ダウン症(21トリソミー)は、染色体の変化によって生じる先天的な疾患であり、出生前診断(NIPT)などで早期に検出されることもあります。しかし、ダウン症自体よりも、注意が必要なのが合併症の存在です。心疾患や消化器系の異常、免疫機能の問題など、日常的な健康管理に深く関わってくる症状は多岐にわたります。この記事では、ダウン症と合併症の関係、代表的な疾患、管理方法、そして出生前診断との関連性まで、医療的視点を交えながら詳しく解説していきます。
ダウン症とは?基本的な理解とその特徴
ダウン症は、21番染色体が3本存在することで起こる遺伝子疾患です。全出生の約600〜800人に1人の割合で発生し、年齢や性別に関係なく発症します。
主な身体的・認知的特徴
- 特有の顔つき(つり上がった目、平坦な顔、舌の突出など)
- 筋緊張の低下(低緊張)
- 発達の遅れ(言語、運動など)
- 学習や理解に時間を要することがある
ダウン症は個人差が大きく、重度もさまざまです。しかし、適切な支援と医療があれば、豊かな人生を送ることができます。
ダウン症に関連する主な合併症とその特徴
ダウン症のあるお子さんは、合併症を抱えることが少なくありません。以下に代表的なものを紹介します。
1. 先天性心疾患
- 約40〜50%のダウン症児が心臓の構造異常を持つとされています。
- 房室中隔欠損症(AVSD)や心室中隔欠損(VSD)が多く見られます。
- 手術を必要とするケースもありますが、近年の医療技術の進歩で予後は改善しています。
2. 消化器系の異常
- 鎖肛、食道閉鎖症、十二指腸閉鎖などが報告されています。
- 生後すぐに手術が必要な場合もあり、早期発見が重要です。
3. 甲状腺機能異常
- 甲状腺機能低下症(クレチン症)や亢進症が見られ、定期的なホルモン検査が必要です。
- 成長や認知機能に影響を与えるため、早期治療が重要です。
4. 免疫系の弱さと感染症
- 免疫力が低下しやすく、気管支炎や肺炎、中耳炎などにかかりやすい傾向があります。
- ワクチン接種のタイミングと種類に注意を払う必要があります。
5. 白血病リスクの上昇
- 特に急性骨髄性白血病(AML)にかかるリスクが高いとされます。
- 定期的な血液検査と経過観察が推奨されます。
医療的管理と日常生活での配慮ポイント
合併症への対応は、早期発見と継続的な医療支援が鍵となります。
医療的フォローアップ
- 新生児期からのスクリーニングと、定期的な検診(心エコー、甲状腺機能、血液検査など)
- 専門医(小児循環器科、小児内分泌科、小児外科など)との連携が不可欠です
日常生活での注意点
- 栄養バランスに配慮した食事管理
- 感染症予防(手洗い・うがい・マスク)
- 十分な休養と睡眠、無理のない生活リズムの確保
- 発達支援プログラムへの参加(早期療育)

出生前診断(NIPT)と合併症への向き合い方
NIPTは、妊娠10週以降に行える非侵襲的な出生前診断で、ダウン症などの染色体異常の可能性を高精度で推定できます。
NIPTの目的と限界
- 染色体異常の有無を確認するためのスクリーニング検査
- 合併症の有無までは直接診断できない点に留意が必要です
検査を受ける際の心構え
- 結果に対する事前の理解と受け止め方を、家族や医師と共有しておくことが大切です
- 必要に応じて遺伝カウンセリングを受けることも検討しましょう
家族ができるサポートと社会的支援制度
ダウン症のあるお子さんと暮らすうえで、家族や周囲のサポート、そして社会資源の活用が不可欠です。
家族の役割
- 愛情ある関わりと、日々の健康・発達チェック
- 情報収集と他の家族とのネットワークづくり
社会的支援の活用
- 自治体の福祉サービス(療育手帳、医療費助成、通園施設など)
- 保育・教育機関でのインクルーシブ対応
- 就労支援制度など、成長段階に応じた制度も存在します
まとめ:ダウン症と合併症への理解と寄り添い
ダウン症のあるお子さんは、個性とともにさまざまな医療的・生活的な課題を抱えることがあります。合併症の有無によって生活の質も変わるため、早期発見と継続的なケアが不可欠です。
出生前診断(NIPT)はあくまで「可能性を知る」ためのツールであり、その後の判断やサポートは個々の家庭と社会が共に支える姿勢が求められます。
正しい知識と寄り添う姿勢が、子どもと家族の未来をより豊かにする鍵になるのです。

