ヒロクリックの羊水検査

NIPT(新型出生前診断)は確定診断ではないため、陽性と診断されてしまうことがありますが、これは偽陽性の可能性があります。そのため、陽性の場合は羊水検査を推奨しています。 ヒロクリニックでは羊水検査費用補助を提供し、ご家族の負担をサポートいたします。

羊水検査について

問診する医者と患者

NIPT(新型出生前診断)は、確定検査ではありません。

陽性と診断された場合でも、赤ちゃんは陰性であるにも関わらず、様々な原因から陽性と診断されてしまう「偽陽性」の可能性があります。

陽性と診断された方には確定検査として羊水検査をおこなうことを推奨しております。

羊水検査とは

羊水検査は「羊水に含まれる染色体そのものを調べる検査」です。羊水をとって検査し、赤ちゃんの染色体のどこに異常があるのかを調べます。

羊水検査に適切な時期は、羊水が増えてくる妊娠16週目から18週目頃と言われており、この期間内に検査をおこなう場合が多いです。

従来の羊水検査は、染色体分染法、FISH法、マイクロアレイなどの具体的な遺伝子解析法があります。

これらの検査により、ダウン症の原因となる21トリソミーなど染色体の数の異常や、構造異常 ※1 など大まかな遺伝子異常の有無をあきらかにできます。
※1 逆位、転座、大きい欠失や重複

ヒロクリニックNIPTのコラムでも解説されていますのでご覧ください。

ヒロクリニックNIPTの228種遺伝検査で万が一、両親の遺伝的組み合わせに高リスクが検出された際には、NGS法を用いた羊水検査により、検出されたリスクが実際に胎児に遺伝しているかどうかの確認試験をおこないます。

おなかの大きい妊婦

羊水検査も安心サポート:提携医療機関と検査費用の負担軽減

■羊水サポートサービス

ヒロクリニックでは、NIPT(新型出生前診断)後の確定検査が必要となった場合のフォロー体制も充実しています。
陽性結果が出た方に対して、羊水検査を受けられる医療機関の紹介・連携支援を行っています。

ヒロクリニックNIPTでは、提携検査機関主催の羊水検査サポートをご案内しております。検査結果が陽性の患者様には、羊水検査の検査費用を最大20万円まで補助させていただいております。

羊水検査費用補助の基準を設けておりますので、詳細は羊水検査サポートについてをご参照下さい。

■ 検査先のご案内:信頼できる医療機関をご紹介

ヒロクリニックでは、羊水検査の実施が可能な病院・クリニックをご希望に応じてご紹介いたします。
地域や通院のしやすさなどを考慮し、妊婦さん一人ひとりに合った施設をご提案します。

■ 東京衛生検査所への提出で羊水検査費用が無料に

特に注目すべきは、「東京衛生検査所」に羊水を提出していただける場合、検査費用(遺伝子解析費用)はヒロクリニックが全額負担いたします。

  • 対象:当院でNIPTを受けた方で、羊水検査の適応となった方
  • 検査費用:無料(採取医療機関での手技料・通院費等は別途必要となる場合があります)

※検体提出が可能な提携施設をご案内いたします。

■ ご希望があれば羊水検査の内容も丁寧にご説明

初めての方にとっては不安の大きい羊水検査についても、医師が直接、検査の内容やリスク、流れについてご説明いたします。
ご自身とご家族が納得したうえで、次のステップに進めるよう丁寧にサポートします。


ヒロクリニックは、検査前・検査後・出産後まで一貫して妊婦さんとご家族に寄り添う体制を整えています。
安心して次の判断ができるよう、必要な情報と医療支援を責任を持って提供します。

陽性スコアについて詳しくはこちら

羊水検査とNIPTが不一致になることがある。

結果と限界についての考察

非侵襲的出生前診断NIPT)は、妊婦の血流中に存在する微量のDNA断片を分析することで、出生前スクリーニングの方法を一変させました。この検査はダウン症候群などの遺伝的疾患を高精度で検出でき、羊水穿刺や絨毛検査(CVS)といった流産のリスクを伴う侵襲的検査の必要性を減らしました。しかし、NIPTはスクリーニング検査であり必ずしも100%正確ではありません。(ただし相当高いです)結果が胎児の実際の遺伝情報と一致しない場合があり、これを「不一致結果(discordant results)」と呼びます。

Cell-free placental DNA: What do we really know?
cfpDNA source
cell free placental

(A) 胚盤胞の着床初期において、トロフォブラストと呼ばれる特殊な細胞が子宮内膜に侵入し、母体の血流と結びつく。このトロフォブラストは、胎盤を形成する重要な細胞であり、胎児の発育に不可欠な役割を果たす。(B) 胎児と母体の境界(胎児–母体インターフェース)では、胎盤から伸びる指状の構造である絨毛が、母体と発育中の胎児の間で酸素や栄養の交換を行い、胎児の成長を支える。

一般に「無細胞胎児DNA(cell-free fetal DNA, cffDNA)」と呼ばれるDNAは、実際には胎盤の主要な細胞であるトロフォブラストに由来することが、多くの研究によって示されている。したがって、cffDNAを「無細胞胎盤DNA(cell-free placental DNA, cfpDNA)」と呼ぶ方が、より正確な表現である。

Yuen N, Lemaire M, Wilson SL (2024) Cell-free placental DNA: What do we really know? PLoS Genet 20(12): e1011484. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1011484, Fig 2. Placental development and anatomy

羊水検査とNIPTの不一致結果の3つの原因

胎盤限局性モザイク(CPM; Confined Placental Mosiacism)

NIPTの不一致結果の主な原因の一つは、胎盤限局性モザイク(CPM)です。通常、胎盤と胎児は同じ遺伝情報を持っていますが、妊娠の約1〜2%では、胎盤にのみ染色体異常が存在することがあります。CPMは必ずしも問題を引き起こすわけではありませんが、16トリソミー・モザイクなど特定のタイプは、胎児発育不全、早産、妊娠高血圧などの合併症と関連することが知られています。

Pitfalls of prenatal diagnosis associated with mosaicism

胎児性胎盤モザイクの種類:緑色は染色体異常が存在することを示しています。NIPTでスクリーニングされる細胞は胎盤由来ですが、これらの細胞の状態が必ずしも発育中の胎児の状態と一致するとは限りません。

Reilly, K., Doyle, S., Hamilton, S. J., Kilby, M. D., & Mone, F. (2023). Pitfalls of prenatal diagnosis associated with mosaicism. The Obstetrician & Gynaecologist25(1), 28–37. https://doi.org/10.1111/tog.12850, Fig. 2. Types of fetal placental mosaicism.

母体の遺伝的影響

母体の遺伝情報もNIPTの結果に影響を与えることがあります。例えば、一部の女性は自然に性染色体のモザイクや微細な染色体欠失・重複(コピー数変異、CNV)を持っており、これがNIPT結果に影響を及ぼすことがあります。X染色体異常が検出された181例を対象とした研究では、8.6%が母体由来の遺伝的要因であることが判明しました。さらに、母体ががんを患っている場合や、男性ドナーから臓器移植を受けた場合なども、母体血中に胎児以外のDNAが混入し、検査結果を誤解させる可能性があります。

消失双胎現象(Vanishing Twin)

消失双胎現象(Vanishing Twin)も不一致結果の原因の一つです。妊娠初期に一方の胎児が発育を停止し、そのDNAが一時的に母体血中に残ることで、NIPTが誤って遺伝的異常を示すことがあります。研究によると、消失双胎はNIPTの不一致結果の約0.45%〜0.6%を占めるとされています。

NIPTの精度と信頼性

従来の出生前血液検査と比較して、NIPTの精度は大幅に向上しています。しかし、完全に誤判定を排除することはできません。2015年のメタアナリシスでは、偽陽性率(False Positive Rate, FPR)が以下のように報告されました。

これらの数値は低いものの、偽陽性が発生する可能性があることを示しています。NIPTの誤判定の一部は検査室でのエラーによるものですが、CPMや消失双胎といった生物学的要因も影響を与えています。

NIPTはあくまでもスクリーニング検査であり、確定診断を行うものではありません。そのため、陽性結果が出た場合には、羊水穿刺や絨毛検査(CVS)などの診断的検査による確認が強く推奨されます。しかし、すべての妊婦がこの推奨を遵守しているわけではありません。ある研究によれば、NIPTで陽性と判定された女性のうち6%が、追加の診断検査を受けることなく妊娠を中断していたことが明らかになっています。

この結果は、NIPTの限界について正しい理解を深めることの重要性を示唆しています。スクリーニング検査の結果のみを根拠に重大な決断を下すのではなく、確定診断を受けたうえで慎重に判断することが何よりも大切です。お腹の中の小さな命の可能性を尊重し、適切な情報と専門家の意見を十分に考慮したうえで、後悔のない選択をされることを心より願っております。

ヒロクリニック検査所

失双胎や三倍体、母体モザイクといった遺伝的な異常をより高い精度で検出できるのも大きな特徴です。

ヒロクリニック検査所シーケンサー

胎児割合(FF; Fetal Fraction)とNIPTの精度

NIPTの精度は、FFに依存します。FFは、母体血中のcfDNAのうち胎盤由来のDNAが占める割合を指し、通常は3%〜13%の範囲にあります。妊娠が進むにつれてFFは増加しますが、母体の体重が高い場合、FFは低下する傾向にあります。FFが4%未満になると、検査の信頼性が低下し、偽陰性や不確定結果のリスクが高まります。

結論

NIPTは出生前スクリーニングの安全性と精度を向上させましたが、診断検査ではないため、確定診断には追加の検査が必要です。今後、DNAシーケンシング技術とバイオインフォマティクスの進歩により、NIPTの信頼性がさらに向上することが期待されます。現時点では、その限界を理解し、適切な遺伝カウンセリングを受けることが重要です。

NIPTの検出率を正しく理解する:データの意味と統計の信頼性

以下のセクションでは、NIPT(非侵襲的出生前診断)のデータを詳細に分析し、イギリスの出生有病率との比較を通じて、検査の特性や精度について解説します。ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)の検出率の違いに加え、選択バイアスの影響や信頼区間の考え方、陽性的中率(PPV)・陰性的中率(NPV)の計算方法など、統計的な視点からも詳しくご説明します。また、受検者の年齢分布や検査を受ける傾向、さらに羊水検査との結果の不一致が臨床判断に与える影響についても考察します。NIPTの仕組みをより深く理解し、検査結果の正しい捉え方を知りたい方に向けて、わかりやすく丁寧にお伝えします。

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