妊娠中の下痢は危険?対処法と注意点

妊婦

妊娠中はホルモンバランスの変化や免疫力の低下により、身体にさまざまな変調が起こりやすくなります。なかでも「下痢」は、多くの妊婦が経験する不調のひとつ。軽度であれば一時的な生理現象とも考えられますが、場合によっては母体や胎児に悪影響を及ぼす可能性もあります。本記事では、妊娠中の下痢の原因や対処法、医療機関を受診すべきタイミングについて詳しく解説。妊娠期の健康管理に役立つ情報をお届けします。

1. 妊娠中に下痢が起こりやすい理由

妊娠中はホルモンバランスが大きく変化し、特にプロゲステロンの増加が腸の運動に影響を与えます。これにより、便秘がちになる方が多い一方、腸内の動きが不安定になることで下痢を引き起こす場合もあります。また、妊娠による食生活の変化、ストレス、免疫機能の低下なども下痢の誘因となります。

2. 妊婦の下痢の主な原因とそのリスク

妊娠中の下痢は一過性のものであることが多いものの、原因によっては母体や胎児への影響が生じる可能性もあるため、慎重な観察と対処が必要です。以下に、主な原因とそれぞれのリスクについて詳しく解説します。


2-1. 食品や飲料による刺激

妊婦の腸は、妊娠によるホルモン変化や自律神経のバランス変化などにより、通常よりも敏感になっていることがあります。脂っこい料理(揚げ物・中華料理など)や、唐辛子・胡椒などを多く使った刺激物は腸の蠕動運動を促進しやすく、それにより下痢を引き起こす場合があります。また、氷入りの飲み物やアイスクリームなど、冷たい食品・飲料も腸を冷やし、腸の機能低下につながることで、軟便や下痢を誘発することがあります。

さらに、妊娠を契機として**乳糖不耐症(lactose intolerance)**が明らかになるケースもあり、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を摂取した後に下痢を起こすようになることがあります。これは、体内の乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が低下しているためで、個人差があるものの、妊娠中は消化器の感受性が高まるため顕在化しやすいと考えられています。

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2-2. 感染性胃腸炎(ウイルス性・細菌性)

妊婦であっても、ノロウイルスやロタウイルス、大腸菌、サルモネラ菌などによる感染性胃腸炎にかかることがあります。感染経路は、十分に加熱されていない食品(生肉、生卵、生魚など)や、不衛生な水、汚染された手指などが主なものです。症状としては、水様性の下痢のほかに、発熱、嘔吐、腹痛、悪寒などを伴うことがあり、体力の消耗や脱水が急速に進む場合もあるため注意が必要です。

特に妊婦の場合、脱水状態になると子宮への血流が低下し、子宮収縮を誘発して早産のリスクが高まる可能性があります。また、細菌性の重度な感染では胎児にも影響が及ぶことがあるため、症状が激しい、もしくは24時間以上続く場合は、できるだけ早く医療機関を受診し、必要に応じて点滴などの対処を受けることが望ましいです。


2-3. 妊娠に伴うホルモン変化

妊娠初期から中期、そして後期にかけて、プロゲステロン(黄体ホルモン)やエストロゲンといった女性ホルモンの分泌量が大きく変化します。これらのホルモンは、妊娠の維持や子宮の安定化には重要な役割を果たしますが、一方で腸の平滑筋の動きを抑制または刺激する作用があり、便通のリズムに影響を与えることがあります。

妊娠初期はつわりの影響で食生活が不安定になるうえに、ホルモンの変動によって胃腸の働きが一時的に乱れやすく、軟便や下痢を引き起こすことがあります。また、妊娠後期になると、胎児の成長によって腸が物理的に圧迫され、腸の動きが鈍くなったり一部の部分で停滞したりするため、便通が不安定になります。これは便秘と下痢を交互に繰り返す過敏性腸症候群(IBS)様の症状として現れることもあります。


2-4. サプリメントや薬剤の副作用

妊娠中に処方・推奨される鉄剤(フェロミアやフェロ・グラデュメットなど)や葉酸サプリメント、または医師から処方された便秘薬(酸化マグネシウムなど)は、体質によっては消化器症状を引き起こすことがあります。特に、鉄剤は胃腸への刺激が強く、服用後に吐き気や下痢、腹部膨満感を感じる妊婦も少なくありません。

また、便秘の改善目的で服用する下剤も、量や種類によっては腸を過剰に刺激し、水様便や急な腹痛を伴う下痢を引き起こすことがあります。妊娠中は自己判断で薬剤を中断したり変更したりすることは避け、症状が出た場合は必ず主治医に相談して適切な対応を受けることが重要です。

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2-5. まれにある疾患の兆候

妊婦の下痢が数日以上続く場合や、血便・激しい腹痛・体重減少を伴うような場合は、単なる生理的な変化や一過性の不調ではなく、何らかの疾患が潜んでいる可能性も考えられます。

具体的には、以下のような疾患のリスクが考えられます:

  • 感染性腸炎(細菌性、ウイルス性、寄生虫性など)
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病):代謝が過剰に亢進し、頻便や下痢、動悸、体重減少などの症状が出ます。
  • 炎症性腸疾患(IBD):クローン病や潰瘍性大腸炎などの自己免疫性疾患で、妊娠中でも活動性が上がることがあります。
  • 膵疾患や吸収障害症候群:慢性膵炎やセリアック病など、栄養素の吸収障害が背景にある下痢。

これらの疾患は、早期発見と適切な治療が非常に重要です。症状が持続する場合や、一般的な対処で改善しないときには、内科または消化器内科への受診を検討するべきです。

3. 妊娠中の下痢への具体的な対処法

3-1. 水分と電解質の補給

下痢が続くと脱水症状になりやすいため、経口補水液(ORS)やスープなどで電解質を補うことが重要です。

3-2. 胃腸に優しい食事への切り替え

おかゆ、バナナ、りんごのすりおろし、にんじんスープなど、消化に優れた食品を選びましょう。

3-3. 食中毒対策の徹底

生もの、ナチュラルチーズ、加熱不足の肉・魚を避けることで、感染リスクを低減できます。

3-4. ストレスマネジメント

自律神経の乱れが腸の動きに影響するため、十分な休息とリラックスを心がけてください。

4. 下痢が続く場合に注意すべき症状と受診の目安

以下の症状が見られた場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

  • 発熱(38度以上)
  • 血便または黒色便
  • 激しい腹痛やけいれん
  • 下痢の回数が1日6回以上で持続
  • 脱水症状(口の渇き、尿量減少、ふらつきなど)
  • 胎動の減少や違和感

妊娠中は自己判断せず、少しでも不安があれば産婦人科に相談することが大切です。

5. 妊娠中の腸内環境を整える日常ケア

発酵食品や食物繊維の摂取

ヨーグルト、ぬか漬け、味噌などの発酵食品や、食物繊維を適度に取り入れることで腸内環境の改善が期待できます。

ヨーグルト

適度な運動

軽いウォーキングやマタニティヨガなどは腸の動きを促進し、便通を安定させます。

定期的な排便習慣

決まった時間にトイレに行く習慣をつけることで、腸のリズムが整いやすくなります。

睡眠とストレスケア

質の良い睡眠とストレス管理は腸の健康だけでなく、妊娠全体の安定に寄与します。

まとめ:下痢症状と上手につきあい健康な妊娠生活を

妊娠中の下痢は一時的なものである場合が多いですが、放置すると母体や胎児に悪影響を及ぼすリスクもあります。原因を正しく理解し、日常的なケアを心がけることが大切です。

また、必要に応じてNIPTなどの出生前診断を活用し、精神的な安定を得ることで、体調変化にも冷静に対応できるようになります。心身ともに健やかに妊娠期を過ごし、安心して出産の日を迎えましょう。

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