妊娠中に知的障害を告げられたら

妊婦

妊娠中、検査や診察の中で「赤ちゃんに知的障害の可能性がある」と伝えられることは、ご家族にとって大きな衝撃となります。突然の情報に混乱し、どう行動すべきか分からなくなる方も多いでしょう。この記事では、妊娠中に知的障害を告げられた場合の心の整理、家族や医療との連携、準備できることを専門的な視点で解説し、不安に寄り添う情報をお届けします。

1. 知的障害の告知を受けたときの心理と向き合い方

妊娠中に、赤ちゃんに知的障害の可能性があると告げられることは、多くのご家族にとって大きな衝撃です。診断や検査結果を聞いた瞬間から、心の中ではさまざまな感情が押し寄せ、混乱するのは自然なことです。

① 混乱期(告知直後)

告知を受けた直後は、頭が真っ白になってしまい、医師の説明や用語が耳に入らないことも多くあります。「どうして自分の子が?」「何が原因なの?」といった疑問や不安が一度に湧き上がり、現実を把握する余裕がない状態です。この段階では、正確な情報よりもまずは心の安全を確保することが大切です。

② 否認期(現実を受け入れられない時期)

しばらく経つと、「きっと検査の間違いだ」「他の病院なら違う結果になるかもしれない」といった気持ちが芽生えることがあります。これは心を守るための自然な防御反応で、誰にでも起こり得ます。この時期に無理に現実を押し付けるのではなく、安心できる環境で気持ちを整理していくことが重要です。

③ 受容への過程(少しずつ向き合う準備)

時間の経過とともに、少しずつ現実を理解し、赤ちゃんの未来や家族としての在り方を考える準備が整っていきます。この過程は人によってスピードが異なり、数週間で進む方もいれば、数か月かかる方もいます。焦らず、自分のペースを大切にしましょう。

心の整理のためのサポート

  • 医療者や遺伝カウンセラーへの相談:正確な情報や今後の選択肢を整理できます。
  • 同じ経験を持つ親の声を聞く:体験談は孤独感の軽減に役立ちます。
  • パートナー・家族との対話:感情を共有することで、お互いの理解が深まります。

自分を責めないことが何より大切

告知を受けると、「自分のせいではないか」という罪悪感を抱く方も少なくありません。しかし、知的障害の多くは親の行動や努力では防げない要因によって起こります。責任を感じる必要はなく、むしろこれからの生活や子どもの成長をどう支えていくかに目を向けることが、家族にとって最も大切です。

2. 医療チームとの連携とカウンセリング

① 医師・助産師への相談

赤ちゃんに関する重要な告知を受けたときは、その場で全てを理解しようとするのは難しいものです。混乱や動揺で質問が思い浮かばなかったり、後になって「聞いておけばよかった」と思うことも少なくありません。そのため、あらかじめ疑問点を書き出しておき、診察時に確認することが大切です。

特に以下のような項目は、必ず医師や助産師に尋ねておくと良いでしょう。

  • 検査結果の根拠:「どのような検査結果に基づく情報なのか」
  • 追加検査の可否:「これから追加で受けられる検査や方法はあるか」
  • 発達見通し:「赤ちゃんの今後の発達や生活への影響はどう予測されるか」

また、一度の説明で理解できないことは珍しくありません。診察にはパートナーや家族と一緒に行き、話の内容を共有してもらうことも有効です。録音の許可をもらったり、メモを取ったりすることで、後から振り返って理解を深められます。

② 遺伝カウンセリングの活用

遺伝カウンセリングは、検査結果や疾患の可能性について、遺伝や医療の専門家が丁寧に説明してくれる場です。専門用語をわかりやすくかみ砕き、検査の意味や限界、今後の選択肢まで幅広くサポートしてくれます。

告知直後は強い不安や戸惑いが生じやすいですが、カウンセリングを受けることで「何が分かっていて、何がまだ不明なのか」が明確になり、気持ちが整理しやすくなります。また、心理的サポートも大きな柱であり、「どう受け止めていくか」「家族にどう伝えるか」など、心の負担を軽減するための具体的な助言も得られます。

③ チーム医療での安心感

医療現場では、医師・助産師・看護師・臨床心理士・遺伝カウンセラーが連携して妊婦さんと家族を支えます。こうした多職種チームによるサポート体制は、医学的な判断だけでなく、心理的・社会的な面でも安心感をもたらします。告知後は一人で抱え込まず、こうしたチームの力を借りることが、今後の選択や準備を前向きに進めるための第一歩となります。

3. 家族や周囲のサポート体制を整える

パートナーと共有する

妊娠中に赤ちゃんの知的障害の可能性を知らされたとき、多くの方がまず強い衝撃を受けます。その瞬間に湧き上がる不安や悲しみを、一人で抱え込むことは心身に大きな負担となります。
パートナーと気持ちを共有することは、精神的な安定だけでなく、今後の生活や準備の方向性を一緒に考えるためにも重要です。

  • 「今どんな気持ちなのか」を率直に話す
  • 互いに相手の感情を否定せず受け止める
  • 今後の検査や出産後のサポート方法を一緒に整理する

こうした会話を重ねることで、夫婦としての結束が強まり、将来の選択にも自信を持てるようになります。

家族・友人・コミュニティの支援

告知後は、両親や兄弟姉妹など近い家族に現状を伝え、必要に応じて協力をお願いしましょう。「迷惑をかけたくない」と思ってしまう方も多いですが、支えを受け入れることは決して弱さではなく、家族全体で子どもを育てるための大切な一歩です。

また、信頼できる友人や職場の理解者に話すことで、精神的な孤独感が軽減されることもあります。

地域の保健センターや医療機関には、療育や障害児支援制度に関する専門の相談窓口があります。妊娠中からでも利用可能なサービスや、出生後にすぐ申請できる支援制度を事前に知っておくことで、出産後の不安や混乱を大きく減らすことができます。

4. 妊娠中にできる準備と心構え

告知を受けた後も、妊娠期は続いていきます。赤ちゃんの誕生に向けて、できる準備は多くあります。

情報収集

  • 医療機関や公的機関が提供する正確な情報を活用
  • ネット情報は出典や信頼性を確認し、医療者と照らし合わせる

出産後の支援制度を知る

  • 自治体の療育支援や相談窓口
  • 医療費助成や福祉制度の申請準備

心のケア

  • 不安が強い場合は、周産期メンタルヘルスに対応できる医療機関を受診
  • カウンセリングや妊婦向け心理サポートの利用も検討
メンタルヘルスのハートを持った男性医師

5. NIPT(新型出生前診断)など検査に関する知識

出生前検査のひとつであるNIPT(新型出生前診断)は、母体の血液を採取して胎児に関連する染色体情報を解析し、妊娠10週頃から受けられる検査です。

安全性と検査の流れ

NIPTは採血後、専門の遺伝子解析機関でDNA断片を分析します。結果は通常1〜2週間程度で判明し、陽性・陰性の判定が行われます。陽性の場合でも、それが確定診断ではないため、医師から羊水検査絨毛検査といった侵襲的検査を勧められることがあります。これらの確定検査は妊娠15週以降に行われ、NIPTの結果の真偽を確認する重要なステップです。

高齢出産とNIPTの意義

特に高齢出産(35歳以上)では、卵子の染色体分離異常の発生率が上昇し、染色体異常のリスクが高まります。こうした背景から、日本産科婦人科学会の指針でもNIPTは高齢妊娠や家族歴がある妊婦への有用性が指摘されています。早期にリスクを把握することで、出産や育児に向けた準備、必要に応じた医療的介入の計画を立てやすくなります。

カウンセリングの重要性

NIPTは「受けるか・受けないか」を自分と家族でよく考えることが大切です。そのため、検査前後には必ず遺伝カウンセリングを受けることが推奨されています。カウンセリングでは、検査の目的・可能性・限界を理解し、結果がどのような意味を持つかを事前に把握できます。また、検査結果に陽性が出た場合、今後の対応方針について冷静に判断するためにも専門家のサポートが欠かせません。

他の出生前検査との比較

NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、陽性であれば確定診断が必要になることを理解しておくことが重要です。

まとめ:焦らず、情報とサポートを活用して前へ

妊娠中に赤ちゃんの知的障害の可能性を告げられることは、多くの方にとって想像を超える衝撃です。混乱や不安、悲しみといった感情は自然な反応であり、自分を責める必要はありません。大切なのは、時間をかけて現実を受け止め、冷静に次の一歩を考えていくことです。

そのためには、まず信頼できる医療機関や遺伝カウンセリングを通じて、正しい情報を得ることが欠かせません。診断や検査結果の意味、今後の見通し、必要な追加検査などを医師や助産師に確認しましょう。一度に理解しきれない場合は、家族と一緒に説明を受けたり、メモを取ることで整理しやすくなります。

また、パートナーや家族と気持ちや考えを共有し、支え合える関係を築くことも重要です。同じ経験をした人の体験談や支援団体のコミュニティに触れることで、孤独感が軽減され、具体的な生活の工夫や制度の活用方法も知ることができます。行政の相談窓口や療育制度など、社会的サポートも積極的に取り入れましょう。

一人で抱え込まず、医療・家族・社会の支えを組み合わせていくことで、少しずつ前に進むための準備が整います。焦らず、一歩ずつ。安心と納得を持って赤ちゃんを迎えるために、情報とサポートを活用して進んでいくことが何より大切です。

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