【質問者】
そもそもアセトアミノフェンってどんな薬なんですか?
【先生】
アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の一つで、日本ではカロナールという商品名でも知られています。妊娠中に使える薬の選択肢は限られていますが、その中でも「比較的安全」とされてきたのがアセトアミノフェンです。
世界中で妊婦さんの約50〜60%が何らかの形で使用しているとも言われています。熱や痛みを放置すると母体にも胎児にも悪影響があるため、長年「妊娠中でも使える薬」として位置づけられてきました。
ただし、近年になって「もしかしたら胎児の発達に影響を与えるのでは?」という研究結果が増えてきたんです。
【質問者】
ではそもそも実際に、自閉症は増えているんですか?
【先生】
CDC(米国疾病管理予防センター)のデータを見てみましょう。
・2000年には、ASDの有病率は150人に1人でした。
・2020年には36人に1人。
・そして2025年の最新の報告では、31人に1人がASDと診断されています。
| ASD | 8歳児の罹患率 |
| 2025年 | 31人に1人 |
| 2020年 | 36人に一人 |
| 2000年 | 150人に一人 |
【質問者】
すごく増えていますね…。これは本当に「患者数が増えた」ということなんですか?
【先生】
ここが重要なポイントです。確かに統計上は増えていますが、その理由が「実際に発症する子どもが増えた」からなのか、それとも「診断や認識が進んだ結果、より多く見つかるようになった」からなのかは慎重に見極める必要があります。
【先生】
統計上ASDが増えているのは事実ですが、それが「本当に患者数そのものが増えた」のか、「診断や社 会的要因で見つかる人が増えた」だけなのかを区別する必要があります。
背景には大きく5つの要因があります。
| 要因 | 内容 |
| 診断基準の拡大・変化 | DSMやICDといった診断マニュアルの改訂で、以前は含まれなかった軽度の症例もASDに分類されるようになった。 |
| 意識・認知の向上 | 医療現場や教育現場、保護者の理解が深まり、より早期に診断されるケースが増えている。 |
| スクリーニングの普及 | 小児健診や学校でのスクリーニング体制が整い、診断の機会が増えた。 |
| 報告・制度の違い | 国や地域ごとの報告体制や医療制度の差が統計に影響。 |
| 環境要因の可能性 | 遺伝では説明できない部分を補う要因として議論されているが、因果関係を証明するのは難しい。 |
【質問者】
なるほど…「自閉症が増えている=薬や環境のせい」とは言い切れないわけですね。
【先生】
そうです。増加は事実ですが、その背景には「診断や認知の変化」という社会的要因が大きく関わっているんです。

【質問者】
では、アセトアミノフェンと自閉症の関係を調べた研究にはどんなものがあるんですか?
【先生】2025年8月に Environmental Health に発表された論文では、過去の46の研究を精査し、
妊娠中のアセトアミノフェン使用と 発達障害(ASDやADHDなど) の関連を調べました。
結果は…
46の研究の内訳
| 27 | 9 | 4 |
| 強い相関性あり | 関係なし | ADAが減る |
特に、妊娠後期に長期間使った場合、影響が強く出やすい傾向がありました。
【質問者】
どうしてアセトアミノフェンが胎児に影響を与えるんでしょうか?
【先生】
研究者たちはいくつかの仮説を示しています。
①アセトアミノフェンは胎盤を通過しやすいため、胎児の脳に直接作用する可能性がある。
②酸化ストレスを増加させ、神経細胞の発達に悪影響を与える。
③ホルモンのバランスを乱し、神経伝達や行動発達に関わる仕組みに影響を与える。
④遺伝子のスイッチを調整する「エピゲノム」に変化を与える可能性がある。
こうした複数の作用が組み合わさり、発達障害のリスクをわずかに高めているのではないかと考えられています。
【質問者】
でも、自閉症って遺伝の影響が大きいって聞きますよね?
【先生】
その通りです。
ただし重要なのは、「環境要因が無関係という意味ではない」という点です。
残りの 10~30%程度 は、環境要因(周産期合併症、感染、曝露など)で説明される可能性があるのです。
| 要因 | 割合 | 説明 |
| 遺伝的要因 | 70〜90% | ASD発症リスクの大部分を 説明できる。 |
| 環境要因 | 10〜30% | 周産期合併症、感染、曝露、薬剤など。アセトアミノフェンもこの一部と考えられる。 |
【質問者】
では、妊娠中はアセトアミノフェンを使わない方がいいんでしょうか?
【先生】
いいえ、「完全に禁止」という結論ではありません。研究が示しているのは「必要以上に長期間使わない方がいい」ということです。
ポイントは二つです。
・必要最低限、短期間の使用にとどめる。
・必ず医師に相談してから使う。
熱や痛みを放置する方が母体や胎児にとってリスクになることもあるため、バランスを取ることが大切です。
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