NIPT(新型出生前診断)の種類と精度をやさしく解説:選び方の参考に

この記事でわかること

  • NIPTの4つの検査手法と、それぞれの特徴
  • 感度・特異度・陽性的中率(PPV)の意味と限界
  • 双子妊娠でNIPTを受けるときの注意点
  • 陽性が出た場合に次にすべきこと
  • 検査会社を選ぶときに確認したい5つのポイント

NIPTとは?まず知っておきたい検査の対象

NIPTは、母体の血液を採取するだけで胎児の染色体を調べられる出生前検査です。
健康な人の体は通常23対の染色体を持ち、染色体には体の発達に関わる遺伝情報が詰まっています。
NIPTは母体血液中の胎盤由来DNA断片(cfDNA)を分析する検査です。この分析により、胎児の染色体の数に変化がないかを確認します。

ただし、NIPTが調べられる範囲は限定的です。
対象となる疾患は主に3つです。
21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトウ症候群)の3つです。
これらは限定された染色体異数性にとどまります。すべての先天性疾患を網羅する検査ではありません。

また、NIPTは非確定的検査であり、陽性の場合は羊水検査などの確定検査が必要です。確定診断ではなく、あくまでスクリーニング。この点は記事全体を通じてお伝えします。検査の原理をもう少し詳しく知りたい方は、NIPTの原理を解説したページもあわせてご覧ください。

NIPTを検討する方の多くは、35歳以上の高齢出産の方です。過去の妊娠でトリソミーを指摘された経験を持つ方も少なくありません。
もちろん、それ以外の年齢の方でも受けられます。
年齢だけで判断するのではなく、ご自身とパートナーの希望を整理したうえで検討してください。

NIPTを受けられる時期と検査の流れ

NIPTは母体からの採血のみで完結し、胎児への負担がない検査です。

一般的には妊娠10週以降が目安とされています。ただし重要なのは、週数そのものではありません。
母体血液中に含まれる胎児由来DNAの割合(フィータルフラクション)が、十分にあるかどうかです。
この割合が低いと、検査結果が「判定不能」になることがあります。その場合は数週間後に採血をやり直す流れになるのが一般的です。

採血から結果が届くまでの日数は検査会社によって差があります。東京衛生検査所(国内)で検査するため最短2〜5日で結果が届くケースもあります。検査を海外に送る場合と比べて、日数を短縮しやすい傾向があります。
検査時期や結果までの目安は、妊娠週数や体質を踏まえて医療提供者が判断します。

NIPTの主な種類と検査会社による違い

NIPTには複数の検査手法があり、検査会社によって採用する技術が異なります。
手法が違うと、検出できる範囲や結果が出るまでの日数、双子妊娠への対応力にも差が出ます。

4つの主な検査方式

現在広く使われているNIPTの検査方式は、大きく4つに分類できます。

全ゲノムシーケンシング(WGS)

母体血液中のcfDNAを、全染色体にわたって網羅的に読み取る方式です。判定不能になる割合が低く、胎児由来のDNA量が少ない場合でも安定して結果を返しやすい傾向があります。

SNP(一塩基多型)ベースの検査

母体と胎盤由来のDNAを比較し、遺伝子の型のばらつきから染色体数の異常を推定する方式です。双子妊娠で一卵性か二卵性かを判定できる点が特徴です。

ローリングサークル増幅(RCA)

特定のDNA配列だけを増幅して調べる、標的型の検査方式です。全ゲノムは調べない分、比較的低コストで実施できます。

マイクロアレイ検査

あらかじめ用意したDNAプローブに、標識したcfDNAを結合させて染色体量を調べる方式です。ダウン症候群など主要な疾患の検出に強みがある一方、まれな染色体異常への感度はやや劣ります。

全ゲノム シーケンシング 判定不能が 少ない 一塩基多型 検査 双子の一卵性・ 二卵性を判定 ローリング サークル増幅 標的型で 低コスト マイクロ アレイ検査 主要疾患に 強み
図1:NIPTの主な4つの検査手法とそれぞれの特徴

表1:4手法の対象範囲・双子判定・コスト傾向の比較

手法対象範囲双子の判定コスト傾向
WGS広い(全ゲノム)不可やや高め
SNP法限定的可能中程度
RCA限定的(標的型)不可低め
マイクロアレイ限定的不可中程度

双子の判定に対応できるのは、母体と胎盤のDNA型を比較するSNPベースの手法が中心です。
WGS・RCA・マイクロアレイは、主に染色体数の異常検出に特化した手法です。双子の一卵性・二卵性までは判定できません。

検査選びの決め手は、対象疾患・費用・結果までの日数の3点。どの検査を選ぶ場合も、対象疾患と限界を医師とともに確認することが欠かせません。

精度の違いは何が原因か

NIPTの精度は「感度」「特異度」「陽性的中率(PPV)」という3つの指標で語られます。
それぞれ意味が異なるため、混同すると数値の解釈を誤ってしまいます。

感度とは、実際に疾患がある胎児を正しく検出できる割合です。特異度とは、疾患がない胎児を正しく「異常なし」と判定できる割合を指します。

海外の学術専門誌に、システマティックレビューが掲載されています。
2003〜2023年の21件の研究、対象92,164例を統合した報告です。21トリソミー・18トリソミー13トリソミーという限定された対象における数値です。
すべての手法で感度は97〜99%以上でした。特異度も99%以上という結果です。ただしこれは非確定的検査における数値であり、陽性の場合は羊水検査等の確定検査が必要です。

一方でPPV(陽性的中率)は手法によってばらつきが大きいのが特徴です。
同レビューでは21トリソミーにおいて報告があります。SNP法で92.97%、RCA法で75.98%という数値です。
数値が下がるほど、陽性判定でも実際には疾患がない可能性が相対的に高まります。これも限定された染色体異数性を対象とした非確定的検査の数値であり、確定診断の代わりにはなりません。
精度の考え方をさらに詳しく知りたい方は陽性的中率を解説したページを参考にしてください。

双子妊娠でNIPTを受けるときに知っておきたいこと

双子妊娠の場合、NIPTの手法によって得られる情報が変わります。
SNPベースの検査では、妊娠9週以降に双子が一卵性か二卵性かを判定できます。

二卵性と判定された場合は、2つの胎盤を持つ二絨毛膜性であることが多いとされます。一卵性の場合は一絨毛膜性として管理するほうが安全です。一絨毛膜性双胎は特定の合併症リスクが高く、より丁寧な経過観察が必要になるためです。

また、SNPベースの検査では妊娠初期に一方の発育が止まる「消失双胎」を検出できる場合もあります。双子妊娠でNIPTを検討している方は、この点をあらかじめ担当医に相談しておくとよいでしょう。

NIPTで分かること・分からないこと

NIPTは万能の検査ではありません。調べられる範囲を正しく理解しておく必要があります。

NIPTと混同されやすい検査に「キャリアスクリーニング(保因者検査)」があります。
これは両親が特定の遺伝子変異を保有しているかを調べる検査です。胎児のcfDNAを調べるNIPTとは、目的も方法も別物です。NIPTにはキャリアスクリーニングの機能は含まれていません

キャリアスクリーニングは妊娠前や妊娠初期に、両親どちらか、または双方の血液や唾液から行います。近年は頬の内側を綿棒でこするだけの簡単な方法もあり、痛みなく実施できるようになりました。
気になる家族歴がある場合は、NIPTとは別にキャリアスクリーニングの受診を検討してください。

私自身、相談を受ける中で誤解している方に何度も出会いました。
「NIPTを受ければ遺伝性疾患のリスクも全部分かる」という誤解です。
NIPTが調べるのは、染色体の数の変化が中心です。心臓や脳、脊椎などの構造的な異常は、超音波検査でしか確認できません。
NIPTと超音波検査を併用すると、より広い範囲の異常に気づける可能性が高まります。

陽性が出たら次にすること

NIPTの結果が陽性でも、赤ちゃんに疾患が確定したわけではありません。
NIPTはスクリーニング検査であり、診断を確定するものではないためです。

陽性という結果を目にすると、不安な気持ちになるのは自然なことです。
ただ、NIPTには一定の確率で偽陽性が含まれます。慌てて結論を出す前に、まずは確定検査の結果を待つ姿勢が助けになります。

陽性の場合、次に行うべきは羊水検査絨毛検査(CVS)といった確定検査です。これらの検査は胎児の染色体を直接調べるため、より確実な情報が得られます。

NIPT陽性 遺伝カウン セリング 羊水検査 絨毛検査 確定診断
図2:NIPT陽性から確定診断までの流れ

結果を受け取ったら、まず遺伝カウンセラーや担当医に相談してください。確定検査の必要性やタイミングを、専門家と一緒に確認しましょう。
一人で抱え込まず、今後の選択肢を整理していくことが大切です。

より具体的な流れを知りたい方はNIPTと羊水検査の違いを解説したページも参考になります。

NIPT選びで確認すべき5つのポイント

NIPTは検査会社によって内容が異なるため、比較すべきポイントを押さえておく必要があります。
パンフレットの精度表示だけで選ぶのではなく、以下の5点を実際に問い合わせて確認してください。

  1. 対象疾患の範囲:21・18・13トリソミーのみか、それ以外も含むか
  2. 結果が出るまでの日数:国内で検査するか海外に送るかで日数が変わります(詳しくは前章参照)
  3. 費用:自由診療のため検査会社ごとに幅があります
  4. 双子・多胎妊娠への対応可否
  5. 陽性時のフォロー体制:遺伝カウンセリングの有無
1 対象疾患の範囲 2 結果が出るまでの日数 3 費用 4 双子・多胎妊娠への対応可否 5 陽性時のフォロー体制
図3:NIPT選びで確認すべき5つのポイント

迷ったときは、次の2つのページも読み比べてみてください。
NIPTとクアトロ検査の違いを解説したページ出生前診断の種類と選び方のページです。自分に合った検査が見えてきます。

SNSに見るNIPT選びの本音

SNS上には、出生前検査に悩む妊婦さんのリアルな声も見られます。

産婦人科勤務者の投稿では、クアトロ検査で偽陽性が多かった経験が語られています。その経験から「やるならNIPT」という考えを持つ人もいます。
@muu7964氏のような声もあり、実務経験からの視点が反映されているのは興味深い点です。
私も相談の現場で、クアトロ検査の偽陽性率の高さに戸惑う方を何度も見てきました。

一方で、出生前検査そのものを受けない選択をする方もいます。
予約の都合で胎児ドックを受けられなくなり、検診で指摘がなかった方もいます。そうした経緯から「何もしない」という結論に至ったという@mmy338氏のような声もあります。
検査を受けるか受けないかも、本来は自由な選択です。

2つの投稿からうかがえるのは、検査の精度だけが判断材料ではないということです。実務経験や自分自身の検診結果といった要素も、判断に関わってきます。
どちらが正しいという話ではありません。それぞれの状況に合わせた選択があるのだと感じます。

迷ったときは一人で判断せず、専門家に相談してください。LINEで無料相談も活用できます。

よくある質問(FAQ)

NIPTを検討する方から、実際によく寄せられる質問をまとめました。まずは要点だけ先に確認しておきましょう。

Q1. NIPTは何週から受けられますか?

妊娠10週以降が目安です。ただし週数よりも、胎児由来DNAの割合(fetal fraction)が十分かどうかが重要です。

Q2. NIPTの結果はどれくらいの精度ですか?

21・18・13トリソミーなど限定された対象における非確定的検査です。
感度・特異度は高い水準にあります。ただし100%を保証するものではありません。陽性の場合は確定検査が必要です。

Q3. NIPTとクアトロ検査はどう違いますか?

検査方法や精度、対象疾患が異なります。詳しくはNIPTとクアトロ検査の違いのページで解説しています。

Q4. NIPTで双子の一卵性・二卵性は分かりますか?

SNPベースの検査であれば、妊娠9週以降に判定できる場合があります。すべての手法で判定できるわけではありません。

Q5. 陽性の場合、どんな検査が必要ですか?

羊水検査絨毛検査などの確定検査が必要です。担当医や遺伝カウンセラーに相談しながら進めてください。

Q6. NIPTは保険が使えますか?

NIPTは基本的に自由診療です。費用は検査会社によって異なるため、事前に確認してください。

Q7. 判定不能(no-call)と言われたらどうすればいいですか?

胎児由来DNAの割合が不足している状態です。数週間後に採血をやり直すことで、判定できるようになる場合があります。焦らず担当医の指示に従ってください。

もっと詳しく知りたい方へ(研究データと参考情報)

ここでは、NIPTの精度に関する学術的な背景を簡潔にまとめます。

2025年に発表された海外のシステマティックレビューがあります。
2003年から2023年までの21件の研究(対象92,164例)を統合したものです。WGS・SNP・マイクロアレイ・RCAという4手法の精度を比較しています。
いずれも21・18・13トリソミーという限定された対象における結果です。確定診断に代わるものではありません。

18トリソミーでは、マイクロアレイの感度が平均77%とやや低めでした。
13トリソミーでは、RCA法の1研究で感度62.5%という報告もありました。手法によって得意・不得意があることが分かります。

一方でNPV(陰性的中率)は、21・18・13トリソミーのいずれにおいても高い水準です。
すべての手法で99%以上という結果でした。
これも限定された対象における非確定的検査の数値です。陰性だからといって、他の疾患の可能性がすべて否定されるわけではありません。

従来の母体血清スクリーニング検査では、21トリソミーの検出率は82〜87%程度とされています。
NIPTのほうが、高い水準にあると報告されています。ただし比較対象となる母集団やリスク分類は、研究によって異なります。単純な優劣の比較には注意が必要です。

2023年に発表された経済分析もあります。
NIPTを最初のスクリーニング検査として用いる戦略には、一定の利点が示されています。生涯医療費の抑制と、トリソミーの見落とし防止につながる可能性です。

なお、こうした研究の多くはコホート研究です。対象妊婦のリスク分類や診断確認法には、ばらつきがある点も報告されています。
数値を読む際は、研究ごとの前提条件が異なることも念頭に置いてください。

より専門的な内容は、以下の公的機関・学術団体の情報もあわせてご確認ください。

用語集

  • cfDNA:母体血液中に含まれる胎盤由来のDNA断片
  • 感度:疾患がある場合に正しく検出できる割合
  • 特異度:疾患がない場合に正しく「異常なし」と判定できる割合
  • 陽性的中率(PPV):陽性と判定された中で実際に疾患がある割合
  • 陰性的中率(NPV):陰性と判定された中で実際に疾患がない割合
  • WGS:全ゲノムシーケンシング
  • SNP:一塩基多型
  • RCA:ローリングサークル増幅法

監修者情報

岡博史(おか ひろし)
医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長/Labo Director

慶應義塾大学医学部卒業。日本・米国の両方の医師国家試験に合格し、臨床研修後2年という短期間で医学博士号を取得しました。国内に20人ほどしかいないラボディレクター資格を保有し、検査体制の精度管理を統括しています。

医師監修 監修日:2025年6月5日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年6月5日
花澤 司 (医師/ヒロクリニック大宮駅前院 院長)

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2025年6月5日
陽川 英仁 (医師・医学博士/ヒロクリニック大阪駅前院 院長)

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

関連記事

  1. 通勤
  2. 妊婦
  3. スキンケアする女性
  4. 談笑する夫婦
  5. 体重計
  6. 音楽 レコード