NIPTは母体の血液だけで、21・18・13トリソミーをはじめとする複数の染色体異常を高い精度でスクリーニングできる検査です。ただし「種類によって検出精度が大きく異なる」「陽性でも確定診断ではない」という2点を押さえていないと、結果の受け止め方を誤ってしまうことがあります。
この記事では、NIPTでわかる染色体異常の種類を「数的異常」「構造異常」に整理して解説します。特徴・検出精度・NIPTで対象外となる領域まで、公的機関・学術論文の情報にもとづいてまとめました。
💡 この記事でわかること
1. NIPTでわかる染色体異常の全体像
染色体異常は大きく「数的異常(染色体の本数が増減するもの)」と「構造異常(一部が欠けたり入れ替わったりするもの)」に分けられ、NIPTが得意とするのは主に数的異常です。
NIPTは、妊婦さんの血液中にごく微量に含まれる胎児由来のDNA(cfDNA)を、次世代シークエンサーという機器で解析する検査です。母体血液を採取するだけで、流産のリスクなく検査ができる点が最大の特徴です。妊娠10週前後から検査可能で、当院では東京衛生検査所(国内)で解析するため、結果報告まで最短2〜5日というスピードも実現しています。
ただし、NIPTで「わかること」には範囲があります。ポイントは、対象となる染色体異常の種類と、それぞれの検出精度。次の章から一つずつ見ていきましょう。
2. 常染色体の数的異常:21・18・13トリソミーの特徴と精度
日本国内の認証施設で実施される標準NIPTの対象は、21・18・13トリソミーの3疾患に限定されています。これは検査項目が少ないからではなく、この3疾患だけが集団スクリーニングとして精度と臨床的な妥当性を十分に検証されているためです。
21トリソミー(ダウン症候群)
21番染色体が1本多く存在することで生じる、最も頻度の高い染色体異常です。大規模な国際共同研究では、21トリソミーに対するNIPTの感度は99%以上、特異度も99%以上と報告されています。低身長や特徴的な顔貌、知的発達の遅れなどを伴いますが、症状の程度には個人差があります。ダウン症候群そのものの原因・特徴・療育については、ダウン症候群(21トリソミー)の解説記事で詳しく整理しています。
18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトウ症候群)
18番染色体が1本多い状態が18トリソミー、13番染色体が1本多い状態が13トリソミーです。いずれも重篤な心臓・腎臓の合併症を伴うことが多く、出生後の生存期間が短いケースが少なくありません。国際共同研究では、18・13トリソミーを合わせた検出感度は99%前後と高精度です。一方で単独疾患としての報告数は21トリソミーより少なく、症例数に応じた数値の幅があることも知られています。
数値の出典は2件の国際共同研究です。21トリソミーはBianchi DW et al., N Engl J Med, 2014、18・13トリソミーはPalomaki GE et al., Genet Med, 2012によるものです。数値は研究集団や条件により幅があるため、目安としてご覧ください。
PPV(陽性的中率)は年齢や妊娠週数によって変わる指標で、陽性という結果が出たときに実際にその染色体異常を持っている確率を示します。ダウン症候群のPPVを年齢別・週数別に詳しく知りたい方は、検査精度とPPVの解説記事もあわせてご覧ください。
3. 性染色体異常:ターナー症候群・クラインフェルター症候群など
性染色体(X・Y染色体)の数の変化もNIPTの解析対象になりますが、常染色体のトリソミーに比べると検出精度はやや低めです。代表的な疾患を整理しました。
| 疾患名 | 染色体構成 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| ターナー症候群 | 45,X(X染色体が1本欠損) | 女性のみに生じる。低身長・卵巣機能不全を伴うことが多い |
| クラインフェルター症候群 | 47,XXY(X染色体が1本多い) | 男性のみに生じる。高身長・不妊のリスクがあるが、症状が軽微なことも多い |
| トリプルX症候群 | 47,XXX(X染色体が1本多い) | 女性のみに生じる。多くは症状が目立たず、成人後に判明することもある |
| ジャコブ症候群 | 47,XYY(Y染色体が1本多い) | 男性のみに生じる。身体的な特徴は乏しいことが一般的 |
性染色体異常は、常染色体のトリソミーに比べて症状の現れ方に幅があり、成人するまで気づかれないケースも珍しくありません。NIPTで陽性が出た場合でも、症状の重さを予測するものではない点を理解しておくことが大切です。
4. 微細染色体異常(マイクロデリーション)と検出の限界
微細染色体異常(マイクロデリーション・マイクロデュプリケーション)は、標準NIPTの対象外ですが、一部の拡張検査で解析することが可能です。ただし、疾患によって陽性的中率が大きく変わる点に注意が必要です。
代表的なものに、心疾患や免疫異常、発達の遅れを伴う22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)があります。この疾患について詳しく知りたい方は22q11.2欠失症候群の解説記事を、微細欠失全般のリスクについては染色体の微細な異常がもたらすリスクの記事をご覧ください。
私自身、遺伝カウンセリングの現場で「検査項目が多いほど安心」と考えて来院される方に何人もお会いしてきました。しかし実際には、対象疾患の発症頻度が低いほど、陽性的中率は下がりやすくなります。SNS上でも、この点について次のような指摘が見られます。
X(旧Twitter)で遺伝医学に詳しいユーザーの@SCARS0127氏の投稿では、日本の出生前検査認証制度等運営委員会が示す試算例が引用されていました。「頻度1/4,500・感度54%・特異度99.9%の微小欠失検査なら陽性的中率は10.7%」「22q11.2欠失症候群でも感度75.0%・特異度99.84%・陽性的中率23.7%にとどまる」という内容です。つまり、陽性と出ても、実際にはその大半が偽陽性となる疾患があるということです。数値は前提条件によって変わるため、検査を選ぶ際は検査会社の説明資料で必ず確認してください。
微細染色体異常が心配な場合、拡張検査を追加するかどうかは、対象疾患の発症頻度・検出精度・確定診断の流れまで理解したうえで、遺伝カウンセラーや医師に相談して判断してください。
5. 転座型など染色体の構造異常はどう扱われるか
染色体の一部が入れ替わる「転座」は構造異常の一種で、標準NIPTでは判定が難しい領域です。たとえばダウン症候群の一部(全体の3〜4%程度)は、21番染色体が他の染色体とくっつく「転座型」によって生じ、通常のトリソミー型とは遺伝形式が異なります。
転座型の場合、両親のどちらかが「均衡型転座」と呼ばれる保因者であることがあり、次のお子さまの再発リスクにも関わります。詳しい仕組みと遺伝カウンセリングの進め方は転座型ダウン症候群の解説記事で確認できます。
なお、染色体異常と知的障害の関係については個人差が大きく、「染色体異常=重い知的障害」と単純に結びつけることはできません。この点を詳しく知りたい方は染色体異常と知的障害の関係を整理した記事も参考にしてください。
6. NIPTの精度の考え方と偽陽性・偽陰性
NIPTの「精度」は感度・特異度・陽性的中率という3つの指標で語られ、疾患ごとに数値が異なります。見るべきは、単一の数値ではなく3指標のバランス。代表的な目安は次のとおりです。
感度・特異度が高くても、陽性的中率は対象疾患の発症頻度に左右されます。NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、陽性という結果だけで診断が確定することはありません。陽性だった場合は、羊水検査や絨毛検査による確定診断が必要です。陽性・偽陽性の仕組みをもう少し詳しく知りたい方はNIPT陽性と偽陽性の仕組みを解説した記事をご覧ください。
母体側の要因(母体自身の染色体変化やがんなど)が結果に影響することも、まれにあります。結果だけを見て一喜一憂するのではなく、担当医や遺伝カウンセラーと一緒に数値の意味を確認する姿勢が欠かせません。
7. 検査を受けるタイミングと流れ
NIPTは妊娠10週前後から受けられ、血液採取から結果報告まで概ね1〜2週間、当院のように国内の検査機関で解析する場合は最短2〜5日で結果がわかります。一般的な流れは次のとおりです。
- 妊娠10週以降、医師との事前相談・遺伝カウンセリングを受ける
- 母体から血液を採取する
- 検査機関でcfDNAを解析する
- 結果報告を受ける(陰性・陽性・判定保留のいずれか)
- 陽性の場合は、確定診断(羊水検査など)を医師と相談する
なぜ10週以降でなければ検査できないのか、その仕組みを詳しく知りたい方はNIPTがなぜ10週からなのかを解説した記事を参考にしてください。

8. 気になる費用の目安
NIPTは原則として保険適用外の自費診療で、検査項目の範囲によって費用が変わります。基本トリソミー(21・18・13)のみのプランと、微細欠失や全染色体まで対象を広げたプランでは、費用の差が大きくなります。認可施設・非認可施設の違いを含めた費用相場はNIPT・出生前診断の費用相場を比較した記事で詳しく整理しています。
費用だけでなく、陽性時の確定診断(羊水検査など)にかかる費用や、遺伝カウンセリングの体制まで含めて比較してください。当院では、他院で羊水検査を受ける場合も含めて費用補助の制度を設けています。
9. 陽性だったときの相談先と次のステップ
NIPTで陽性という結果が出ても、それは「可能性が高い」ことを示すもので、確定ではありません。まずは落ち着いて、次の3つを行ってください。
1つ目は、担当医または遺伝カウンセラーへの相談です。結果の数値が何を意味するのか、専門家と一緒に確認しましょう。2つ目は、確定診断の検討です。羊水検査や絨毛検査を受けるかどうか、時期や費用も含めて判断します。3つ目は、家族との情報共有です。パートナーや家族と気持ちを共有しながら、今後の選択肢を一つずつ整理していきましょう。
心理的な負担が大きいと感じる場合は、一人で抱え込まず、医療ソーシャルワーカーや遺伝カウンセリング外来を頼ってください。結果を知った直後の判断を急ぐ必要はありません。
10. 実際にNIPTを受けた方・専門家の声
SNS上には、実際にNIPTを受けた方のリアルな体験も多く投稿されています。種類や結果報告の速さに関する声を紹介します。
私たちが日々の相談対応で感じるのは、「検査で何がわかるのか」を事前に理解している方ほど、結果を受け止める際の不安が小さいということです。実際、X(旧Twitter)に投稿された@______rrr0619氏の投稿では、「21、18、13トリソミーと性別がわかるプランで受けた。5日間と言われていたが3日で結果が出た」と、検査対象と結果報告の速さの両方が具体的に語られていました。同様に@emimaru87氏の投稿でも、「結果が2日で届いた。21,18,13トリソミーは陰性だった」と、結果を受け取るまでの実感がつづられています。
いずれの投稿も、標準NIPTの対象が21・18・13トリソミーに限定されていることを前提にした内容です。「何を調べる検査なのか」を受検前に把握しておくことが、結果を正しく理解する第一歩になります。
11. まとめ:染色体異常の種類を正しく理解して検査に臨む
NIPTは、21・18・13トリソミーという頻度が高く検証の進んだ疾患を高精度で検出できる検査です。性染色体異常や微細染色体異常も一部対象になりますが、疾患によって検出精度や陽性的中率は大きく異なります。
転座など構造異常への対応や、NIPTの対象外となる領域があることも理解しておくポイントの一つ。結果を受け取ったときに落ち着いて次の一歩を選べます。陽性という結果は確定診断ではなく、羊水検査などによる確認が必要だという点だけは、必ず覚えておいてください。
不明な点があれば、一人で悩まず遺伝カウンセリングを利用してください。
お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会、公益社団法人日本産科婦人科学会、PubMed収載論文などの公的機関・学術情報を参照して作成しています。記載の数値は研究や条件により幅があり、最終的な判断は担当医・遺伝カウンセラーにご相談ください。
よくある質問
NIPTではどんな染色体異常がわかりますか。
標準NIPTでは21・18・13トリソミーの3疾患を高精度で検出します。検査プランによっては、性染色体異常や一部の微細染色体異常(マイクロデリーション)も対象に含まれますが、疾患ごとに検出精度は異なります。
NIPTで「陽性」と出たら、その染色体異常が確定したことになりますか。
いいえ、確定ではありません。NIPTはスクリーニング検査のため、陽性という結果が出た場合は、羊水検査や絨毛検査による確定診断が必要です。特に発症頻度の低い疾患ほど、陽性のうち実際にその疾患を持つ割合(陽性的中率)は下がる傾向があります。
染色体異常にはどんな種類がありますか。
大きく「数的異常」(染色体の本数が増減するもの、トリソミーなど)と「構造異常」(染色体の一部が欠失・重複・転座するもの)に分けられます。NIPTは主に数的異常を対象としており、構造異常の一部は対象外です。
微細な染色体異常(マイクロデリーション)もNIPTでわかりますか。
一部の拡張検査プランで対象になりますが、標準NIPTには含まれません。発症頻度が低い疾患ほど陽性的中率が下がりやすく、陽性の大半が偽陽性となる疾患もあります。検査を追加するかどうかは、事前に医師や遺伝カウンセラーに相談してください。
高齢出産だと染色体異常のリスクは高くなりますか。
母体年齢が上がるほど、卵子の老化に伴う染色体不分離のリスクが高まることが知られています。ただし、染色体異常は年齢に関係なく起こり得るため、年齢だけで検査の要否を判断せず、必要に応じて検査を検討することが大切です。
NIPTで陽性が出た場合、次に何をすればよいですか。
まずは担当医または遺伝カウンセラーに相談し、結果の意味を確認してください。そのうえで、羊水検査などの確定診断を受けるかどうかを検討します。一人で判断を急がず、パートナーや家族とも情報を共有しながら進めてください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
