この記事のまとめ
NIPTで陽性でも、確定検査である羊水検査で陰性になることがあります。NIPTが赤ちゃんの状態を確定しない非確定的検査だからです。結果が食い違うおもな理由は、非確定的検査という性質そのものに加えて、偽陽性、胎盤にだけ染色体異常がある胎盤性モザイク(CPM)、双子の一方が消えるバニシングツイン、そしてお母さん由来の要因です。NIPT・絨毛検査・羊水検査は、調べる対象も精度の考え方も異なります。診断を確定できるのは羊水検査です。陽性の連絡に動揺したときこそ、自己判断せず担当医と相談してください。
この記事でわかること
NIPTで陽性でも羊水検査で陰性になるのはなぜ?
NIPTで陽性でも羊水検査で陰性になるのは、NIPTが可能性を調べる非確定的検査で、羊水検査が診断を確定する検査だからです。NIPTは血液から赤ちゃんの染色体の状態を推定します。一方の羊水検査は、赤ちゃん自身の細胞を直接調べます。調べているものが違うため、結果がずれることがあります。
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの採血だけで受けられる検査です。妊娠10週ごろから受けられ、お腹に針を刺しません。負担が軽いぶん、結果は「陽性」か「陰性」で示される、あくまでふるい分けの情報。診断そのものではありません。
陽性という言葉を見ると、多くの方が強い不安を覚えます。私は相談の場に立ち会うなかで、「陽性=確定」と受け止めて動揺される方が少なくないと感じてきました。けれど陽性は、次の確定検査へ進むかを考える出発点。落ち着いて次の一歩を選ぶための材料です。
NIPTの仕組みをもう少し知りたい方は、NIPTの原理をやさしく解説した記事もあわせて読んでみてください。仕組みが分かると、なぜ確定検査が必要になるのかも腑に落ちます。理解が、不安を和らげる支えになります。
NIPT・絨毛検査・羊水検査の対象と精度の違い
出生前の検査は、調べる対象も精度の考え方も検査ごとに異なり、NIPTは非確定的、絨毛検査と羊水検査は確定検査に分類されます。それぞれ受けられる時期や体への負担も違います。まずは3つの検査を並べて、違いを整理していきます。
NIPTは、お母さんの血液に含まれる、細胞の外を流れるDNA(cfDNA)を分析します。この成分は多くが胎盤に由来します。つまりNIPTは、赤ちゃんそのものではなく胎盤の情報を通じて、対象の染色体の状態を推定する検査。ここが精度を考えるうえでの出発点です。
絨毛検査は、胎盤のもとになる絨毛を採取して調べる確定検査です。妊娠11〜14週ごろに受けられます。羊水検査は、羊水にただよう赤ちゃん自身の細胞を調べる確定検査。妊娠15〜16週以降が対象で、赤ちゃんの染色体を直接確認できます。下の表で対象と時期をくらべてください。
| 検査 | 分類 | 調べる対象 | 受けられる時期の目安 | 体への負担 |
|---|---|---|---|---|
| NIPT | 非確定的検査 | 血液中のDNA(多くは胎盤由来) | 妊娠10週ごろ〜 | 採血のみ |
| 絨毛検査 | 確定検査 | 絨毛(胎盤のもと)の細胞 | 妊娠11〜14週ごろ | お腹や子宮頸部から採取 |
| 羊水検査 | 確定検査 | 羊水中の赤ちゃん自身の細胞 | 妊娠15〜16週以降 | お腹に針を刺す |
NIPTがおもに調べるのは、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パタウ症候群)など、対象の染色体に限られます。すべての病気や障害が分かるわけではありません。羊水検査は、染色体の数だけでなく構造の変化まで幅広く確認できます。
精度についても、無条件に「ほぼ確実」と言い切れるものではありません。NIPTは対象の染色体をよく捉えますが、陽性がそのまま確定を意味しないのが要点。だからこそ陽性のあとに確定検査が置かれています。羊水検査については羊水検査の内容を解説した記事で詳しく紹介しています。
NIPTと羊水検査の結果が食い違う5つの理由
結果が食い違う理由は、非確定的検査という性質・偽陽性・胎盤性モザイク・バニシングツイン・母体由来の5つに整理できます。どれもNIPTが「胎盤の情報」を通じて推定していることに関わります。順番に、なぜ起こるのかを見ていきます。
理由①非確定的検査という性質
いちばんの前提は、NIPTがふるい分けの検査だという点です。陽性は「可能性が高い」を示すもので、「確定した」ではありません。確率を扱う検査である以上、陽性のなかに、確定検査で陰性となる方が一定数含まれます。ここが食い違いの土台です。
理由②偽陽性
偽陽性とは、実際には染色体の変化がないのに陽性と出る結果です。スクリーニング検査には、見逃しを減らすため陽性を拾いやすい設計があります。そのぶん、確定検査で覆る陽性も出てきます。これは検査の欠陥ではなく、ふるい分けの宿命です。
私自身、母体血清マーカーなど別の非確定的検査でも同じ構図をよく見てきました。産婦人科で働いていた経験から、クアトロ検査で陽性でも羊水検査で偽陽性のことが多かった、という声もあります。実際に@muu7964さんも、そうした実感からご自身なら受けるならNIPTにしたい、とつづっていました。現場の実感は、非確定的検査の限界をよく物語っています。
理由③胎盤性モザイク(CPM)
胎盤性モザイク(CPM)は、食い違いのおもな原因の一つです。受精卵が分裂する途中で、胎盤になる細胞と赤ちゃんになる細胞に、違う染色体情報が生じることがあります。胎盤にだけ変化があり赤ちゃんは正常だと、NIPTは陽性、羊水検査は陰性になります。
先ほどの図が示すとおり、NIPTは胎盤由来の情報を強く反映します。だから胎盤と赤ちゃんの染色体がそろわないと、結果がずれるわけです。赤ちゃん自身を直接調べる羊水検査で、はじめて本当の状態が分かります。
理由④バニシングツイン
バニシングツインは、双子の一方が妊娠のごく早い時期に育たなくなり、吸収されていく現象です。消えた赤ちゃんに染色体の変化があった場合、その名残のDNAが残り、NIPTで陽性と出ることがあります。育っている赤ちゃんは正常でも、結果に影響します。
この事情を、当事者として冷静に整理している方もいます。私も説明の難しさを感じる場面ですが、Xでは@yupiterulemonさんが、バニシングツインのため消えた1号がトリソミー由来なら陽性が出うると聞き、確定には羊水検査が必要と受け止めた体験をつづっていました。背景を知っておくと、陽性の意味を落ち着いて捉えられます。
理由⑤母体由来の要因
最後は、お母さん由来の要因です。血液中のDNAには、赤ちゃんだけでなくお母さん自身の成分も混ざります。お母さんに染色体の個性がある場合や、体質的な要因が重なった場合に、結果へ影響することがあります。こうした背景も、確定検査で確かめる意味につながります。
陽性的中率でわかる「陽性でも確定しない」割合
陽性的中率(陽性のうち本当に染色体変化があった割合)は、疾患の頻度によって変わり、頻度が低い疾患ほど低くなります。この数値を知ると、なぜ陽性でも確定検査が要るのかが具体的に見えてきます。ヒロクリニックの実データで確認します。
ヒロクリニックのデータでは、21トリソミー陽性と判定された67人のうち、羊水検査で確定したのは62人でした。陽性的中率は92.5%。多くの方で確定に至る一方、確定検査で陰性となった方も含まれます。陽性がそのまま確定を意味しないことが、数字からも読み取れます。
| 対象 | 陽性的中率の目安 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 21トリソミー | 92.5%(67人中62人) | 多くが確定するが、全員ではない |
| 18トリソミー | 65.4%(26人中17人) | 陰性となる方も一定数いる |
| 13トリソミー | 41.7%(12人中5人) | 頻度が低く食い違いが起きやすい |
18トリソミーは65.4%、13トリソミーは41.7%でした。頻度が低い疾患ほど陽性的中率も下がります。数字が低いほど、陽性でも確定検査で覆る割合が増えるということ。だから、どの疾患でも陽性のあとは羊水検査で確かめる流れが基本になります。
ダウン症について、頻度や検査の考え方をもっと知りたい方はダウン症と出生前検査を解説した記事も参考になります。数字の意味を落ち着いて捉えると、陽性の連絡にも冷静に向き合えます。
NIPTで陽性だったあとの流れ|確定は羊水検査
NIPTで陽性だった場合、診断を確定できるのは羊水検査であり、陽性のあとに確定検査へ進むのが基本の流れです。陽性の連絡から確定検査までは、数日から数週間のことが多いです。あわてず進めるよう、流れを知っておいてください。
陽性の連絡を受けたら、まず遺伝カウンセリングで状況を整理します。専門家が中立の立場で情報を伝え、疑問や不安に寄り添ってくれます。ここで、確定検査へ進むかどうかを落ち着いて考えられます。ひとりで抱え込まないための時間です。
羊水検査に進むと決めたら、時期の確認が大切になります。羊水検査は妊娠15〜16週以降が対象。結果が出るまでにも日数がかかります。受けられる時期は羊水検査の適切な時期を解説した記事で確認してください。
陽性を告げられたあと、次の検査へ静かに歩み出す方もいます。私はその姿勢に、いつも励まされてきました。Xでも@tetete_4649さんが、NIPTで21トリソミー陽性となり後日羊水検査を受ける予定として、痛みや結果までの日数を情報収集していました。同じ道をたどった方の声は、次の一歩の支えになります。
検査を受ける前に知っておきたいこと
後悔のない選択のために、検査を受ける前に、時期・遺伝カウンセリング・リスク・費用の4点を押さえておいてください。それぞれを事前に整理しておくと、陽性という結果が届いても冷静に動けます。順に見ていきます。
まず時期です。NIPTは妊娠10週ごろから、羊水検査は15〜16週以降が対象になります。陽性から確定検査へ進むと、結果が分かるのは妊娠17〜18週ごろ。いつまでに何を決めるのか、スケジュール感を持っておくと安心です。時間の見通しが、判断を助けます。
次に遺伝カウンセリングです。検査でどんな結果が出うるのか、陽性ならどんな選択肢があるのかを、事前に理解しておいてください。中立的な専門家と話す時間は、心の準備につながります。多くの医療機関が、検査の前後にこの体制を整えています。
リスクと費用も見過ごせません。NIPTは採血のみで負担が軽い検査です。羊水検査はお腹に針を刺すため、わずかに流産などのリスクがあります。費用の目安や補助の仕組みは出生前検査の費用を解説した記事で確認してください。陽性後の結果の見方はNIPTの検査結果の読み方の記事も役立ちます。
検査全体の考え方は、公的な情報源にあたると安心です。出生前検査認証制度等運営委員会や日本産科婦人科学会の発信、こども家庭庁 母子保健の情報も参考にしてください。信頼できる情報が、落ち着いた判断を支えます。
よくある質問
Q. NIPTで陽性でも、赤ちゃんが元気なことはありますか?
あります。NIPTは可能性を調べる非確定的検査のため、陽性でも確定検査の羊水検査で陰性となることがあります。理由は、偽陽性、胎盤にだけ変化がある胎盤性モザイク、バニシングツイン、母体由来などです。陽性の連絡を受けても、それだけで確定ではありません。担当医と相談し、確定検査で確かめてください。
Q. NIPTと羊水検査で結果が食い違うのはなぜですか?
調べている対象が違うためです。NIPTは血液中のDNA(多くは胎盤由来)を分析し、羊水検査は赤ちゃん自身の細胞を直接調べます。胎盤と赤ちゃんの染色体情報がそろわない胎盤性モザイクや、バニシングツイン、偽陽性などが重なると、NIPTは陽性、羊水検査は陰性という食い違いが生じます。確定は羊水検査で判断します。
Q. NIPT・絨毛検査・羊水検査はどう違いますか?
NIPTは採血で受ける非確定的検査で、妊娠10週ごろから可能です。絨毛検査は胎盤のもとになる絨毛を調べる確定検査で、妊娠11〜14週ごろに受けられます。羊水検査は羊水中の赤ちゃんの細胞を調べる確定検査で、妊娠15〜16週以降が対象です。負担の軽さはNIPT、診断の確定は絨毛検査や羊水検査という役割分担です。
Q. 胎盤性モザイクとは何ですか?
胎盤と赤ちゃんで染色体の情報が異なる状態です。受精卵が分裂する途中で生じます。胎盤にだけ染色体の変化があり赤ちゃん自身は正常な場合、胎盤の情報を反映するNIPTでは陽性、赤ちゃんを直接調べる羊水検査では陰性になります。NIPTで陽性でも羊水検査で陰性となるおもな理由の一つです。
Q. NIPTで陽性だったら、次に何をすればよいですか?
まず遺伝カウンセリングで状況を整理し、確定検査へ進むかを担当医と相談してください。診断を確定できるのは羊水検査です。羊水検査は妊娠15〜16週以降が対象のため、時期の確認も大切になります。陽性の連絡は不安を伴いますが、自己判断で結論を出さず、専門家と話しながら次の一歩を選んでください。
Q. NIPTで陰性なら、羊水検査は不要ですか?
NIPTで陰性の場合、対象の染色体の変化がある可能性は低いと考えられます。ただし、NIPTが調べるのは対象の染色体に限られ、すべての病気を否定するものではありません。超音波で気になる所見があるときなどは、羊水検査を検討することもあります。最終的には担当医と相談して判断してください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
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