概要
ホスホグリセリン酸脱水素酵素欠損症は、セリン生合成経路の最初の律速段階を担う酵素である3-ホスホグリセリン酸脱水素酵素(PHGDH)の活性低下により生じる先天性代謝異常症です。PHGDHは解糖系中間体である3-ホスホグリセリン酸から3-ホスホヒドロキシピルビン酸への変換を担い、L-セリン合成の出発点となります。L-セリンは中枢神経系の発達、神経伝達物質合成、リン脂質合成に必須であり、その欠乏は重篤な神経発達障害を引き起こします。
本疾患は胎児期から脳発達に影響を及ぼすため、先天奇形、難治性てんかん、重度の発達遅滞を呈することが多い疾患です。(PMC)
疫学
PHGDH欠損症は極めて稀で、世界的報告数は50例未満とされています。正確な有病率は不明ですが、100万人に1人未満と推定されています。(Orphanet)
原因
本疾患はPHGDH遺伝子の両アレル病的変異により発症します。PHGDH遺伝子はヒト1番染色体(1p12)に位置し、セリン合成に必須な酵素をコードします。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体潜性遺伝です。
症状
中枢神経
- 小頭症
- 重度発達遅滞
- 難治性てんかん
- 筋緊張低下
身体所見
- 低身長
- 先天奇形(心・口唇裂など)
診断
- 血中・髄液中L-セリン低値
- 脳MRIで小頭症・脳形成異常
- 遺伝子診断(PHGDH解析)(PMC)
治療
- L-セリン補充療法(高用量)
- てんかん管理
- 栄養管理
- 発達支援
早期治療により神経症状の改善が報告されています。
参考文献
3-Phosphoglycerate Dehydrogenase Deficiency — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Jaeken J et al. 3-phosphoglycerate dehydrogenase deficiency. J Inherit Metab Dis. 1996.(JIMD)
PHGDH — Malacards Gene/Disease Database.(malacards.org)
PHGDH deficiency — Orphanet Rare Disease Database.(Orphanet)
