NIPT(新型出生前診断)で「陽性」との結果を受け、不安を感じながら情報を探している方もいらっしゃるのではないでしょうか ?
NIPTは精度の高いスクリーニング検査ですが、それだけでお腹の赤ちゃんの状態が確定するわけではありません 。
そのため、NIPTが陽性でも、その後の羊水検査で「陰性」と診断されるケースも存在します 。
本記事では、NIPTと羊水検査それぞれの特徴や精度の違い、そしてなぜ検査結果に不一致が起こるのかを、実際のデータを交えながら解説します 。
ぜひ両検査への正しい知識を得て、ご自身やご家族が納得できる選択をするための参考にしてください 。
NIPTとは
NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液を用いて赤ちゃんの染色体異常のリスクを調べる検査です。
採血のみで検査が可能であるため、近年受検者が増加しています。
ここでは、NIPTの概要について以下5つを解説します。
- NIPTの具体的な特徴
- 検査にかかる費用の相場
- 検査を行うおもな目的
- 結果の解釈と判定の意味
- 再検査が必要となるケース
それぞれ見ていきましょう。
NIPTの特徴
NIPTは、お母さんの血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を分析する検査です 。
お母さんから採血するだけなので、お腹に針を刺す必要がなく、流産などのリスクが極めて低いのが大きなメリットです 。
また、妊娠10週目以降の早い段階で検査を受けられます 。
一方で、NIPTは染色体異常の可能性を調べる「スクリーニング検査」であり、診断を確定するものではありません 。
そのため、陽性の結果が出た場合は、診断を確定させるために羊水検査などの「確定的検査」を受けることがおすすめです 。
NIPTの費用
NIPTは公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担となります 。
クリニックによって料金は異なりますが、一般的には10万円から20万円程度が相場です 。
この費用には、基本的な検査項目に加えて、カウンセリング費用などが含まれている場合があります 。
陽性の結果が出た場合に、その後の羊水検査の費用を一部または全額負担してくれる保証制度を設けているクリニックもあります 。
検査を受ける前には、総額でどのくらいの費用がかかるのか、追加料金は発生しないかなどを事前に確認することが大切です。
NIPTの目的
NIPTのおもな目的は、お腹の中の赤ちゃんが染色体異数性を持つ可能性を、妊娠の早い段階で、かつ安全に知ることにあります 。
この検査は、染色体異常のリスクを評価するための「スクリーニング検査」と位置づけられています 。
つまり、病気を断定するのではなく、より詳しい検査(確定的検査)が必要かどうかを判断するための情報を提供することが目的です 。
これにより、妊婦さんやご家族が、今後の妊娠期間をどう過ごすか、必要な準備は何かを考えるための貴重な機会を得られます 。
NIPTの結果が意味すること
NIPTの結果は「陽性」または「陰性」で報告され、それぞれが示す意味は大きく異なります 。
結果の解釈を正しく理解するために、以下の表でそれぞれの意味を確認しておきましょう。
| 結果 | 意味 |
| 陽性 | 検査対象の染色体異常がある可能性が高いことを示します 。 ただし、これは確定診断ではないため、本当に異常があるかを確認するには羊水検査などの確定的検査が必要です 。 |
| 陰性 | 検査対象の染色体異常がある可能性が極めて低いことを示します 。 陰性的中率は99.9%以上と高く、この結果が出た場合は、赤ちゃんが対象の疾患を持っている可能性はほぼないと考えられます 。 |
おもに21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パタウ症候群)といった染色体の数の異常を調べます 。
NIPTで再検査が必要になるケース
NIPTを受けた際に、まれに結果が出ないケースが生じることがあります。
もしNIPTが結果を出せない場合には、染色体異常のリスクが高くなるため、ほかの検査を検討すべきであるとガイドラインで言及されています。
参考資料:アメリカ産婦人科学会のNIPTに対するガイドライン
羊水検査とは
羊水検査は、お母さんのお腹に針を刺して羊水を採取し、その中に含まれる胎児の細胞を調べる検査です。
NIPTとは異なり、染色体異常を確定的に診断できる「確定検査」に分類されます。
検査の精度は高く、染色体の数や構造の異常を詳しく調べることが可能です。
ここでは、羊水検査について理解を深めるために、以下5つの観点から説明します。
詳しく見ていきましょう。
羊水検査の特徴
羊水検査は、お母さんのお腹に細い針を刺して羊水を採取し、その中に含まれる胎児の細胞を分析する「確定的検査」です 。
この検査により、ダウン症候群などの染色体の数の異常だけでなく、染色体の構造異常や、特定の遺伝子疾患まで正確に診断できます 。
検査を受けられる時期は、羊水量が十分に確保できる妊娠15〜18週で、高い診断精度がメリットです。
一方、針を刺すことによる破水や感染のリスクがあり、約0.1〜0.3%の割合で流産に至る可能性があるというデメリットも存在します 。
羊水検査の費用
羊水検査もNIPTと同様に、公的医療保険が適用されない自由診療であり、費用は全額自己負担です 。
検査費用は医療機関によって異なりますが、一般的に10万円から20万円程度が目安となります 。
この費用には、羊水の採取や細胞の培養、染色体の分析など、診断に至るまでの一連のプロセスが含まれています。
羊水検査の目的
羊水検査の最大の目的は、お腹の中の赤ちゃんの染色体異常の有無を「確定的に診断」することです 。
NIPTなどのスクリーニング検査で染色体異常の可能性が高い(陽性)とされた場合に、本当に異常があるのかどうかを最終的に確認するために行われます 。
超音波検査で胎児に形態的な異常が見られたり、妊婦さんやその家族に遺伝性疾患の既往がある場合などにも、診断を確定させるために実施されることがあります 。
この検査によって正確な診断を得ることで、両親は出産後の育児計画や必要な医療体制について、具体的な準備を進められます 。
羊水検査の結果が意味すること
羊水検査は、胎児自身の細胞を直接調べるため、その結果は「確定診断」として扱われます 。
NIPTのようなスクリーニング検査とは異なり、結果が「陽性」であれば、赤ちゃんがその染色体異常を持っていることが確定します 。
検査結果の解釈について、以下の表で詳しく確認しましょう。
| 結果 | 意味 |
| 陽性 | 検査対象の染色体異常や遺伝子疾患が確定することを示します 。 この結果に基づき、医師からの詳しい説明や遺伝カウンセリングが行われ、今後の対応について話し合います 。 |
| 陰性 | 検査対象の染色体異常や遺伝子疾患がないことが確定します 。 ただし、羊水検査で調べられる範囲以外の病気や、発達上の問題などの可能性がすべて否定されるわけではありません 。 |
羊水検査は、NIPTよりも幅広い染色体疾患が検査対象です 。
羊水検査で再検査が必要になるケース
羊水検査では、ごくまれに採取した細胞がうまく育たず、正確な分析ができないことがあります。
これを「培養不能」と呼び、この場合は再検査が必要になる可能性があります。
採取した羊水にお母さんの血液が混入してしまい、胎児の細胞と区別がつかなくなる「母体血混入」が起こった場合も同様です。
ただし、これらのケースはまれです。
ほとんどの場合、一度の検査で確定診断が得られますが、万が一再検査が必要になった場合は、医師と相談しながらその後の対応を決めていくことになります。
NIPTと羊水検査の精度
NIPTは「スクリーニング検査」と呼ばれ、染色体異常の「可能性」をふるい分けるためのものです。
ダウン症候群(21トリソミー)に対する感度・特異度は99%以上と高い精度を誇りますが、これだけで診断が確定するわけではありません。
一方、羊水検査は「確定的検査」に位置づけられ、胎児の染色体を直接調べるため高い精度を持ちます。
しかし、確定検査であっても感度は99.4%、特異度は99.5%であり、100%確実に分かるものではありません。
NIPTで陽性という結果は、あくまで確定診断に進むべきかを判断する材料であり、羊水検査で最終的な診断が下されることを理解しておきましょう 。
NIPTの結果と羊水検査の相関
NIPTで陽性となった場合、羊水検査でどの程度確定診断が得られるのかは、検査対象の染色体異常によって異なります。
ここでは、実際のデータをもとに、NIPTと羊水検査の結果の相関について説明します。
それぞれのデータから、NIPTの陽性的中率がどの程度なのかを確認できます。
相関①21トリソミー・18トリソミー・13トリソミー
NIPTの基本的な検査対象である21、18、13トリソミーは、染色体異常の中でも比較的発生頻度が高いものです 。
当クリニックのデータでは、NIPTで21トリソミー(ダウン症候群)陽性と判定された67人のうち、その後の羊水検査で実際に21トリソミーと確定診断されたのは62人です。
陽性的中率は、92.5%でした 。
同様に、18トリソミー(エドワーズ症候群)では陽性的中率65.4%(26人中17人)、13トリソミー(パタウ症候群)では41.7%(12人中5人)という結果です 。
この数値の違いは、疾患の発生頻度(有病率)が影響しており、発生頻度が低い疾患ほど陽性的中率は低くなる傾向にあります 。
相関②RAA
RAAとは、21、18、13トリソミー以外の常染色体の異数性を指します 。
これらはまれな染色体異常であり、発生頻度(有病率)が極めて低いため、NIPTの陽性的中率も低くなる傾向です。
たとえば、7、8、16トリソミーなどでNIPTが陽性でも、羊水検査で同じ疾患と確定診断されるケースは、21トリソミーなどと比べると少なくなります 。
これは、NIPTが感度が高い検査であるため、ごくわずかな可能性でも「陽性」として検出するからです 。
スクリーニング検査の重要な役割は、見逃しを減らし、精密検査が必要な可能性のある人を見つけ出すことにあります 。
相関③SCA
SCAは、性染色体の数の異常を調べる検査です 。
当クリニックのデータでは、まだ全体の母数が少ないものの、XXY(クラインフェルター症候群)とXXX(トリプルX症候群)では陽性的中率100%という結果です 。
一方で、XO(ターナー症候群)では63.6%、XYY(ジェイコブス症候群)では50%の陽性的中率でした 。
性染色体異常は、常染色体異常に比べて症状が軽微であったり、症状が現れなかったりすることもあります。
相関④構造異常
染色体の構造異常は、染色体の一部が欠けていたり、位置が変わったりする状態を指します 。
これもまれなケースであるため、NIPTにおける陽性的中率のデータはまだ十分に蓄積されていません 。
しかし、いくつかのまれな構造異常において、NIPTの陽性結果がその後の羊水検査で確定診断につながった例が報告されています 。
大切なのは、NIPTが「有病率の低い、珍しい疾患を取りこぼさずに陽性と判定している」点です 。
結果不一致とは
「結果不一致」が起こる最大の理由は、NIPTが「胎盤由来のDNA」を調べているのに対し、羊水検査は「胎児自身の細胞」を調べているからです 。
受精卵が分裂していく過程で、胎児になる部分と胎盤になる部分とで、まれに異なる遺伝情報を持つことがあります 。
これを「胎盤性モザイク」と呼びます 。
胎盤にのみ染色体異常があり、胎児自身は正常である場合、NIPTでは「陽性」、羊水検査では「陰性」という結果不一致が生じます 。
これが、NIPTで陽性でも羊水検査で陰性となる「偽陽性」のおもな原因です 。
そのため、NIPTの結果だけで判断せず、陽性の場合は確定診断のための羊水検査に進むことが大切です 。
どちらの検査を受けるべきか?
NIPTと羊水検査は、それぞれ目的が異なるため、どちらか一方が優れているというものではありません 。
NIPTは、お母さんと赤ちゃんへの負担が少なく、流産のリスクを避けながら染色体異常の「可能性」を知りたい場合に適したスクリーニング検査です 。
一方、羊水検査は、わずかながら流産のリスクを伴いますが、染色体異常の有無を「確定」させたい場合に必要な確定的検査です 。
NIPTで高い確率を示す結果が出た場合、多くの専門家は診断を確定させるために羊水検査などの確定的検査に進むことを推奨しています 。
最終的には担当医師と十分に相談し、ご自身やご家族が納得できる選択をすることが肝心です。
検査を受ける前に考慮すべきこと
ここでは、後悔のない選択をするために、検査を受ける前に考えておくべき4つのポイントを紹介します。
- 検査を受けられる期間
- 遺伝カウンセリングの有無
- 検査時のリスク
- 陽性だった場合の対応
それぞれ見ていきましょう。
検査を受けられる期間
NIPTと羊水検査では、検査を受けられる妊娠週数が異なります 。
NIPTは妊娠10週以降と比較的早い時期から受けられますが、羊水検査は羊水が十分に溜まる妊娠15〜16週以降でないと実施できません 。
もしNIPTで陽性となり、羊水検査に進むことを決めた場合、結果が判明するのは早くても妊娠17〜18週頃になります 。
その後の決断には時間的な制約も伴うため、いつまでに何を決める必要があるのか、スケジュール感を把握しておくことが賢明です。
それぞれの検査がいつ受けられて、いつ結果が出るのかを事前に確認し、余裕を持った計画を立てましょう。
遺伝カウンセリングの有無
出生前診断を受けるにあたり、遺伝カウンセリングは重要な役割を果たします 。
遺伝カウンセリングでは、専門家が検査に関する正確な情報提供を行うだけではありません。
ご夫婦やご家族が抱える不安や悩みに対して中立的な立場で寄り添い、意思決定をサポートしてくれます 。
検査を受ける前には、その検査がどのようなもので、どのような結果が出る可能性があるのかを十分に理解しなければいけません。
陽性と診断された場合にどのような選択肢があるのか、それぞれの選択がどのような意味を持つのかについても、冷静に考える時間が必要です 。
多くの医療機関では、検査の前後に遺伝カウンセリングを受ける体制を整えています 。
検査時のリスク
NIPTは採血のみで行われるため、お母さんや赤ちゃんへの身体的なリスクはほとんどありません 。
一方で、羊水検査はお腹に針を刺すため、約0.1〜0.3%程度で流産や死産につながるリスクが伴います 。
このリスクをゼロにはできません。
そのため、確定的検査を受けるかどうかは、このリスクと、診断を確定させることで得られる情報を天秤にかけて慎重に判断する必要があります 。
多くの人が、まずはリスクのないNIPTを受け、陽性であった場合にのみ、リスクを考慮したうえで羊水検査に進むという選択をしています 。
陽性だった場合の対応
もし検査で「陽性」という結果が出た場合、どうするのかを事前にパートナーと話し合っておくことは大切です 。
NIPTが陽性であれば、確定診断のために羊水検査に進むのか 。
そして、羊水検査で染色体異常が確定した場合、どのような選択をするのか 。
これはデリケートで、簡単に答えの出る問題ではありません 。
しかし、いざその場面に直面してから考えると、冷静な判断が難しくなる可能性があります 。
まとめ
どのような結果であってもそれを受け止め、夫婦で支え合って乗り越えていくという覚悟を持つために、検査を受ける前に時間をかけて話し合っておくことが望まれます 。
NIPTと羊水検査についてご理解が深まった一方で、ご自身の状況に合わせてどのような選択をすべきか、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ヒロクリニックNIPTでは、お母さんと赤ちゃんに安全なNIPTを、国内の専門機関との連携により最短2日という迅速さでご提供しています。
万が一NIPTで陽性となった場合でも、最大20万円までの羊水検査費用補助サポートがあるため、費用の心配を軽減して確定検査に進めます。
産婦人科や小児科など各分野の専門医も在籍しておりますので、検査に関する疑問や不安は、どうぞお気軽にご相談ください。
