に医療費明細書を添付し、税務署またはe-Taxで提出。

ポイント

  • 申請期限が短いもの(出生届・児童手当)は特に注意。
  • 多くの申請は役所や勤務先経由で行うため、必要書類の事前確認が重要。
  • 出産後は体力回復と育児で忙しいため、できる限り妊娠中に書類を準備しておくのがおすすめ。

9. まとめ

妊娠初期から制度を把握しておくことは、経済面での安心感につながります。特に申請期限がある給付金は早めの手続きが重要です。自治体独自の助成や出産後の税制優遇も含めて総合的に計画を立て、安心して出産・育児に臨みましょう。

妊娠が分かったら、保険や手当の確認は早めに行いましょう。出産一時金や育児休業給付金、自治体の助成制度など申請方法も詳しく解説します。

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