ダウン症とは?症状・特徴・接し方を医師が解説

ダウン症(ダウン症候群)とは何か?その原因となる染色体異常(21トリソミー・転座型・モザイク型)や症状、合併症、検査方法、子どもとの接し方、利用できる支援制度まで、医師監修で詳しく解説します。

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ダウン症の原因染色体異常(21トリソミー・転座型・モザイク型)

ダウン症ダウン症候群、21トリソミー)は、人間の細胞に本来あるべき染色体の構造に異常があることによって起こります。ヒトの常染色体は22対、性染色体が1対あり、合計46本が通常ですが、ダウン症の人ではこの中の21番染色体に異常があります。その異常の仕方には主に三つのタイプがあり、それぞれ原因・発生機序・遺伝的な関わり方に違いがあります。

3つのタイプと特徴

まずもっとも一般的なタイプが 標準型21トリソミー です。これは全体の約95%を占めるタイプで、受精する前の卵子もしくは精子の成熟分裂過程で21番染色体が分離(不分離)しなかったことが原因となります。この型ではすべての体の細胞に21番染色体が3本存在し、そのため多くの特徴・症状がほぼ典型的に現われます。親の染色体は通常で、遺伝性というよりは偶発的なものです。

次に 転座型(ロバートソン転座型など) があります。これは21番染色体そのものが余分にあるのではなく、21番染色体の一部が他の染色体(例えば14番・15番・21番同士・22番など)に付いてしまう構造的な異常です。転座型は全体の約3~5%程度とされ、そのなかには親が転座染色体保因者であって、その保因者から子に遺伝するケースもあります。したがって、家族歴がある場合には遺伝相談が重要になります。 

三つ目は モザイク です。これは体の中の一部の細胞にだけ21番染色体の余剰があり、その他の細胞は通常通りの染色体数であるという混在した状態です。モザイク型は非常に稀で、全体の1~2%程度とされます。モザイク型では余剰のある細胞の比率、どの組織にどれだけ含まれているかによって、症状の重さがかなり変わります。正常な細胞が多ければ比較的軽度な特徴となることがあるため、その点で他のタイプと異なります。

このように、ダウン症と一口に言っても染色体異常のタイプにより発生機序や重症度、遺伝の関わり方が異なります。特に転座型の場合、親が保因者である可能性があり、その場合次の子どもにも影響する可能性があるため、遺伝カウンセリングが非常に重要です。

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ダウン症の特徴・症状 身体的特徴、知的発達の遅れ、合併症

ダウン症の人には、身体的特徴や知的発達の遅れだけでなく、さまざまな合併症が見られることがあります。個人差が大きく、軽度なケースから重度なケースまで幅がありますが、共通して現われる特徴とよくある合併症を知っておくことは、接し方や支援の設計に不可欠です。

身体的特徴と合併症の主な例

身体的な特徴としては、顔立ちに特徴が出ることが多く、目がやや斜め上がり(眼裂斜上)、目と目の間が広めだったり、鼻の根元が平坦だったり、小さめの鼻、耳が低めに位置する、首が短い、筋緊張が低く筋肉が弛緩しやすい(筋トーヌス低下)などがあります。手のひらに一本の手根横線(いわゆる猿線)、第5指内弯(小指が内側に曲がる)、足の親指と第二指の間が少し離れるなど、指や手足にも特徴が現れることがあります。出生直後は哺乳がうまくできなかったり、体重の増え方がゆっくりだったり、関節の柔らかさから姿勢の保持に時間がかかることがあります。

知的発達については、標準型の場合、言語の発達が遅れたり、コミュニケーション能力に差が出たりすることが多いです。発話が遅れる、語彙数が制限される、構文や文法の複雑な表現が難しい、理解や記憶のスピードがゆっくり、視覚‑空間認知や注意力の持続に課題を持つことがあります。ただしモザイク型や軽度の転座型では知的発達の遅れが比較的軽いこともあります。 

合併症としては、先天性心疾患が非常に頻度が高く、心室中隔欠損・心房中隔欠損など心内の壁に穴が開いているタイプのものが多く、出生後すぐに手術が必要となるものもあります。消化器系異常として、十二指腸閉鎖・食道閉鎖・巨大結腸症など、生後間もない頃に外科的処置が求められるケースがあります。感覚器では難聴・視力障害(屈折異常、斜視など)が見られることが多く、また甲状腺機能低下症・白血病リスクの上昇・肥満・内分泌の問題なども報告されています。成長とともに、肥満や運動機能の低下、健康管理の問題(呼吸器疾患や感染症)などが現れることもあります。さらに高齢期にはアルツハイマー病様の認知機能低下も頻度が高くなることが知られています。 

発達のスピードに関しては、歩行・話し始め・トイレトレーニングなど多くのスキル取得が健常児より遅れることが一般的です。例えば立ち上がりや歩き始めには時間がかかることが多く、言語発達も個別差が大きいですが、適切な支援や早期療育があれば、かなり改善が見られるケースもあります。医師の診断や療育機関による支援が早く始まるほど、その後の成長や生活の自立性に良い影響を与えることが多いです。

ダウン症の子どもとの接し方 健康特性の理解、個性に配慮、早期療育、日常生活での学び

ダウン症の子どもと接する際に重要なのは、「できないこと」ではなく「できること」や「その子自身の個性」をまず理解し尊重することです。健康や発達の特性を知っておくことで、危険を減らし、支援を適切に提供する環境を作ることができます。早期の療育や言語・運動・社会性発達の支援、日常生活での学びや練習を取り入れることが子どもの成長を促します。

個性に合わせた接し方のポイント

例えば、読み書きや言語の遅れがある子どもには、発話を促すための豊かなコミュニケーション環境を与えることが大切です。ジェスチャーや絵本、歌、音楽、絵カードなどを活用し、言葉を学ぶ機会を増やすことが有効です。運動機能については、遊びを通じて体を動かす機会を十分に確保し、筋力・バランス・歩行の練習を日常生活に自然に組み込むことが望まれます。また、知覚過敏・感触の違いなど感覚処理の特徴がある場合には、静かな環境・明るさや音の刺激を調整するなど配慮が必要です。

さらに、社会性や自立性を育むため、自己選択や経験の成功体験を重ねることが重要です。失敗を恐れず、小さな達成を褒めて励ますことが子どもの自己肯定感を高めます。家庭でのルーティンを整えたり、視覚的な手がかり(スケジュール表や絵カードなど)を用いた構造化された環境を整えることも有効です。また、遊びや学びの中で興味をもてるものを見つけ、それを通じて学ぶ楽しさを経験させることは、子どもの意欲や集中力を育てるうえで大きな助けとなります。

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ダウン症の検査・診断 出生前診断(NIPT)、絨毛・羊水検査、発達検査

ダウン症が疑われる、あるいは可能性を知りたいと思ったとき、検査・診断の方法がいくつかあります。出生前診断では可能性を把握し、出生後の診断で確定する流れが基本です。

主な検査方法とタイミング

出生前診断としては、妊婦健診時の超音波検査で胎児の首の後ろのむくみ(NT=Nuchal Thickness)や鼻骨の未発達などの所見が見られることがあります。これらは妊娠11〜14週頃に行われることが多いです。その後、母体血を使用する NIPT によって、21トリソミーをはじめとした染色体数異常の可能性を評価します。NIPTで陽性可能性が示された場合には、確定診断として絨毛検査または羊水検査を行います。絨毛検査は妊娠10〜12週ごろ、羊水検査は妊娠15〜20週頃が一般的なタイミングです(ただし施設により違いあり)。出生後は発達検査や定期的な小児科的評価がなされ、聴力・視力・心臓機能など重要な検査を行うこともあります。

支援・教育 個別支援計画、特別支援学校、児童発達支援、就労移行支援

日常生活や将来の暮らしをより豊かにするために、ダウン症の子どもにはさまざまな支援制度と教育の選択肢があります。これには医療支援、教育支援、社会福祉制度が包括的にかかわることが必要です。

利用できる支援の種類

まず、個別支援計画(Individualized Education Plan, IEP 相当)があり、子どもの能力・特性・家庭環境を踏まえて個別に目標を設定し、それに沿った教育・療育が提供されます。就学前の段階では、児童発達支援センターなどで生活習慣・運動・言語などの発達支援を受けることができます。学校に入るときには通常学級の他に特別支援学級があり、必要であれば特別支援学校での教育も選択肢となります。特別支援学校では知的発達や生活自立の程度に応じたカリキュラムが組まれることが多いです。さらに、成人期に入ると就労移行支援・就労継続支援・障害者雇用制度などを利用して職業的な自立を図る事例も数多くあります。福祉制度での補助金や生活支援サービス、在宅支援なども含まれます。

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よくある疑問

ダウン症について一般の人からよく聞かれる疑問点を整理してみましょう。

知っておきたいポイント

一つ目は 平均寿命 についてです。かつては幼少期で命を落とす例も多かったですが、医療の進歩と合併症の治療の充実により、現在ではダウン症を持つ人の平均寿命はおおよそ60歳前後とされています。日本においては、先天性心疾患など重い合併症を持たない場合、60歳を超えて社会生活を営む方も増えてきています。

二つ目は 軽度の見落とし 可能性について。モザイク型や転座型で症状が軽いケースでは、発達の遅れが目立たず、外見や機能で「ダウン症」と気づかれにくいことがあります。知能検査や発達検査を実施すると、知的発達の遅れや認知機能の差が認められることがあります。早期診断・療育が鍵となります。

三つ目は 親の責任という点。親のせい、育て方の問題と考えられることがありますが、ダウン症は遺伝子や染色体の変異によるものであり、親の子育てが原因ということはほとんどありません。もちろん子育ての環境が子どもの発達に影響することはありますが、「責任」という言葉には慎重であるべきです。専門家や医療者は、支持と情報提供の立場で関わるべきです。

四つ目は 芸能人や有名な例。世の中にはダウン症の方で芸術・スポーツ・芸能といった分野で活躍する方もいらっしゃいます。そういった例を知ることは、ダウン症の人たちの可能性や「できること」があるという希望を与える手助けになります。ただし、それだけで全体像を判断することも適切ではなく、個人差があることを忘れてはいけません。

最後に、発達・支援に関する疑問として、「将来一人で生活できるか」「仕事ができるか」ということが挙げられます。多くの場合、支援制度・教育環境・家庭のサポートがあれば、自立度合いや生活の質を高めることが可能です。学校卒業後の就労移行支援や障害者雇用制度を活用することで、働いて社会参加する方もたくさんいます。

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まとめ

ダウン症染色体異常によって生じる先天的な状態であり、21トリソミー・転座型モザイク型という三つのタイプに分類されます。各タイプには発症の仕方や重さに違いがあり、軽度~重度まで幅があります。身体的特徴や知的発達の遅れ、合併症などがさまざまな形で現れますが、早期診断・療育・適切な医療ケア・社会的支援があれば、その人が持つ能力を最大限に発揮し、自立した生活を目指すことも可能です。\n\nダウン症の理解には、症状だけでなく「その人の個性」「家庭環境」「支援環境」「医療体制」が大きく関わってきます。そして、親や周囲の人が適切な知識を持ち、障害を持つ人を支える社会の仕組みを整えることが、本人が尊厳を持って生きるために非常に大切です。

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